6月7日 岩上安身氏による小出裕章氏インタビュー

2011年6月7日(火)15時より岩上安身氏が京都大学原子炉実験所にて小出裕章氏をインタビューし、その模様が生中継されました。

2011/06/07 小出裕章助教インタビュー (IWJ)

録画

110607小出裕章助教インタビュー1/2 (11分46秒)
http://www.ustream.tv/recorded/15220732

110607小出裕章助教インタビュー2/2 (68分38秒)
http://www.ustream.tv/recorded/15220874

要約

・(東電が5月12日に1号機はメルトダウンしていたと発表した。その後、昨日になって2号機3号機もメルトダウンしていると保安院が発表した。どのように受け止める?)正確なデータが最も大切で、それがなければ推論の意味がない。東電は、炉心損傷の割合が70%あるいは55%というような過去の誤った推定について説明すべきだ。最近の発表も根拠は示されておらず、また全く異なる発表をする可能性も否定できない状態だ。

・(2、3号機については新たな発見はなく、今回のメルトダウン発表は既存データの読み方を変えたことによる?)そのはず。保安院は既にメルトダウンしていると言うが、それが本当であれば私が恐れていた水蒸気爆発は回避されたということになる。水蒸気爆発が起きない溶け方をしたのだろう。比較的少量の水のなかに大量の溶融物体が落ちると水蒸気爆発が起きる。逆のときは起きづらい。少しずつ流れ落ちると水蒸気爆発になりづらい。

・(東電と保安院の推測が間違っている可能性があるとしたら、どういうことがありえるか?)炉心の上半分は崩れ落ちているが下半分がまだ形状を保っているというケースはありえる。その場合、外部からの水の注入量が少なくなったり、破損箇所が大きくなったりしたときに、一気に大量の炉心が溶けて底にある水と反応して水蒸気爆発が起こりえる。東電が注水を続けているのはその可能性も否定できないということ。

(中継中断)

・水棺方式を目指して時間を無駄にしてきたが、今後は限られたパワーを有効に使うために意味があることに集中してほしい。

・(保安院は放出された放射性物質の総量を37万テラベクレルから77万テラベクレルに修正したが?)もとは大気中に放出されたヨウ素とセシウムの量を評価したもの。昨日の保安院の数値は溢れている汚染水の分も加算したもの。事故直後の爆発で大量に放出され、その後大量の汚染水が出ている。作業を誤ると、これまで大気中に出たものより多いものが出てしまう。

・(水棺は無駄ということは、東電は本当に分からなかったのか、それとも政治的、非合理的な理由によって続けていたのか?)分からない。政治については分からない。科学的に見れば水棺ができないというのは誰でも分かる。東電が何を考えたのかは分からない。

・(政府は3月12日の時点でメルトダウンを知りながら隠していた可能性が高い。多くの人に被曝を強いることになった。なぜか?)日本の国は原発では事故は起きないしメルトダウンはありえないと言い続けていた。できる限り認めたくないという動機がある。事故が小さくあってほしいという願望もある。騙してでもパニックを回避したいと考えたのだろう。

・普通の人は年間1ミリシーベルトしか被曝しないことに法律で決まっている。ところが絶対起きないと豪語していた事故が起き、その基準を守ることができなくなった。すると、非常事態だから20ミリシーベルトまでは我慢させるとなった。が実際にはそれをも超えて被曝している人が沢山いる状況。事故直後に状況をきちんと知らせれば必要な処置が可能だったが、しなかった。そういう政府だ。どこかで責任をとらせたい。

・(先日参院の委員会で発言された。政府がとるべき責任についてどう考える?)原子力の世界では何があっても責任を絶対とらない。誰ひとりとして責任を取らない世界。JCOの臨界事故では二人の労働者が悲惨な死を強いられたが、責任は労働者に押し付けられた。美浜の発電所で蒸気の配管が破れて5人が悲惨な死を遂げたが、関西電力は誰も責任をとらなかった。今回も実際に福島で事故が起きた。運転許可を与えた原子力安全委員会の人を刑務所に入れるべき。誰も責任をとらない異常な世界は認めるべきでない。福島第一原発の運転継続を認めた首相がまだ生きていれば、刑務所に入れるべき。

