5月7日 「原子力村」という巨大な構造 小出裕章

2011年5月7日(土)、朝日ニュースターの愛川欽也パックインジャーナルに、京都大学原子炉実験所助教小出裕章氏が電話出演されました。

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政府、1ミリシーベルトから20…幅がありすぎない?1/4

政府、1ミリシーベルトから20…幅がありすぎない?2/4

小出先生出演部分の要約

・(1〜20ミリシーベルトの間ならまあまあいいということか?)1ミリシーベルトであっても危険はある。どんなに微量でも実際は危険はあるが、年間1ミリシーベルトくらいは我慢せざるを得ないということで決まっている数字。私のような放射線業務従事者には年間50ミリ、5年間100ミリという法律上の上限がある。これは従事者だから我慢しろという意味。普通の人に対し20ミリまで我慢しろというのはとてつもない話。

・(小佐古氏が20ミリシーベルトはとんでもないとして辞任したが、どう考えるか?)彼がなぜそのようなことを言い出したのか分からないが、彼は正しいと思うし、支持したい。

・(大人と子供は身長が違うため基準を同じにするのはおかしいと思うが?)その通り。

・(東京では18メートル地点で測っているというが、なぜか?地面で測るのと違うか?)私たちの常識では1メートルで測る。上空と地面では測定値は違うだろう。本来はどこでも1メートルで測るべき。

・(20ミリシーベルトは推進派の小佐古氏ですらヤバいと言う数字だが、子供は大人の3倍くらい影響するというのは本当か?)私は5倍というが、3〜5倍くらい危険があるというのは明白。

・(外部被曝の積算だけ言われているが、食物や水などの内部被曝の影響もある?)外部被曝だけ考慮ではだめ。

・(放射性物質が土に落ちると何十年、あるいは半永久的に生き続ける?)そう。事故から約二ヶ月たった今日の時点までで被曝を起こした主要な核種はヨウ素131だったと思う。半減期が短いヨウ素131はほとんどなくなっている。今後はセシウム134とセシウム137が問題になってくる。セシウム134は半減期が2年だが、セシウム137の半減期は30年で寿命が長い。

・(シーベルトは確率論的に障害が生じる可能性を示していて、1ミリだと10万人に5人に障害が起きたり死亡したりして、20ミリだとその20倍ということでいいか?)私はその8倍だと思っているが、最も低めの数字で10万人に5人。私は10万人に40人だと思うし、20倍なら800人。こどもは3〜5倍危険が高いので、数千人という単位になる話。

・(福島の事故が起こる前の状態だと大気中はどのくらいのシーベルトだったか?)毎時0.05マイクロシーベルトが普通だが、地質構造によって異なり、関東は低く、関西は高い。花崗岩地帯はもっと高い。自然の放射性物質の分布により幅がある。

・(文科省はICRPの基準の1〜20ミリシーベルトから、20ミリという上限を決めたというが、先生は適切な値はどのくらいと思うか?)その答えは示せない。チェルノブイリ事故のとき、どの汚染レベルで避難させるべきか考え、ソ連政府は40万人を避難させた。日本の法律の基準だと、565万人の人を避難させないといけないレベル。ただ、避難は生活の崩壊を意味する。いま福島で実際に避難している人たちは大変な苦労を負わされているが、法律の年間1ミリという基準を厳密に適用するなら福島県には住めなくなる。どのようにこの問題を乗り越えられるか、答えは私にはない。だからこそこれまで原発廃止を訴えてきたが、この事態を迎えた。どうしたらいいかは一人ひとりに考えてほしい。

・(自然界の放射線、チェルノブイリ由来の放射性物質に囲まれて我々は生きてきたが、これはやむを得ないとしても、今回基準が上げられたことについて皆何故もっと怖がらないのか?)私もそう思う。政府が勝手にどんどん変えるのに対し、問題にせずに受け入れるのは不思議。小佐古さんのような人が問題だというのだから、もっと真剣に考えてほしい。

・(事故以降、野菜の汚染値、水道の汚染値について、後出しジャンケンのように後でルールを変えているがどう考えるか?)もちろんいけないこと。政府は原発事故は決して起こらないと言ってきたから、基準値さえ存在しなかった。

・(政府の緩めたいという立場は当然だろうが、それに対し学者はそれは違う、危ないと声をあげるのが使命。なのに、原爆より低いとか、低い放射線なら温泉でも出ているとか、あるレベルなら身体にいいとか、そういうことを言う学者がメディアに出てくる。学問的な姿勢の問題?)学者は聖人君子ではない。普通にお金も出世もポストもほしい人たち。

