4月30日 原子力に反対する理由 (マル激) 小出裕章

2011年4月30日

2011年4月30日、ビデオニュース・ドットコムのマル激トーク・オン・ディマンドに、小出裕章氏が出演されています。これは、神保哲生と宮台真司の両氏が大阪は熊取の京大原子炉実験所を訪問し、小出氏にインタビューをしたものです。

http://www.videonews.com/on-demand/521530/001858.php

ビデオ・ニュース・ドットコム「小出裕章京都大学原子炉研究所助教」

概要

マル激トーク・オン・ディマンド 第524回(2011年04月30日)
5金スペシャル
原子力のこれまでとこれからを問う
ゲスト(PART1):小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)
    (PART2):河野太郎氏(衆院議員)、武田徹氏(ジャーナリスト)
    (PART3):細野豪志氏(衆院議員、福島原発事故対策統合本部事務局長)

案内文(小出氏部分)

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 5週目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする「5金スペシャル」。今回は福島第一原発の深刻な事態に直面し、「なぜわれわれは原子力をここまで推進してきたのか」、そして「これからわれわれはどうすべきか」を考える特別企画を、3部にわたってお送りする。
 PART1は、震災以降ほぼ毎週、『ニュース・コメンタリー』で福島第一原発の最新状況を電話解説してきた京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏を、神保哲生・宮台真司が大阪・熊取の実験所に訪ねた。
 「原子力は人類の未来を切り開く」と確信して原子炉工学を専攻した小出氏は、原子力を研究しその危険性を知った時から、原発に反対するようになった。しかし、「熊取6人組」と呼ばれる小出氏ら京都大学原子炉実験所の6名の研究者以外に、原子力の専門家の中で原発に反対する人は出てこなかったという。
 37年間にわたり原子炉の研究を続け、原発の危険性について警告を発してきた小出氏にとって、このたびの福島原発の事故を防げなかったことは悔やんでも悔やみきれないできごとだったと言う。
 1960年代、世界中が原子力の可能性に魅せられた時代から今日までの道程を振り返りながら、原子力の専門家がなぜ原発に反対してきたのか、その理由を聞いた。
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内容メモ

ブログSleepingCatsにて内容の書き起こしをされているので、以下、転載させていただきます。

Videonews.com:4/30更新「原子力のこれまでとこれからを問う」小出裕章氏インタビュー(1)
Videonews.com:4/30更新「原子力のこれまでとこれからを問う」小出裕章氏インタビュー(2)
Videonews.com:4/30更新「原子力のこれまでとこれからを問う」小出裕章氏インタビュー(3)

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出演:神保哲生氏。宮台真司氏

※誤字脱字、聞き間違え等ご了承下さい。

『原子力の専門家が原発に反対する理由』

神保氏:今日は4月27日水曜日。
  水曜日の収録が異例であると同時に、
  背景に小学校の教室みたいな黒板があるが、
  ここ京都大学原子炉実験所にお邪魔し、
  原発事故の週から毎週電話で福島原発の状況について伺って来た
  小出裕章さんを訪ねた。

  宮台さんは、小出さんに会うのは初めてか。

宮台氏:毎日放送の熊取6人組のドキュメンタリー以外では
  拝見させて頂いた事はなかった。

神保氏:まさに研究されている原子炉の最悪の状態が
  福島で起きていて、急がしい中1時間だけ時間を頂いたので、
  早速本題に行きたい。

  小出先生には、毎回今週の原子炉はどうなっているのか
  という事で新しい状況についてコメントを頂いていたが、
  今日はせっかく面と向かって話せるので、
  もう少し大きな話をして頂きたい。

宮台氏:インターネット含め巷では所謂御用学者批判がそれなりに展開しているが、
  アカデミズムが何故原発について、中立的情報を人々に伝える事に失敗してきたのか、
  あるいはわざとしてこなかったのか。
  人々が事故に対し、小出先生のような少数派の意見は別として、
  アカデミズムから何も情報が得られない。
  価値中立的という言葉があるが、何故アカデミズムが価値中立的で無かったのか、
  小出先生のような立場の方が完全に周辺化されるような
  価値コミットメントがないとあり得ないような扱いがまかり通るのか、
  どういうふうにして、こうなってしまっているのか伺いたい。

神保氏:原子力の本質的な部分ですね。
  早速話を伺って行く上で、小出先生の著書を皆さん呼んでいる訳ではないので、
  基本的な入門的な所から(伺いたい)。
  小出先生は、原子力の研究者でありながら、
  原子力の問題点や危険性をメディアでも広く発言されているが、
  そもそも何故原子力という学問を志したのか、
  お話頂けるか。

小出氏:私は東京の下町(上野)で生まれ、下町で育った。
  1960年代半ばに中学高校と下町で過ごした。
  その当時、東京では広島・長崎の原爆展がしきりに開かれていた事だった。
  私はその原爆展を見に行き、
  原爆がとてつもなく酷い兵器だという事を心の片隅に刷り込んだ。
  一方では、そんな凄まじい人殺しの兵器を作りだすエネルギーがある、
  という事も理解した訳で、
  丁度日本ではその頃、1966年に東海1号炉、日本初の原発が動き出す、
  という事になり、日本中諸手を上げて(歓迎し)、
  マスコミも、政府はもちろん、皆がこれからは原子力の時代だと思っていた。
  70年になると、敦賀・美浜原発が動き出すという、
  建設を進めている時だった。
  私も、原爆のような形で原子力を使うのはけしからんが、
  そのエネルギーを平和的に使えば、きっと人類のためになると思いこんだ。
  それで、原子力をやりたいと思い、
  大学に入る時に、工学部原子学工学科に入った。

宮台氏:少し補足すると、「思いこんだ」と言ったが、それは実は謙遜で、
  1963年、東京オリンピックの前年に原子炉実験所が出来た。
  あの頃、アニメーションで「鉄腕アトム」が始まり、妹はウラン、
  同じ頃、原子力潜水艦スティングレイ(「海底大戦争 スティングレイ」)という人形劇、
  その後サンダーバードの3号が原子力ロケットだった。
  つまり、原子力は、未来を切り開く、単なるSFではなく、
  すぐに手が届く明るい未来の象徴だった。
  僕も小学校の作文では、「将来原子力を研究する学者になる」と書いた位で、
  実は多感な人である程、そう思ったし、
  僕が東大に入った頃も進路振り分けで、原子力は電気工学と並んで点が高かった。

神保氏:成績優秀な人が行った、と。
  やはり「鉄腕アトム」を見た世代か。

小出氏:そうです。

神保氏:今の話で是非訊きたいのは、
  原子力は夢のある新しいエネルギーだと当時は本当にそう思っていたのか、
  その後、原子力はラッピングされ実態が見えない宣伝活動がなされ、
  当時ここまで原子炉の危険性が解らなかったからか、
  その時実はもう始まっていたのか(危険性を感じていた)。

小出氏:たぶん私が原子力に夢を持った60年代中頃は、
  危険性に対する意識は殆ど無かった。
  皆が夢を持って、原子力に突っ込んで行く、
  それは日本だけではなく、米国もヨーロッパもそうであり、
  60年代から70年代初めにかけては、
  これからは原子力だと、世界中で原発がどんどん建設される、計画される、
  そういう時代だった。

神保氏:ちょっと細かい話を聞くが、
  素人的に見ても、原子力は核分裂や連鎖反応など、
  それをコントロール出来なければ放射能が出る、という事は怖いな、と考えるが、
  当時それが解らなかったというのは、
  今振り返ると、考えていなかったのか、
  メリットの方が大きかったから敢えて気を配らなかったのか、
  何なのか。

小出氏:それは、今神保さんがおっしゃったように、
  メリットが大きかったと思いこんでしまい、
  デメリットに目が行かなかったという事だと思う。

神保氏:その時は、将来は原子力だ、という時代であり、それを志したが、
  どうもこれは違ったぞとなった、その転機とは、どういうキッカケだったのか。

小出氏:私が大学に入ったのは1968年、東北大学の工学部原子力工学科に行った。
  東北大学は、宮城県の仙台にあり、そこは東北地方で最大の都市だった。
  そこで、私は原子力をやりたくて、原子力の勉強を始めた。
  大学に入った時は、ひたすら勉強をしていた。
  ちょうどその頃東北電力が原発を作る計画を立ち上げた。
  計画した場所が、女川町という小さな町だった。

神保氏:今ありますね、原発が。

小出氏:今回津波で被害が出た町。
  仙台で直線距離で60kmから70km程離れていたと思う。
  仙台には、仙台火力発電所という大きな発電所があったが、
  原発を女川に作ろうとした。
  当時は、私を含め、日本中が諸手を上げて原子力という時代だったと、
  先ほど聞いて頂いたが、
  女川町の住民が何かおかしい事に気付き、
  本当に少数の人だったが、反対だと言い出した。

神保氏:作る前の段階で。

小出氏:はい。
  私は原子力に夢を抱いていた訳で、
  初めは、何故女川の人達が反対をするのだろう、と思った。
  所が、女川町の人達の言っている事は実に単純だった。
  安全だと言うが、安全なら何故仙台に作らないのか、と。
  私はその問いの答えを見つかなければいけない、と思った。

  それで、どうしてだろうと探し求めた訳だが、
  今となってしまえば。と実に当たり前の答えしかなかった。
  要するに、原発は都会では引き受けられないリスクを持っている、
  それだけだった。
  でも、電気を使うのは都会の人達であり、
  その都会の人達はリスクは引き受けたくない、と言って、
  原発を所謂過疎地と言われる所の人達に押し付ける、という事をやろうとしている、
  それが、探し求めて見つけた答えだった。

  その答えを知ってしまった以上は、私にとっての選択はひとつしかなく、
  これはとても認める事が出来ない、止めさせようと思った。
  人生の選択を180度転換し、
  原子力を止めさせる、という事に力を注ごうと思うようになった。

神保氏:68年東北大学入学、72年に学部を卒業、
  その後74年から東北大学大学院の原子学工学専攻に行かれた、
  それは大学院の時か。

小出氏:私が180度転換したのは、1970年の10月23日。
  大学3年の時。

宮台氏:10月23日という日付を何故覚えているのか。

小出氏:その時に、女川の人達が第1回の反対集会を女川町でやった。
  私はその集会に参加した、という日にち。

神保氏:その日が、小出先生にとっては、
  ある種人生の転機になる訳ですね。

小出氏:そうです。

神保氏:ただ、その後原子学工学科をそのまま卒業し、
  74年には大学院へ行き原子学工学専攻を続けた。
  原発を止めさせるという決心をした後も原子力の学究を続けたというのは、
  何故か。

小出氏:とても説明し難いが、私が大学に入った68年は、
  大学闘争が始まった年。
  東大の青医連(青年医師連合)というお医者さん達が始めた年で、
  私はその時は、大学闘争が何なのか全く解らなかった。
  ひたすら原子力をやりたかったので、他の学生達がいろいろやっている時に、
  「何をやっているのだろう、勉強をしないのかな」位にしか思わなかったが、

  女川の問題に突き当たり、自分のやろうとした原子力が何なのかという事を、
  考えざるを得なくなった。
  それは所謂アカデミズムと言われているものの一端であった訳で、
  先ほども宮台さんは「アカデミズムは価値中立的だ」とおっしゃったが、
  アカデミズムの実態を知れば知る程、
  アカデミズムは価値中立ではないと、私は思うようになった。
  原子学工学科という所は、原子力発電をやろうとする牙城、
  そこで私は原子力を止めさせようとした訳で、
  教員達と毎日のように論争をした。
  今私が言うのもおかしいが、大抵私が勝った。
  そうすると、彼らが何と言ったかと言うと、
  「自分には妻もいるし、子もいる」と言った。

神保氏:原子力を止めたら食べられなくなってしまうという事。

小出氏:そうです。
  要するに、生活があるという事。
  私と一緒に女川原発に反対していた人は、もちろん原子学工学科の中にも当時沢山いた、
  大学闘争があった時代たったため。
  その中で大変親しい2つ年上の友人は、
  「生活を言い訳にするようなやりたくない」と言って、
  どうすればいいのか、と考えた挙句、捨てるものが無くなればいい、
  要するに、アカデミズムにしがみついていなければいい、と、
  原子学工学科の大学院を辞め、とび職になった。
  捨てるものを無くした上で、彼は女川原発の反対運動を続け、
  今でもその中心メンバーになっている。

  彼がそういう選択をした時、私はその選択をしない、と言った。
  原子力を進めるアカデミズムの世界が現に存在に、
  そういう世界の中で、原子力を反対する人間は必要だ、と思い、
  私はこの場に残る、その代わり、生活を言い訳に絶対しない、
  と彼に約束をし、それで私はこの場に残っている。

神保氏:小出先生はその後も原子力を研究し続けた訳だが、
  原子力を止めるために、原子力を知らないと有効な反対も出来ないため、
  反対する目的でその後も研究をし続けたとという理解でいいのか。

小出氏:そうです。

神保氏:今同僚の方の話や毎日論争をしたという話も出たが、
  結局は原子力を推進する学問体系の中に、
  小出先生は反対をするために居る、というと、
  例えは卑近だが、人間関係や先生との関係が難しくなったのでは、
  と想像してしまうが、
  原発反対派の小出というのがうちの研究室にいる、という状態になり、
  それは、どのような状態だったのか。

小出氏:大学闘争の時代だったため、
  学生は否が応でも自分が学ぼうとする学問が何なのか、
  という事を考えざるを得なかったし、
  教員側も、日常的に学生から論争を挑まれ、
  それを受け止めざると得なかった。
  だが、大抵は、生活があるという事に逃げ込み、
  原子力を推進するために旗を振る人が殆どだった。
  私はたぶん、原子学工学科の教員の中では、随分嫌われていたと思う。
  それでも、私を自分の研究室に迎えようという教授も居た。
  捨てる神もいれば拾う神もいるというような状況で、
  結局大学院まで学問の道を進む事が出来た。

宮台氏:生活があると言った先生方の事について伺いたい。
  原子力発電に関する今日のインターネットの情報を見ると、
  妥当性や合理性に関する議論は殆どなく、
  まず陣営の帰属をし、誹謗中傷合戦になるケースが大半。
  特に田中角栄時代の電源三法以降の
  地域振興とセットになった原発政策の問題で、
  現地の人にとって、原発を誘致するかしないかという生活の問題になる。
  そうすると原発の妥当性・合理性の問題というより、
  生活の問題が前面に出て来る。
  特に田中角栄氏は、道路さえ引けないような過疎地に原発を置く、
  そうすると地域が栄える、と発言している。

  地元の人が、そういう政策的誘導にある種流されていくのは解るが、
  どうしてアカデミズムの中心で真理性を追いかける、
  当時原子力物理や核物理は僕に言わせると一番頭の良い人が行く場所だった、
  最も真理性に真摯に立ち向かうはずの人であるように思うが、
  どうして、そういう人達が合理性・妥当性ではなく、
  生活の事を言って恥じないのか、という事がよく解らない。

