6月2日 「溶け落ちた核燃料の取り出しは不可能でしょう 」 小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー(中)人民新聞オンライン

人民新聞

2013年6月2日付の人民新聞オンラインのWebサイトに小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー記事が掲載されていましたので、情報として掲載致します。

人民新聞オンライン


=====(引用ここから)=====

人間の手に負えない事故であることを再認識すべき

小出裕章さんインタビューの2回目は、①除染・被曝労働、②廃炉・事故対応体制、③海洋汚染の実態について。
①除染は、環境の循環によって効果は上がらないが、子どもの健康を守るために、何度でもやるべきだ。
集めた汚染ゴミは、できれば東電本社に返すべきで、それができないのなら福島第二原発をゴミ捨て場にすべき。
②事故原発収束作業は、小出さんも呆然としてしまうほど、困難な事業である。
③海洋汚染は、太平洋全域に広がっており、その実態は識りようがないと語った。

小出さんの目線は、常に子どもの健康と被曝を引き受けて作業にあたる労働者をいかに守るか?で一貫している。
東電と政府が無視し続ける視点だ。

(編集部・山田)

※ ※ ※

◆編集部
除染作業の実効性と、作業労働者の被曝管理は?

◆小出
除染そのものができないと思います。
除染というのは「汚れを除く」と書くわけですが、汚れと私たちが呼んでいる正体は放射性物質です。
これを消し去ることはできないのです。
「除染」の実態は、放射性物質を移動させる「移染」です。
しかも、環境は常に循環しています。
雨が降れば流れていき、風が吹けば飛んでいきます。
一度除染をしたつもりでも、また放射能が戻って来るのは、当り前です。

ただし私は、事故直後から「除染すべきだ」と言ってきた人間です。
子どもたちは放射線の被曝に敏感だからです。
子どもたちが集中的に時を過ごす学校の校庭、幼稚園の園庭、地域の公園などは、移染をしなければいけない。
「移染」ですから効果は限定的ですが、何度でもやって、子どもを被曝から守らなければいけない、と私は言っています。

では、汚染物を何処に移動させるのか?
今は仮置場にフレコンバッグに入れて積み上げていますが、すぐに置き場所がなくなります。
政府は各県に一カ所、集中的中間貯蔵施設を作る方針です。
これは事実上「永久貯蔵施設」です。
一度集めたものを別の場所に移動することはありえないからです。
それを覚悟で引き受ける自治体があるかもしれませんが、引き受けて欲しくありません。

汚染の正体である放射性物質は、元々東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった物で、東京電力の所有物です。
環境にばら撒かれた東京電力の所有物を集めているのだから、東京電力に返せばいいのです。
住民が何とかしようなんて思ってはいけない。

ただし、福島第一原発の敷地は、猛烈な被曝環境になってしまっているし。
そこで日夜労働者が被曝しながら闘っているわけですから、そこに新たな放射性物質を返すことはできない。
だから、東京電力の本社ビルに返すべきだと思います。

私は本気でそうしたいんですけど、多分できない。
そこで私は、現実的な案として、福島第二原発に集めるのがいいと思います。
ここは4基の原子炉が停止中ですが、東電は再稼動させたいと言っています。
とんでもないことです。
嘘をついて、周辺の住民を苦難のどん底に突き落としながら、自分は無傷で生き延び、壊れかけた発電所を再稼動させるなんて有り得ないと私は思うし、福島第2原発の広大な敷地を放射能のゴミ捨て場にすると、各県の中間貯蔵施設も必要なくなります。

杜撰な被曝管理

◆編集部
作業者の被曝管理は?

◆小出
放射線業務従事者である私は、常に被曝量を測定するためのガラスバッチを付けています。
それが規則ですが、事故原発では、誰が働いているかすら把握できていません。
働いた人が、どこに行っているかもわらない。
東京電力が作業委託すると、1次、2次、3次と10次まで下請け関係があり、労働者がどこからか駆り集められて来ています。
こんな状態でしっかりした放射線管理は無理です。

さらに深刻な問題があります。
下請け会社の指示で労働者の線量計に鉛のカバーを付けたという事件がありました。
被曝線量を低く見せるためです。
発覚したのはほんの一部です。
酷い被曝作業では、線量計そのものを置いて行くこともあります。

もっと深刻なのは、労働者自身がそれを望んでいることです。
理由は、総被曝線量が100㍉Svの基準を超えてしまうと、働けなくなるからです。
集められている労働者は、多分経済的に困窮していて仕事がない。
大阪なら西成、東京なら山谷、横浜なら寿町などから連れて行かれています。
猛烈にピンハネされた賃金ですが、彼らはそれで生きているので、被曝が限度を超してしまうと、サッと捨てられて、生活ができなくなります。
だから、自分から望んで被曝限度を超えないよう誤魔化しを行う、そういう現場だと思います。
私はそれが一番辛いです。

炉心回収は不可能?

