2月10日 「1.事故原発の現状と、2.IAEA(国際原子力機関)について 」 小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー 人民新聞オンライン

人民新聞オンライン

2014年2月10日付の人民新聞オンラインのWebサイトに小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー記事が掲載されていましたので、情報として掲載致します。

人民新聞オンライン


=====(引用ここから)=====

汚染水処理/核燃料取り出し
人類が初めて遭遇する過酷事故〜世界中の専門家を集めて検討すべき

2014年最初の小出裕章さんインタビューを掲載する。
今回は、①事故原発の現状と、②IAEA(国際原子力機関)についての解説をお願いした。
まず、汚染水処理、使用済核燃料取り出し作業、廃炉作業の現状と見通しを聞いた。
次にIAEAについて聞いたのは、同機関が、福島県内に2つの研究所(南相馬市・田村市)を設置し、国際的支援体制の拠点と位置づけているからだ。
東電は言わずもがなだが、日本政府に対しても「当事者としての責任感も解決能力もない」として、「国際的枠組みで収束作業にあたるべき」との世論が国内外で広がりつつある。

この「国際的枠組み」の中心として想定されているのがIAEAだが、IAEAは、「原子力マフィアの頭目」との評価もある。
IAEAの歴史を辿り、その性格や目的を語っていただいた。
最後に、年頭にあたっての抱負や若者へのメッセージをお聞きした。謙虚で真摯であろうとする小出さんらしいコメント。
(文責・編集部)

※ ※ ※

汚染水処理に展望なし〜冷却法の抜本的転換を検討すべきだ

◆編集部
メルトダウンした核燃料について東電は、「格納容器内にとどまっている」と発表しています。
しかし、海外の専門家に中には、「既に地下地盤に達している」との評価もあります。小出さんはどう判断していますか?

◆小出
1~3号機はとてつもない汚染で、人が原子炉建屋にすら入れず、ましてや格納容器の内部を見に行くことができません。また、正確に知ることができる測定器の配置もないまま事故に突入したので、燃料の所在は誰も知ることができないのが現状です。

東電の発表は計算コードによる推測なのですが、計算コードとは、実験によって確かめながら修正・運用していくものです。実験も実証もできない計算予測など、もともと意味がありません。

原子炉建屋下には地下水が流れていますが、表面を流れる地下水の下に水を通さない岩盤があり、さらにその下に2層目の地下水が流れています。最近、この2層目の地下水が汚染されていることがわかってきました。

これは、熔けた炉心が、岩盤を貫いて2層目の地下水層まで達している可能性を示唆しています。海外メディア・研究者はこれを根拠に、「炉心熔融が進行している」と推測しているようですが、私には確信はありません。

私は、「熔けた炉心を冷やすために事故直後から注入し続けている冷却水が、地下に流れ出ている」と指摘し続けてきました。汚染水は、原子炉建屋・タービン建家の地下、トレンチ・ピット・立坑などに溜まっているのですが、これらの構造物は、コンクリートでできています。あれだけの地震で壊れていないはずがないのです。コンクリートの割れ目から汚染水が地下に流れ出ているのは、確実です。

現在、事故原発周辺は「放射能の沼」のような状態になっているので、2層目地下水の汚染は、1層目の汚染水が岩盤の割れ目から下に浸透している可能性もあります。

◆編集部
汚染水処理の目処が未だに立ちません。今後の見通しは?

◆小出
東電と政府の方針は、①増える汚染水を貯めるタンクを現状40万㌧から80万㌧まで増やす、②その間にALPS(多核種除去設備/注参照)という浄化装置で処理を進め、法定汚染濃度以下になったものを海に放出する、というものです。

しかし、まずALPSはまともに動かないと思います。
仮に動いたとしても、ストロンチウムを法定限度以下まで処理することはとても難しいでしょう。
さらにトリチウムは、どんな装置を作っても不可能なので、結局、汚染水は薄めて海に棄てることになると思います。

しかし本来、放射能を海に棄てることなどやってはいけないことですから、私は、冷却方法を抜本的に転換すべきだと考えています。
汚染水の増加を食い止めるには、水での冷却は諦め、金属による冷却や液体窒素で全体を凍らせる方法、あるいは空冷の可能性も含めて検討すべきです。

ただし、鉛を投入するという金属冷却法にしても、熔けた炉心がどこにあるかわからないのですから、うまくその場に到達させることができるかどうか、確信が持てません。
福島事故は、人類が初めて遭遇している過酷事故なので、対処法も試行錯誤しながらやってみるしかないのです。
金属による冷却も、あくまで1つの提案でしかありません。世界中の専門家が集まって検討するほかないと思います。

