6月13日 『原発「規制基準」は再稼働目的の方便』 小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー(下)人民新聞オンライン

人民新聞オンライン

2013年6月13日付の人民新聞オンラインのWebサイトに小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー記事が掲載されていましたので、情報として掲載致します。

人民新聞オンライン


=====(引用ここから)=====

「科学の進歩」は人間の幸せにつながっていなかった
原発「規制基準」は再稼働目的の方便

3回にわたる小出裕章さんへのインタビューの最終回。

原子力規制委員会が「世界一厳しい基準」と豪語する「新規制基準」は7月に施行され、再稼働への手続きがまた一歩進められる。
新規制基準の中身はどうなのか?また、事故原発の収束・廃炉作業は、どのような手順で行われ、果たして政府が言うように「30年」で終わるのか?作業の困難さを含めて聞いた。

現場に近づくことすらできない事故原発(1~3号機)では、全ての作業を遠隔操作でやらねばならないという。
この現実を見れば、再稼働などもってのほかだ。

(編集部・山田)

※ ※ ※

◆編集部
原子力規制委員会は、再稼動について「世界一厳しい基準を設ける」と言っていますが…。

◆小出
原子力規制委員会は、当初「安全基準」を作ろうとしたのですが、「規制基準」になりました。
安全性の確認なんてできないからです。
機械は壊れるので、完璧な安全基準は不可能です。
そこで「世界一厳しい規制」と言っているわけです。
でも、本当に世界一厳しい規制を作ったら、地震が頻発する日本で原子力発電所は1基も動かせません。

そもそも、原子力規制委員会は「原子力基本法」に基づいており、同法は原発を推進するための法律です。
規制委員会が何を決めようと、原子力基本法がある限り、推進が前提なのです。
原子力基本法を撤廃して「脱原発法」を作らないと、「規制基準」は再稼働のための方便に過ぎないと思います。

◆編集部
政府は、廃炉作業を30年で終える計画を示していますが、可能ですか?

◆小出
そもそも「計画」とは、状況が分ってないと立てられないものですが、ひとまず、4号機の核燃料プールの底に沈んでいる使用済核燃料を、より危険の少ない所に移さねばなりません。
それだけでも大変な作業です。

使用済核燃料は、プールの水面から出した瞬間にバタバタと人が死んでしまう程の強い放射線を発しているので、巨大な鋼鉄と鉛で作った「キャスク」という容器をプールの底に沈め、その中に燃料の集合体を入れて、蓋をして、吊り上げて移動させる、という作業となります。

キャスク自身が100トンもの重さがあるので、巨大なクレーンが必要です。
原子炉建屋の中に設置されていたクレーンは、建屋が吹き飛んで壊れました。
そこで東京電力は、壊れた建屋の上部を撤去して燃料プールを剥き出しにし、その上に巨大な建屋を建て直して、クレーンを設置しようとしています。建屋が完成してクレーンを据えつけるのに、今年の暮れまでかかるそうです。

そこから1331体の使用済燃料の全てを、完璧に移動させなければいけません。
一度でも掴み落とせば、プールが放射能で汚れてしまい、作業が何カ月も遅れることになります。
「本当にできるのだろうか?」と思ってしまいます。

幸いできたとしても、1号機、2号機、3号機にも使用済み燃料プールがあります。
1号機も3号機も、建屋はボロボロです。
特に3号機は、猛烈な破壊を受けているので、瓦礫の撤去に何年かかるのかわかりません。
遠隔操作の重機で瓦礫をどけようとしたら、掴み損ねてプールの中に落としてしまう失敗もありました。

4号機は、定期検査中で炉心に燃料はなく、メルトダウンも起きなかったので、1~3号機に比べて放射能汚染は、比較的酷くありません。
だから使用済燃料プールから燃料を掴み出す作業ができるのですが、1~3号機は、現場に近づくことすらができないのです。
全ての作業を遠隔操作でやることになるので、途方もない時間がかかるでしょう。
それでも使用済燃料プールにある核燃料は、掴み出すしかない。
10年かかるのか?20年なのか?わかりません。

