5月20日 「放射線管理区域(4万Bq/㎡)に数百万人が、普通に暮らすという違法状態を直視すべき 」 小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー 人民新聞オンライン

人民新聞オンライン

2014年2月10日付の人民新聞オンラインのWebサイトに小出 裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー記事が掲載されていましたので、情報として引用致します。
汚染地図を含む全文は、引用元の人民新聞オンラインのWebページをご覧ください。

人民新聞オンライン


=====(引用ここから)=====

放射線管理区域(4万Bq/㎡)に数百万人が、普通に暮らす
─という違法状態を直視すべき

原発事故から3年、政府は避難指示区域の解除を始めた。
4月1日、福島県田村市都路地区の解除を皮切りに、他の6市町村も今後2年間で解除を検討し、計約3万人が帰還するかどうかの判断を迫られる。

一方、福島での鼻血の出血を含む健康被害について描いたコミック「美味しんぼ」が激しいバッシングを受けている。
被曝と健康被害の関連があらためて議論になる中、関東の被曝状況と健康被害について、小出裕章さんに聞いた。

小出さんは、日本が違法状態にあることをまず認識すべきだ、と力説した。2回連載とする。(文責・山田)

※ ※ ※

「美味しんぼ」へのバッシング
科学的とは、全ゆる可能性を検証する態度

◆編集部
『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に連載されている「美味しんぼ」が論争の種になっています。

◆小出
つい先日、編集部から問い合わせがあり、私の見解を伝えました。

猛烈なバッシングを受けているのは、「福島で鼻血が多発している」という井戸川・元双葉町々長の証言を描いた部分です。
批判者たちは、「被曝と鼻血に因果関係はなく、極めて非科学的」「風評被害を煽るものだ」と批判しています。

事故後の福島の被曝線量と鼻血の因果関係は、現段階では立証されていません。
ただし、「立証されていない」ことと「因果関係はない」こととは、イコールではありません。
科学とは、丹念に事実を調べ、論理を組み立てていくことです。従来わからなかったことが、研究の蓄積によってわかるようになることが、科学の本質です。
「わからない=ない」という論理自体が、科学的ではないと思います。

被曝によってどんな症状が出るか?という研究において、最大のデータベースは、ABCC(米軍・原爆傷害調査委員会)による広島・長崎の調査です。
しかしこの調査は、1950年に開始されたものです。
つまり、原爆投下後5年間のデータは、空白なのです。原爆投下・敗戦という大混乱の中で、どれだけの人が鼻血を出したか?のデータは、記録されていません。

つまり、被曝と病状の因果関係を立証するための「研究データがない」というのが現状です。
症状を訴える人がいるなら、被曝と因果関係がないか調べるという態度こそが大切で、最初から「因果関係がない」と言ってはいけないと思います。

今の私には、被曝と鼻血との因果関係を立証する力はありません。
しかし、被曝によって人体にはあらゆる病状が起こりうると思っていますので、あらゆる可能性を排除しないで、調査するのが、科学的な態度です。

汚染地域ではあらゆる病状が起こりうる

◆編集部
東京を含む関東地域の被曝程度は?

◆小出
日本が法治国家だというなら、東京都の一部を含む広大な地域が、放射線管理区域に指定されるべき汚染地である、という現実を直視しないといけません。

放射性物質を取り扱うことができる場所は、日本の法律によって特定の場所に限定されています。
それが放射線管理区域です。
一般の人が立ち入ってはいけない場所であり、私だってここに入れば、水を飲んでも食事をしてもダメです。
管理区域から外に出る時には、汚染検査をしなければならないのですが、その基準値が4万Bq/㎡です。私の体のどこかに4万Bq/㎡を超える部分があれば、除染しないかぎり外へは出られないのです。

管理区域から4万Bq/㎡以上の汚染物=実験着などを持ち出すことも、禁止されています。
人間の住むところに4万Bq/㎡以上の汚染物があってはならないというのが、日本の法律です。
私はこれを守り、汚染物を外に出さないように細心の注意を払ってきたつもりです。

ところが、原発事故で4万Bq/㎡を超える汚染が、広大な地域に広がってしまいました。
東京の一部も6万Bq/㎡を超えています。

地図上の④の地域は、60万Bq/㎡を超えている地域です。
強制避難区域に指定され、10万人以上の人々が故郷を奪われました。
濃いグレー③の地区は、10万Bq/㎡以上、次に濃いグレー②は、6~10万Bq/㎡の地域です。
最も薄いグレー①は、3~6万Bq/㎡で、この地図は、政府発表のセシウムによる大地の線量図です。

私のような人間しか入っていけない上に水すら飲んではいけない場所に、一般の数百万人が普通に生活をしている、という異常な状態であることを、はっきり認識してほしいと思います。
このことが被曝の議論から抜け落ちていることが、まず不思議です。

緊急時だからということで、なし崩しに放置されていますが、現在の日本は、違法状態が続いていることを、まず確認すべきだと思います。

健康被害については、そういう汚染地の中ですから、さまざまな病状が出ると思います。
どんな症状が出るかといえば、疫学調査もデータも不足しているので言い辛いのですが、必ず出るとされているのが、ガンと白血病です。
どんな低線量被曝でもガンと白血病は発病する、というのが現在の科学の到達点です。

ただし、ガンと白血病は、被曝をしなくても発症する病気なので、その因果関係を立証するのは、たいへん困難です。
そのためには、綿密な疫学調査計画を立てて調査し続けることが必要です。
ところがこの国の政府は、被害を隠そうとしていますから、綿密な疫学調査は行われないのではないかと危惧しています。

「避難指示解除」は到底許されない

◆編集部
避難指示区域の解除と帰還方針について。

◆小出
放射線管理区域の中でも作業者が容易に触れることができる表面は、40万Bq/㎡を超えてはいけない、と定められています。
つまり、放射線管理区域の中でも、40万Bq/㎡を超える物体があってはならないのです。

ですから、60万Bq/㎡を超える地域というのは、私にとって想像もできない場所です。
さすがにこの地域は帰還困難地域ですが、そのすぐ外側の59万Bq/㎡の汚染地域住民には、帰還しなさいと言っているのです。
住民には、赤ちゃんも子どもも含まれてしまいます。

そもそも放射線管理区域(4万Bq/㎡)は、18才未満の者が立ち入ってはいけない地域なのです。
こんな場所に子どもを含めて帰すなどということは、到底ありえない施策です。

表面汚染=60万Bq/㎡の基準は、年間被曝量に換算すると、概ね20㍉Sv/年となります。
これは、放射線業務従事者という特殊な仕事をする人だけに許した基準です。それを一般の人、赤ん坊や子どもにも許すという政策なのです。

民主党政権時代に、「20㍉Sv/年までは我慢させる」という方針が打ち出された際、内閣府参与だった小佐古敏荘さんが、涙の辞任会見をしました。
彼は私の論争相手で、あちこちで「被曝なんて怖くない」と言い歩いていた人です。

その小佐古さんが「自分の孫をそんな目にあわせるのは絶対いやです」と泣きながら訴えるくらいの被曝量なのです。
放射能を取り扱う人間にとっても高い基準だし、子どもには決して許してはいけない基準です。
そんなところに子どもたちを帰すなど、到底あり得ない政策です。

原発に反対する人たちの中にも、「美味しんぼ」での鼻血の記載を非難する人たちがいますが、些末なことに目を奪われず、現在進行している犯罪行為そのものに向き合ってほしいと願います。

=====(引用ここまで)=====

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