小出氏:それは、私に問われても、私も解らない。
  その人達に問うて下さい。

神保氏:逆に言うと小出先生のポジショニングを
  原子力村の中でするというう事は、
  非常に困難だったと推察するが、どうだったのか。

小出氏:原子力とは国家の根本をなす政策。
  私は原子力は核と同じものだとずっと言っているが、
  国家が、原子力=核をこれから進めるという事を根本に据えた訳である。
   その周辺に、電力会社あるいは巨大産業が群がった。
  またその周辺に、土建屋が群がった。
  その周辺に、下請けと言うか、子会社が群がった。
  その全部で、宮台さんが言ったように、
  過疎の村々の生活を何とかしてやる、という形で、
  正にブルドーザーで押し潰すような形で進めた。
  たぶん誰が抵抗しても、何も出来ない時代だったと私は思う。

  宮台さんの周辺の学者がどういう人達か、私には解らないが、
  学者は聖人君子でも何でもない、
  言ってみれば、ひとりひとり生活を抱え、
  出世もしたい、名誉も得たい、給料も少しは良くなりたい、
  殆どの人はそう思っている。
  原子力をやろうとするなら、一番そういう所に近道なのは、
  国家に協力する事。

宮台氏:小出先生の言う通り、
  僕も実は、小出先生程ではないのしても、似たような経験があり、
  僕は数理社会学で戦後5人目の東大の博士号を貰ったが、
  実は本当にやりたい事は数理社会学ではなく、
  若者の、特に宗教と性に関する文化の研究だった。
  それは、「おまえ、そんな事をしていたら生き残れないぞ」と止められ、
  数理社会学者のフリをしていた。
  たまたま大学の講師になれたため、
  もうやりたい事をやらせてもらうと宣言をし、フィールドワークに乗り出し、
  特に90年代半ばは援助交際やオームの問題で
  いろいろ発言するという事をする訳で、
  そうすると当然の事ながら、学会では周辺化される。
  いろいろな人間が僕に手紙で忠告をして下さった。
  君のような人々の自明性を揺るがせるような研究は許されない、
  人々の心の平安を乱すような研究は許されない、と。

  その意味で言うと、実は原子力の絶対安全というスローガンも、
  ある種、人々の自明性、当たり前性を形作っている中で、
  実際に真理性・妥当性に照らし議論を詰めると、
  実は危険だというのが、人々の自明性を崩すものである。
  そんなもの(研究)はしてはいけない、という
  ある種の正当化のロジックが働く事は、
  似たような所があると想像した。

小出氏:もちろん、その通りです。
  原子力に関しては「絶対安全」と国が言い続けて来た訳で、
  多くの日本人は、国や東電が言っているし、事故は起きないだろう、
  位にしか思わないまま、原子力を許して来たという歴史だと思う。
  携わっているアカデミズムの人達も、まさか大丈夫だろう、
  という位の気持ちで来たのだと思う。

神保氏:途中でそのスタンスを維持する事が困難になった、
  あるいは迷いが出た事はなかったか。
  流れに任せてしまえば、ある意味楽な訳で、
  熊取6人組については後でお聞きしたいが、
  一人では無かったと理解しているが、
  それにしても全体の中では物凄い少数派で、
  6人組のうち4人位はもう引退している。
  今回原発事故が起きた時にも、いろいろと解らない事がある中で、
  推測できる幅がかなりある訳で、
  僕らは予防原則の立場で、
  考え得る一番酷い状況というは何かを知る事が大事だという立場で、
  小出先生に毎回話を聞いていた。
  TV等は考え得る一番良い辺りの話をしていたようで、
  逆にそれが疑心暗鬼を呼び、
  もっとずっと酷いのではないか、と思っている人達がいて、
  小出先生の話を聞いて、その辺なのね、と逆に安心するという話もある位、
  半分皮肉な結果だった。

宮台氏:更に説明すると、インターネット上では、
  陣営に分けた上での誹謗中傷とは別に、
  一般に「安全厨」と言われている2チャンネル用語がある。
  僕は原発事故の当初から、これはとても危ない可能性がある、
  東電や政府の言う事を信じていたらとんでもない事になる、
  というツイートを流したら、物凄く攻撃された。
  不安にさせるのか、デマを流すのか、と。
  後になって、安全厨の人達が流す情報の方が
  逆に今「安全デマ」と言われるようなった。
  そういう意味では、僕が関わっている、例えばラジオ番組なども含め、
  神保さんが関わっているような一部出演したTVも含め、
  実際こういう事があり、従って今はこうだから、
  健康に直ちに被害があるかどうかという事ではなく、
  将来どういうシナリオがあり得るのか、
  例えば、ワースト・ミドル・ベスト、
  どの位のシナリオの幅があり得るのかという事を言わないと、
  専門的だが、ベイズ統計的な行動計画が建てられない、
  と申し上げたら、これまた物凄いバッシングの嵐だった。
  「やっぱり不安にさせるのかー」と。

神保氏:うち(Videonews)では小出先生がボトムを形成してくれるから、
  逆に安心したと見ている人がかなりいる。
  一方でTVしか見ていない人が、いきなり見ると、
  そんな酷い状況なの!と言って不安を煽るなという批判は未だ来る事は来る。
  連続的に見ている人達は、政府の説明が、
  キャパの中のこの辺(上方)を言っている事に気付いているため、
  実際はどれ位なのかは底なし沼であり、却ってあの状態だと不安になる。
  再臨界は可能性はあるけど、
  語弊はあるが、大した事ないと(小出先生が)言って、
  皆さん救われたという事があるとか、
  いろいろな話もあった。

神保氏:やはり(小出先生が)少数派である事は間違いなく、
  それは、非常に困難な道のりだったのではないか。
  今は、あんな事故が起きたから、いろいろなメディアが
  先生先生とやって来て、コメント下さい、と言っているかもしれない。
  あれだけ安全神話みたいなものが国を挙げて喧伝されている時に、
   所謂ただの運動家ではなく、
  専門家であるから危険だと言っているのは物凄く少数派だった訳で、
  その少数派としての、ある意味では試練を、
  ずっとここまで乗り越えて来れたというのは、
  振り返って何だったかと思うか。

小出氏:何にも試練が無かったからだ。

神保氏:試練は無かった。

小出氏:はい。

神保氏:辛い事とか、懐柔される事とかなかったか。

小出氏:何もありません。
  何か週刊誌で、「迫害され続けて来た小出達」みたいなものがあったようだが、
  私は迫害など一度もされた事がない。

神保氏:失礼ながら訊いてしまうと、
  先生は今の年齢でまだ助教でおられる訳で、その事をいろいろ訊かれると思うが、
  それは先生が、その学問の世界で明らかに反主流の立場を取っている事と
  先生から見て関係あるのかないのか、というのは、どうか。

小出氏:それは大学のポストというのは、
  大学の思惑、あるいは京都大学は国立だから国の意向というのは、
  もちろんあるだろうと思う。
  例えが6人組と呼ばれて来た私の仲間の中には、
  その人がいなければ日本だけでなく、
  世界の学問が成り立たないという仕事をしていた人もいるが、
  結局教授には誰もなれないという事だがら、
  もちろんあると思う。
  でも私は教授になりたいと思った事が、一度もない。

  私は74年に原子炉実験所に来た。
  その時の大学の職階は、教授・助教授・助手で、
  私は助手に採用されて、ここに来た。
  途中で大学の職階が、教授・準教授・助教という名前に変わり、
  それで今私は助教、つまり昔の助手のままいる訳である。
  ですから、37年間助手。
  きっとギネスブックに申請したら、
  「37年間最下層にいた教員」と言って載るのではないかと思うが、
  だが私にとり、とてつもなく居心地の良い職階だと思う。
  37年間、誰からも私は命令を受けた事がない。
  誰にも命令をした事もない。
  宮台さんは教授だから、子分もいるのかもしれないし。

神保氏:ずっとなりたくないと抵抗していて、
  僕にも泣きついていたのだけれど、
  最後はしょうがなしに教授になった、途端に凄い忙しくなった、確かに。
  雑用とか。

小出氏:いろいろな事をやらなければいけないから大変だろうと思う。
  だが、私はそういう雑用を負う責務も無く、
  人を動かす責務もないため、
  自分の好きな事だけをずっとやり続ける事が出来たという
  とても有難い職階だと思っている。

神保氏:研究する上で、助教という立場が制約になったりはしないのか。
  教授になれば、こういう予算が取れるとか何だと。

小出氏:少し研究費が多くなるという事はもちろんある。
  それから、国に尻尾を振れば、もちろん研究費が来る、とか、
  企業との共同研究が出来る、とかあるだろうが、
  そんな事をしてまでお金を欲しいと思った事は一度もない。

神保氏:小出先生や今中先生の飯館村の調査も注目していろいろな所で使わせて頂いているが、
  おふたりが、まだ熊取6人組の中で残っている、と。
  その後に続く人達というのはいるのか。
  例えば、反主流でも全然構わない、
  そういうポジションで研究する人が必要だ、という事で、
  その後の世代は控えているのか。

小出氏:6人組と呼ばれている私達の仲間というのは、
  世代で言うと、4人と2人に分かれる。
  上の4人というのは、60年安保世代に学生だったという人達。
  自分のやろうとしているアカデミズムが
  社会的にどういう意味を持っているかという事を学生時代に問われた、
  という世代な訳である。

神保氏:小林圭二さん、川野真治さん、海老澤徹さん、瀬尾健さんですね。

小出氏:その4人が私の仲間であった訳だし、
  今ここに残っているのは、私と今中さんのふたりだけとなった。
  私と今中さんは、所謂70年代安保、それで大学闘争という世代。
  学生の時に、どうしても自分がやろうとしている学問が
  社会的にどういう意味を持っているかという事を問われ、
  その答えを探し求めた人間だった訳で、
  それがきっと6人組という集団を作ったと、私は思う。

  でも、70年安保で終わってしまった訳で、
  80年安保なんて無かったし、90年安保も無かった。
  もう自動延長でずっと来ている。
  自分の学問がどういう意味かという事を問われないまま、
  静かな大学の中で学問をして行く、
  そういう世代がずっと今日まで続いているのだと、私は思う。
  ですから、ひたすら社会的な問題は考えない、
  自分のやっている学問をやっているだけという人が多いのだと思う。

  この実験所にも、80人位の教員がいて、
  順番に定年でいなくなって、新しい人が入ってくる訳だが、
  新しく入って来る人の中で、社会的な問題を考えるという人は
  やはりあまりいなかったように思う。
  でも、ゼロだったかというと、そうではない。
  私達がやっている事に共感をし、
  仲間になろうとしてくれた人も何人かいた。
  だが、私は積極的にその人達を誘わなかった。

神保氏:それは?

小出氏:要するに、6人組という名前はどうしてそんな名前になったかと言うと、
  当時中国の「4人組」というものがあって・・・

宮台氏:文化大革命を指導した?

小出氏:そうです。
  犯罪者として、後ろ指を指されたグループがいた訳である。

神保氏:そういう汚名なのですね、もともと。
  熊取6人組というのは。
  ヒーロー物語のように、MBSの(ドキュメンタリー)を見たから。

小出氏:そうです。
  ですから、6人組というのは、こういう社会の中では、
  要するに、犯罪集団だというような意味をこめて、
  きっと誰かが私達を6人組と呼んだ。
  別に私達が自分たちで6人組と言った訳ではない。
  呼ばれたから、私はそうか、結構だと思って、
  自分で6人組という言葉を使うようになった。

  周りから見れば、私達のやっている事は、国家に楯突いている訳であり、
  面白くないと思っている人は多いと思う。
  特にアカデミズムの世界の中で言えば、
  国家の方棒を担いで、原子力を進めようとする人達が多い訳であるから、
  そこで原子力に抵抗するような事をするというのは、
  所謂アカデミズムの世界の中で安穏と生きて行こうとする限りは
  その道を閉ざす事になる。
  ですから、私は、私達の仲間に入ってくれようとした若い人達を、
  誘えなかった。
  そういうような立場にさせてしまうという事で。

神保氏:むしろ止めたという事か。
  止めておけ、とう感じか。

小出氏:止めておけ、とは言わなかったが、
  積極的に一緒にやろうというふうに誘わなかった。
  そのため、そういう人達は、結局原子炉実験所から去り、
  別の所で職を得て、それなりの活躍を今でもしている人達がいる。
  誘わなかった、
  そして6人組という初めに決意をして集まった
  メンバーだけでやって来て、
  4には既に・・・瀬尾さんはお亡くなりになったし、
  3人はもう定年でいなくなって、
  既に2人になった。
  私にしてもあと数年で定年になって辞めるし、今中さんも同様。
  私と今中さんがいなくなった時には、所謂大学という世界で、
  原子力に抗議を続けるという、抵抗を続けるという教員はいなくなるのかな、と思う。

神保氏:これは、京大に限らず。

小出氏:物理学や地震学をやっている人で、原子力に抵抗している人はいる。
  だが、原子力という世界の中で、
  原子力に抵抗する人間はたぶんいなくなるだろうと思う。

神保氏:困りますね、専門家がいなくなると。

宮台氏:今の先生のお話で非常に印象深いのは、
  僕自身は71年から73年まで中学高校紛争に関わっており、
  その頃にいろいろな本を読んだという事もあって、
  少し口はばったい言い方になるが、
  「美学」という事について学ぶ事が出来た。
  美と美学は違って、美は人が見て美しい、褒められるものだが、
  美学は人が見てみっともなかったり、
  場合によっては蔑まれたりするようなものだが、
  しかし美学は、行動原理としてその人を貫徹しているもの。

  先生の話を伺っていると、美学の筋を凄く感じると同時に、
  やはり美学を育んでくれた時代がある時代にあったのかという気がして、
  逆にそういうものが今までは無くなってきたが、
  3.11以降は少し違うのかな、という気がしている。

  先生が原子力の発電の合理性の問題と合わせて、
  ライフスタイルの問題をずっと書いて来ている。
  我々の生活はどこかおかしい、と、
  今までの3分の1のエネルギーでもっと幸せに生きる事が出来るはずだ、と。

  実はこういう議論を特に北欧やゲンルマン系の人達は良くする。
  実際エネルギーを使わない家だけれども、
  日本の家よりも遥かに快適性の高い家とはどういうものか、
  一生懸命民間のメーカーも研究するが、
  僕たちは、エネルギーの消費量と
  何か、幸せか何かよく解らないが、良い感じというものが並行すると思い込んでいる、
  それがおかしいと書いている。
  そこも、行動原理としての美学という事、
  その本筋さえ弁えていれば、後は枝葉だ、という発想法が貫徹を感じる。

