2.被ばくの恐ろしさ・悲惨さ!/2012年11月18日 小出裕章さん講演会 in 鈴鹿国際大学(文字起こし)

2.被ばくの恐ろしさ・悲惨さ

2012年11月18日に鈴鹿国際大学で開催された「小出裕章さん講演会」の動画がYouTubeに掲載されていますが、2時間22分という長時間の動画ですので、全編視聴できない方のために、4つの記事に分けて文字起こし致しました。2件目は「被ばくの恐ろしさ・悲惨さ!」です。

▼文字起こしは以下。

放射線の発見、人間自身の手による被ばくの始まり
では、少し、元に戻って、被ばくというものが、いったいどういうものかということを少し考えてみたいと。

人間が放射線というものを見つけた一番始めは、1895年、です。
え、レントゲンというドイツの物理学者ですけれども、この人が、初めて放射線というものを見つけました。
え〜、物理学者で、え〜、陰極線管という実験装置を動かしていました。

最近のテレビはみんな液晶になりましたけれど、ついこの間まではブラウン管というテレビがありました。
このブラウン管が陰極線管の一種ですけれども、その実験を彼は自分の実験室で、していました。
要するにテレビを点けるというような実験ですね。

そうすると、その部屋ではない隣の部屋で、光が発生するということを見つけました。
テレビを止めてみる、そうすると隣の部屋の光も消える、こっちの部屋でテレビを点けると隣の部屋で光が発生する、不思議な光が出ているということで、レントゲンはその光にX線という名前を付けました。

皆さんが病院でX線撮影を受けるとかいうのは、今でもそのX線を使っています。
1895年にレントゲンが見つけたもの、です。
そして、それ以降、たくさんの人たちが、いったいX線って何なんだ、その不思議な光の正体は何だ、いうことで、突き止めようという研究を始めました。

有名なのはこの人たち、です。
ピエールとマリーですけれども、キュリー夫妻と呼ばれている人たちで、めちゃくちゃ頭のいい人たちです。
こ〜んなに頭のいい人たちがいるんだなと思う位に、頭のいい人たちでした。
しかし、いかんせんピエールにしてもマリーにしても、X線が何だか知りません。

放射線が何だか知らない。

そして、原因を突き止めようとして仕事をしていた、のです。
彼らは仕事をしている途上で、テレビのブラウン管だけではない、不思議な光を出しているものは、別にもある。
天然にあるウランというものからも、何か不思議な光を引き起こさせる力を持ったものが出ている、ということを見つけるのですが、そのときに自分の実験着のポケットにウランから抽出した様々なものを入れながら仕事をする、その実験着のまま家に帰って生活している、というようなことをやりながら、正体を突き止めようとしました。
そして、確かに彼らは成功して、放射線は何か、そして放射線を出すものの正体、放射性物質というものを次々と見つけていくということになりました。

しかし、その過程で、ピエールはからだがボロボロになってしまいまして、ある日、道路にフラフラと倒れるように出て、馬車にはねられて死んでしまいました。
マリーは白血病になって、命を落としました。

たくさんの人たちが、放射線、放射性物質、が何か分からないまま、被ばくをしていって、命を落とすということを、何十年もの間、続きました。
そういう歴史を経て、放射線というのは危険なんだ、被ばくをすると人間は死んでしまうということがだんだんと分かって、きました。

被ばくによる急性死確率
今、私はこの図の左のほうに、下のほうは帯が狭くて、だんだん帯の幅が広くなって、え〜、一番上でかなり帯の幅が広くなった赤い帯をここに描いてあります。
そして、2から8まで数字を書いてありますが、これは被ばく量です。

被ばくの量というのは、え〜、皆さんシーベルトという単位で測るということはたぶん聞かれていると思いますが、そのシーベルトという単位よりももっと基本的な被ばくの単位はグレイという単位です。
そしてこの左のほうの数字は、2グレイ、3グレイと書いてあって、一番上が8グレイなんです。

上に0、50、100と書きました。
これは何かというと、急性死亡確率というものです。
つまり、どれだけ人間が死んでしまうか、0%か50%か100%かって書いてあります。

では、この帯はどうやってみるかと言えば、こう見ます。
2グレイというとこで帯が始まっているわけで、2グレイという被ばくをすると人が死に始める、それが2グレイです。
帯の幅がだんだんだんだん広くなっていって、4グレイというところになると、急性死亡確率が50%、つまり二人に一人が死んでしまうというのが4グレイという被ばくです。
そして、8グレイという被ばくをすれば、もう人間は生きられない、ということが長い被ばく、悲惨な歴史の中で、だんだん分かってきた科学的な知識でした。

