2011年4月7日 再臨界と窒素注入 小出裕章

2011年4月7日のMBSラジオたねまきジャーナルにおける小出裕章氏の出演部分です。福島第一原発の事故についてのお話です。録音して公開していただいている方、どうもありがとうございます。

また、こちらではこの日の放送を的確に書き起こしていらっしゃいます。
SleepingCats http://nixediary.exblog.jp/12388853/

以下転載です。

メインキャスター:千葉猛(以下「司会」と表記)
コメンテーター:池田 毎日新聞 大阪本社論説委員

司会:ここで、福島第一原発の動きについて、
  原子力が専門の京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに話を伺います。
  小出さん、こんばんは、今日もよろしくお願いします。

小出氏:こちらこそ。

司会:今日はまずメールを紹介させて下さい。
  昨日一昨日の小出さんの話の中にあった、
  再臨界が起きているかどうかの判断の材料となるクロル38という物質について、
  こんなメールを頂いている。
  (ラジオネーム省略)
  「昨日話題になったクロル38について、
  小出先生はアメリカの学者が東電のデータを引用していた旨、
  おっしゃっていたように思います。
  確認した所、東電のサイトには該当するデータはありませんでしたが、
  原子力保安院のサイトに3月25日付で東電からのデータとして
  公表している資料の中に、クロル38が検出されたとするデータが、
  存在しておりました」
  というメールを頂いた。

小出氏:そうです、その通りです。

司会:私共もスタッフがHPで確認した所、
  平成23年3月26日の原子力安全保安院の発したニュースリリースという事で、
  「福島第一原子力発電所1号機タービン建屋の地下の溜まり水の測定結果」
  という資料があり、測定された元素の一番上にクロル38があった。

小出氏:そうです。

司会:私達も実際に確認をしました。
  それを踏まえて伺いますけれども、
  その後クロル38の検出は間違いであったといったような
  データとか知らせとかはありませんでしょうか。

小出氏:私は聞いていないし、間違いであった方がいいなと思うが、
  このクロル38という放射性核種が出すガンマー線というのは、
  大変エネルギーの高いガンマー線で、
  間違えると言う事はたぶんあり得ないと思っていて、
  間違いであって欲しいと思うけれども、
  本当だとすれば、やはり再臨界を疑うしかないと思っている。

司会:あと、小出さん、以前にクロル38以外にも
  圧力容器近くの中性子線の量が解れば、
  再臨界が起きているかどうか判断できると言っていたと思うけれども、
  そういったデータについても相変わらず発表はされていないのでしょうか。

小出氏:発表はされていない。
  東京電力自身が持っていない、
  あるいはもう事故によって破壊されてデータが取れないと言う可能性も
  あるのかもしれないと思っている。
  どちらなのかよく解らない。
  少なくともデータ自身は公表されていない。

司会:ではそこも解らないという事になるけれども、
  そういった状態の中で、今日伝えられているニュースとしては、
  ちょっと明るいかなと感じられるものとして、
  1号機への窒素の注入がうまくいっているらしい、
  というような事が伝えれているが、
  これで爆発の危険と言うのはなくなるのでしょうか。

小出氏:簡単にはなくならない。
  どうして注入をしなければいけないという判断になったのかという事が大切だが、
  米国のNRCという組織が、
  今格納容器の中に水素と酸素が出来ているから窒素を入れなければいけない、
  というような事をたぶん言ったんだと思う。
  そのためにやっているか、
  
  あるいは東電自身が格納容器の中の水素と酸素の濃度をきちっと把握して
  自分たちでやはりこれは危ないと、やらざるを得ないと判断したのか、
  どちらだか私にはよく解らないが、
  もし後者だとして、東京電力自身が危ないと判断したのだとすると、
  窒素を入れたとしても水素と酸素が無くなる訳ではないので、
  爆発の危険がなくなる訳ではない。
  
  濃度が少しずつ下がるというだけなのであって、
  どうせ水素も酸素も出てくるので、
  結局いたちごっこになる。
  
  問題は、限られた空間の中に、
  もともと水素も酸素も入っている中に窒素を入れる訳だから、
  圧力がどんどんどんどん上がって来る。
  そうするといつか格納容器がもたなくなってしまうので、
  格納容器の中の放射能まみれの空気を外に出さざるを得なくなる。
  それは東電の方も十分に承知していて、
  モニタリング体制をもっとしっかりやります、というような事を言っている。

