『世界』2011年6月号の原子力特集に小出裕章氏

岩波書店の『世界』2011年6月号に、小出裕章氏のインタビューが掲載されています。5月7日発売の号で、聞き手は熊谷伸一郎氏です。

岩波書店『世界』

特 集 原子力からの脱出

【レベル7の危機】
ブラックアウトは何故起きたか
小出裕章 (京都大学原子炉実験所)

 3.11以降、「問題はない」「大事故ではない」と言いつづけた「原子力村」に属する「専門家」への信頼が失われるなかで、アカデミズムの立場から批判的に原子力とかかわりつづけてきた筆者の発言が注目されている。いったい福島原発で何が起きたのか。これからどうなるのか、どうすればいいのか──。批判的知性による検証。

こいで・ひろあき 京都大学原子炉実験所助教。著書に『隠される原子力・核の真実──原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社) 『原子力と共存できるか』(かもがわ出版) など。


記事概要

記事の多くの部分は福島原発の事故についての小出先生の分析とコメントです。すでにたね蒔きジャーナル等で話されている内容がほとんどと言えます。それ以外の部分についてのみ、以下の通り概要を紹介します。(「これから原子力を学ぼうという若い人々は出てくるでしょうか?」という問いに対する答えです)

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・京都大学には教員の独創性を尊重する校風があり、私のような人間が存在できる。が、国策として原子力が推進されるなかで、文科省傘下の研究機関でそれに抵抗しながら生きていくのは難しい。

・私が大学に入った68年当時、工学部の中で最も難関とされたのが原子力関係の学科。それだけ原子力が期待されていた。私は入学希望を第三希望まで書けるところを第一希望原子核工学科だけしか書かなかったくらい、希望に燃えていた。そんな時代。

・その後、原子力の問題が明らかになるにつれ、原子力を学ぼうとする学生は減り続けて、旧帝大では原子力を専攻する学生がいない状態。でも私は誰かに学び続けてほしい。福島第一原発も課題が残り、誰かがやらないといけない。これまで蓄積された膨大な放射性廃棄物の問題や、廃炉になる原発の処理の問題もある。専門的な知識をもった人が必要。それを理解してくれる学生に来てほしいと願う。


本記事についての小出氏のメッセージ(転載)

 原子力発電とは、ウランの核分裂反応を利用した蒸気機関である。今日標準的になった100万kWといわれる原発では1年間に1トンのウランを核分裂させる。広島原爆で核分裂したウランは800gであったから、優に1000倍を超える。原発は機械であり、事故を起こさない機械はない。原発を動かしているのは人間で、間違いを犯さない人間はいない。電気を多量に消費するのは都会だが、万一の事故のことを考えれば、原発を都会に立てることはできなかった。そこで、原発は過疎地に押し付けられ、厖大な電気を使う豊かな生活のためには「必要悪」と言われてきた。私は40年間、いつか破局的な事故が起きると警告してきた。何とか破局的な事故が起きる前に原発を止めたいと願って来た。しかし、福島原発事故は起きてしまった。現在進行中の事故を収束に向かわせるため、今後、多くの作業員が被曝する。周辺の多くの人々も、歴史を刻んできた土地を捨てて避難するか、被曝を覚悟で住み続けるか選択するしかない。それを思うと、言葉にできない無念さがある。
 これほどの悲劇を前にまだ原発が運転され続けていることを、信じがたい気持ちで私は眺める。世論調査では、停電すると困るので原発は必要とする人が多数いると言う。もし、享楽的生活を続けるために電気が必要と言うのであれば、原発は是非都会に作って欲しい。それができないのであれば、電気が足りようと足りまいと原発は即刻全廃すべきものと私は思う。
小出裕章 (京都大学原子炉実験所)


同特集の全記事

【放射能と人間】
原子力発電から離れよう
  柳澤桂子 (生命科学者)

【自然エネルギーへ】
東日本にソーラーベルト地帯を──太陽の港、風の港で日本は甦る
  孫 正義 (ソフトバンク社長)

【レベル7の危機】
ブラックアウトは何故起きたか
  小出裕章 (京都大学原子炉実験所)

【希望はあるか】
海のチェルノブイリ
  水口憲哉(東京海洋大学名誉教授)

【日本人と核】
原爆から原発へ マンハッタン計画という淵源
  春名幹男 (名古屋大学特任教授)

【政治に聞く】
菅政権の対応は誤っている
  川内博史 (民主党衆議院議員)

エネルギー政策は転換するしかない
  河野太郎 (自民党衆議院議員)

【共存共滅?】
原発「核害」と立地自治体
  金井利之 (東京大学)

【ル  ポ】
事後原発で誰が作業をしているのか
  布施祐仁 (ジャーナリスト)

【周囲に目を】
東北アジアの隣人と新しい関係を築こう──東北大震災の中で考える
  和田春樹 (東京大学名誉教授)

【資  料】
食品の「放射能汚染」は避けられるか──国際放射線防護委員会 (ICRP) の勧告より

【便乗しない構想を】
復旧と復興 ──「生活」の連続性
  湯浅 誠 (内閣官房震災ボランティア連携室長)

【原発報道】
メディア批評 第42回
  神保太郎 (ジャーナリスト)

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