神保氏:小出さんの本を読んでいると、
  途中からスローライフの本を読んでいたのかな、という気がして来る。
  原発の話のはずが、最後はそういう感じになる。

  ただ、僕は、そういう中にあっても、
  国立大学で国家の政策に反対している人間を
  ちゃんと包摂する京都大学の懐の広さという、
  そんな話も小出さんがされているのは存じ上げている。

  時間があまりないので、どうしても押さえたいものが2点あるので
  (それについて伺いたい)。
  ひとつは、本質的な話を小出先生に訊きたい。
  要するに、原子力の本質的なもの、原子力の問題とは何か、
  という所について、先生の意見を伺いたい。
  原子力発電でもいいが、
  人間がそのような形で原子力というものの力を手に入れた、
  という事の意味を、我々はもう一回考えないといけないのではないかと、
  今回の事故で私も思ったし、思った人が多いのではないかと思う。
  小出先生にとって原子力というものの本質とは、
  あるいは原子力の問題とは。

宮台氏:補足的な質問させて頂くと、
  小出先生もいろいろな所でおっしゃっている
  原子力発電とは結局発熱装置が違うだけで、蒸気機関であると。
  火力だったり、石油・石炭ではなく、
  あるいは太陽熱で発電する場合もあるが、
  要するにタービンを回すための蒸気を原子力の熱で取っているだけ。
  単なる蒸気機関。
  その事を考えると、原爆が日本に落ちて、
  その後5年以内に水爆実験が米ソで始まり、
  フランスとかスイスとか各地がそれを追い掛け、
  兵器としての水爆を持つという宣言をする。
  全く同じ時代に、蒸気機関を原子力で温めようという話が出て来るというのは、
  科学的な合理性であるとはちょっと思えない、
  別の事情であるように感じる。

神保氏:核のオプションの話も最後に行かなければいけないと思っていたが、
  ある種、科学的に考えた時に、そこに悪魔的ファウスト的取引と言われるように、
  膨大なエネルギーの代わりに何かを与えるいるのではないか、
  という見方も指摘されているが、どう考えるか。

小出氏:ファウスト的取引と言う時には、
  要するに膨大な危険はある、という事を一方に置いて、
  膨大なメリットがるという事を一方に置いている。
  でも、私は膨大なメリットすらないと言っている。
  もともと私は原子力に夢を持った人間で、
  未来のエネルギー源になると思い込んだ人間だが、
  原子力で使おうとする燃料、ウランというのは、地球上には殆ど無い。
  石油に比べても、数分の1しか資源が無い、
  石炭に比べたら、数十分の1しか無い、という
  そんな資源だった訳だから、もともとメリットなど無い。

宮台氏:長く使っても40年とか言いますよね。

小出氏:そうです。
  今の世界のエネルギーを全て原子力で賄おうと思ったら、
  今宮台さんがおっしゃったように40年もたないんじゃないか、
  と私は思う位、とても貧弱なものだった。
  そんなものを、膨大な危険と計りを掛けて、
  取引なんかする必要もない、というそれ程バカげたものだった、
  と私は思う。

神保氏:原子力にかけた夢というのは、見当違いだったという事になる訳ですね。
  本質的には。

小出氏:そうです。

神保氏:ただ、今福島で一生懸命水を掛けているが、
  僕らなど素人的表現で申し訳ないが、
  鉄なんかはどんなに熱くなっても、水を掛けておけば冷える。
  再臨界や崩壊熱、ひとつを取っても、
  水を漬けているのに、ずっと内部から熱を出し続けるなんて、
  これは凄いな、というように思ってしまう。
  何か知らないけど、金属をただ置いておくだけで、
  内部からどんどん熱が出て来る、と。
  そういう素人考えも危ないと思うが、
  やはり原子力とは何か特別なものなのかどうかという所を、
  是非科学者から説明を聞きたい。

小出氏:それはもう単純。
  原子力とは、ウランの核分裂反応を起こさせてエネルギーを取ろうとするものであり、
  核分裂反応で出来るものとは、核分裂生成物という「死の灰」。
  それを生み出さなければ、エネルギー自身を取りだす事も出来ない、
  という、そういうものの訳であり、
  核分裂生成物とは、圧倒的な危険物である。
  どんな意味で言っても危険物。

  火力発電所を動かしたら、CO2が出るからとんでもない、
  というふうな事を、皆さん言っている訳だが、
  冗談を言わないでくれ、と私は思う。
  火力発電所で出すものは、せいぜいCO2。
  CO2とは、この地球という惑星にとって絶対に必要なものである。
  生命系を維持するために。

  それがあたかも、物凄い悪者であるかのように言いながら、
  原子力が生み出す核分裂生成物については、
  一切何も言わないで、地球環境に優しい、エコだ、クリーンだ、
  という説明がまかり通るというのは、
  とてつもない宣伝というか、嘘というか、まかり通っていると思う。
  その核分裂生成物というものの危険性がとてつもなく大き過ぎて、
  下手をすれば今回の福島の事故ような事になってしまう。
  初めに聞いて頂いたつもりだが、その事は皆初めから知っていた。
  だから、都会には建てられない、過疎地に押し付けるという事をやった。
  そのツケを今、日本というこの国で払っているという事である。

神保氏:結局60年代は夢を見てしまったかもしれないが、
  小出先生もそうだったが、
  その夢は早い段階で夢であるという事が解ってしまった。
  メリットも妖しい、デメリットはどんどん大きい事が解って来る、
  しかもどんどん滓が出るから、
  日本は未だにトイレのない町の状態で、相変わらず糞詰まり状態である。
  そして、福島は、使用済みプールに沢山置いておくから、
  爆発したらそれも飛び散ってしまう、という余計な事まで問題になっている。
  あらゆる問題がある。
  しかも、コストも実は安いと言っていたのも、
  補助金であるとか、発電部分のみのコストの話しかしておらず、
  今回で安全基準が上がったら、もっとコストが上がる。

宮台氏:CO2も同じ。
  採掘・生成・濃縮・建設、そして半永久的に保存するとしたら、
  冷却のためにエネルギーを使う。

神保氏:何か知らないけれども、
  今までメリットと言われて来たものは、全部殆ど崩壊しており、
  デメリットは相変わらずどんどん増え続ける、という事になると、
  一体何故我々は、しかも日本は地震国で津波があり、
  狭くて逃げ場がないというような、
  どう考えても、子供が考えても、誰がこんなものを推進して来たんだ、
  というような条件を簡単に言えてしまうような状態になっているのに、
  でも日本はここまで推進して来たばかりか、
  今この瞬間も、福島は止まっているが、他は全部動いている。
  浜岡も含め、全部フル稼働している。
  そこで、最後は、戦って来た先生だから是非訊きたいのだが、
  その本質にあったものは何だったのか、
  何故日本は、冷静に考えたら不合理な選択をし続けて来たのか、
  という事は、小出先生の中でどのように説明がなされているのか。

小出氏:60年代から70年代初めにかけて、
  世界中が原子力に夢を持った、と先ほど私は言った。
  それは、だぶんそうだったと思う。

  だが、例えば、米国で言うと、その夢から覚めたのは74年。
  それまで、物凄い勢いで原発を作り、運転させる、
  そして、建設する、計画する、というのはウナギ登りで上がって来たが、
  74年をピークにして、それ以降どんどんキャンセルという事になった。
  計画中のものはもちろんキャンセルされ、
  建設中のものすらキャンセルされる、という時代に74年にもう入っている。
  79年に米国でスリーマイル島での事故が起きる訳で、
  それからまだどんどん減って行くという事で、
  もう米国では30年にもわたって1機も新規立地もない、
  そういう状態になっている。
  米国では、原子力産業が崩壊してしまっている。

  ヨーロッパも同様。
  ヨーロッパが原子力に見切りをつけたのは、77年か78年。
  ウナギ登りに上がって来た運転中・建設中・計画中(の原発)が、
  次々とキャンセルされるという時代に入った。

  日本だけは、そうならなかった。

神保氏:アメリカ、ヨーロッパでは、今みたいな事が解ったから、
  という事ですね。
  合理的ではないと。

小出氏:そうです。
  メリットとして考えたものは、もうない、
  デメリットはとてつもなく大きいという事に気が付いて、
  撤退を始めているという訳である。
  日本だけはそうならなかったという理由は、
  たぶん日本という国の長い歴史にあり、
  お上意識というか、お上がこうだと決めてしまえば、
  それに殆どの人が付き従って行くという歴史の中で、
  日本の国家というものが、どうしても原子力をやると言い続けた、
  というのが一番の理由だと、私は思う。
  その他に、電力会社の儲けの話であるとか、
  三菱・日立・東芝という巨大原子力産業の儲けであるとか、
  そういう事はあったが、
  何よりも国家としての思惑という事だと思う。

神保氏:国家がとにかく強い意志で推進して、
  他はそれに付いて行ったと。
  その国家の意思という所の背後にあるものを
  是非先生に何が見えるか知りたい。

小出氏:去年の秋だったと思うが、
  NHKが『核を求めた日本』という番組を流した。
  そこで描かれた事は、日本というこの国は平和利用だと言いながら、
  原子力発電を続ける事で、
  核兵器を作る能力を手に入れたい、と。

神保氏:核オプションですね。

小出氏:はい。
  初めから、そうであった、という事で、
  日本は先の戦争で負け、敗戦国として2等国になった訳であり、
  いつもまでも2等国でいたくない、と言って、
  同じ敗戦国であるドイツに対して、核兵器を作らないか、
  と話を持ちかけた(事を暴露した)、そういう番組だった。

  政治あるいは外交の中枢にいる人達が、
  そう考えるのはムリもない事だと、私は思う。
  国連常任理事国というものが今はある。
  米国、ロシア、イギリス、フランス、中国。
  その5カ国が何故常任理事国であるかと言えば、
  先の戦争で勝ったからという事があるけれども、
  もうひとつは、核兵器保有国だという事である。
  核兵器を持っているという事が、現在の世界を支配するための一番基本的な条件だ、
  という事がある訳で、日本という国は2等国でいたくない、
  何としても1等国になるためには、いつでも核が持てるという条件を懐に入れたい、
  という事が必ずあったと思う。

  去年の秋にNHKがそれ(番組)を流した訳だが、
  もともとずっと政府の外交文書にそれがきちっと書かれていた。
  核兵器の材料となるプルトニウムを手に入れる、
  そして、いつでもミサイルに転用出来るロケット技術も
  懐に入れておく事が必要だという事は、
  政府の文書のあちこちに書いてある。

神保氏:宇宙開発をやって、原発をやるという事。

小出氏:そうです。
  それを日本という国は、国家として進めて来たという事だと思う。

神保氏:そこは宮台さんはどう思うか。
  今NHKとかの企画で歴史的に見るとそういうものがあったという事が
  明らかになったが、例えば、今も毎年予算計上されているが、
  こういう話が国会でも何でも公然と語られる事は、実際にはない。
  一体誰がそんな事を思い、誰がやっているのか、という事になると、
  実は最初にそれがあったという事は、例えば正力松太郎さんなども含め、
  あったかもしれないけれども、
  今でも本当にそれで進んでいるのか、
  それは皆が思っている幻想であり、亡霊のような存在で、
  実は誰もそんな事は言っていないが、きっとあるに違いないと思い、
  皆があると思ったものはなくてもあるという事になって言っているのか。

宮台氏:最初は先ほど歴史的な経緯を話したように、
  簡単に言えば、核兵器の技術、兵器の技術としての原子力であった。
  それを、平和利用という事で原子力発電にするという中には、
  実は当時はまだ再処理、プルトニウムの抽出は現実的と思われた時代もあったので、
  やはり軍事の便益と表裏一体だったと思う。

  ただ日本の場合は、そもそも例えば、95年に「もんじゅ」が停止し、
  しかし政策的には全量再処理、
  そのためにはプルサーマルを回さないと全く意味がない、
  それにも関らず16年間停止している、
  そんなものは恐らく兵器転用のために維持するという話では説明が付かず、
  妥当性・合理性でコミュニケイションが回らず、
  それこそ、国策なるものがあると、まずそこに依存し、
  自分のメシなのかポジションなのかを気にするという事がある。

  国策のレベルで言うと、
  恐らくもはや、国策的なものが最終目標となり権益が張り付いていると言うより、
  実は国策的目標は風化してしまっており、
  政治家の間である種のかつての自明性みたいなものとしてあり、
  現に動いているものは権益の集団であり、
  何かの時には石原慎太郎さんみたいなマチズモ的な人に
  「原発が無くては日本が一人前になれるはずがない」と言わせる
  というふうに、どうも日本がなっているという気がする。

  元の方に、小出先生がおっしゃったように、
  妥当性・合理性について主張し、コミュニケイションする役割を負った人間が、
  「しかし私にも家族がいる」という話になってしまうという、
  その辺を分析するのは社会学者の重要な役目だと思うが、
  どうもそういう事が物凄くある気がする。

  そもそも政治の世界では、IAEA図式と、レジームと言うが、
  核を持つ戦勝国の人達が中心となってIAEAという枠組みを作り、
  その主要監視国は、ドイツと日本、
  ドイツはNATOの中に組み込まれ、
  今IAEAの存在目的は事実上日本の監視である。

神保氏:北朝鮮とか別にして。

宮台氏:北朝鮮は、所詮長く続かないので。
  そうすると、結局政治家達のもともと出発点として持っていた
  自明性もIAEA図式というのを考えると、全く非現実的で意味がない。
  それこそ、アメリカと一戦を構える覚悟があって、初めて可能な核武装である。
  そういう覚悟がある政治家は実際いないので、まあ少しいるが、
  殆どいないので、そうすると、政治の世界でも実は核武装がいざとなったら出来る、
  例えばプルトニウムのストックがあり、ロケット技術があったら、
  核ミサイルは半年以内、場合によっては3カ月あれば作れる、
  みたいな論文が論壇誌に載っていたりする。
  実はそれは幻想で、そんな事をしたら、日本はそれこそ、
  国際連盟を松岡大使が席を蹴って脱退したような事がないと、あり得ない。

神保氏:先生は約束の時間になるので、全部話せないと思うが、
  先生の本を読んだり、話を伺って感じた事のひとつは、
  やはり、今宮台さんが説明したように、
  核オプションといった亡霊みたいなものを如何に払拭するかがないと、
  今ここから一歩前に進む事が難しいのではないか(と思う)。
  亡霊なら亡霊である、
  あるいは本当に主張している人が現職の政治家でいるなら
  それを堂々と国会で、核は必要だ、と言ってくれれば議論になるが、
  誰も言っていないではないか。

  それともうひとつ、また改めて必要であればもう一回やりたいと思うが、
  先生の話の中で非常に本質だと思ったのは、
  同時にもうひとつ我々が考えなければならない事は、
  電気を無尽蔵に使って良いという前提でここまでやって来てしまったという所が、
  先生の本が読んで行くとスローライフ的になって行く所だが、
  ここをもう一回見直しなくして、今回の話というのは、
  この原発事故を受けて、さあ次にどうするのかという問題は決められないのか、
  と僕自身凄く思った。