そして、そのことを裏付ける、また、事実も起こりました。
日本で、起こりました。

臨界事故が起きた茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO)
1999年の9月の30日、ですが、この赤い丸印の真ん中で、その事故が起こりました。
ここは茨城県の東海村、です。
核燃料を加工する工場だったJCOというものがこの真ん中にあって、え〜、そこで労働者が仕事をしていました。

臨界になったときの作業
こんな仕事を当日していました。

真ん中に大きな容器があって、その容器を挟んで二人の労働者が仕事をしていました。
右側に立っているこの人は、大内さんという人です。
大内さんは、大きな容器の上に穴が開いているところに漏斗を入れて、それを手で支えている状態、でした。

はしごに登って上で仕事をしているのは篠原さん、です。
篠原さんはステンレス製の容器を持っているんですが、この容器の中には、ウランを溶かした液体が入っています。
そして、その液体を大きな容器の中に流し込むという作業を篠原さんがしていた、のです。

この作業は、前日の9月29日から始まりました。
そして、二人は、今、篠原さんが手に持っているこのステンレス製の容器7杯分のウランの溶液をこの大きな容器の中に入れて、混合して全体が均一な溶液にするという作業をやっていた、のでした。

29日のうちに、このステンレス製の容器4杯分のウラン溶液を流し込みました。
そして29日の仕事は終わりました。
大内さんも篠原さんも家に帰りました。
皆さんも仕事を終えると家に帰るのと同じです。

そして、大内さんはたいへん規則正しい生活をしていた方だそうで、朝6時に起きてご飯を食べて、7時には会社に向かって出勤して行くという、そして、仕事を終えて家に帰ってくると、家族と一緒に夕食を食べる、そのときに大内さんは決まって焼酎を2杯飲むと、そういう生活をしていたのだそうです。
ですから、9月の29日に二人はこの作業を終えて、それぞれ自分の家に帰って、大内さんは家族と揃って夕食を摂りながら、焼酎を2杯飲んだ、んだと思います。

そして、翌日30日になって、大内さんはいつも通り、家で朝食を食べて、じゃ行ってくると言ったんでしょうか。
会社に出掛けて行った。
そしてこの作業を再開しました。

残っているのは3杯分です。1杯目を入れても何も起こりませんでした。
2杯目を入れても何も起こりませんでした。

最後の3杯分、を、3杯目をここに入れたときに、この大きな容器の中で、ウランが核分裂の連鎖反応を始めると、そういう事故に突入しました。
ウランが核分裂の連鎖反応を始めるということを、私たちは臨界という物理学の用語で呼んでいます。
そして、予期せぬ事故でその状態が出現してしまったがために、この事故を臨界事故って私たちが呼んできたものです。

この二人は、ウランの核分裂反応で、大量の放射線が出てきたがために、この現場で昏倒しました。
すぐに救急車が飛んで来て、現場から二人を担ぎ出しました。
そして、国立水戸病院という巨大な病院に、二人を運びました。

しかし、国立水戸病院は、二人の診療を拒否しました。
二人は被ばくしていると、被ばくしている人間の治療はしたくない、ということで、国立水戸病院は拒否し、次にどうしたかというと、二人はヘリコプターに乗せられて、千葉市にある放射線医学総合研究所という研究所の病院に担ぎ込まれました。
そこは、被ばく治療の専門病院、です。

JCO事故での被ばく量
何とかそこで、彼らを助けようと、まずは作業が始まりました。
そして、一番はじめにいったいこの二人はどれだけ被ばくをしているのかということを調べる作業をしました。
血液と採ってみたり、え〜その中の染色体を分析してみたり、からだの中にどういう放射性物質が出来ているかということを調べたりして、二人はどれだけ被ばくをしているかを突き止めました。

先ほど私は、8グレイという被ばくをしてしまうと、人間はもう助からないと、長い被ばくの中で、蓄えられてきた科学的な事実です、皆さんに聞いていただいた。
では、大内さんと篠原さんはどれだけ被ばくをしていたかというと、大内さんは18グレイ、篠原さんが10グレイという被ばくをしていた、ということが、分かりました。

