2012年11月29日、岩上安身さんによる小出裕章へのインタビュー取材の中継録画が iwj(Ustream) にて配信されていましたので、このブログでも共有させていただきます。
以下、情報を引用いたします。 続きを読む »
2011年6月7日(火)15時より岩上安身氏が京都大学原子炉実験所にて小出裕章氏をインタビューし、その模様が生中継されました。
録画
110607小出裕章助教インタビュー1/2 (11分46秒)
http://www.ustream.tv/recorded/15220732
110607小出裕章助教インタビュー2/2 (68分38秒)
http://www.ustream.tv/recorded/15220874
要約
・(東電が5月12日に1号機はメルトダウンしていたと発表した。その後、昨日になって2号機3号機もメルトダウンしていると保安院が発表した。どのように受け止める?)正確なデータが最も大切で、それがなければ推論の意味がない。東電は、炉心損傷の割合が70%あるいは55%というような過去の誤った推定について説明すべきだ。最近の発表も根拠は示されておらず、また全く異なる発表をする可能性も否定できない状態だ。
・(2、3号機については新たな発見はなく、今回のメルトダウン発表は既存データの読み方を変えたことによる?)そのはず。保安院は既にメルトダウンしていると言うが、それが本当であれば私が恐れていた水蒸気爆発は回避されたということになる。水蒸気爆発が起きない溶け方をしたのだろう。比較的少量の水のなかに大量の溶融物体が落ちると水蒸気爆発が起きる。逆のときは起きづらい。少しずつ流れ落ちると水蒸気爆発になりづらい。
・(東電と保安院の推測が間違っている可能性があるとしたら、どういうことがありえるか?)炉心の上半分は崩れ落ちているが下半分がまだ形状を保っているというケースはありえる。その場合、外部からの水の注入量が少なくなったり、破損箇所が大きくなったりしたときに、一気に大量の炉心が溶けて底にある水と反応して水蒸気爆発が起こりえる。東電が注水を続けているのはその可能性も否定できないということ。
(中継中断)
・水棺方式を目指して時間を無駄にしてきたが、今後は限られたパワーを有効に使うために意味があることに集中してほしい。
・(保安院は放出された放射性物質の総量を37万テラベクレルから77万テラベクレルに修正したが?)もとは大気中に放出されたヨウ素とセシウムの量を評価したもの。昨日の保安院の数値は溢れている汚染水の分も加算したもの。事故直後の爆発で大量に放出され、その後大量の汚染水が出ている。作業を誤ると、これまで大気中に出たものより多いものが出てしまう。
・(水棺は無駄ということは、東電は本当に分からなかったのか、それとも政治的、非合理的な理由によって続けていたのか?)分からない。政治については分からない。科学的に見れば水棺ができないというのは誰でも分かる。東電が何を考えたのかは分からない。
・(政府は3月12日の時点でメルトダウンを知りながら隠していた可能性が高い。多くの人に被曝を強いることになった。なぜか?)日本の国は原発では事故は起きないしメルトダウンはありえないと言い続けていた。できる限り認めたくないという動機がある。事故が小さくあってほしいという願望もある。騙してでもパニックを回避したいと考えたのだろう。
・普通の人は年間1ミリシーベルトしか被曝しないことに法律で決まっている。ところが絶対起きないと豪語していた事故が起き、その基準を守ることができなくなった。すると、非常事態だから20ミリシーベルトまでは我慢させるとなった。が実際にはそれをも超えて被曝している人が沢山いる状況。事故直後に状況をきちんと知らせれば必要な処置が可能だったが、しなかった。そういう政府だ。どこかで責任をとらせたい。
・(先日参院の委員会で発言された。政府がとるべき責任についてどう考える?)原子力の世界では何があっても責任を絶対とらない。誰ひとりとして責任を取らない世界。JCOの臨界事故では二人の労働者が悲惨な死を強いられたが、責任は労働者に押し付けられた。美浜の発電所で蒸気の配管が破れて5人が悲惨な死を遂げたが、関西電力は誰も責任をとらなかった。今回も実際に福島で事故が起きた。運転許可を与えた原子力安全委員会の人を刑務所に入れるべき。誰も責任をとらない異常な世界は認めるべきでない。福島第一原発の運転継続を認めた首相がまだ生きていれば、刑務所に入れるべき。