  先生、お時間なので、最後に1点だけ、
  今日訴えたかったが、聞きそびれてしまった事があれば。

小出氏:私は、さっきも聞いて頂いたが、
  1970年に原子力はダメだと思い、何とか止めさせようと思った人間である。
  既に40年経った。
  いつかこんな事故が起きると、私は警告をして来た訳だが、
  とうとう起きてしまった。
  何とか起きないように、起きる前に原子力を止めたいと願い続けて来たが、
  私の願いは届かなかった。
  こんな事になってしまい、何とも言葉がない、
  私は今は言葉がありません。

  私は、こういう事故が現在進行中であるにも関わらず、
  さっき宮台さんがおっしゃったように、
  日本でまだ原子力発電所が実際に動いている。
  何故動いているかと言うと、夏になって停電したら嫌だから、と、
  電気は絶対必要だ、という人が、どうも日本人には多いという事らしい。
  その事に関しては、私はデータを付けて既に発言をしているが、
  今現在即刻原子力発電所を止めたとしても、
  日本の電力供給に何の支障もない。
  ですから、止めるのが良いと私は思うが、
  私は実はその事もどうでも良い。

  電気が足りようが足りなかろうが、原子力なんてものはやってはいけない、
  と私は思っている。
  そういうふうに日本人の人達が思えないという事に、
  私はかなりの絶望感を持って現実に向き合っている、
  そういう状態です。

神保氏:どうも先生、また実験の方に戻らないといけないという事なので。
  復興会議で名誉座長になっている梅原猛さんが最初に実は、
  原発の問題も復興の中で議論をしなくてはダメだ、と。
  どのように復興するか、という事に原発の問題というのも、文化の問題と言われた、
  というのだけれども、密接に関係している事だからと言ったが、
  結局その発言は殆ど報道されず、
  どうも復興会議を見ているとと原発は切り分けするというような感じで、
  仮設住宅はどうのとかそういう話に行ってしまっているという所を見ても、
  メディアもその事を(報道しないのは)問題だと思う。
  今先生がおっしゃった事と殆ど同じような話だった。
  原子力というものは、そもそも文化の問題として、
  我々は考えないといけない所に来ている、という話だった。

  それも含め、我々も今日は課題を頂いと思うので、
  先生、またちょっと願わくばそういう事がない方がいいが、
  原子炉の状況が、意味不明の新しい核種が出て来たり、
  なかなか情報が出ないが出てきたら、
  電話になるかもしれないが、また是非話を伺わせて下さい。
  次回があったら、電力のスローライフの話を。
  皆さんに是非小出先生の本を読む事をお勧めするが、
  根底にあるもう少し大きな思想、考え方を知った上で、
  先生の原子力に関する考えを聞くと、
  もう少しなるほどと感じるのではないかと思う。
  宮台さん、何かありますか。

宮台氏:先生の時間がもったいないので、
  いずれまた話をさせて頂きたいと思う。
  ありがとうございました。

神保氏:どうもありがとうございました。

小出氏:ありがとうございました。
ーーーーー


4月29日 小出裕章氏と福島みずほ氏の対談

2011年4月30日

社民党の福島みずほ氏と小出裕章氏が2011年4月29日に対談された模様が、動画で公開されていることを、コメント欄でお知らせいただきました。ありがとうございます。福島氏が熱くなってしゃべりすぎの印象もありますが、ご紹介します。

【福島みずほ連続対談 「脱原子力」・自然エネルギーの促進へ 11】
(2011年4月29日)
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章さん
「原子力発電を止めることに全力を尽くす時」

福島みずほ対談11 小出裕章さん

要約

福島)東電原発事故についてどう思うか?

小出)日本が原子力を選択してここまで来たが、そういう選択をするとこういう事故がいつか起きると私は思っていた。事故が起きる前に原子力を廃絶したいと思い続け、40年そう言い続けてきたが、国家の圧倒的な力の前に敗北してきた。いまの事態を見ると言葉にならないほど悔しい。原子力に携わってきた人間の一人として、こんなことを招いた責任は私もある。お詫びしたい。

福島)原発を推進してきた学者16人が謝罪した。それは真剣だったと思うが、謝罪するならば推進を止めてほしいと思う。今回の事故は人災であり政治災害。自分もずっと脱原発、反原発を続けてきたし、代替エネルギーも進めてきた。が、事故は起きた。無念。政策転換をすべき。がんばりたい。

小出)福島さんが、政治という魑魅魍魎が跋扈するとんでもない世界で反原発の立場を貫いていることはありがたい。産官学が一体になって原子力が推進される中で、どんな抵抗も力を持ち得ないという状況が続いた。推進派が絶対起きないとしていた事故がいま現在進行している。推進の旗を降ってきた16人が謝罪をしたのは結構だが、言葉だけではだめで、行動してもらいたい。原子力を止めるために力を出すべき。

福島)真剣な謝罪は評価するが、変えることが大切。福島だけでなく、浜岡原発を止めるといったことも必要だし、そういうことに尽力してほしい。また、事故評価がレベル7になったが、3月11日の時点で冷却が止まったということを政府は認識していたのに、当時はレベル4と言い、「ただちに影響はない」としており、すごいギャップがあった。今回の事故と事故への対応についてどう思うか?

小出)推進派が「想定不適当事故」としていたような事故が実際に起きた。まず「想定不適当」と言ってきたことを取り消してもらう必要がある。これからもそういう事故を原発では想定してもらわないといけない。対応については、3月11日の時点で大変な事故ということは認識していたはずだが、関係者には事故を小さく見せたいという力学があり、私も他の専門家も最初からレベル6から7だろうと思っていたが、過小な評価となっていたことが問題。

福島)ベントや海水の排出をする前に通知するなど、出来ることがされていなかった。いのちに対する重大性を伝え、情報を正確に伝える必要はあったのに、「ただちに影響ない」で終わってきたことは検証が必要。学者が推進してきたことも大きい。保安院はお墨付きを与えてきたが無力だった。浜岡の耐震設計については保安院でさえゴーサインを出していない。これから防潮壁をつくる、ではなく、できていないなら止めるべき。保安院も経産省も方向を変えるべき。安全委員会は全員辞任してもいいくらい。

小出)私は正直言えば歴代の原子力委員会と原子力安全委員会の委員を全員刑務所に入れたいくらい。

福島)いまは基準が1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに上げられるという大変な事態。交通事故も大変なことだが、これはまた違うレベルの話。

小出)日本では法律で1ミリシーベルトとされているが、緊急だと言って行政は20ミリシーベルトまで許容範囲だと変えた。普通の人に被曝を強要する基準を作ることはあってはならない。

福島)原子力安全委員会および文科省とは、20ミリシーベルトについて交渉しているが、平行線。作業員は100ミリから250ミリで2.5倍だが、一般の人は1から20で20倍。これは20ミリシーベルトにしなければ避難する事態になるから。いのちを守るためにどうしたらいいかという視点ではない。意味があって決まっている基準をいきなり20倍にすることに対しては、いのちを守る気があるのか!と思う。

小出)国には、作った法律に基づいて国民を守る責任がある。それが法であり、法の精神。なのに国は自分がしくじったために、法律で定められた基準を一気に20倍に緩めている。

福島)あれは正確には法律ではなくある種の基準値であるかもしれない。法律であれば国会で議論できるので逆にいいのだが。水道は乳児と大人は異なる基準になっているが、今回の20ミリは同じでいいと国は言う。

小出)こどもは普通の大人より放射線の感受性が5倍高い。こどもは20倍かける5倍で、100倍危険が大きくなったと同じ。

福島)放射線量は地表に近いほど高い。文科省は50センチで測定したから大丈夫というが、変。地表を削るというが、これも粉塵が上がって危険。考慮が必要。福島に行ったが、こどもだけを避難させると家族が分離する。一時的にサマーキャンプをして、ストレスが少ないかたちで被曝量を減らすなどの工夫をしたい。

小出)それは素敵な発想。こどもたちには原子力を選択した責任はない。それに感受性が高い。ただしこどもだけ疎開をすると家族が崩壊する。私は正直言ってどうしたらいいか分からない。避難したほうがいいかどうかも分からない。こどもがまともに育とうとするなら泥にまみれて外で遊んでほしいと思う。そのためには汚染地で生活するのはよくない。

福島)土地に残る選択をする大人がいるかもしれない。正確な情報を知らされた上での選択である必要があるが。それに対し、こどもは選択の余地がない。こどもを守るというのは大切な要素。こどもにとっては今回の被害は甘受すべきものではない。本当の被害者。政治が正確な情報を伝えること、被害をできるだけ少なくするために他県で生活することを望む人たちを応援することが必要。避難は人間の生活基盤を奪うものであり大変なことだが、それでもこどもは守れと言いたい。その意味で文科省が決めた20ミリシーベルトは許しがたい。安全だと言い張ってきた政治、保安院、経産省は責任を取って政策の転換をすべき。文科省はこどもに対し原発は安全だという洗脳教育をしてきたが、今回はさらに20ミリシーベルトという基準を作っており、こどもに対する配慮がない。本来は文科省はこどもを守るべきもののはず。

小出)文科省自体も原子力は安全だといって推進の旗をふってきた。今回反省して立ち上がるべきだ。が、政治にそういう期待ができるか?

福島)戦争のとき、敗戦時から文部省は豹変して平和教育、民主教育を始めた。その例は悪いが、そのくらい今回の事故で変わってもいい。それくらい私にはショックな事故。震災被害は復興を考えればいいが、原発事故は進行中。さらに福島より大きなものが起こるかもしれない。はっ!とショックを受けたドイツは原発を止めた。

小出)この事故が進行中なのにいま現在も日本では26基の原発が運転中。なぜならば電気がほしい、豊かな生活がいい、停電はいやだ、とほとんどの日本人が思っているから。

福島)でも世論調査では半分程度は原発NO。昔と比較すれば原発は危ないと思う人は増えており、希望は持てる。東電は無計画停電をしたが、実際は必要あったかどうか疑問。電気がナイナイ詐欺。電気がないと困るだろうという詐欺。

小出)汚いやり方だと思った。

福島)この夏は工夫すれば乗り越えられるという試算が出ている。であれば、3月の停電は必要なかったはず。電力会社の地域独占や発電送電一体は見直す必要がある。普通の人は利権がなく、いのちを重視すれば、変えられると思う。これから一緒にがんばりましょう。

小出)がんばりましょう。


全体書き起こし(転載)

小出裕章「原発停止に全力を」対談録

ーーーーー
福島
 こんにちは。今日は小出先生に来て頂きました。ユーストリームやいろんなところで発言されていて、私も昔から存じ上げている専門家です。
 小出さん、今回の東電原発事故について、どう思っていらっしゃいますか。

 小出
 私たちの日本の国は原子力を選択してここまで来たわけですね。私はそういう選択をするといつかこういう事故が起きると思っていました、そのために、起きる前に何とか原子力を廃絶したいと思い続けて今日まで来たわけです。何とか原子力はやめるべきだと、ほぼ40年言い続けて来ましたが、残念ながら、私の力などは、国家が進める力に比べれば圧倒的に小さくて、常に負け続けて、止めることができないままここに来てしまったわけです。
 たいへん、今の事態を見ると、言葉にならない口惜しさがあります。でも、原子力に携わってきた人間の一人ですので、こんなことを招いてしまった責任は私にもあると思いますので、皆さんにまずお詫びしたいと思います。 ほんとにすみませんでした。

 福島
 今まで原子力発電を推進して来た学者の方たち、16名ですか、謝罪文を出されて、私は謝罪文はきちっと読んで、真摯だと、真剣な気持ちはたしかに伝わってきました。でも、謝罪をするのであれば、原発の推進をやめてくれ、というのが私は一番言いたいことです。なぜなら、起きてほしくないことは起きないでほしいと思いながら、ほんとうに起きるということにみな考えずに来てしまったことが、今回の原発事故なわけで、人災であり、政治災害ですよね。
 私も小出さんと一緒で、ずっと脱原発・反原発をやってきて、なかなか経産省や電力会社の壁がとても厚くて、それを変えきれなかった。少しは自然エネルギー促進的なものはこの13年間の間には国会の中でも進んだとは思っているし、いろんな危険性を、もんじゅや震災の問題や、あるいは美浜、志賀、柏崎刈羽に行ったり、JCO事故の現場に行ったり、取り組んでは来ましたが、事故が起きたことはほんとうに無念ですよね。もう政策転換をすべきだと思っています。それをがんばりたいと思います。

 小出
 有難うございます。福島さんがこれまでこういう政治という、私から見ると途方もない世界で(福島:いや、原子力産業も途方もない世界ですよ)、魑魅魍魎が跋扈するような世界の中で、初志を貫徹して原発に反対してくれることはとてもありがたいと思いながら来ましたが、政治の世界もとても難しい。
 原子力の場を「原子力村」と私は呼んできて、最近は「原子力村」という人が多くなりましたが、産官学がとにかく一緒になって原子力を進めるという、どんな抵抗も力を持てないというような世界があって、今日まで来てしまったわけですね。彼らが絶対起きないと言い続けてきた事故が今現在、目の前で進行しているわけです。
 福島さんがおっしゃったように、16人の推進の旗を振ってきた学者達が謝罪の声明を出すということで、けっこうだと私は思います。ただし、今、福島さんがはっきりと言って下さったように、謝罪するということは言葉だけであってはいけない、謝罪をしたからにはその裏づけとなる行動をこれから取ってもらわなければいけないわけで、これまで絶対に事故は起きないと言い続けてきて、今回の事故が起きたことに彼らは謝罪をしたわけですから、これからも事故は起きるというふうに彼らは言っているわけで、まずは原子力を止めるというために彼らの力を出すべきだと私は思います。

 福島
 おっしゃるとおりで、あそこまで謝罪をしてくれたんだったら、常磐地震をきちっと見据えなかったのは良くなかったとかいう話では、もちろんそれはそうなんですが、真剣な気持ちは文面からはもらったんですが、口先だけではない、だとしたら、変えようよ、原発事故の終息をみな心から願っているんですね、でもそれと同時に浜岡原子力発電所を止めるとか、もう二度と原発事故はいらない、と、これほどまでに被害を与え、みながとても命を傷つけられながら生きなければならない社会は本当にごめんだ、と思うのだったら、危ない原子力発電所は順からでも止めていくということを、あの16人に期待したいですね。
 専門家なのでお聞きしたいのは、レベル4からレベル5になって7になりましたね。私はよく言うんですが、11日夜10時に、2時間50分後に燃料棒の溶融が起きるということを保安院は言っていて、ベントしなきゃ、と1時半ごろもう言っているんですね、政府の中で。非常用電源が失われた、冷却できないというのを、私が11日に聞いた時点で、ひえー、裁判で争っていたことが起きちゃった、というすさまじい危機感じゃないですか、どうするんだ、まともな冷却ができない、という緊張感と、レベル4、直ちに健康に影響ありません、というものすごいギャップをとても感じてきたんですが、今回の事故と、事故の対応について、小出さんの思っていらっしゃることを語っていただけますか、語りつくせないかもしれませんが。