その上で、1~3号機の熔け落ちた燃料を取り出す作業が出てきます。
ところが、メルトスルーした核燃料は、どこに、どんな状態であるか?すらわかっていないのです。

1979年、米国のスリーマイル島原子力発電所で、メルトダウン事故がありました。
炉心の約半分が圧力容器の底に熔け落ちたのですが、圧力容器の底が抜ける前に事故を収束できたのです。
つまり、水を圧力容器の中に貯めることができたのです。
事故から5~6年後、圧力容器の蓋を開けてみると、中に水が残っていたので、プールと直結させて全体を水浸しにし、一度はドロドロに熔けたけれど、それでも圧力容器の中に固まって残っていた炉心を掴み出すという作業ができました。

ところが福島原発の場合は、圧力容器の底が抜けています。熔けた炉心も下に落ちて、どこにあるのかもわかっていません。
東京電力は、「格納容器の床に留まっている」と発表しています。
核燃料は、厚さ1㍍のコンクリートを破壊しながら熔け落ち、1㍍の内30㌢分は残っているので、「格納容器はまだ放射能閉じ込め機能がある」と言っています。

しかし、水をかけても全然溜まらないで、じゃじゃ漏れになっているので、格納容器に大きな破壊があることは確実です。
ひょっとしたら熔けた核燃料は、格納容器のコンクリートを貫き、さらに下に沈んでるかもしれないのです。
そうなると、どんなことをやっても、上から掴み出すことはできないと思います。

東電や国の工程表では、30年で核燃料を掴み出して封鎖作業をする計画ですが、熔けた核燃料を掴み出すことができないと思うので、この工程表は意味がないと思います。

「原発は作らず、動かさず」─これが地震に備えた当然の選択

◆編集部
原発再稼動の準備が進み、「今秋にも」とも言われてます。
予想される大地震について、どういう事態が予想されますか?

◆小出
私は地震学者ではないので、どんな地震が来るのかわかりません。
でも、マグニチュード9という東日本大震災の地震が放出したエネルギーは、広島原爆3万発分です。
とても人間の手に負えるものではありません。

地殻は動乱期に入り、東日本大震災が起きて、ますます大地震が来やすくなっていると、素人ながら思います。
元々「何時起きても不思議でない」と言われていた東海地震や、東南海地震や、南海地震だって起こるかもしれないのです。

地震なんか誰も願っていませんが、来るのです。
人間が対処できるようなものではないものが来てしまうのですから、原発のようなものは作らず動かさないのが、当然の選択だ、と私は思います。

◆編集部
今も小出さんは科学の進歩や、人間の進歩を信じてますか?

◆小出
(笑) 科学は、確実に一歩一歩進みます。
ただし、一歩進むと、解らなかったものがもっと増えます。
元々科学とは、解らないものを知りたいという動機で始まっているのですが、解るものが増えていくと、その何倍もの解らないものが拡がってしまうので、際限のない営みなのです。

科学は進歩しますが、それが人間の幸せにつながっているか?と問われると、必ずしもそうではなかった。
武器だって、科学の力で進歩しました。
ナイフや刀で戦って相手を刺し殺すようなことをやれば、勝った方だって猛烈な心の痛みを感じるでしょう。
ところが現代は、空襲ができるようになって、上からバラバラバラっと爆弾落とすわけです。
下で人間がどんなふうに苦しんでるのか?なんて見ないで済みます。

現代は、誘導ミサイルです。
米国本土でゲームのようにボタンを押すと、イラクで爆弾が落ちたりするわけです。
そういうものを「科学の進歩」と呼ぶのだろうか?と思います。

「人間は進歩したか?」と聞かれてしまうと、進歩したとは全く思わないですね。
むしろ、どうしょうもない生き物になってきたように思います。

今日未知のものが明日はまたひとつ解る、ということはあると思いますが、解った先にまた未知が広がってしまうし、解ったことが人類の幸せにむしろ逆行するようになっていると思います。

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