助からない、です。
被ばく治療の専門病院である放射性医学総合研究所であればこそ、もうこれはダメだということが明確に分かってしまいます。

そこで放射線医学研究所は、治療を拒否するということになりました。
もう自分たちは何もできない、ということになりました。

そこでどうしたかというと、それなら仕方がない、日本の医学会が総出で、総力を結集して彼らを助けられないかやってみようということになりました。
二人は東大病院に移されて、治療を始めました。

被ばく直後は大きな変化がなかった手
東大病院に担ぎ込まれたときの大内さんの右手がこれ、です。

何となく赤く腫れぼったいというのは分かっていただけると思いますが、え〜被ばくをして8日目です、これは。
でもまあ、何と言うことはないというのは言い過ぎかもしれないけれども、まあちょっと日焼けでもしたのかな、ぐらいの手、でした。

しかし、この大内さんの手は、日焼けして赤く腫れぼったいのではない、のです。
放射線でこうなっている、のです。

皆さん、病院のX線撮影とかに行くときのことを想像してほしいのですが、撮影装置の前に立って、はい、息を止めて、はい、息を吸って、止めて、バシャって撮るわけですね。
そのときに、私の胸の前にあるのは写真の乾板、フィルム、あるいはえ〜蛍光版、です。
そして、X線自身は背中のほうから私のからだに飛び込んできます。
そして、私の背中の皮を抜けて、肉を抜けて、骨で一部止まって、また回りの肉を通って、皮を通って、貫いて、前の写真のフィルムまで突き抜けて出て来ているわけですね。

つまり、X線にしても、ほかの放射線にしても、からだを突き抜けて、全部を被ばくさせるということをしているわけで、大内さんのこの手の甲のほうの皮膚が、被ばくをしてこうなっているということは、裏側の皮膚だってそうなっているわけだし、肉だって骨だってみんな被ばくをして、しているわけです。
この表面の皮膚が、例えば海水浴で日焼けをして、ボロボロと皮膚が落ちていくとすれば、その下からきれいな皮膚が本当は出てくるわけですけれども、放射線の場合には、表面の皮膚がやられているなら、その下の本来皮膚になるべき細胞も、既にやられてしまっている、のです。

1ヶ月後には皮膚がぼろぼろになった
ではどうなるかとというと、大内さんの手はこうなりました。

表面の皮膚がダメになっても、新しい皮膚が再生してこない、どんどんどんどんジュクジュクと体液が皮膚から溢れ出してくる、ということになります。
表面の皮膚がこうなっているということは、胃壁だって腸壁だってみんな同じようになっているということです。
どんどんどんどん下血をして、下痢をして、体液を失うということになりました。

大内さんは、全身を包帯でグルグル巻きにされて、いました。
毎日、何人もの医者と看護婦が、力を合わせて大内さんの包帯を取り替える作業を繰り返したそうです。
10リッターを越える輸血、輸液を繰り返しながら、天文学的な麻薬を彼に与えながら、治療を続けました。
でも、大内さんは、包帯を取り替えられるときには、苦痛で顔を歪める、というような治療を受けながら、過ごしました。
これは、被ばく26日目とここに書かれています。

キューリー夫妻たちの活躍した時代から、たくさんの被ばくをして、8グレイを越えるような被ばくをすれば、人間は約2週間しか生きられないというのがこれまでの科学的なデータでした。

しかし、大内さんはもう既に26日、4週間も生きていた、のです。
なぜかと言えば、日本が総出で彼を延命させようとしたからです。

しかし、いかんせん、ダメでした。
結局大内さんは83日間、生きて、帰らない人になりました。

この写真は、NHK取材班の「被ばく治療83日間の記録」という本に載っていた写真です。

被曝治療83日間の記録
こんな本、です。

朽ちていった命
この本が残念ながら絶版になってしまって、今、新潮文庫から、「朽ちていった命」とタイトルに変わって、文庫、文庫になっています。
読むのも辛い本です。
1ページ読む毎に閉じてしまいたくなると、いうほどの辛い記録ですけれども、たいへん貴重な本だと思いますので、もしよろしければ皆さんにもこの本を読んでいただきたいと思っています。

被曝の単位...グレイ
私、先ほど被ばくの一番基本的な単位はグレイだと、いう話を聞いていただきました。

では、そのグレイというのは、何、どうやって決めたか、というと、こう決めました。
1キログラムの物質が1ジュールのエネルギーを吸収したときの被ばく量が1グレイです。

皆さん、何かちょっと面倒くさいな、よく分からないなと思うかもしれませんけれども、私のような人間から見ると、これほど単純に単位が決められることはなかなかありません。
非常に単純です。