◆編集部
事故原発の廃炉作業・事故対応体制について、IAEAすら疑問視しています。
小出さんのご意見は?

◆小出
仮に私が事故対応の全権を持っていたとすれば、東京電力や国とは違う対応を取ることもあるでしょう。
例えば、汚染水が漏れないように地下に遮水壁を張ることなどは、事故直後から言い続けています。
汚染水をタンカーに移して柏崎刈羽原子力発電所まで走らせて、そこの放射能浄化システムで処理するプランもあります。
でもそれすらが、瑣末なことなのです。

溶け落ちた炉心がどこにあるかもわらないし、見に行くことすらできない。
ロボットだって、何ができるかわからない事態です。
誰がやろうとも無理なのです。
それほど困難な事態だと思います。
私は、ああすべきだ、こうすべきだと発言はしますし、IAEAだって「世界の英知を集めてやるべき」だとか、さまざま提言しています。
でも、(大きなため息)何をやってもうまくいかないというほどの、難しい現実が目の前にあるのです。

東電に当事者能力はありませんが、学者だって無能です。
東電自身は、放射能の知識も、原子炉に対する知識も持っていません。
原子炉に関する知識は、大元は米国のGE、そしてそれを日本に導入した東芝と日立です。
瓦礫撤去ならゼネコンです。
そういう彼らが現場の知識を持っていて、収束作業を総力でやっているのです。
今のシステムが悪いから、もっといいシステムがありうるか?といえば、そういうふうに私は思えません。

私に「政府委員になれ」と言ってくださる方もいます。
私なりにやりたいことはありますが、それは瑣末なことで、原子炉本体をどう収束させるのかは、本当にわからないのです。

海洋汚染は太平洋全域に

◆編集部
海の汚染について、小出さんがわかってることを教えてください。

◆小出
海に汚染が広がっていることは、歴然とした事実です。
事故原発の敷地の外側にある防波堤の中の海底の砂・泥は、猛烈に汚染していることがわかっています。
そこで生きている魚が猛烈に被曝していることも、わかっています。
ですから、防波堤の出口に網を張って魚が外へ出ないようにするという、馬鹿げたことでもやってみようと思うほど、防波堤の中は汚れています。

発電所から海へ向って放射能が出ているので、防波堤に網を張っても汚染水は流れ出て、沖合いのコウナゴが猛烈に汚染されている例もたくさん報告されています。

ただし、東北の沖合には黒潮が流れ、昔から「海は広いな大きいな」と言われるように、拡散して薄まっているのだと思います。
大震災の瓦礫が、太平洋を越えて米国大陸に届いています。
瓦礫が届いたということは、海水が流れたということですから、汚染水も太平洋の全域に広がっていっているということです。

地面に降り落ちた放射能は、海のように拡散しません。
風雨で流れるとしても、海の拡散とは全然違うレベルです。
陸地の汚染は留まりますが、海はどんどん拡散していくので、汚染そのものが見え難いし、国も東京電力も測定しようとしないので、データそのものが少ない状態です。

その上で、海の汚染で特に私が問題だと思うのは、ストロンチウムです。
セシウムは、揮発性が高いので、空気中に噴出して大地を汚します。
ストロンチウムやプルトニウムを心配される方もいるのですが、事故で大気中に出たストロンチウムは、セシウムの1000分の1程度。
プルトニウムは100万分の1程度です。
そのため、大気の汚染は、セシウムが圧倒的に多いのです。

ところが、海の汚染の場合、揮発性は無関係です。
水に溶けるかどうかが問題で、ストロンチウムはセシウムと同様に水に溶け易いのです。
このため、ストロンチウムの汚染も考えないといけません。
しかも、ストロンチウムは測定が大変難しいのです。
ひとつの試料を測るのに何日もかかってしまうほどの面倒な操作が必要なのです。

海洋汚染のデータは少ないし、これからもなかなか出て来ないだろうと思います。
でも、海の汚染に関しては、セシウムだけ注意していればいい、というわけにはいかず、ストロンチウムに注意を払わなければいけません。

(次号へつづく)

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