・(今回の事故の原因は津波ではなく地震動であるということについて解説を)地震で高圧注水系という緊急炉心冷却系の一部を動かし始めた時に原子炉の圧力が下がった。つまり配管が破れていたということだが、その配管は建屋の中にあり、津波ではなく地震によって壊れた。また、2号機のサプレッションチェンバーで水素爆発が起きた。が、格納容器は窒素で満たされており本来水素爆発は起き得ない。起きたということはそこに酸素があったということ。つまり既に破損していたということ。重要な機器が地震で破損した。地震国の日本に54基の原発が林立しているが、政府は安全だと言い張ってきたため、地震で壊れたことは認めたくない。しかし、津波ではなく地震で福島がやられたということをきちんと認めて、それを生かさないといけない。

・(全国各地に原発があり、潜在的にはすべての日本人が被害にある可能性がある。原発によって事故の可能性の違いはあるか?)私は浜岡が最も危険と言ってきたが、福島で事故がおきた。だから言っても当たらないかもしれない。若狭湾、伊方で起こるかもしれないし、起こってみないと分からない。潜在的にはどれも同じ危険を抱えている。各原発固有の危険はあるが、それが事故に直結するわけではない。どこがどれだけ危険かは言えないし、危険度ランキングは不可能。

・(東電や政府がこれまで認めなかったことを最近認めている。IAEAの査察の影響は?)IAEAは原子力推進の中心組織であり、事故を小さくみせようとする。特に今は天野さんがトップであり、日本の原子力を救済しようとしている。全くのインチキは書けないだろうが、日本政府と相談しながら幕引きを図るのだろう。隠すことはいずれにしても出来ないが、ショックを与えないタイミングで事実を出している。

・(冷やす、閉じ込めるという作戦だったが、格納容器に穴が開いている状況でも循環冷却、冷温停止は可能か?)冷温停止は、原子炉圧力容器が健全で、炉心がその中にあるという状態で使う言葉。既に燃料が圧力容器から出ており、冷温停止という言葉を使うことは無意味。メルトダウンした炉心は格納容器に穴を開けてコンクリの構造体を破壊しながら潜っているのだから、いかなる冷却回路も意味はない。数メートルから10メートルくらい地面の下に潜っているだろう。発熱量は下がっていき、どこかで止まる。地下水と接触すると地下水が汚染され、ヘタをするとそこで水蒸気爆発の可能性もある。原子炉建屋のまわりに深い壁を張り巡らせて地下水との接触を絶つしかない。

・(それは土木工事で、多くの労働者の投入が必要で被曝も発生する)チェルノブイリのときは60〜80万人の労働者が動員されて石棺化したが、日本で大量の被曝を強制しながらそれができるのかは疑問。

・(緊急被曝医療の専門でない医者が現場に送られようとしている。どうか?)疑問に思うが、いまはまさに戦争をしているような酷い状態。大量の人たちが被曝をしないと乗り越えられないような状態。作業員だけでなく一般の住民も被曝を強いられているが、被曝の知識を持つ医者はほとんどいない。これからの医療は大変だろう。

・(シニア行動隊の山田さんが海江田大臣に会い、大臣はシニア行動隊活用に前向きという。先生もメンバーだが実際に可能になるか?)私は原子力の場にいたことでそれなりの責任がある。私にできることがあれば行く。死なないでと言う人も言われるが、死にに行くわけではない。被曝についての知識はあるし、対策もする。私なりの責任をとりたいということだ。ただ、現場の図面や被曝状況のデータを私は事前に要求するが、それは嫌がるだろうし、私を現場に入れたいとは思わないだろう。

・(管さんはG8で原発を続けると表明した。原発を続けるという政府の姿勢をどうみるか?)想像を絶する。これだけの悲劇を目の前にして、たかが電気のためになぜ、と思う。福島の事故は、本当に賠償すれば日本の国家が倒産するほどの規模。賠償しないで逃げようとしている。到底全容が分からないような、補償もできないような被害が発生しているのに、まだ続けようとは全く理解できない。

・(どれかが水蒸気爆発を起こして連鎖的に爆発しチェルノブイリの6〜10倍の放射性物質が出てしまうということが最悪のシナリオだが、今後放出総量はどのくらいになりそうか?)おおざっぱに言うと、3月の爆発のときにチェルノブイリの1割が空気中に出た。今敷地内にある汚染水にも同じく1割。今後事故の収束までに汚染水という形でも出る。水蒸気爆発が起きるとチェルノブイリの何倍と言っていたが、水蒸気爆発が起きないとしても、じわじわ出てくる。それがチェルノブイリと匹敵するくらいになるというのは十分ありえる。

