4月11日 名前のない新聞によるインタビュー 小出裕章

名前のない新聞(http://amanakuni.net/)が、2011年4月11日に小出裕章氏のインタビューを行い、その模様をyoutubeで公開してくださっています。また、インタビュー記事も無料公開されています。ありがとうございます。

名前のない新聞5月号のために京大原子炉実験所に伺い、小出裕章さんにインタビューしてきました。1時間ほどの間に何度も何度も取材申し込みの電話が入るほどの忙しさの中­、インタビューにも電話の応対にも丁寧に誠実に応えられていました。新聞が出るのは5月初旬の予定ですが、緊急事態なのでyoutubeで公開します。電話応対など無駄な­部分はカット編集してあります。http://amanakuni.net/

小出先生が原子力に反対する理由、原子炉実験所での研究のことなど、福島第一原発の事故以外のこともかなり聞き出されていて、出色のインタビューです。

動画

2011.04.11 小出裕章さんインタビュー by 名前のない新聞

記事

名前のない新聞 (No.166=2011年5・6月号)
無料で公開されている小出氏インタビューのページ (pdfファイル)

要約

・原子炉が壊れているが、まだ破局には到っていない。破局に至らないように食い止める作業が続いている。

・原子炉はウランの核分裂をさせて、熱を取り出して電気を作る。ウランの熱を水に移して蒸気にしてタービンを回す仕組み。水を冷やさないと原子炉が壊れる。核分裂が起きていない時も冷やさないと壊れる。ウランが核分裂するときに核分裂生成物(死の灰)が生まれ、それはどんどん発熱する。

・福島の原子炉にも大量の核分裂生成物があり、その熱が発生している。その熱を冷やしきれない限りは原子炉が溶ける。今回は津波もあってすべての電源を喪失した。当初の消防のポンプ車でどうにか原子炉が溶けることを食い止めている。

・燃料棒というパイプはジルコニウムという金属で出来ている。これは温度が850度以上になると周辺の水と反応して水素ができる。これは発熱反応であるため、反応がますます激しく進む。今回これが起こり、水素爆発が起きた。

・東京電力が燃料棒の70%が破損しているというのは、燃料棒の被覆管(ジルコニウム)が溶けていることを示している。その内容物のウランのペレット(瀬戸物)はぼろぼろ落ちているはず。その一部は溶けていると思う。それは、敷地内でプルトニウムが検出されていることから推察される。

・もしペレット全体が溶けていると、私が危惧している最悪のシナリオに向かう。水蒸気爆発で圧力容器と格納容器が壊れるという事態。それは防がないといけないが、危険は残っている。そうならないと断言できない。可能性があることには対処しないといけない。

・政府は常に楽観的な情報だけを流してきたが、私は防災を考えれば悪い方を考えて対策を考えるべきと思う。

・最悪の事態が起こると、チェルノブイリと同じあるいは上回る規模の事故になる。ソ連政府は当時周辺30kmの住民を強制避難させた。が、その後200から300km以上離れたエリアに猛烈な汚染地帯が見つかった。それは事故の後で雨が降った地域。『黒い雨』と同じようなこと。それに気がついて、ソ連政府はその地域からも強制移住させた。日本の基準を当てはめれば、放射線管理区域に指定しなければならない汚染地は当時700kmの範囲まで広がった。面積でいうと145,000平方km(本州の6割)。

・福島で最悪の事態になれば、風向きにもよるが、本州の何割かを放棄することになるだろう。チェルノブイリは100万kw、福島第一は1から4まで合わせると300万kw。福島ではひとつでも爆発すれば人がいなくなり作業が不可能になり、他が続くことになる。何よりも冷やすことが大切。

・1号機で格納容器の放射線量が3倍くらいに跳ね上がったが、これは再臨界が起きていると考えるのが素直な考え方。ただし、再臨界が起こると必ず爆発が起こるというわけではない。ウランの核分裂反応が起こったとしても、そこで発生する熱により体積が膨張し、核反応は収まる。冷えてくるとまた反応する。その繰り返し。私のイメージとしては、爆発ではなく、ぶすぶすぶすぶすと燃え続ける。