1グレイという物質、あ、1キログラムという、何でもいいです。
重さのものに、1ジュールというとにかくエネルギーが加わったとき、もうそれを1グレイとすると言っているんです。
つまり、被ばくの影響、つまり被ばく量を測るときの単位は、吸収するエネルギーですべてが決まるんだということを言っている。

1ジュールというのは皆さんなじみがないと思いますが、1ジュールっていうのは0.24カロリーです。
カロリーというのは、1グラムの水の温度を1度高めるのが1カロリーです。
1グラムですね、まあ小指の先ぐらいの水を、水の温度を1度上げようとしたらば、1カロリーの水が要るということです。

じゃあ、小指の先ぐらいの1グラムじゃなくて1キログラム、つまり1000倍の水があったらどうなるかと言えば、こんどは逆に温度は1000分の1しか上がらない、それが1カロリーというエネルギーです。
そして1グレイというのは、1キログラムの物質に1ジュール、つまり0.24カロリーのエネルギーを加えるというのが1グレイなわけですから、それだけの被ばくをしたときに水はじゃあ何度上がるかというと、10000分の2度しか温度が上がらない。

たいへん微々たるエネルギー。
10000分の2度なんて、皆さん測ることすらできない、だろうと思いますが、それが1グレイというもの、被ばくであって、それが被ばくの影響をすべて決めるんだということを言っているわけです。

被曝による急性死確率
私、先ほどこの図を見ていただいた。
2グレイの被ばくをすれば、人間は死に始める、4グレイの被ばくをしたら二人に一人は死ぬと聞いていただいたわけですが、では、このときに人間の体温は何度上がるのかと言えば、1000分の1度しか上がりません。
8グレイの被ばくをしたら、全員死んでしまうと言ったわけですけれども、そのときの被ばくで人間が体温上昇したのは、1000分の2度です。
それだけエネルギーを放射線から受けてしまうと、人間は死んでしまうというそういうものなのです。

皆さん、ときどき病気になりますよね。
私だってなります。
ときどき風邪をひいて、体温計で測っていて、普段の平熱は36度なのに、あっ、今日は37度になっちゃった、ああ今日は酷いなぁ38度だなんていうときは、ときどきあります。

でも、私は死にません、そんなことでは。
安静にして寝てればいいわけだし、まあお医者さんに何かの薬を貰ってもいいですけれども、人間は簡単には死なない。
1度や2度体温が上がったってしなないというそういう生きものです。

しかし、こと、放射線に被ばくをするときには、測ることができないほどのエネルギーを貰うだけで、人間は死んでしまう、のです。
先ほど見ていただいた、大内さん、篠原さんだって、体温は1000分の数度しか上がらなかった。
被ばくということからは。
それでも、あんなように全身がヤケドになってしまって、彼のからだの細胞の中では、もう染色体がズタズタに切り裂かれてしまって、形すらが見えなくなっている、そんな状態になってしまったのです。

生きものと放射線は相いれない
何でそんなことになるかというと、生きものというもの、私もそうですし、皆さんもそうだし、ほかの生きものをそうですけど、そういう生きものというのは、この世界の中で原子がお互いに手を結びながら、分子というものになって、DNAという分子もそうです。

私たちの遺伝情報をすべて書込んでいるのもそうだし、肉だって、骨だって、まぁある原子が結合して分子になって、からだ自身を作っているのですが、そういう分子を作るときのエネルギーというのは、数evと私ここに書きましたが、これはエレクトロンボルトと呼んでいる単位で、私のような特殊な人間しか使わないたいへん微々たるエネルギーです。
そのたいへん微々たるエネルギーで、私なら私の肉体が維持されているし、私という人間の遺伝情報も維持されている、のです。

しかし、こと、放射線ていうのはどんなものかというと、皆さんが病院で受けるX線撮影のX線、そのエネルギーは、10万エレクトロンボルト、というようなエネルギーの塊、なんです。
からだを作っているエネルギーの量、大きさから言えば、数万倍というような猛烈なエネルギーの塊が、からだを貫いて、写真乾板に私のからだの内部を印画するという、そういうものなんですね。

お医者さんから見ると、たいへん便利です。
私のからだは、皆さんこうやって見れば、目で見ればこんな姿なわけですけれども、私をX線で見れば、私の骨がこんなになってる、あっアイツあそこで骨が折れてるぞと、ていうことが分かったりするわけだし、あいつあそこにガンがある、というようなことも分かるわけですね。
ですから、お医者さんは、もう喜んで使おうとする。