・(菅首相が浜岡原発を停止させる要請をしたが、どうか?)日本に54基ある原発すべてを即刻止めるべきというのが私の主張。浜岡のエリアはプレートの境界がひしめきあっており、まず止めてほしいと願ってきた。だから今回の決断はありがたいと思う。ただし、防潮堤が完成したら再開するかもしれないし、今後原発について日本の人が考えるとっかかりになるといいと思う。

・(防潮堤ができたら安心という神話、大津波だから福島はだめだったという神話にだまされてはいけない。老朽化した原発は我々の国に合わないものだと考えないといけないと思うが)ありがとうございます。

・(今回の事故が起きたとき「未曾有」、「想定外の事故」、「1000年に1度の地震」という言い方で責任の所在をごまかそうとしたりしている。日本のような地震国に原発が沢山あったらいけないという考えの人はいると思う。この番組は13年以上続けていて、政権交替と原発反対にはこだわってきた。が、原発をなくすと電力が足りないという指摘に対してはどう答えるか?)全原発をすぐに止めても電力はまったく不足にならず、全く困らない。そのためには老朽化した火力発電所を動かさないといけないかもしれないが、原発が不要なのははっきりしている。

・(原発はクリーンだと言われていたが、クリーンではないことが今回分かった。安いと言われていたが、とんでもなく高くつくということも今回分かった。油や天然ガスには環境面での弊害もあるし、石油には政治的なリスクによる供給不安もあるから、原子力のほうがリスクは少ないという意見にはどう反論するか?)原子力がクリーンという宣伝については、二酸化炭素を出さないからクリーンだということだろうが、私は二酸化炭素が温暖化の原因だと思わない。二酸化炭素は地球の生命に必要なもの。必ずしも悪者ではない。原子力が発生させる核分裂生成物には口をつぐんで、二酸化炭素のことだけを言うのは異様だ。今回放射性物質が環境に放出されて、どれほど大変か今回理解しようとしている。仮に漏れないとしても100万年間おもりをしなければいけない毒物。そんなものを出しておいて何がクリーンかと言いたい。

・(太陽光、風力、地熱、潮流を使ったような代替発電や家庭での蓄電などに国が力を入れず、政財官学が逆に妨害してきたように思うが?)もちろんそうだ。国が核(原子力)を推進するとしてきて、その周辺に三菱、日立、東芝などの巨大産業が群がって、土建屋も学者もそこにぶらさがって、巨大な構造=原子力村ができ、ここまでつっぱしってきた。解体するのは大変。私が何を言っても聞いてもらえないまま今回の事故にいたった。大変悔しいし、何とかしたい。


番組案内

5/7(土) 政府、1ミリシーベルトから20…幅がありすぎない?

【今週の出演者】(敬称略)
山田厚史(AERAシニアライター)
日隅一雄(弁護士)
川村晃司(テレビ朝日コメンテーター)
落合恵子(作家)
横尾和博(社会評論家)

※電話でのご出演
小出裕章(京都大学助教・京大原子炉実験所)

(1)政府、1ミリシーベルトから20…幅がありすぎない?
※第1項目では表題も含めて、原発をめぐる3つの話題をトークします。

①内閣官房参与の小佐古東大大学院教授が29日、東京・永田町で記者会見を開き、
参与を辞任する意向を表明。小佐古氏は菅政権の福島第一原発事故対応について
「法律や指針を軽視し、その場限りだ」と批判しました。
会見では特に、小学校などの校庭利用で文部科学省が採用した
放射線の年間被曝量20ミリシーベルトという屋外活動制限基準を強く批判。
「とんでもなく高い数値であり、容認したら私の学者生命は終わり。
自分の子どもをそんな目に遭わせるのは絶対に嫌だ」と訴え、
「通常の放射線防護基準に近い年間1ミリシーベルトで運用すべきだ」とも述べました。
また、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測が
4月下旬までに2回しか公表されなかったことも批判しました。
(朝日30日朝刊4面)

②中部電力は28日、東海地震の震源域である静岡県御前崎市の
浜岡原子力発電所3号機を7月に再稼働することを前提とする、
2012年3月期の業績見通しを正式発表しました。
(29日朝刊1面)

③東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う損害賠償をめぐり、
政府内の試算が明らかになりました。賠償総額を4兆円、東電の負担を約2兆円と想定して、
2020年度までの東電の業績を試算。賠償は最終的に電力各社が
10年にわたって負担する内容です。
東電管内は電気料金が約16%上がる前提になっています。
(3日朝刊1面、東電免責:30日1面)

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