・(今回の事故の原因は津波ではなく地震動であるということについて解説を)地震で高圧注水系という緊急炉心冷却系の一部を動かし始めた時に原子炉の圧力が下がった。つまり配管が破れていたということだが、その配管は建屋の中にあり、津波ではなく地震によって壊れた。また、2号機のサプレッションチェンバーで水素爆発が起きた。が、格納容器は窒素で満たされており本来水素爆発は起き得ない。起きたということはそこに酸素があったということ。つまり既に破損していたということ。重要な機器が地震で破損した。地震国の日本に54基の原発が林立しているが、政府は安全だと言い張ってきたため、地震で壊れたことは認めたくない。しかし、津波ではなく地震で福島がやられたということをきちんと認めて、それを生かさないといけない。
・(全国各地に原発があり、潜在的にはすべての日本人が被害にある可能性がある。原発によって事故の可能性の違いはあるか?)私は浜岡が最も危険と言ってきたが、福島で事故がおきた。だから言っても当たらないかもしれない。若狭湾、伊方で起こるかもしれないし、起こってみないと分からない。潜在的にはどれも同じ危険を抱えている。各原発固有の危険はあるが、それが事故に直結するわけではない。どこがどれだけ危険かは言えないし、危険度ランキングは不可能。
・(東電や政府がこれまで認めなかったことを最近認めている。IAEAの査察の影響は?)IAEAは原子力推進の中心組織であり、事故を小さくみせようとする。特に今は天野さんがトップであり、日本の原子力を救済しようとしている。全くのインチキは書けないだろうが、日本政府と相談しながら幕引きを図るのだろう。隠すことはいずれにしても出来ないが、ショックを与えないタイミングで事実を出している。
・(冷やす、閉じ込めるという作戦だったが、格納容器に穴が開いている状況でも循環冷却、冷温停止は可能か?)冷温停止は、原子炉圧力容器が健全で、炉心がその中にあるという状態で使う言葉。既に燃料が圧力容器から出ており、冷温停止という言葉を使うことは無意味。メルトダウンした炉心は格納容器に穴を開けてコンクリの構造体を破壊しながら潜っているのだから、いかなる冷却回路も意味はない。数メートルから10メートルくらい地面の下に潜っているだろう。発熱量は下がっていき、どこかで止まる。地下水と接触すると地下水が汚染され、ヘタをするとそこで水蒸気爆発の可能性もある。原子炉建屋のまわりに深い壁を張り巡らせて地下水との接触を絶つしかない。
・(それは土木工事で、多くの労働者の投入が必要で被曝も発生する)チェルノブイリのときは60〜80万人の労働者が動員されて石棺化したが、日本で大量の被曝を強制しながらそれができるのかは疑問。
・(緊急被曝医療の専門でない医者が現場に送られようとしている。どうか?)疑問に思うが、いまはまさに戦争をしているような酷い状態。大量の人たちが被曝をしないと乗り越えられないような状態。作業員だけでなく一般の住民も被曝を強いられているが、被曝の知識を持つ医者はほとんどいない。これからの医療は大変だろう。
・(シニア行動隊の山田さんが海江田大臣に会い、大臣はシニア行動隊活用に前向きという。先生もメンバーだが実際に可能になるか?)私は原子力の場にいたことでそれなりの責任がある。私にできることがあれば行く。死なないでと言う人も言われるが、死にに行くわけではない。被曝についての知識はあるし、対策もする。私なりの責任をとりたいということだ。ただ、現場の図面や被曝状況のデータを私は事前に要求するが、それは嫌がるだろうし、私を現場に入れたいとは思わないだろう。
・(管さんはG8で原発を続けると表明した。原発を続けるという政府の姿勢をどうみるか?)想像を絶する。これだけの悲劇を目の前にして、たかが電気のためになぜ、と思う。福島の事故は、本当に賠償すれば日本の国家が倒産するほどの規模。賠償しないで逃げようとしている。到底全容が分からないような、補償もできないような被害が発生しているのに、まだ続けようとは全く理解できない。
・(どれかが水蒸気爆発を起こして連鎖的に爆発しチェルノブイリの6〜10倍の放射性物質が出てしまうということが最悪のシナリオだが、今後放出総量はどのくらいになりそうか?)おおざっぱに言うと、3月の爆発のときにチェルノブイリの1割が空気中に出た。今敷地内にある汚染水にも同じく1割。今後事故の収束までに汚染水という形でも出る。水蒸気爆発が起きるとチェルノブイリの何倍と言っていたが、水蒸気爆発が起きないとしても、じわじわ出てくる。それがチェルノブイリと匹敵するくらいになるというのは十分ありえる。
・(チェルノブイリハートという記録映画がある。甲状腺癌だけでなく奇形で生まれてくる子供も扱っている。ベラルーシの一部地域では障害を持つこどもが多く産まれている。現在は晩発性のガンの話が頻繁に取り上げられているが、他にどんなことが起こり得るか?)晩発性の放射線障害としてガン、白血病、遺伝的障害がある。それ以外にも健康障害が増えているという統計データが出始めている。それが本当に被曝と関係するかどうかは、疫学的調査を長期間行って検討される。今後いろいろな病気が出るだろうが、福島と関係あると証明されるまで何十年もかかり、その時は手遅れ。原発は本当に止めなくてはいけなかった。