この頃は病院へ行ったら、お医者さんの顔を見る前に、まずは撮影して来いと、言われてしまう。
それほどのX線というのを好んで医療で使っているわけですけれども、それをやる度に私たちのからだは、猛烈な傷を受けていっていると思います。
皆さんも病院に行ったら、本当にこの撮影が必要かどうかということを、十分に注意しながら、医者とキチッと相談をして欲しいと私は思います。

そして今日、先ほども聞いていただいたし、え〜、原子力発電所で重要な意味を持つセシウム137というのは、ガンマ線という放射線を出しますが、661000エレクトロンボルトというエネルギーを持っている。
生命体の持っているエネルギーの数十万倍というような猛烈なエネルギーの塊なんです。
そんなものが細胞に飛び込んでくれば、細胞の中の分子結合がズタズタにされてしまって、生きることができなくなってしまう、体温の上昇なんかではもう到底測れない量なんだけれども、それでももうダメだということなのです。
被ばくというものは猛烈に恐ろしいということを分かっていただきたいと思います。

学問の到達点
そして今見ていただいた、たくさん被ばくをしたときに、人間が死んでしまうという例でした。

では、死んでしまわないぐらいの被ばくならいいのか、ということを考えていただきたいのですけれども、いい筈がない、のです。
被ばくをする限りは、私なら私のからだの中の分子結合がズタズタに切り裂かれるということは、どんな量であっても起きるのです。
たくさんやられてしまえば死んでしまうし、ヤケドとして現れてきたりするし、髪の毛が抜けてしまうというような症状だって出るけれども、そういう症状がすぐに目に見えなかったとしても、細胞自身が傷を受けているということは変わらない、量が少なければ、傷を受けた細胞が少ないというだけであって、無傷で居られるわけではないのです。

そして、そのことを証明したのは、広島、長崎、原爆被爆者の人たちでした。
当初、被ばくをして、苦しみながら死んでいった人もたくさんいるわけですけれども、乗り越えて、生きてきた人たちもたくさんいます。

その人たちは、被ばく者というレッテルを貼られて、その後米軍が調査に入って、被ばく者の健康状態を調べ出しました。
この人たちは死ななかった。
でも、何か健康に影響があるのではないか、と言って調査を始めました。

そして、調査を長いこと続けてきて、分かってきたことがあります。
被ばくをしてしまうと、どんなに微量でも、ガンが増えてくると、いうことが分かってきました。
最近では、ガンだけではない、どうも心臓系の病気だって増えてるようだな、ほかの病気もどうも被ばく者の中には多いようだな、ということが分かってきて、放射線というものに一度被ばくをしてしまうと、さまざまな病気が引き起こされる、ということが、次々と科学の知識として得られてくるようになりました。

私は今ここに一つ、え〜学問の到達点という、書いたスライドをこれから見ていただきます。
これは、BEIR-7報告というものをここに書こうと思うのですが、これは、Biologic Effects of Ionizing Radiation という電離放射線という、放射線に被ばくをすることによって、生物がどんな影響を受けるかということを調べる米国の科学アカデミーの中にある専門委員会です。

その専門委員会が、2005年に7番目の報告を出しました。
その中にこう書いてあります。

利用出来る生物学的、生物物理学的なデータを総合的に検討した結果、委員会は以下の結論に達した。
被ばくのリスクは、低線量に至るまで直線的に存在し続け、しきい値はない。

しきい値というのは、これ以下なら安全ですよ、安心ですよ、大丈夫ですよというものがしきい値というものですけれども、こと、放射線の被ばくに関する限りは、そんな量はない、どんなに微量の被ばくであっても、必ず危険がある、ということを明言している、これが現在の学問の到達点です。

福島原発の事故以降、日本の政府、電力会社、あるいは一部の学者たちが、100ミリシーベルト以下の被ばくなら安全だと、いうようなことを言っているわけですけれども、そういう人たちは刑務所に入れなければいけないと、私は思います。
とんでもないことなのであって、被ばくというのは必ず危険があるとして、今の現実にどう向き合うかということを、私たちは考えなければいけないのです。

外部被曝と内部被曝
被ばくには、外部被ばくと内部被ばくがあります。

外部被ばくというのは、放射線をからだの外部から受けること、です。
例えば、X線撮影というときには、からだの外にあるX線撮影装置から受ける、それは外部被ばくなわけですし、先ほど見ていただいたように、大地全体が今、放射能で汚れているわけで、その大地から人々は被ばくをしてしまう、というのは外部被ばくと呼んでいます。