 小出
 まず、事故は起きたわけですね。彼らにとっては「想定不適当事故」という烙印を押してきた事故だったわけですが、その事故が実際に起きてしまったわけですから、さきほどの16人の学者たちが反省すると言うのは当たり前なわけだし、それなら、想定不適当と言ってきたことをまず取り消してもらわなければいけない、これからも原子力発電所ではそういう事故が起きるということをまず認めてほしいと思います。
 その次の対応のことですが、今福島さんがおっしゃってくださったけれども、本当に大変なことになっているということはみなわかったと思います、11日の時点で。それなのに政府はとにかく事故を小さく見せたい、という力学が働くようで、そのときでもレベル4と言っていたんですね。1週間たって18日になってもまだレベル5と。ほんとうにいい加減にしてくれと、私は思いました。

 福島
 初期の頃に、放射線量は出ているわけですしね。

 小出
 そうです。15日、16日あたりは膨大に出て、東京のこの空気だってものすごく汚れていたという、そういうときがあってもなおかつ、レベル5だと言っていたんですね。もうあのときに私はレベル6かな、7かなと思っていたし、政府の中の専門家も十数日の段階でレベル7だとわかっていたと言っているわけで、少なくともそれを言わなければならなかったと思いますが、政府がレベル7だということを認めたのは4月に入ってからですよね、ほんとにこの国はだめだな、と私は思いました。

 福島
 茨城県知事が、ベントをする前に言ってくれれば農業をやっている人はビニールハウスのドアを閉めるなどのことができたのに、と。福島ではベントどころではなくてあまりに大変ではありましたが、せめてベントをする前や、海水に出す時にも、例えば大型タンカーでは入れないというなら小型は可能ではないか、とか、命をだいじにするならいろんなことが考えられたと思うのですが、それすらなかったですものね。
 東京の人たちもそれを浴びていたわけだから、命に対して、起きていることの重大性と、少なくともそれを正確に伝えるという必要があるのに、「直ちに健康に影響はありません」ということで終わってきたのは、これはしっかり検証しなくちゃいけない。ただ、今、小出さんがおっしゃった通り、学者達が推進してきたのは大きいと思うんです。難しいから、みな、学者が言えば、と。今でも学者はいろんなコメントを出している。でも、16人には、 あそこまで真剣だったら、変えてもらいたいですよね。
 二つ目、保安院はお墨付きを与えてきたわけですが、そのお墨付きが全く無力だったと。でも、浜岡はお墨付きすら出していない、耐震設計については保安院もゴーサインを出していないから止めろと言っているんですが。津波対策もできていない。これからボーリング調査して防潮壁を作るといっていますが、今できていないんだったら今地震があったらだめだからやめろなんですが。保安院もこれは謝るだけではなくて、仕事そのものの方向を変えるべきですよ。経産省も変えるべきだし、原子力安全委員会は全員辞めるくらい、私たちは原子力の安全を遂行できませんでした、と言って辞めるくらいのことは、人間としてあるべきだと私は思うんですけどね。

 小出
 そうですね。正直言ったら私は、歴代の原子力委員、歴代の原子力安全委員会の委員を全員、刑務所に入れたいと思うくらいです。

 福島
 まあ、だめだめ(笑)、それは無罪の推定もありますし、今は刑事罰よりも政策転換することと命を救うことですから。でも、そのくらいのお気持ちだと。

 小出
 はい、正直な気持ちを言えばそうです。

 福島
 私は業務上過失致死傷などいろんな裁判もやってきましたけれど、大変なことなんですよ。今すぐでなくとも、実際被曝をした人たちもたくさんいるわけですし、作業員の人たちも被曝をしたり、大変な問題なわけでしょう。平時でも作業員の人たちは被曝があるけれど、今起きていることは、1ミリシーベルトからみな20ミリシーベルトに上がってしまったというとんでもない事態なわけで、人の命を傷つけるということで言えば大変なことなんですね。だから、交通事故なども被害者にとっては大変なことで、一人の命が失われるってすさまじいことだけれど、そんなレベルの話とも違うんですよね。

 小出
 全然違います。日本人はもともとは1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはならないという法律があったわけですよね。でもこんな事故があったらとうてい守ることはできない、今は緊急事態だから、といっぺんに20ミリシーベルトまで許すというようなことを行政が言い出すわけですね、原子力安全委員会も含めて。いったいこの国はどういう国なんだろうと、自分達が進めてきたことが間違えてこうなってしまっているのに、一気にまた普通の人々に対して被曝を強要する基準を作るというようなことは、私はあってはならないと思います。

 福島
 この20ミリシーベルトは、原子力安全委員会、文部科学省にこの事務所に来てもらって交渉していて、実はたいへん平行線なんですね。これは20倍になっているからひどいんですが、作業員の人たちは100ミリシーベルトから250ミリシーベルト、2.5倍にした、でも一般の人を20倍にしたというのは、20ミリシーベルトにしないと、ほとんどの人が避難をしたり、離れなくてはならない事態が起きるから、結果からなんですね。子ども達も外で遊ばないようにしてくださいね、というだけの話であって、結局、自分たちが安全だと言ってすさまじい被害が起きた、命を守るためになかなか困難だけれど何をしたらいいか、と問題をたてないで、20ミリシーベルトに上げちゃったんですね。非常時に上げる、ってひどいと思うんですよ。
 基準とは、基準より下だったら浴びても言いという話ではもちろんないけれど、それ以上浴びさせたら絶対だめというものでしょう。そういう基準がバン!と20倍になるというのは、命を守る気があるのか、と思いますね。

 小出
 国が法律を作って、それを守ると言った国は、国民を守る責任があるはずなんです。それが法の精神だと思うんですが、国が勝手に自分がしくじったがために、それを緩めるというのは

 福島
 あれは法律というより、ある種の基準値だと思うんです。法律だと国会で議論できるので逆にいいんですが、ただ、20ミリシーベルトと、それから、水道水は乳児に対しては大人と違うベクレルだと言っていながら、今回は大人と子どもと一緒でいいんだと言っているんですよ、文部科学省は。それもひどいですね。大人と子どもは違うでしょう。

 小出
 そうです。子どもは大人と比べると、5倍、放射線の感受性が高いです。今までは、普通の大人も普通の子どもも、1年間で1ミリシーベルトと言ってきたわけですが、その基準が20倍に上げられた、そして、子どもは大人に対して5倍放射線の感受性が高いことを考慮すれば100倍危険を負わされるという、一気にそうなってしまったんですね。

 福島
 福島県のやった調査でも、1センチのところと1メートルのところでは全然放射線量が違う、全部地表に近いところの方が放射線量が高いんですね。でも、文科省に言うと、いや、50センチでやったから大丈夫だと言うのです。でも50センチで20ミリシーベルトというのも変ですね。あと、地表を今、けずっている、それは何とか子供たちに少しでも浴びさせないようにするためだけれど、逆に粉塵が上がったりすると、などいろんな考慮が必要ですね。私もほんとにどうしたらいいかと思って、福島県に行っても、みなさん、ほんとに子どもの命を心配している。
 だから、子ども達を守れ、と思うけれど、子ども達を避難させると家族が分離して困るでしょう。だから、サマーキャンプ、例えば、1年間のうち、2ヶ月でも、子供たちに外で遊ぶな、などと言うのでなくて、どこか受け入れるところでサマーキャンプをやるとか、とにかく浴びる量を少しでも減らす、それは基準値を上げることではなくて、大人たちがほんとにみなで知恵を絞って、どうしたら子ども達があまりストレスもなく、でも命がだいじというところでやれるか、私は、夏に二ヶ月、勉強もしながらサマーキャンプを楽しく、少なくとも放射線量におびえなくて過ごすことができるようにするとか、一生懸命NGOの人たちと話をしたり、何かやりたいと思っています。

 小出
 とても素敵な発想ですね。子供たちに、原子力を選択した責任は一切ないし、彼らは放射線の感受性が高いわけですから、何としても彼らを守らなければいけないと私は思います。ただ、子ども達を守ろうとして、子ども達だけ疎開させるとなると、福島さんもおっしゃったように家族が崩壊してしまうわけで、私は正直言うとどうしたらいいかわからないのです。
 こういう事故が起きてしまって、汚染がすでに生じてしまった時に、人々を避難させることが正しいのかどうかということも私にはよくわからない、子どもは被曝はさせたくないけれども、でも、子どもだけ家族と引き離して疎開をさせるということも正しいとは思えない、でも、子どもがまともに育とうとするなら、泥にまみれてそこらで走ってほしいと思うし、そうなれば汚染地ではやはりいられない。今、福島さんがおっしゃったように、夏の何ヶ月かでも、きれいな少しでも汚染のないところで子ども達が育つというのはいいことだと思います。

 福島
 あまりに被害が起きてしまって、海に意図的に、あるいは意図的でなくても汚染水が流れている。ほんとに心配しています。ある場所で自分が非常に高齢でこの村を愛しているし、ここで自分は自分の人生の最後を迎えたいと思われる方、それは気持ちはとてもよくわかるんです。大人は、危険性はある程度知らされた上で、選択というのはあるのかもしれない、とは私は思っているんですね。
 しかし、子ども達は選択はまだできないですね。子ども達にも本当のことを話す必要があるが、長い未来があることと、もうひとつ同じ場所にいても子どもの方が被爆をする可能性があるし、甲状腺のガンになりやすかったり、また胎児も含めて細胞分裂を繰り返しているわけだから、とにかく、子どもを守れ、というのは重要な要素なんですね。福島県に行っても思うし、避難されている人たちもいろんな場所でいろんな形で、他県に行っている人もたくさんありますが、この被害は、彼らが甘受すべきものではないんですよね。甘受すべきものではなくて、ほんとに被害者なんですよね。避難されたみなさん達に勇気と希望を与えるのが政治なわけで、やってきたのは政治なわけだから、政治が知恵を絞って、正確な情報を伝えるということと、できるだけ被害を少なくするために、他県で生活することを望む人たちにはそれを政府が応援すること、福島県の中でも、いろんなところでどうするかという。
 行きたくない、とか避難所の中でもいろんな声も聞きましたけれど、それはかなり丁寧にやらなければいけないし、避難した先で仕事はどうなる、学校はどうなる、病院はあるのか、という声も聞きますから、とても大変なんですね。人間の生活基盤を根こそぎ奪ってしまうわけだから。ただ、いろんな複雑なことがやまほどあるが、ものすごく単純に言えば、やはり、子どもを守れ、と言いたいですね。大人の責任でこういう社会になって、子どもには責任はないのです。文科省が20ミリシーベルトと言ったことは私は許せないと思っていて、この事務所にもありますが、小学校と中学校に原発は安全だという副読本があるんですよ。
 そしてそれを子供たちに配って、「原発五つの壁、大丈夫」とやってきたんです。私は発電所に行って中部電力のパンフレットをもらいましたけれど、原発は安全です、地震があったら自動停止します、と書いてある。でも、自動停止した後が、今回の福島事故でしょう。浜岡の場合は、地震がものすごい上下動で起きれば、制御棒が入らない可能性だってあって自動停止しないことがありうるわけです。
 何が言いたいかというと、安全だ安全だ安全だと言ってきた政治は責任を取れ、保安院も責任を取れ、経産省も責任を取れ、責任を取るという最大のことは政策の転換をしろ、と。このことを反省し、二度と原発事故が起きないように政策転換するというのが政治の責任だと思うんですよ。と同時に文科省は子ども達に、安全だ安全だ安全だと洗脳教育をして来たようなものじゃないですか。
 事故が起きて責任は取れないんですよ。そして今度は20ミリシーベルト。子どもに対する配慮がない、ということに私は怒っています。原子力安全委員会が20ミリシーベルトと言っても、文科省が、そんなのはだめだ、子ども達は基準はどうして、そしてそれに合わせて子ども達のケアを考えよう、とやるのが文科省だと思うんですけどね。

 小出
 文科省も、これまで原子力は安全だと旗を振ってきた、そういう役所ですよね。ちゃんと反省して、少なくとも子どもを守るために文科省は立ち上がるべきだと私は思うけれども、でも、政治の世界ってそういうことが期待できる世界なんですか?

 福島
 私はやはり期待したいですよ。第二次世界大戦で戦争に負けたとき、それまで学校の先生たちは、戦争が大事でお国のために、と子ども達を教育して、でも、GHQが来て民主主義になって憲法ができたら、今度はみな民主教育と言ったわけじゃないですか。それってひどいと思いますよ。しかし、私はそれくらい変わってほしいと思います。ちょっと違うかもしれないけれど、それくらい、原発事故って私にとってすさまじいショックなんですよ。

 小出
 私にとってもです。

 福島
 多くの人にとって、ママにとって、パパにとって、みんなにとってショックです。津波もショックだけれど、東日本大震災は災害だからどうやって復興するか復旧するかの話だけれど、原発事故は現在進行形なのと、他の原発もあっていつ事故があるかもしれない、福島の原発事故よりもかなり大きいものが起こるかもしれない、自然の警鐘乱打ではないかと思うくらいですね。
 だとしたら、みながこれで、はっ!と思わなくちゃいけない。はっ!と思ったドイツのメルケルさんは原発を止めたんですよ。だから、政治が、親が、みんなが、はっ!と思うんだったら、明確に原発推進を舵を切って止めることだと思いますね。

 小出
 こういう事故が目の前で進行していながら、日本で原子力発電所が26基今現在動いている。それはなぜかというと、電気がほしい、豊かな生活がいい、停電は嫌だという、多分ほとんどの日本人がそう思っている。

 福島
 ただ、世論調査でいうと半分くらいがノーなんで、よく脱原発の人と話すんですが、あれを見ると、もっと増えていいよねと思う反面、昔に比べれば、みなやっぱり原発は危ない、だめだ、と思い始めたから、希望を持ったらいいんですよね。
 でもやはり、洗脳というか、思い込み、あの計画停電も、資源エネルギー庁から資料をもらったけれど、この夏何とか乗り越えるという試算を東電はしているんですね。供給の契約でも大口にちゃんと言うと。あれをなんであの無計画停電の時にやらなかったのか、あれって電気がナイナイ詐欺じゃないか、電気がないと困るよ詐欺というか、電力会社の力を思い知ったか詐欺というか、そういう感じですよね。