・(我々にできることは?)ひとつは被曝の総量を少なくすること。作業員の方たちの被曝環境改善は待ったなしであり、そこに力を集中すべき。こどもの被曝も少なくしないといけない。こどもが遊ぶ環境を確保するために学校の表土は削り取らないといけない。
・(県のアドバイザーである山下俊一氏は100ミリシーベルトまで大丈夫、情報統制が必要とまで主張しているが?)刑務所にいれてほしい。
・(濃厚な汚染をしている土地から離れている人たちにも食物を通した間接被曝の可能性はある。そういう人たちに対しては?)福島や周辺県の農業、漁業を守らないといけない。お茶は静岡、神奈川まで汚れているが、そういうものを拒否すると農業が崩壊する。原発に頼ってしまい農業漁業を崩壊させてきた国の方向を直さないといけないと思ってきたが、事故をきっかけに逆に崩壊が加速しかねない状況。これまで原子力を許してきた責任がある大人たちが汚染された農産物などを積極的に食べて支える必要があると考える。大阪の人たちは関係ないと思っているだろうが、日本の国をどうするか考えてほしいし、大人であれば福島の農産物、海産物を引き受けてほしい。
・福島から私の手元に届けられる植物や土を測定器にかけると、想像を超える強さの放射線が出ている。その場所でこどもたちが生きている土であり、植物だ。到底信じがたいことが起きている。放射線管理区域にしないといけない場所で生きている。なんとか子供たちだけでもそうした場所から引き離したい。が、子供だけを引き離すと共同体が崩壊してしまう。戦争中は疎開があったが、今は戦争のような状態であり疎開があってもいい。ただしこどもたちが喜んでいけるような場所をつくってほしい。
・(どのくらいの範囲のこどもたちを疎開させるべき?)年間1ミリシーベルトという基準は安全量ではなく我慢量。それがいいとは思わないが、せめてそれは守るべき。福島県全域からこどもたちを引き剥がさないといけない。
・(大人は福島に住んでいいのか?福島を通る交通網は遮蔽をすればいいのか?)どれだけのリスクを我慢せざるを得ないかという社会的判断による。大人は原発を許した責任を等しく負担するというのであれば、住み続け、交通機関でも我慢する必要はある。なるべく被曝は少なくしたいが、福島県全域に匹敵するような土地の人たちの故郷を奪えるかと考えると、それはできないと思う。
・(若い人たちにはこれから子どもを作るなどの未来がある。そうした人、とりわけ女性には被曝させるべきでないと思うが、年齢が高い人の被曝はどう考えるべきか?)被曝の感受性の平均は30歳くらいで、0歳は平均より4〜5倍危険が高い。30歳であれば特に女性なら気をつけるべき。病院のX線撮影室には「関係者以外無断立ち入り禁止。妊娠する可能性のある女性は医者に申告すべし」と書いてあるが、それは意味がある。大人の男性なら30歳を過ぎれば感受性は低くなる。50歳をすぎれば大したことはなく、平均の何十分の1も鈍感。
・(男性は被曝によって遺伝的な影響が出るか?)疫学的には証明されていない。広島、長崎の被爆者を調べても影響は証明できない。ただし原理的には影響は出ると考えるのが妥当。こどもを将来作るという男性は被曝は少なくしたほうがいい。50歳をすぎたような男性は日本の原発に最も大きな責任を持つ人たちであり、被曝は甘受すべき。
2011年5月10日(火)午後、ジャーナリストの岩上安身氏が京大原子炉実験所にて小出裕章氏にインタビューし、その模様が生中継されました。中継が途切れがちだったため不完全ですが、取り急ぎお知らせします。
動画
※ いまのところ途切れたものだけが公開されています。後日、完全版が公開された場合は差し替えます。
京大原子炉実験所にて小出裕章氏にインタビュー 5月10日
http://www.ustream.tv/recorded/14602600
http://www.ustream.tv/recorded/14602854
http://www.ustream.tv/recorded/14603074
要約
※ 生中継中に何度か映像と音声が途切れたため、その部分を除いての要約です。(全体録画が公開された場合、不完全部分を補います。誤字脱字等ご容赦ください)