池田氏:そうすると、圧力を抜くためにやはり外に出して行くという事も考えられる・・・

小出氏:もちろんです、出さざるを得ない。

池田氏:ですね。

司会:報道では3号機の格納容器の放射線量がとても高くて、
  毎時167Svという数値が伝えられているが、
  例えばこれというのはどれ位の強さなのでしょうか。

小出氏:例えば、人は8Sv浴びれば死んでしまうので、
  160なんとかというのはとてつもない量で、
  ちょっとそこに居たら死んでしまうという位の量。

司会:では、今、1号機はこれ程高くはないかもしれないが、
  格納容器内の水素と酸素が、窒素注入で漏れるかもしれないという事は、
  かなり高濃度の放射性物質が漏れる可能性があると考えていいのか。

小出氏:もちろん、そうです。
  格納容器の中には大変高濃度の放射能を含んだガスが充満しているので、
  窒素を入れる事によって今まで入って来たガスを、
  いずれにしても抜かなければいけないので、
  高濃度の放射能を含んだガスが出てくると思う。

池田氏:例えば、爆発を防げたとして、
  例えば核燃料が溶けて、例え鋼鉄製の圧力容器と言え、
  溶かす可能性はありますよね。

小出氏:もちろん、あります。

池田氏:だから、下から出る可能性もありますよね、そうなると。

小出氏:2号機と3号機はもう圧力容器が壊れてしまっているので、
  いずれにしても、もう漏れている。
  1号機に関してはまだ圧力容器が健全ではないか、という風に言われている。
  確かに原子炉内の圧力と格納容器内の圧力がちょっと違っているので、
  そうかもしれないと思う。
  でも、小さな漏れ位はどうせあるだとうと私は思っている。

池田氏:1号機の燃料棒の損傷率というのは非常に高いですよね。

小出氏:と、言われています。
  それがどういうデータに基づいて推定しているのか私にはよく解らないが。
  いずれにしても何割かは壊れていると思う。

池田氏:という事ですね。
  以前原子力安全委員会の委員長の斑目さんが、
  1号機が最も危険だと発言した事があったけれども、
  その後やはり状況は変わってないという事なのか。

小出氏:私はもう1号も2号も3号も基本的には同じだと思っている。
  要するに電源がない訳ですし、
  電源が復旧したと言ってもポンプも何も動かない訳だから、
  進んでいる事象自身は一緒です。
  小さな事で少しずつ違っているという事であって、
  たまたま2号炉ではサプレッションチェンバー(圧力抑制室)で爆発があった
  という事があったし、
  1号と3号ではベントを開いたために水素爆発が起きたという事があるが、
  基本的に進行している事は、炉心が段々段々破壊されて、
  崩れ落ちて行っているという事。

司会:あの、いくつか例えば今日の、窒素注入が成功したとか、
  ピットから漏れている水が止まったとかいう事で、
  多少良い方向へ進んでいるのかなと感じるような話と
  受け取れるようなものも流れていて、
  全体の状況が皆さん解り難い状況になっているかと思うが、
  今の段階は、完全に安全だと言えるようになる段階を、
  例えば大雑把に10段階に分けるとしたら、
  いくつ位まで進んでいる状態だと考えられるか。

小出氏:すみません、解りません。

司会:解らないですか。

小出氏:はい。

池田氏:あの、例えば海外の専門機関からは、
  所謂放射性物質の拡散の予測とか、これから起こりうる最悪のシナリオ等々について、
  いろいろな事が示されている。
  所が日本の原子力安全委員会の方ではそういうような事をやっていないので
  余計不信感というものが高まっているのではないかという気がするが、
  その辺りは。
  先ほどの米国の専門チームの窒素の話もそうなのですけども、
  どうなのですか、その辺りは。

小出氏:安全委員会自身はもう決定的に時代遅れというのか、
  役割が何も果たせないようなままの状態にあると私には思える。
  政府の方も、安全委員会を見限ったようで、
  内閣府参与というような、また別の集団を集めたりして、
  自分たちで活動を始めている訳です。
  もう本当てんでんばらばらになってしまっていて、
  一体この日本と言う政府の中で、どこが指揮を取っているのかも解らないという、
  そういう状態になっている訳です。

池田氏:一般の人間でも、情報と判断材料をしっかり示してもらう、
  という事は非常に重要な事と思う。

小出氏:もちろんです。

池田氏:その事が、安全委員会が本来は果たすべき役割なんじゃないのかな、と思うが、
  もうそれは機能していないという事なのか。

小出氏:少なくとも現実は機能していないです。
  そうあるべきとは思うが、残念ながらそうはなっていない。

司会:小出さん、政府が今非難指示が出ている福島第一原発から
  半径20km圏内を立ち入り禁止の警戒区域にする事を検討している
  というような情報も伝わって来ているし、
  半径20kmから30km圏内で出している屋内退避指示も、
  積算放射線量をもとに新しい基準を作って
  より厳しい非難指示に切り替える事も検討しているというような情報もあるが、
  これについてどうお聞きになったか。