 小出
 汚いやり方だと私は思いました。

 福島
 資エネ庁が出しているように、この夏も工夫すれば乗り越えられる、だったら、あのピークよりはるかに少なかった3月、4月の時点で、無計画停電やって、電車止める、病院が困る、人々が困る、高層ビルでエレベーターが上がらなくて困る、なんてことはなかったんですね。その意味では、電力会社の地域独占、発電と送配電が一緒、ということも変えないといけないと思いますね。

 小出
 そう思います。政治の仕事ですからぜひよろしく。

 福島
 多くの人がやっぱり社会を変えようよ、と思い始めた。ほとんどの人は利権がないわけだから、命がだいじと思い、原発は危ないと思った人たちが気づくことで、ほんとうに変えられると思っています。これから一緒に頑張りましょう。今日はほんとうに有難うございました。
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4月29日 小出裕章氏&広瀬隆氏 講演

2011年4月29日

4月29日、東京の明治大学で小出裕章氏の講演がありました。

動画

youtube版
2011.4.29 終焉に向かう原子力 小出裕章氏講演

vimeo版
2011.4.29 終焉に向かう原子力 小出裕章氏講演

概要

「終焉に向かう原子力」第11回
チェルノブイリ原発事故25周年
東海地震の前に浜岡原発を停止させよう
福島原発震災をくりかえすな

■浜岡原発現地報告 (13:00~)
 ・伊藤実氏  (浜岡原発を考える会・代表)
 ・生方卓氏  (明治大学教員)
 ・内藤新吾氏 (日本福音ルーテル掛川・菊川教会牧師)

■講演 (14:20~)
 ・小出裕章氏 (京都大学原子炉実験所)
   「悲惨を極める原子力発電所事故」

 ・広瀬隆氏 (作家、ジャーナリスト)
  「原子炉時限爆弾??年々迫る東海大地震と、浜岡原発の危機」

■日時: 2011年4月29日(金) 13:00~17:00(開場12:30)

■場所【変更しました】:
      明治大学アカデミーコモン内 アカデミーホール

■主催: 「終焉に向かう原子力」実行委員会
     浜岡アクション (東海地震の前に浜岡原発を停止させよう首都圏アクション)
     現代史研究会

講演用資料
講演のために小出先生が用意された資料が公開されていることをコメント欄にて教えていただきました。こちらです。

悲惨を極める原子力発電所事故―終焉に向かう原子力(第11 回)講演(ちきゅう座)

講演レポート
講演の内容および様子について、以下のサイトにて報告されています。

(1) 1200名以上が聴き入った、小出裕章氏らの講演 (三上英次)
(2) 【卓上四季】原発と市民(5月8日) (北海道新聞)

参加された方々の声
足を運ばれた方々から以下のようにtwitterで報告されていますので、転載させていただきます。

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hatake9999 はたけ
明大の原発講演会なう。講師は、小出裕章さんと広瀬隆さん。東海地震の前に浜岡原発を停止させよう 福島原発震災を繰り返すな!です。すごい!老若男女、1000人以上の人が並んでます。さらに増えて立ち見も出る可能性。

kana_45 そやかなこ
@iwakamiyasumi 明大に広瀬氏・小出氏の講演会に来てるんですが、人がいっぱいで入れないです。沢山の方が関心を持たれてるんですね。 http://yfrog.com/gy832pkj

kayophoto 澤口佳代
小出裕章先生と広瀬隆さんが参加、講演している終焉に向かう原子力、1000任の会場に変更になりましたが、来場者の半数!?が入場出来なかったそうです。後日映像配信予定です。 #TwitPict http://twitpic.com/4qu2mq

poponpgunyan ぽぽんぷぐにゃん
今日の明大での小出裕章氏と広瀬隆氏の講演会、人が多すぎて入れない人がかなりいるようですね。で、小出氏が入れない人たちのために会場前で話をされたとか。ええ人や・・・。

rnaka05 Rさん
明治大学。会場に入れない参加者に挨拶を、と小出裕章氏が出て来られる。「こんなにたくさんの人が集まってくださるのは、嬉しいと同時に悲しい事態。止められなかったことが悔やまれて、言葉にならない。原子力に長年関わってきた者として、心からお詫びしたい」と頭を下げられた。#genpatsu

mochi_lunch mochi_lunch
明大アカデミーコモン。小出さん、満員であぶれた人のために外まで挨拶に。40年間、原発に反対してきたけど、止められなくて申し訳ないと。小出さん、涙声。どこまでも誠実。主催者も聴衆も涙声だ。

PeacePhilosophy Satoko Norimatsu
小出裕章場外トーク:原子力安全と思っていた人多いだろうが機械だから壊れる。今の状況は言葉に尽くせない無念。原子力に関わってきたものとして何とお詫びをしていいかわからない(小出さんのせいじゃないよ!がんばってください!と声援と拍手)。

PeacePhilosophy Satoko Norimatsu
小出場外トーク:今現在も26基の原発が日本で動いている。こんなことが起こってなぜ止めないか。電気が欲しいから、豊かな生活がしたいからだという。絶望しそうになるが、たくさんの皆さんが来てくれて嬉しい。これからも原発廃止のために頑張りたい(拍手喝采)。お茶の水・明治大学構内にて。

rosiyano rosiyano
小出裕章氏の講演が終了。千人以上ここに集まった人。社会は変わりつつある。手応えを感じる。拍手。

jupi611y YAMAGUCHI Chisato
明治大学。入場制限であぶれた数百人のために小出先生が外に出て来られ、「こんなにたくさんの人が集まってくださるのは、嬉しいと同時に悲しい事態。止められなかったことが悔やまれて、言葉にならない。40年間原子力に関わってきた者として、心からお詫びしたい」と涙声。主催者も聴衆も涙。
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場外挨拶の様子
また、会場外での小出氏の挨拶の模様を撮影した動画が公開されています。

小出裕章氏 講演直前 満席で会場に入れなかった聴衆に語りかける

4月29日午後.明治大学にて小出裕章氏


4月28日 年間被曝上限50mSvの撤廃 小出裕章

2011年4月29日

2011年4月28日(木)、MBS(毎日放送)ラジオたね蒔きジャーナルに、京都大学原子炉実験所助教小出裕章氏が出演されました。

2011年4月28日【木】
会社が流されて・・・それでも
きょうは、宮古市で津波に会社が流された印刷屋さんの話です。被災企業が今どのように動き出しているのかをお伝えします。そして、復興のためには何が必要なのかを考えたいと思います。原発問題は京都大学の小出さんにお話しを伺います。

今回も小出先生がお話しされた部分を録音して公開してくださっている方がいます。

【福島原発】4/28/木★1.一刻も早く汚染水の処理を 2.汚染物の墓場 1/2

【福島原発】4/28/木★1.一刻も早く汚染水の処理を 2.汚染物の墓場 2/2

以下、要約されている方がいらっしゃいますので、転載させていただきます。(全文書き起こし転載はその下にあります)

京大小出「汚染水、1号機だだ漏れ?プルトニウム、アメリウム、キュリウム、なんじゃそれは?」

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そして、小出先生のお話、1号機の水棺、原子炉の水の量を2.5倍にせずに温度、圧力が下がったのですが、どこかで漏れている、放射性物質が漏れる、水を入れたら圧力が上がるのに下がるとは漏れていて、破損が広がるのです。圧力容器の圧力(※温度のことか)が下がるのはいいこと(炉心を冷やさないといけないので、1号機は温度がなかなか下がらなかったのに、やっと下がった)なのです、これは本来の目的になっています。

 高濃度汚染水の広がりを防ぐため、地下に壁(セメントを入れて地下40mまでの壁を作る、酒の枡のようなものを作る)のですが、それで防げるかは、小出先生、専門知識がなく分からないが、難しいだろうとのことでした。

 福島第1の地下に大きなプールを作り水をためる(地下46m)、ばかげた説明で、そんなもので水が止まるわけはない、地震で地面も割れている、無理のある構想だということで、巨大タンカーで対処すべき、40mの壁にどんな工事になるのか、ということで、1秒でも早く実現できる策がいるので、これは実現性の低いものなのです。追い込まれた中ではダメなのです。

 福島県郡山市の土の除去、取っても最終処分地がなく行き詰っている、福島原発周囲は無人地帯にしないといけない、そこに汚染物の「墓場」にしないといけないとのことでした。そうしないとダメ、産廃処分ではダメなのです。放射能管理の出来るところが要るのです。放射能汚染された瓦礫の処理場所は、こういう方法しかない(放射能は人間の手で消せないので、あきらめて管理できるところに集めるしかないのです)のです。地下のプールの話、汚染水の処理に本当に困っている、原子炉を冷やすために汚染水は増える、それを何とかしないといけない、1秒を争っていい方策を決めないといけないのです。

 水漏れ、どこに行っているかは、タービン建屋、トレンチ、地下、敷地にしみ込んでいるのです。トレンチに滝のように流れ、水の漏れない構造ではない+地震で割れてアウト、なのです。

 これから台風のシーズンで、アメリカの原発が嵐で停止、リスナーより、事故原発に台風が直撃したらどうなるかとの質問に、小出先生、分からない、アメリカでは送電線に支障が出た、非常用電源も信用できないのです。これから、さらに深刻な方向になりうるのです+余震が何ヶ月も続くので、深刻なトラブルになるのです。

 作業員被曝、年間50ミリではなく、5年間100ミリに関しては、1年間に100ミリ浴びてもいいことになる、50ミリの規定があると他の原発に支障が出るので、被曝規定緩和は、作業員が追い詰められている、そんなことを国が一方的に決めていいのか、という見解が小出先生よりありました。年間50ミリも意味がなくなり、こんなものを変えてはいけないのです。

 キュリュウムが原発敷地内から出ましたが、プルトニウムがあり、ウランが核分裂させて、ウランに中性子を加えてプルトニウムになり、さらにアメリシウム、そしてキュリュウムになるのです。ウランがプルトニウムになり、そうなると、アメリシウム、キュリュウムも当たり前に出るのです。キュリュウムはとてつもなく悪影響(プルトニウムより毒性大、ただ量が少ないので危険度は大きくならないものの)であり、ウランの燃料ペレットが融けているわけで、キュリュウムがさらに大きく出る危険性もあるのです。冷却失敗、もっと損傷したらもっとたくさんキュリュウムが出て、大変なことになります。事態収拾は困難で、作業環境を改善しないといけない、汚染水処理で、夢のような話を聞かされて驚いたとのことでした。
ーーーーー

いつものように、ブログSleepingCatsに小出先生部分の文字おこしが掲載されていますので、転載させていただきます。

4月28日MBSラジオ小出裕章氏「事故対策案、被曝線量規定、キュリウム検出等について」

ーーーーー
メインキャスター(以下「MC」):千葉猛
コメンテーター:藤田悟 毎日新聞論説委員

※完全な文字起こしではありません。
 また、誤字脱字等、ご了承下さい。
 ( )は補足。

MC:それでは、小出さん、どうぞよろしくお願い申し上げます。

小出氏:こちらこそ、よろしくお願いします。

MC:今日は毎日新聞論説委員の藤田悟さんと一緒にお伺いして参ります。
  お願いします。

藤田氏:よろしくお願いします。

小出氏:はい、よろしくお願いします。

MC:まず1号機の格納容器の水棺、
  水で満たすための作業に関してなのですけれども、
  今原子炉に入れている水の量を2.5倍にする予定だったのが、
  そこまで行きつかないうちに、温度や圧力が下がってしまっている、
  と伝えられておりまして、
  東京電力は格納容器の圧力が下がっている事を
  大変気にしている、という事なのですが、
  これはどういう危険があるのでしょうか。

小出氏:たぶんどこかで漏れているという事ですね。

MC:中の放射性物質が漏れている、と。

小出氏:格納容器というのは、一定の空間ですけれども、
  そこにどんどん水を入れれば、
  本来は圧力が上がらなければいけないのですが、
  それが逆に下がっているという事は、漏れているという事です。

MC:それが続いてしまっているという事が懸念されているという事ですね。

小出氏:そうですね。
  まあ、私は初めからそれを懸念して、
  水を入れるような事をすれば、破損が拡がると思ったのですが、
  たぶんそうなっていると思います。

MC:原子炉圧力容器の温度も下がり続けているという事が
  伝わって来ているのですが、
  これが下がり続けて行くと、どういう事になりますか。

小出氏:それは、良い事です。
  要するに、原子炉圧力容器の中に炉心という本体がある訳ですが、
  そこをとくかく冷やさなければいけないという事が
  一番大切な事であって、
  そのために水を入れて来た訳ですが、
  1号機だけは、なかなか圧力容器の温度が下がらなかったのです。
  それが、水の量を増やしたという事で下がったという事で、
  当たり前の事ですけれども、
  それは良かったと思います。

MC:なるほど。
  こちらはではそういう形で本来の目的の方向に繋がっている
  と思っても大丈夫なのですね。

小出氏:そうです。

MC:解りました。
  それから、もうひとつなのですけれども、
  高い濃度の汚染水が地下水に混じって海などに流れ出すのを防ぐために、
  政府と東京電力の事故対策統合本部が、
  地下に壁を作る事を考えている、と伝えられています。
  地下の地盤の割れ目にセメントを流し込んで埋めて、
  その周りに地下40mまでの大きなコンクリートの壁を埋め込む、
  お酒を呑む時の四角い枡の底を抜いたような形のものを、
  コンクリートで作って、原発の周りに埋め込むような感じだという事なのですが、
  これで高い濃度の汚染水の流出というのを防げるのでしょうか。

小出氏:すみません、私は、そういう事の専門家でないので、
  解りません。

MC:何とも言えないという感じですね。

小出氏:何か難しそうだな、とは思いますけれども、
  専門知識を持った方々が、一応計画されているのだと思っていますので、
  上手く行って欲しいとは思います。
  素人的には、なかなか難しいだろうな、と思いますが、
  やってみるという事なら、やってみて欲しいです。

MC:こういう計画が持ち上がっているかと思えば、
  もうひとつ、福島第一原発の敷地内の地下を掘って、
  大きなプールを作って、高い放射性濃度の汚染した水を溜める構想が
  あるというふうに伝えられているのです。
  菅総理は、敷地内の地下46mに岩盤、岩の層があって、
  下には水が沁み込まない事が調査で解った、
  と説明したという事なのですが・・・

小出氏(失笑しつつ)随分バカげた説明ですね。
  そんな所で水が止まる訳がない、と私は思います。

MC:やはり堅い岩の層があるからと言って、
  水が沁み込まないという事は。

小出氏:それは、今回の地震だって、岩盤がバリバリ割れて、
  メチャメチャになって起きている訳ですよね、
  割れたらそれでお終いになってしまうじゃないですか。

MC:この構想というのは、かなりムリがあるという感じですね。

小出氏:(また失笑しつつ)と、思いますし、
  私は一番初めから、巨大タンカーを連れて来るのが、
  一番早いというふうに提案していたのですが、
  そんな巨大なプールを作るとか、40mもの壁を作るとか、
  そんなための工事に、一体どれだけの時間がかかるのだろうな、
  と思います。
  タンカーを連れてくれば済む事ですし、
  いくつか乗り越えなければいけない壁はありますが、
  今この緊急事態ですから、何とか一秒でも早く、
  実現出来るという方策を選ばなければいけないと思います。