・もし臨界が起こっていれば水の量を増やす必要がある。うまく冷えないと燃料が溶けて、下に落下して(メルトダウン)、それが塊となって下の水と反応して爆発する。

・液体窒素やドライアイスの注入を国が考えているという報道があったが、水が一番と思う。原子力に反対している専門家である私は現場には入れないし、いちばん現場を知っているのは現場の人。私が話しているようなことは福島の専門家はみな知っているはず。その情報を政府がパニックを恐れて隠しているのが問題。

・京大原子炉実験所は原子力を推進する場所ではない。大学はファンダメンタルな研究をするところ。中性子の研究をしたい人が集まってつくったのが原子炉実験所。原子炉は目的ではなく道具。80人の教員がいるが、みなが原子力を扱っているわけではない。原子力の反対派も推進派もいる。嘘を言うのはいけないが、反対は許容される。研究テーマは自分で選べる。私はチェルノブイリの汚染を現地で調べたり、日本にチェルノブイリから飛んできた放射性物質を調べたりするのが仕事。日本の人形峠やインドのウラン鉱山の汚染も調べている。

・研究のためには資金が必要。私は企業からもらわないことにしている。私はここに来て37年になるが、誰からも命令されたこともないし、命令したこともない。最下層の教員(助教)であるが故に、その立場が守れている。

・いまは講演で忙しいが、このような事態になっていることを考えると、自分が必要とされない方がむしろ良かったと思う。

・原発自体には問題ないと言っている人もいるが、地震や津波がある場所に原発を建てたのは人間であり、今回の事故はまさに人災だ。機械は壊れるものだという覚悟もあってしかるべきなのに、原発だけは安全だと言ってきたことが、今回の事態を招いている。人間は原発を持つべきでない。

・福島の原発は東電の給電範囲の外。2007年に中越地震に襲われた柏崎刈羽原子力発電所も、新潟県であり東電の範囲外。東電の火力発電所は東京湾にずらりと並んでいる。原発だけは東京湾につくらず、遠くに作って長い送電線で送電している。それが私は許せない。どうしても電気が欲しいならばリスクも受容すべき。危険だけは他の人におしつけるというやり方は許されない。

・このような事態の中で、原発は動きつづけている。すべての原発を止めるべきだが、いまだに原発は必要という人が多数派。私は原発がここまでひどいということを伝えようとしてきたが、伝わらなかった。いまだに停電したら困るという人が多いが、私はたかが電気じゃないかと思う。

・日本では、情報は出さず、ただ頼りにさせればいいという統治の仕方をしてきたが、それはなかなか変わらない。

・原発マフィアとか原子力村というものに対して何かやりようがあるのであれば、私がやっている。やりようが分からないからもがいている。技術的科学的に原子力の危険さを知らせるのは、私ができることだが、もともと原子力に反対しているのは、他の人に犠牲に強いて自分が利益を得るというありように反対しているから。原子力に限らず、他の人を犠牲にするものに反対するということで、いろいろなところで取り組める。

・スリーマイル島で事故が起きたとき、東電はスリーマイルは加圧型であり、自分のところは沸騰水型だから関係ないと言った。関電は自分も加圧型だがメーカーが違うから関係ないと言った。米国製は黒人が製造しているから質が低いとまで言った。チェルノブイリのときはソ連はRBMK型だから日本は関係ないと言った。でも、どんな機械も事故から逃れられない。

・福島が破局的な事故になれば、今いる大阪の熊取も700kmの範囲だから汚染されるかもしれない。東京は200kmしか離れていない。覚悟だけはしておかないといけない。住み慣れた場所を離れる覚悟。一番最善のシナリオであっても、今後何ヶ月も冷やす努力は続き、その間、福島の人の被曝は続く。

・石棺にするという話はずっと後の話。そこに到るまでに冷やしていく過程で、汚染水が出続けるため、水の循環の仕組みを作らないといけない。それをつくるために沢山の被曝が発生するし、長い時間がかかる。

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