小出氏:当然厳しく順番にしていかなければいけないと思う。
  今回の事故が起きてから、当初は3km圏内の人達に万一の事を考えて
  非難しなさいという事で始まったと思う。
  それが次には万一の事を考えて10kmと言った。
  次には万一の事を考えて20kmと言った。
  最後には万一の事を考えて30kmの人にそれまで屋内退避だったものを
  自主的な避難をしなさい、というような事を言って来た訳です。
  次々と日本政府の言い分は「万一、万一」と言いながら後退していくというか、
  追い詰められていくというような事になった訳で、
  もともとの想定自身がもう話にならない程甘すぎたと思う。

池田氏:根拠はないんですよね。
  指示のもとになるデータなり何なり、合理的な根拠がないものだから、
  次から次に初動の失敗が繰り返されて来ているという事だが、
  実際日本には所謂そういうデータをもとに拡散を予測する
  SPEEDIというシステムがあるはずなのに、
  全く生かしきれていないという事なのですかな。

小出氏:要するに隠した。

池田氏:隠したんですね。

小出氏:事故が起きてすぐSPEEDIが動いたはず。
  動かなければ全く意味がないし、
  そのために20年の期間をかけて彼らは研究してきた訳だから、
  この時にやらなければ意味のない研究だった。
  所がそのデータが隠されてしまって、
  ヨーロッパ各国がそれぞれ自分達の方で発表するという事になってしまって
  どうしようもなくて後から出てくるという、
  本当に情けない事になっている。

司会:小出さんがおっしゃったように段階的に
  退避の指示を広げていて来ているという状況の中で
  福間第一原発から20km地域以内の方達の一時帰宅を
  今政府が検討しているという事なんですが、
  それについては大丈夫なんでしょうか。
  危ない所に安全な形で実現しようと考えたら、
  どんな装備でどんな時間制限だとかつけて行う事が
  必要な事なんでしょうか。

小出氏:私は、一時帰宅という事はやるべきだと思う。
  ラジオをお聞きに皆さんもそうでしょうけれども、
  皆生活をした場所と言うのはある、
  それが、避難をしろと言って避難をさせられて避難所に移ったとしても、
  そこは自分の住まいではない訳だし、
  物凄いストレスの中で亡くなっていくという方々もいる訳ですよね。
  自分達が生きて来た所に戻りたい、
  あるいはそこの所へ行って何かを持ち出したいという事は必ずあると思うし、
  やらなければいけないと思う。
  ただし、放射能の汚染地帯である事はもちろんな訳ですから、
  ちゃんとそこに送り届けて、あまり長い時間を送らないまま
  きちっとまた連れ出さなければいけないと思うし、
  放射能を体に付けたりしないようにそれなりの防護の服を着せたりしながら、
  やって頂かなければいけないと思う。

司会:安全の装備をして、それは行うべきと事ですね。

小出氏:はい。

司会:あともうひとつ、海の汚染について今もニュースで伝えてもらったが、
  原発からおよそ15km沖合の海で法律で決められた濃度限度の
  11倍の放射性ヨウ素を検出したという発表があったが、
  15kmというと大変な沖合という感じがするが、
  汚染水が出続ける限り拡がり続ける事になるんですよね。

小出氏:もちろんです。

司会:これはもう、出続ける限り広い範囲に汚染が
  本当に止まるまで拡がり続けるという事になる訳ですよね。

小出氏:はい、基本的にそうです。
  ただし、ヨウ素という放射能は半分に減るまでが8日なので、
  何カ月か経てば随分少なくなってくれるはずだ、
  と私は期待している。
  ただ、この番組でも話させて頂いたし、
  さっきもちょっと話したけれども、
  もし再臨界という事が起きているなら、
  次々とヨウ素がまだ生成されてしまうので、
  ヨウ素による汚染が長引く可能性があると思う。

司会:新たに再臨界で作られて濃度が高いものが流れる限り
  海洋汚染の危険性というものはいつまで経っても下がらない訳ですよね。

小出氏:はい、ま、ひとつの推測の上での話を私はしているが、
  その可能性はあると思う。

司会:はい、わかりました。
  すみません、今日もどうもありがとうございました。

小出氏:ありがとうございました。

司会:明日もよろしくお願い致します。

小出氏:はい。

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