困難だらけの核燃料取り出し〜完璧な作業前提とした「計画」

◆編集部
4号機燃料プールにある使用済核燃料取り出し作業について。

◆小出
使用済み核燃料は、取り扱いがとても難しい物体です。
プールの底にある使用済み燃料集合体を空中に吊り上げるようなことがあれば、周囲の人がバタバタと死んでしまうほどの強烈な放射線を発しています。

「キャスク」という巨大な容器を水中に沈めて、使用済み燃料を入れてフタをして初めて、プールの水面から上に出すことができます。

ところが、建屋爆発でクレーンも破壊されてしまったので、東電は、4号機建屋上部を撤去し、新たな建屋を組み立てたうえで、燃料交換機やクレーンを設置しました。
いちおう作業機器は作られたのですが、建屋の中はやはり高い放射線量で、ゆっくり、慎重に作業できる環境ではありません。

また、プールの中には瓦礫がたくさん崩れ落ちています。
大きな瓦礫は掴み出したのですが、まだ中小の瓦礫が散乱しています。
燃料棒は、ラックに1体1体突き刺して保管していますが、ラックの上にも瓦礫が残っているので、ラックと燃料棒の間に瓦礫が噛み込んでいる場合もあります。

そうなると燃料棒を引き出すことができないし、無理に引き出そうとすると破損する可能性もあります。
何とか吊り出しても、途中で落としてしまったりすると、燃料棒が破損し、放射能がプールの中に溶け出すこともありえます。

燃料棒取り出し「年内完了」は実現不可能

◆編集部
東電は、「年内に取り出しを完了する」と言っていますが…。

◆小出
プールの中には、1331体の使用済み燃料集合体があります。
広島型原爆に換算すると1万4000発分の放射能です。
1集合体当たり原爆約10発分の放射能が含まれる、という計算になります。

1回あたり22体の燃料集合体(10㌧)をキャスク(90㌧)に入れてクレーンで吊り上げ、いったん地上に降ろして、隣にある共用燃料プールに移す計画です。
プールのあるフロアは高さ33㍍なので、もし作業途中でワイヤが切れて落下しようものなら、大変なことになります。

東電は、「ワイヤーを二重に掛けているので大丈夫」と言っていますが、キャスク落下時の性能試験は9㍍なので、万が一キャスクが破損すると、放射性物質が吹き出し、作業は中断します。

キャスクを使った移送は、1回の作業で約1週間かかると見積もられています。
つまり、1年で52回作業できるということです。1回の作業で22体の集合体を移送できるので、年間1100体移送できる、そしてキャスクは2つあるので、年内には終えられるはずだ、というのが東電の計画です。

しかしこれは、あくまでトラブルがなく完璧な作業を前提とした机上の計算です。
先ほど説明したような作業環境とプールの状態なので、トラブルなく1年間作業を完璧にやり通すことなど本当にできるのでしょうか?

4号機の取り出しが終わったとしても、次には1~3号機が待っています。
こちらは4号機に比べるとはるかに放射線量の高い環境での作業となるので、その困難さは言うまでもありません。

税金投入するなら東電倒産が大前提

◆編集部
「東電に当事者能力はないので、政府が全面的に責任を負うべきだ」という主張が強まっていますが…。

◆小出
日本政府は「原発安全神話」をねつ造し、原発にお墨付きを与えてきた人々ですから、解決能力も責任能力も欠如しています。

一例を紹介します。
政府は、電力会社を「監視する」ためとしてオフサイトセンターという出張所を作っています。
事故の際は、対策本部にもなるはずでした。
ところが、実際に福島事故が起こると、オフサイトセンターの職員は、住民を逃がす前に真っ先に逃げてしまったのです。
当事者としての責任感も能力も全く欠如しています。

東電は日本を代表する巨大企業ですが、その東電を何十回倒産させても贖いきれない被害が既に出ているわけで、そもそも東電に事故の対応を任すことなど、初めからできないのです。

だから国が責任を負うのは当然ですが、まず東電を倒産させて、「国家が倒産するかもしれないほど大変な事故なのだ」と宣言して、国がやるしかないと思います。
安倍首相は「国が責任をもって」などと言っていますが、政府の金は、他ならぬ私たちが出している税金です。
ましてや、被害者である人たちの金でもあるのです。
その金を使って東電と政府の尻ぬぐいをしようというのですから、安倍首相はまず、自らの過ちについての深い謝罪から始めなければならない立場のはずです。

安倍さんが謝罪するとは到底思えませんが、原発事故は血税を使って処理するほかないと思います。

◆編集部
今年の目標は?