では、内部被ばくというのは何かというと、放射線をからだの内部から受けてしまう。
X線撮影装置はもちろんからだの中に取り込むことはできませんけれども、大地を汚している放射性物質を食べものを通してからだの中に取り込んでしまうということは、もちろんあるわけで、私なら、私のからだ自身が汚れてしまって、それから被ばくをしてしまう、それを内部被ばくと呼んでいる、食べたり、吸い込んだりして、自分のからだを汚してしまって、被ばくをするということです。

放射性物質を体内に取り込んだ場合の被曝量
ではどうやってそれを避けることができるか、ということですが、外部被ばくの場合には、まあ比較的簡単です。

私たちはその被ばくを避ける原則を3つの言葉で言っている。
距離、時間、遮蔽と、というのですけれども、放射線を出している場所から、出来る限り離れる、ということ、そして、出来る限り長い時間離れている、近づくのであれば、出来る限り短い時間にする、ことです。
そして、遮蔽というのは、放射線を出す物質と、私なら私、被ばくをする人間との間に、何か放射線を遮るものを置くという、それが遮蔽です。

皆さん、病院に行ってX線撮影をする場合には、最近はお医者さんは隣の部屋に行っています。
今からやるぞと言って隣の部屋に行って、その壁があるんですけど、それが放射線を遮るための遮蔽になっていて、お医者さんは安全だ、患者はしょうがない、諦める、そういう状態でやっているわけですが、遮蔽をすれば避けることが出来ます。

今の事故のことで言えば、避難したり、その現場からとにかく逃げることですね。
それとも、一時的でもその場を離れる。

今日この会場にいらっしゃる皆さんでも、福島の子どもたちを一時的にでもこちらに引き取って、何日間か何週間か過ごさせるという活動をされている方がいらっしゃると思いますけれど、それももちろん効果がある。
そして、汚れてしまった放射性物質を集めて、人々のいないところに隔離をする、いうようなことも、外部被ばくを避けるために、有用です。

では、内部被ばくを避けるためには何が出来るか、私のからだが汚れているわけですから、距離なんか取れませんよね。
私自身だ、被ばくをさせる物質は。
時間もどうにもなりません。
私ですから、1時間だけ私じゃないところに私が行くなんてことは出来ないわけだし、遮蔽もできません。

内部被ばくの場合に出来ることというのは、唯一、放射性物質を食べたり、吸い込んだりしないということ、それだけです。
皆さんにとって重要なのは、これからは、食べもので回ってくるものを取り込まないという、そのことだけです。

放射性物質を体内に取り込んだ場合の被曝量
運悪く、放射性物質をからだの中に取り込んでしまうと、いったいどれだけの被ばくをするかということを今からちょっとだけ見ていただきます。
もうどうでもいいことだと思いますが、え〜興味のある方は、こういう数字を知りたいと思ってられる方もいると思いますので、今からやります。

まず、一番私が今回の福島原子力発電所の事故で、人々の被ばくに一番重要なキーをするものだと思っているのは、セシウム137という放射性物質です。
それを、呼吸で吸い込んだ場合、あるいは食べもので食べてしまった場合、それぞれ1キログラム、あ〜1キロベクレルというセシウム137をからだの中に入れたときに、何マイクロシーベルトの被ばくをするかというと、こんな数字になると言っています。
これは、国際放射線防護委員会という、え〜、組織が計算をして、今、日本の国が法律として、取り込んでいる値です。
興味のある方は書き取っておいていただければいいと思います。

え〜、セシウム134という放射性物質もありますが、それもまあ、ちょっと危険ぐらい、被ばくになります。

更にヨウ素131とかストロンチウム90とかいうような別の放射性物質もありますが、セシウムに比べれば、何倍か危険が大きいという、そういう放射性物質です。

更にプルトニウム239というような放射性物質は、それがまた何十倍というような危険を負う可能性がある、というものです。

それから原子力を推進する人の中には、天然にはもう放射性物質があるんだから、人工の放射性物質をそんな怖がる必要はないと言う人たちがいます。
一番代表が、カリウム40という放射性物質が、ですが、それももちろん食べれば被ばくをしてしまいます。
あぁ、吸い込んでもですね。
それなりの被ばくをするということになります。

ですから、出来ることならば、どんな放射性物質もからだの中に入れないということを第一に考えてほしいと思います。

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