MC:そう考えると、もう何とも実現性の低い話だという事ですね。

小出氏:そうですね。
  もちろん、あらゆる可能性をやってみるというのは良いですけれども、
  今この追い込まれている状態の中で言うなら、
  本当にそんな事でいいのかな、と思います。

MC:それから、福島県郡山市の放射線量の数値が高かった小学校などでは、
  校庭の土を削り取って捨てるという作業が、始まっているのですけれども、
  掘り起こしたけれど、最終処分地に運べず、
  当面校庭に置きっ放しという事になってしまいました。
  最終処分地の近くにお住まいの方の反対が理由だという事なのですが、
  これ、完全に処分するためには、どうしたらいいのでしょうか。

小出氏:確かに前回も、私、お答えしたと思うのですが、
  大変言い難いのですが、福島原発の周辺の地域は、
  無人地帯にしなければならなくなる、と私は思います。
  放射能の汚染の特別に強い所ですね。
  そういう所を、やはり覚悟を決めて、そこの汚染物を集めて、
  そこは汚染物の墓場にするという事を、
  最終的にはしなければいけないと思います。

MC:やはりそうしなければ、完全に危険を防ぐ事は出来ない、
  という事ですね。

小出氏:普通の産業廃棄物処分場のような所に運んでしまいますと、
  その処分場が閉鎖された時には、
  もとの普通の宅地になるか畑になるか知りませんが、
  いつか忘れ去られてそうなってしまいますので、
  もっとちゃんと放射能としての管理が出来る場所に
  移さなければいけないと思います。

MC:この土に限らず、今後原発の敷地の中では、
  高いレベルの放射能汚染された瓦礫が出て来る事が予想されるのですけれども、
  こういったものも最終的に処理する場所としては、
  今小出先生がおっしゃったような形を考えるしかないという事ですかね。

小出氏:ありません。
  放射能はもう人間の手で消す事は出来ませんので、
  どこかに隔離するという事しかできません。
  そのためには、どこか諦めて、一カ所に管理できるような形で集めるというのが、
  出来る最善の事だと思います。

MC:藤田さん、こういう事なのですけれども。

藤田氏:そうですね、こういう地下にプールを作るという、
  かなりムリと思えるような事まで検討しないといけないという事は、
  それだけ汚染水の処理に本当に困っているという事を意味する
  と考えて良い訳ですよね。

小出氏:おっしゃる通りです。
  今でも行き場所がない訳ですし、
  原子炉を冷やすためには、これからも水を入れなければいけませんので、
  汚染水がどんどん増えてきます。
  それをとにかく何とかしなければいけない、
  という切羽詰まった所に追い込まれている訳で、
  本当に一秒でも争いながら、
  良い方策というのを早く決めなければいけないと思います。

藤田氏:冒頭の所で、小出さん、おっしゃいましたが、
  注入している水が漏れいている可能性があると。
  その漏れた水というのは、どこに行っているというふうに・・・

小出氏:タービン建屋であるとか、トレンチであるとか、ピットであるとか、
  あるいは、私はもう地下に浸み込んでいると思っていますけれども、
  敷地中に溢れているのだと思います。

藤田氏:地下に浸み込んでいる可能性も、かなり高い、と。

小出氏:もちろんです。
  一時期ピットという所の、空気中に見える所が割れていて、
  そこから滝のように流れ落ちていた事を見つけて、
  そこを塞いだというのですが、
  ピットもトレンチも縦坑も全てコンクリート構造物ですから、
  もともと水が漏れないような構造になっていません。
  おまけに地震でもうやられている訳ですから、
  たぶんそこら中で割れて漏れていると思います。
  ただ目に見えないとうだけの事です。

MC:そんな状況の中、気になる事としまして、
  これから台風のシーズンが来るのですが、
  今日、アメリカの原子力発電所が暴風雨の影響で自動停止したというニュースが
  入って来ていまして、
  送電線が嵐で傷付いてしまったための事なのですが、
  こちらのスタジオにこんなメールも来ていまして、
  ラジオネーム(省略)の方なのですけれども、
  「福島第一原発、今後もし台風が直撃したら、
  一体どういう事態が待っているのでしょうか。
  台風シーズンまでに何らかの対策は出来るのでしょうか」
  という質問が来ているのですが。

小出氏:解りません。
  今教えて下さった米国のやつの、台風で送電線に障害が出たという事で、
  もちろんそういう事はあり得るだろうと思います。
  (台風ではなく暴風雨ですね)
  その時には、非常用電源が使える、
  と東京電力の方は言うかもしれませんけれども、
  そう言いながら、今回の事態になった訳ですから、
  何が起きるかよく解らないというふうに思っていた方がいいと思います。

MC:これから、更に事故が深刻な方向になってしまうような事が、
  台風が来た場合には起き得る状況では、ある訳ですよね。

小出氏:たぶん、そうだと思いますし、
  まだ余震がこれから何カ月も続くと思いますし、
  そういうもので、何か深刻なトラブルが起きる可能性というのは、
  やはりあると思います。

MC:それから、もうひとつ今日伝えられているニュースとしまして、
  厚生労働省が、原発での作業員の方の被曝の線量について、
  年間50mSvとする上限規定を無くし、
  5年間に100mSvの上限だけを残す事が検討されているという事なのですが、
  小出先生はどう思われますか。

小出氏:それは、5年間に100にするのですね。

MC:はい。

小出氏:そうすると1年間に100まで浴びても良いという、
  そういう事にしてしまうという事ですか。

MC:そうですね。
  50mSvという上限規定を無くさないと、
  他の原発から派遣されている作業員の方が、
  許された線量を使い果たして、
  その後他の原発の点検などの点検が出来なくなる
  という心配があるからという事なのですが。

小出氏:要するに、被曝の規定を緩和するという事になる訳ですね。
  それはまあ、一歩一歩作業員の方達が
  追い詰められているという事な訳ですね。
  そんな事を国の方が、一方的に決めて良いのかな、と私は思います。

藤田氏:こういう上限規定を、単に無くしてしまうと、
  年間50mSvという規定は一体何だったのか、
  という話になりますよね。

小出氏:なりますよね。
  勝手にそんな事を行政の方で変えてしまって良いのかな、
  というふうに今私は思いました。

MC:それから、ちょっと、もうひとつ気になるニュースとしましては、
  昨日東京電力が原発の敷地内から、
  キュリウムという物質が新たに検出されたと発表しました。
  このキュリウムというのは、今まで私達耳にした事がない言葉なのですが、
  これはどういう物質なのでしょうか。

小出氏:プルトニウムというのは、皆さん時々お聞きになったと思いますが、
  もともと原子炉の燃料がウランなのですが、
  ウランを核分裂させてエネルギーを取り出す装置が原子炉です。
  でも、そこにウランがある限り、ウランは核分裂をすると同時に、
  中性子を食べてしまうという性質も一方で持っていまして、
  中性子を食べると、初めはプルトニウムになります。
  それから、そのプルトニウムがまた中性子を食べると、
  アメリシウムという元素になりまして、
  アメリシウムがまた中性子を食べると、キュウリウムというふうに、
  次々と新しい原子核が出来て行く性質を持っています。

  既に福島の原発の敷地の中では、プルトニウムが検出されています。
  つまり、原子炉の中にあったウランがプルトニウムに変わったものが
  既にもう放出されているという事が解っていた訳です。
  ですから、もうそうなってしまえば、アメリシウム、キュリウムも
  当然、出て来ているという事になる訳で、
  今回の検出は、当たり前の事が当たり前に解ったという事です。

MC:気になるのが、このキュリウムという物質は、
  かなり私達の体に悪影響を与える毒性・・・ 

小出氏:とてつもなく悪影響があります。
  プルトニウムよりもむしろ悪い位悪いです。

MC:そうなのですか。

小出氏:量が少ないので、通常は問題にされないのですけれども、
  毒性で言えば、プルトニウムよりももっと強いです。

MC:では今回、そういったものが検出されたという事が、
  伝えれているという事ですね。

小出氏:はい。
  要するに、量が少ないので危険度自身を取りたてて
  問題にすべきではないと思いますが、
  プルトニウムとかキュリウムというものが出て来るという事は、
  ウランの燃料ペレットという瀬戸物が、
  もう溶けてしまっているという事を示す証拠になります。

MC:でも、その状況が改善されなければ、
  今先生が非常に危険だとおっしゃった、
  このキュリウムが、今の量よりも更に多く出て来るという
  可能性は続く訳ですね。

小出氏:もちろん、そうですね。
  この事故が続いている限りは、今の状態ですと、
  ちょろちょろ漏れが続いているという状態な訳ですし、
  冷却に失敗してもっと大きな損傷が生じるようになれば、
  大量に出て来る可能性もあると思います。

MC:そうなって来ると、益々この事態を収拾するのは、
  難しくなって来ますね。

小出氏:そうです。
  かなり作業環境が悪いので、
  何とか作業環境を改善しなければいけませんし、
  そのためには、もう汚染水をとにかく一刻も早く出せるという、
  その方策を本当に真剣に考えなければいけないのですけれども、
  何か夢のような話を、先ほど聞かされて、
  私はちょっと驚きました。
  (コンクリートの壁やプールの件)

MC:(唸っている・・・)
  はい、解りました。
  小出さん、ありがとうございました。
  (声が上ずっているMC)

小出氏:はい。
ーーーーー


4月17日 webDICE 有太マン氏によるインタビュー 小出裕章

2011年4月28日

ライターの有太マン氏が2011年4月17日に小出裕章氏にインタビューされた内容が、以下のサイトで公開されています。

「どうしても放射性廃棄物を捨てるなら、東京に」
原子力の識者がなぜ反原発を掲げるのか、京都大学原子炉実験所・小出裕章助教に聞く

webDICE (2011-04-27 22:20)

写真等を含む記事ですので、直接サイトにてご覧ください。

これまでの各種記事では目にしたことがないことを含めて様々な内容を深く扱っているインタビューであり、小出先生の思想の一端が親切な形で表現されているように感じました。


4月27日 情報公開の約束は果たされていない 小出裕章

2011年4月28日

(※ 最初「内部被曝の危険」というタイトルを付けましたが、変更しました)

2011年4月27日(水)、MBS(毎日放送)ラジオのたね蒔きジャーナルに小出裕章氏が出演されました。

2011年4月27日【水】
放送作家が見た被災地
 今夜は、東北の被災地を訪れてきた放送作家の石井彰さんを東京のスタジオにお迎えし、話を伺います。石井さんからは、“放送人”として感じたこと、特にいま現地に何が必要なのか話してもらうとともに、現地のボランティアの状況や、地元ラジオがどのように情報を発信できたかなど、話を聞きます。
 また、今夜も京大原子炉実験所の小出さんに電話出演していただき、汚染された学校の表土除去の問題や、女性社員の被爆などについて話を伺います。

今回も、小出先生の出演部分を公開してくださっている方がいます。

【福島原発】4/27/水★1.内部被爆について2.1号機も高濃度汚染 1/2

【福島原発】4/27/水★1.内部被爆について2.1号機も高濃度汚染 2/2

以下、要約です。(全文書き起こし転載はその下にあります)

・(福島原発において東電の50代女性社員が、女性に定められた法定限度の3倍を超える被曝をしたことについて、マスク等着脱時にほこりをすったことによると言われているが、それは想像できるか?)できない。とてつもない被曝環境に女性がいたこと自体も意外だが、マスクを外すときだけで大量の被曝をすることは考えづらい。性能のいいマスクほど息苦しくなるために外してしまうということは以前から確かに言われていたが、今回は分からない。

・(今回の女性の被曝は、今後50年間で13.6ミリシーベルトに相当する内部被曝だとされているが、どういう意味か?)身体の内部に入った放射性物質から放射線が出ることを内部被曝と言う。とりこんだ放射性物質の固有の性質によって放射線が減っていく。また尿などによっても身体が排泄していく。そうしたことを放射性物質ごとに計算し、50年間でどのような被曝があるかということを導いたもの。

・(50年間で13.6ミリシーベルトというのはどういう数字か?)1年間で1ミリシーベルトの被曝というのがふつうの人の基準。今回の数字は50年間の合計であるため、この女性が今後こうした作業に携わらなければ、一般人の限度に収まると思う。

・(ほこりであるならば、咳などで身体外に排出されないのか?)ほこりといっても目に見えるようなものではない微粒子であるため、認識しないまま取り込んでしまうくらいのもの。薬剤で取り出そうという研究はあるし、それなりの効果のある薬剤もあるが、あまり大きな効果は期待できない。

・(免震重要棟に滞在した時にも被曝したとされているが、そこは休憩所のはずだが?)免震重要棟も福島原発の敷地内にあり、その建物だけクリーンだということはない。人が出入りするだけでも放射性物質が中に入ってしまう。

・(郡山で校庭の土の表面を削る作業が行われたが、とられた土は市内の埋立処分場に運ばれるということだが大丈夫か?)なにより子どもを守らなければならないため、土を削るのはいいことだと思う。ただし削った土の中には放射能が残っており、それをどのように管理するかという問題はある。処分場周辺に対する影響もある。放射能で汚染されたものとして管理する環境に置く必要がある。ただしそうした場所(放射能の墓場)を選定することに困難がある。というのは、どんな場所でも、ある人たちにとってはふるさとであるから。とても気の重い決定になる。

・(土の表面をいったん除去しても、それ以降また汚染されれば繰り返すことになるのでは?)そうなる。が、福島の現在の汚染の大部分は3月15日から16日の間に降り積もったもの。これ以降大規模な汚染が生じなければ、いちど削り取れば耐えられると思う。だが、また大きな汚染が起こることを危惧している。

・(処分するものを管理する区域の設定の必要がありそうだ)やらなければいけないし、ある時点で決断が必要。

・(1号機の建屋で1120ミリシーベルトという放射線量が測定されたが?)すごい線量。今回の事故を収束させるためには私自身現場の作業に携わってもいいと考えていたし、今でも思っているが、これほどの数字を見ると躊躇してしまう。普通の人は入れない。

・(この高い線量の原因は?)今日55%に修正されたが、いずれにしても炉心の大きな部分が損傷している。外に出ているトレンチの水ですらすごい汚染になっているわけで、建屋の中の汚染がひどいのは当然。格納容器の中は立ち入れないレベルだし、次に汚染度の高いのは建屋。こういう事故なのだから汚染は避けられない。