◆小出
1年の計を立てる余裕はありませんでした。
気づいたら事故から3年も経とうとしているのに、収束の目処すら見えません。
故郷を追われた10万人を越える人々が、難民化しようとしています。

日本の法律では放射線管理区域にしなければならない場所に数百万人が棄てられてしまい、子どもたちも日々被曝しています。
この事態をどうしたらいいのか?わからないまま3年経ってしまいました。
これからも目の前の課題に追われながら生きていくしかない、と思っていますが、状況をできるだけ正確に分析して皆さんに伝えることが私の仕事だと思っています。

◆編集部
若い人へのメッセージは?

◆小出
私が若い人に何かメッセージを贈れるような立場の人間とは思えません。
原子力を許してきた大人の世代として、若い人には謝るしかありません。
特に原子力の現場にいる人間としては、それ以外に言葉が浮かびません。

あまりにもバカな大人たちがたくさんいるので、未来は若い人に託すしかありませんし、あなたたちが私の希望です。(3面に関連記事)

原発推進・売り込みの国際機関IAEAに福島原発事故収束を委ねることはできない

小出裕章さんに聞く

◆編集部
海外では、日本政府への不信と地球規模での環境破壊という観点から、国際的取り組みで解決を図るべきだ、との主張が強まっています。
この「国際的」といった場合、「IAEA」がその中心に座ることになりそうですが…。

◆小出
日本で「原子力」と呼んでいる技術体系は、「核」技術と全く同一です。
その根っこを辿っていけば、米国は第2次世界戦争中に核爆弾の製造のために、ウラン濃縮技術を作り上げました。
さらに、ウランに代わる物質の研究を進め、プルトニウムを作り出す装置として「原子炉」を造ったのです。
また、そのプルトニウムを取り出す「再処理」という技術も生み出しました。

つまり、核爆弾を作る中心技術とは、①ウラン濃縮、②プルトニウムを作り出す原子炉、そして、③プルトニウムを取り出す再処理、です。

こうして米国は大量の核兵器を製造したのですが、世界的核軍拡競争となり、地球そのものの存亡に関わる事態となりました。
そこで、たくさん作ってしまった濃縮工場や原子炉・再処理工場を民生転用するという発想で作られたのが、「原子力の平和利用」というスローガンなのです。
つまり、戦争のための核技術を金儲けの道具にしよう、という転換です。

1953年、アイゼンハワー大統領(当時)が、国連で「平和のための原子力」という演説をし、原子力発電がスタートしました。
その実態は、米国が原発を海外に売りつけるビジネスです。

しかし、原子炉は核兵器を作る中心技術ですから、海外にばらまいてしまうとたいへんなことになるので、核兵器を独占したい米国は、「核不拡散条約」を作って、核保有国(米・ソ・英・仏・中)は認めるけれども、他国の核兵器製造は絶対に許さない、というタガをはめようとしました。
この役割を引き受けたのが、IAEA(国際原子力機関)です。
IAEAの2大目的は、①金儲けのために原発を売りつけることと、②核兵器を作らせないための監視役です。

そもそもそんな矛盾したことは不可能だと思いますが、IAEAは原発を推進し売りつけるための組織ですから、事故調査・収束作業の過程で、原発推進に不都合な事実は隠されてしまうことは、容易に推測できます。

福島県南相馬市と田村市に作られる研究所にしても、目的は「新たな安全神話」の普及だと思います。
それは、「低線量被曝はそれほど健康被害をもたらさないし、原発が事故を起こしても住み続けることはできる」という神話です。

説明したように、IAEAは原子力を推進してきた中心機関です。
いわば犯罪者の頭目なので、事故収束を任すことはできません。
ただし、IAEAには専門家もたくさんいますから、知恵を借りることはありえますが、少なくとも原発に批判的な専門家を含めてやるべきだと思います。

◆編集部
批判的な専門家がまとまって提言を出すというような動きはありますか?

◆小出
「健康への影響」といったテーマで市民サイドが福島や東京で国際会議を開催したりということはありますし、研究者が個人的に国境を越えて情報交換することはあります。
しかし、事故対策という技術面も含めて批判的専門家がまとまって提言するということは、いまだできていません。

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