高速増殖炉の本当の狙い 小出裕章 (ビッグイシュー)

『ビッグイシュー日本版』の2011年6月15日号(169号)の特集「原発よ さようなら ― 市民がつくる賢い電力網」に、小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)のインタビューが掲載されました。

2011年5月31日に行われたインタビューです。

記事案内

特集 原発よ さようなら ― 市民がつくる賢い電力網

現在、日本には54基の原子力発電所があり、そのうちの福島第一原子力発電所が大事故を起こした。いまだ事故の収束が見えないなか、地震のリスクを想定して浜岡原子力発電所は一時、停止された。いったい原子力発電所は、どれぐらいのリスクをかかえているものなのか?本当に原子力発電所がなければ、電気は足りなくなるのか?そこで、小出裕章さん(京都大学原子炉実験所)と田中優さん(未来バンク事業組合理事長)にお話を伺った。原子力の可能性に憧れて研究の道に進みながら、原子力のもつ危険に気づいて、40年間、原子力発電所の廃絶を訴えてきた小出さんは言う。「原子力からは、簡単に足を洗える。原発だけはやってはいけない」と。田中さんは言う。「電力が足りないのは、1年のうち、夏場・平日・日中の数日、合わせて10時間だけ。原発がなくても、十分やっていける」。そして「すぐにでも実現可能な、市民がつくる賢い電力網(スマートグリッド)」の構想を語る。福島で起こった絶望的な事態は乗り越えられるのか?今、この事故で被害をこうむっておられる方々に、私たち一人ひとりが、どのように向き合えるのか?これから私たちが原発とその事故に、どう立ち向かうのか?そのスタートになることを願って……。

インタビュー概要

5段3ページに渡るインタビュー記事ですが、小出先生の発言部分をかいつまんで要約してご紹介します。

・チェルノブイリ事故では、日本の法令による放射線管理区域の基準が適用されるエリアは、原発から700キロメートルの距離まで広がった。本州の6割を占めるほどの面積。

・東電が5月13日に原子炉には水がないと言い出したが、これが本当であれば、核燃料が溶けて圧力容器の中に落ち、鋼鉄の格納容器に穴をあけて貫通している状態だろう。溶けたウランの塊が地下水と接触して汚染した地下水が周辺や海に流れ出ないように対策をとらないといけない。

・現在までに福島第一から大気中に放出された放射性物質はチェルノブイリの数分の1だろう。私が最も恐れている水蒸気爆発が起これば、チェルノブイリ級の災害になる可能性がある。

・日本の法律の基準である年間1ミリシーベルトという被曝限度を適用すると、福島県に匹敵する面積を避難地域にすることになる。政府が言う年間20ミリを基準にしても、琵琶湖の2倍くらいの広さが避難区域となる。

・子供たちや若い人には避難してほしい。セシウム137の放射線は半減するまで30年かかり、20ミリシーベルトのところは90年たっても2.5ミリシーベルトにしかならない。

・広島の原爆では何年も草木が生えないと言われたがちゃんと生えていると言う人がいる。でも原爆の場合はキノコ雲によって放射性物質は成層圏に吹き上げられ地球全体に広がった。原発事故の場合は周辺に撒き散らされ、地面の汚染という意味では原爆よりも濃密な汚染になる。

・1945年7月16日に米国アラモゴードで、人類初の原爆が炸裂した。その後、広島と長崎が続いた。それを見てこのエネルギーを何かに使いたいと期待したのが原発の始まり。原発は毎日原爆3発分ぐらいを爆発させて電気をつくるが、その過程で核分裂生成物という毒物が生じる。またそれと同時にプルトニウムができる。もともと原子炉はプルトニウムを作る技術、装置だった。

・原発は核分裂反応で生じるエネルギーの33%を電気にして、残りは海に捨てる。そのことで海の生物環境にも悪影響を与える。また、ウラン鉱山から再処理工場に至るまで長期に渡って管理する必要があり、さらに日本では地震地帯に原発を設置している。これほどのリスクを冒して原発を作るのはプルトニウムがほしいからだ。

・建前では、高速増殖炉もんじゅの燃料としてプルトニウムを再使用するとしているが、もんじゅはトラブル続きで動いていない。苦肉の策として、ウラン用の既存の原発でプルトニウムを燃やすことにした。これがプルサーマルだが、これは灯油用のストーブでガソリンを燃やすに等しいこと。

・原発が生成するプルトニウムで核分裂するのは7割程度。高速増殖炉なら、性能が高い原爆に最適な、核分裂の割合が高いプルトニウムが作れる。そのためにもんじゅが作られたのだろう。

・日本の54基の原発はすべてGEかウエスティングハウスの原子炉。心臓部は国産ではなく、両社が特許を押さえている。フランス、英国、ロシアは自国で基礎から原子炉を設計開発したが、日本は戦後1952年まで原子力研究が禁止されていたために遅れをとり、米国の技術におぶさってきた。ただ、米国も英国もフランスも高速増殖炉だけは他国には販売も技術移転もしないため、日本は独力でもんじゅを作った。が、技術が遅れているため動かないことになった。

・原子力からは簡単に足を洗える。日本の発電所の設備能力の内、原子力は18%しかない。火力の設備を7割稼働させれば、原子力分をすべて賄える。過去の最大電力需要を見ても、火力と水力の合計以上になったこともない。原発をやめても停電はない。原子力が必要だというのは誤解。

・でも本当に言いたいのは、電気が足りようと足りなかろうと原発だけはやってはいけないということ。

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