・(水を増やすことで損傷が大きくなると先生は危惧しているが?)うまくいってくれればいいが、損傷拡大については今でも気にしている。

・(4号機のプールは、先生が言った通り、だいぶ傷んでいるようで、耐震補強をすると言っているが)今後余震が予想され必要なことであるため、やってほしいとは思う。プールが崩壊したらお手上げ。ただし被曝環境がひどく、気が重いし、不安。

・(新たなプールを作って壊れたプールから燃料を移動させるのは可能か?)ひとつの選択肢ではある。ただし今ある使用済燃料はかなり損傷していて、被覆管がぼろぼろになり、ペレットがこぼれており、集めるのは難しい。でも、いつかはやらなければならないこと。と言っても大変なこと。

・(細野補佐官がすべての情報を公開すると言ったが、実際どうか?)されていない。重要な情報で公開されていないものは沢山ある。たとえば再臨界が起こっているかどうかは、原子炉の中性子の量を見れば一目瞭然で分かるが、それは出されていない。中性子については正門付近の量が散発的に出されただけで、それ以外には発表されていない。

以下、ブログSleepingCatsにて、この放送の小出先生部分を書き起こされているので、転載させていただきます。

4月27日MBSラジオ小出裕章氏「東電社員内部被曝、1号建屋高濃度放射線検出等について」

ーーーーー
メインキャスター(以下「MC」):水野晶子
コメンテーター:近藤勝重・毎日新聞専門編集委員

※完全な文字起こしではありません。
 また、誤字脱字等、ご了承下さい。

MC:小出先生、こんばんは。

小出氏:こんばんは。

MC:どうぞよろしくお願いします。

小出氏:こちらこそお願いします。

MC:今日は近藤さんがいらっしゃいます。

近藤氏:どうぞよろしく。

小出氏:はい、こんばんは。

MC:まず今日は、福島第一原発で作業をしていた女性社員の
  被曝の問題から伺いたいと思います。
  50代の女性社員が被曝をした量が、
  女性に決められている限度の3倍を超える、という話なのですが、
  これは、マスクを外す際などに放射能を含んだ埃を吸ったとみられる、
  と伝えられているのです。
  現実的に、マスクを外す際の呼吸で、このような高い被曝を受けるという事は
  先生は容易に想像お出来になりますか。

小出氏:できません。

MC:そうですか。

小出氏:はい、まあ、とてつもない被曝環境だという事は、
  もう皆さんご承知のはずですし、
  そういう中で作業をしている方がいらっしゃった訳ですね、
  今回女性という事で、私は、それだけでも意外だと思いましたけど、
  マスクを外すというただそれだけの時のために大量の被曝をするという事は、
  私には考え難いです。

MC:マスクというのは、もちろん防塵マスクの普通よりも強力なものを
  付けるのでしょうね、こうした時に。

小出氏:今回の場合は、たぶんそうだと思います。
  ただし、昔からよく言われていたのですけれども、
  性能の良いマスクになればなるだけ、息苦しくなってしまって、
  作業をしながらつい外してしまう、というような話は、
  昔からよくありました。
  今回の方がどういう事でそんなに大量の被曝をしたのか、
  私にはよく解りませんが、
  そういう可能性があるのではないかな、と思いました。

MC:この被曝の量は、今後50年間で13.6mSvに相当する内部被曝である
  と言われています。
  意味が良く解らないのです。
  今後50年で、というのはどういう事なのですか。

小出氏:内部被曝というのを、どうやって評価するかというと、
  ある時に体の中に吸い込んだり、食べて取り込んだりするという、
  それを内部被曝と私達は呼んでいる訳ですが。

MC:体の内部に入ってしまった放射性物質から放射能(放射線?)が
  出るのですね。

小出氏:そうです。
  そうしますと、取り込んだ放射性物質によって、それ自身の固有な性質、
  所謂半減期というのを皆さん言葉を聞いた事があると思いますが、
  固有の性質で減って行ってくれる、という効果がひとつあるし、
  それから、人間の代謝機能で体外に排泄して行くという機能もあるのです。

MC:尿などで出て行くという事ですか。

小出氏:そうです。
  そのふたつの効果を考えて、その取り込んだ放射性物質が、
  一体体の中に何日間あるのだろうか、何年間あるのだろうか、
  それとももう無くならないか、出て行かないと考えなければいけないか、
  という事を、それぞれの放射性物質ごとに考えまして、
  それが50年間あるとすれば、一体どれだけの被曝をするか、
  という、そういう計算をするのです。
  その結果の値です。

MC:その値が13.6mSv、これはどういう数字だと見たらよろしいのでしょう。

小出氏:何度かこの番組でもお伝えしたと思いますが、
  ひとりひとりの人というのは、1年間に1mSvしか被曝をしてはいけないという、
  そういう基準なのです。
  それに比べればもう13倍以上という事になります。
  ただしそれは50年間の間に合計として浴びるという、そういう被曝量ですので、
  その女性の方は、来年以降はもうこんな仕事に就かないという事であれば、
  平均で言えば、たぶん一般人の限度に収まるだろう、
  と私は思います。

MC:でも、この方のこれからの将来、どうされるかという事も
  ある意味影響を与えてしまうという事ですね。

小出氏:そうですね。

MC:これ、埃として吸った中に放射性物質が入っているという事でしたら、
  普通埃って咳などで人間は必死になって出そうとするのですね。
  埃を吸って、これが取れないものなのですか、放射性物質は。

小出氏:たぶん埃と言っても、目に見えるような埃ではなくて、
  大変(細かい)微粒子になっていて、埃という認識をしない内に吸い込んでしまう、
  そういうものだと思います。

MC:何らかのやり方で外に取りだす事は出来ないのですか、
  内部被曝って。

小出氏:いろいろな薬剤で何とか取り出そうという研究は続いて来ていますし、
  それなりの効果がある薬剤もありますけれども、
  この方はどういう放射性物質を取り込んだのか、
  私まだ今の段階で知りません。
  で、どういう方策になるかよく解りませんが、
  あまり大きな効果は無いと思って頂いた方がいいです。

MC:それから、今回、免震重要棟という建物の中の滞在中にも、
  被曝した量が挙げられているのですが、
  これって作業をなさる方の休憩所だと思うのです。

小出氏:そうですね。

MC:ここにいれば、私、大丈夫かと思っていたのですが、
  休憩中も被曝するのですか。

小出氏:もう免震重要棟も、福島原発の敷地の中にある訳で、
  敷地全体が放射能で汚染している訳ですから、
  その建物の中だけが、完璧にクリーンであるという事はあり得ないです。
  もちろん作業員の方達が出入りするという、その事だけを取っても、
  汚染物質が内部に持ち込まれているはずだと思います。

MC:それから昨日もお話出ましたけれども、
  福島県郡山市の学校で、子供達を被曝から守るために、
  校庭の土を上から3cm削るという作業が行われました。
  ただ、削った土をどこへ持って行くかと言いますと、
  市内の埋め立て処分場なのだそうです。
  こういうやり方で大丈夫ですか。

小出氏:まずは何よりも、子供を守らなければいけないと思いますので、
  土を削ったという事は、私は良い事だと思います。
  次にでは削った土をどうするかという事ですけれども、
  削った所で放射能が無くなる訳ではありません。
  削った土の中に相変わらず汚染した放射能がある訳ですから、
  それをこれから一体どうやってお守をしていくのか、管理をしていくのか、
  という課題が残っている訳ですね。

MC:これ、処分場に持って行くと、処分場でこれから作業をなさる方や、
  近辺の方にどうなのだろうか、と思うのですけれども。

小出氏:そうですね。
  ですから、私は、放射能で汚れているものですから、
  放射能で汚れたものとして管理が出来るような場所に
  持って行かなければいけない、と思います。

MC:そういう意味で言うと、昨日おっしゃられた、
  汚染されたものを集める、汚染されたものの墓場というような場所を、
  いち早く決めた方が良いのではないのですか。

小出氏:はい、私はそう思います。
  ただし、その場所を選ぶという事自身に困難があると思います。
  その場所に指定された人々が、いずれにしても出る訳で、
  ある人々の故郷というか、その土地を、
  もう放射能の墓場にしてしまうという事を決める訳ですから、
  とても気の重い決定になると思います。

近藤氏:先生、話がひょっとしたら重なるかも解らないのですが、
  とりあえず表面からそう言った形で土を除去して行って、
  また日が経てば同じような状況というのは生まれてくる可能性はある訳ですよね。

小出氏:あります。

近藤氏:そうすると、またそれを除去するという事を繰り返す事に
  なるのではないでしょうか。

小出氏:おっしゃる通りです。
  ただし、現在の汚染、郡山市内あるいは福島市内もそうですけれども、
  現在の汚染の大部分は、3月15日から16日の間に降り積もった放射能です。
  それがだんだん今放射能が弱まって来ている。
  一月以上も経っている訳ですから。
  これから本当に3月15日16日に生じたような汚染が出ないのであれば、
  かなりの間、一度削り取れば耐えられるだろうと思います。

近藤氏:そういう事ですね。

MC:そうであって欲しいと願います。

小出氏:でもまたもっと大きな汚染が生じるかもしれない、
  と私は危惧している訳で、
  その場合にはまた取らなければいけないと思います。

近藤氏:そうすると、尚の事、管理区域みたいな形で、土地を管理するという
  必要性があるか解らないですよね。

小出氏:はい。
  いずれにしても、そういうふうにやらなければいけないと思いますし、
  ある時点で決断をしなければいけないと思います。

MC:1号機の話をさせて頂きたいのですが、
  1号機の建屋の中で最も高い放射線量が測定されました。
  1120mSv、これはどうご覧になりますか。

小出氏:凄いですね。
  私は原子力に携わって来た人間の一人として、
  今度の事故を収束するためには、ある程度の被曝を覚悟でも、
  現場の作業に加わってもいいと思いましたし、
  今でもそう思っていますけれども、
  1時間に千百何十mSvなどと言われると、躊躇します。
  普通の人は入れないと思います。

MC:これだけの高い放射線量がどこから出ている、
  その原因は何だと思われますか。

小出氏:炉心という所が、これまで70%損傷していると東電が言って来て、
  今日50%にしたんでしょうか、55%にしたんでしょうか。

MC:修正が出ました。

小出氏:変更したという事ですけれども、
  いずれにしても、もう大変な部分が壊れているのですね。
  放射能が漏れて出て来ている訳で、
  外に出たトレンチの水ですら、凄い汚染水になっている訳ですから、
  建屋の中の汚染はもちろん酷いという事は当たり前なのであって、
  特に原子炉建屋とう所は、汚染が一番強いというか、
  まあ格納容器の中なんていうのはもう立ち入る事も出来ない事は当然ですけれども、
  その次に高いのが原子炉建屋です。
  そこでそういうものがあるという事は、もうこういう事故になってしまったからには
  避けられないと思います。

MC:でも、そこに水を入れる量を、今日も増やした訳ですね。
  その事に対して、余計損傷するのではないかと危惧してらっしゃるのが、
  小出先生のお考えなのですが、
  水を増やそうとしていますね。

小出氏:はい。
  上手く行ってくれれば良いと思いますが、
  まずい方向へ行くかもしれないと、今でも危惧しています。

MC:そして、4号機のプールの方なのですが、
  これは小出先生がおっしゃていた事が現実化しているのかと思いますけれども、
  使用済み燃料プールの水の量が思った程増えていない。
  でも水を掛け続けなければいけない訳ですが、
  このプールが大分痛んでいるようですね。
  これを何とか耐震補強工事が必要だという話になって来ました。
  これは可能ですか。

小出氏:要するに、やって欲しいと私は願います。

MC:どうしても必要な事なのですね。
  余震もあり得る訳ですから。

小出氏:まだこれから余震があるだろうと思っている訳ですし、
  それで崩壊されたら、もうお手上げになってしまいますので、
  何とか上手く考えて、補強工事をして欲しいと願いますけれども、
  その工事をする現場も、物凄い被曝環境の中ですから、
  (溜息)とても気が重いし、出来るのかなあ、と不安です。

MC:私は、またまた素人考えで何なんですけれども、
  新たなプールをこしらえたものを、その横に据えて、
  壊れた使用済み核燃料を移動させると、
  新たなプールを持って行ったらどうかと思うのですけれども、
  そんな事は出来ませんか。

小出氏:ひとつの選択肢ではあると思います。
  ただし、既に今ある使用済み燃料プールの中の使用済み燃料というものが
  かなりもう損傷しているのです。
  水素爆発という事が起きていますので、
  被覆管がもうボロボロになって、
  ウランのペレットというものがそこら中に零れているのだと思います。
  そういうものをどうやって集める事が出来るかという事を考えただけで、
  なかなか難しいだろうな、と思います。
  でも、いつかはやらなければいけない訳ですから、
  今水野さんがおっしゃったように、
  今からすぐに使用済み燃料プールを横に作って、
  そこに移す作業をやった方が良いというのは、ひとつの選択肢だと思います。
  でも、それも大変だと思います。

MC:先日、細野首相補佐官が、情報の1本化をすると共に、
  全ての情報をこれから公開します、とおっしゃったのですが、
  その後、小出先生からご覧になって、全ての情報は公開されていますか。

小出氏:いや、されていないと思います。

MC:されてないんだ・・・

小出氏:はい。

MC:重要な情報でまだ得たいと思っているものは、
  いくつもあるのですか。

小出氏:それはもう沢山あります。
  例えば、私は再臨界という事が起きているか起きていないかという事を
  疑った事がありました。
  で、東京電力の発表が間違っていてくれれば良いと思って願い続けていたら、
  やはり間違っていたと言ってくれたので、ホッとした訳ですけれども、
  でもそんな事を心配する時に、
  例えば原子炉の中の中性子の量という事が、データとして示されれば、
  一目瞭然でそれも解ります。

MC:それ、出されていないのですか。

小出氏:はい、未だに出されていないのです。
  正門の所の中性子の量とかいうのは、単発的に出された事がありますけれども、
  その他の場所での中性子の量というのは、出されていないです。

MC:本当の意味での情報公開をしてもらう事が、
  より安全な策への道だと思います。
  明日もまたいろいろな解説をお願い致します。
  どうもありがとうございました。

小出氏:ありがとうございました。

MC:京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生に伺いました。
ーーーーー


日本は先進国ではなく後退国 小出裕章 (2007年)

2011年4月27日

コメント欄にて、小出裕章氏が2007年夏に高尾山の自然の中で講演されたときの記録について教えていただきました。

これ以上のエネルギー消費拡大は犯罪 原発がすべて止まっても決して停電は起きない 小出裕章さん講演
エコ&ピース月刊誌 Actio1252号(2007年9月25日発行)より

 8月12日、東京・高尾山エコラボキャンプで京都大学原子炉実験所の小出裕章さんが原発・エネルギー問題について講演。森の中で多くの人が耳を傾けた。

写真や図版入りの記事ですので、上記ページにてご覧ください。