・(チェルノブイリハートという記録映画がある。甲状腺癌だけでなく奇形で生まれてくる子供も扱っている。ベラルーシの一部地域では障害を持つこどもが多く産まれている。現在は晩発性のガンの話が頻繁に取り上げられているが、他にどんなことが起こり得るか?)晩発性の放射線障害としてガン、白血病、遺伝的障害がある。それ以外にも健康障害が増えているという統計データが出始めている。それが本当に被曝と関係するかどうかは、疫学的調査を長期間行って検討される。今後いろいろな病気が出るだろうが、福島と関係あると証明されるまで何十年もかかり、その時は手遅れ。原発は本当に止めなくてはいけなかった。

・(我々にできることは?)ひとつは被曝の総量を少なくすること。作業員の方たちの被曝環境改善は待ったなしであり、そこに力を集中すべき。こどもの被曝も少なくしないといけない。こどもが遊ぶ環境を確保するために学校の表土は削り取らないといけない。

・(県のアドバイザーである山下俊一氏は100ミリシーベルトまで大丈夫、情報統制が必要とまで主張しているが?)刑務所にいれてほしい。

・(濃厚な汚染をしている土地から離れている人たちにも食物を通した間接被曝の可能性はある。そういう人たちに対しては?)福島や周辺県の農業、漁業を守らないといけない。お茶は静岡、神奈川まで汚れているが、そういうものを拒否すると農業が崩壊する。原発に頼ってしまい農業漁業を崩壊させてきた国の方向を直さないといけないと思ってきたが、事故をきっかけに逆に崩壊が加速しかねない状況。これまで原子力を許してきた責任がある大人たちが汚染された農産物などを積極的に食べて支える必要があると考える。大阪の人たちは関係ないと思っているだろうが、日本の国をどうするか考えてほしいし、大人であれば福島の農産物、海産物を引き受けてほしい。

・福島から私の手元に届けられる植物や土を測定器にかけると、想像を超える強さの放射線が出ている。その場所でこどもたちが生きている土であり、植物だ。到底信じがたいことが起きている。放射線管理区域にしないといけない場所で生きている。なんとか子供たちだけでもそうした場所から引き離したい。が、子供だけを引き離すと共同体が崩壊してしまう。戦争中は疎開があったが、今は戦争のような状態であり疎開があってもいい。ただしこどもたちが喜んでいけるような場所をつくってほしい。

・(どのくらいの範囲のこどもたちを疎開させるべき?)年間1ミリシーベルトという基準は安全量ではなく我慢量。それがいいとは思わないが、せめてそれは守るべき。福島県全域からこどもたちを引き剥がさないといけない。

・(大人は福島に住んでいいのか?福島を通る交通網は遮蔽をすればいいのか?)どれだけのリスクを我慢せざるを得ないかという社会的判断による。大人は原発を許した責任を等しく負担するというのであれば、住み続け、交通機関でも我慢する必要はある。なるべく被曝は少なくしたいが、福島県全域に匹敵するような土地の人たちの故郷を奪えるかと考えると、それはできないと思う。

・(若い人たちにはこれから子どもを作るなどの未来がある。そうした人、とりわけ女性には被曝させるべきでないと思うが、年齢が高い人の被曝はどう考えるべきか?)被曝の感受性の平均は30歳くらいで、0歳は平均より4〜5倍危険が高い。30歳であれば特に女性なら気をつけるべき。病院のX線撮影室には「関係者以外無断立ち入り禁止。妊娠する可能性のある女性は医者に申告すべし」と書いてあるが、それは意味がある。大人の男性なら30歳を過ぎれば感受性は低くなる。50歳をすぎれば大したことはなく、平均の何十分の1も鈍感。

・(男性は被曝によって遺伝的な影響が出るか?)疫学的には証明されていない。広島、長崎の被爆者を調べても影響は証明できない。ただし原理的には影響は出ると考えるのが妥当。こどもを将来作るという男性は被曝は少なくしたほうがいい。50歳をすぎたような男性は日本の原発に最も大きな責任を持つ人たちであり、被曝は甘受すべき。

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