・(4月1日、4月10日に話を伺ったが、その時の内容が現実になってきた。東電、政府は認めていなかったことを追認する結果に。たとえば圧力容器の底から水が漏れていること。更に漏れることを前提として格納容器と一体化して冷やすということを先生は言っていた。水棺がそのことかと思っていたが、先生は水棺はダメだと言い続けている。一体化して冷やすことと水棺化の関係は?)圧力容器は厚さ16cmの圧力鍋。それに穴があいていることは確実。水をいくら入れても燃料棒が露出していることは東電も認めている。私は圧力容器で破れている場所は再循環系のパイプだと思う。その根拠は、露出している燃料棒の高さのデータが正しければ、炉心の水位が変動していないということ。注水の増減に関係なく燃料棒露出の高さが一定だということは、その高さのどこかから水が漏れていると推測する。いずれにしても穴が開いているのは確か。だから、正常な循環冷却系は作れないということ。そのため、仕方なく、圧力容器と格納容器を一体化して循環させて熱を取り除きながら冷却するという回路を提案した。
・(格納容器の底にたまった水をどのように循環させるのか?)既存の配管はかなりある。残留物除去系、崩壊熱除去系という系があり、格納容器の底から汲み上げるラインもある。が、その途中で冷やす仕組みがないため、それをどこかに加える必要がある。いまある熱交換器を使おうとすれば新たな配管が必要。被曝を少なくするために今ある装置を使いたいが、既存のもので完璧に役立つものはない。だから生身の人間が行う工事は絶対に必要となる。少しでも被曝が少なく済む配管系統を作らないといけないが、これは現場の人たちが最もよく知っているはずで、知恵を絞ってもらってどうにかしてほしいと願う。
・(水棺とどう違うか?)水棺は格納容器全体を水で満たすということ。それが可能であればいいが、いろいろな問題が生じる。たとえば2号機はサプレッションチャンバーに大きな穴が開いているため水棺はできない。東電は2号機の穴を直すと言っているが、膨大な被曝が予想され、場所を特定したりセメントで埋めたりする作業は非常に大変。2号機で水棺は無理。1号機も3号機も格納容器が損傷しているのは確実。水をためることで破損が拡大しかねない。格納容器は何千トンもの水を入れることを前提にした設計になっていない。今後の余震に耐えられるかどうかも分からず、とても心配だ。私の言う循環式回路も、東電の案も、最終的に循環式の回路を作るという意味では同じことを言っているが、私は水棺は難しいからしない方がいいと思う。
・(どうしても被曝する人が出るということが問題。福島原発暴発阻止行動プロジェクト(シニア決死隊)ということで山田恭暉さんという人が名乗りを上げ、同志を募っている。若い人に被曝をさせないという趣旨。先日インタビューをして2時間ほど話を聞いたが、反響が大きかった。これを統合本部の会見で東電にぶつけた。東電は一蹴したが、細野氏は検討すると言った。東電は渋々検討するとなった。山田氏は、合理的に考えたら経験のある技術者の自分たちが行くべきだと淡々と語った。死ぬ気はないが、後の世代を生かすために行くと言った。どう感じるか?)私もその一員だ。60人の志願者の中に入っている。
・(それは頼もしい。でも心配。複雑。どうして志願を?)私も60歳を過ぎていて放射線感受性はとても低い。私には原子力に携わってきた人間として今回の事故に責任はある。私は推進はしてはいないが責任はあると思う。事故収束にむけて自分にできることがあれば、担いたい。
・(政府は検討すると言うが、実現可能性は?)意気込みがあっても役立たない可能性はある。たとえば私の職場で事故が起きたら、収束に役立つのは現場をよく知っている実験所の所員。外部の人が助けに来たとしても、私から見ると「危険もあるし、役に立つようなことはないから、結構です」となるだろう。だから、福島の事故についても福島原発を知る人がいいとは思う。ただ、被曝をさせるためだけに必要な作業というものはある。西成の労働者のことが報道されているが、そのように特別な能力がない人であっても出来る仕事はあり、そういうことであれば私も福島で役に立つかもしれない。ただ、今の困難な状況を一歩でもいい方向に向かわせるために私の力が使えるかと考えると、多分ないかもと思う。
・(副次効果が大きいのではないか。小出さん、山田さんが現地に入ったとき、目になり耳になるということになる。いま福島で作業をしている1400人強はみな匿名であり、現場の情報は出てこない。旧ソ連のチェルノブイリ事故のときでさえ、作業員の声はもっと外に出ていて、今の日本より開放的だったが、それでも閉鎖的と国際社会から批判された。そしてソ連は崩壊した。今はそれ以下)そう思う。
・(実際に小出先生が行ったら現地の被曝環境を改善したりという副次効果があるはず)すると、ますます嫌がられるだろう。
・(決死隊参加は価値のある問いかけだと思うが)山田さんの成果。今回初めて連絡をいただき、名前を連ねさせてもらった。
・(原子炉の状況の話。朝生で推進派の石川さんが、1号機から3号機まで全部とけていて、どうにもならないと言った。これについて会見でぶつけた。保安院西山さんは「誰も分からないが、やるべきことはやっている」と答えた。)西山さんがどうしたらいいかは分かっていると答えたが、その通り。水をいれて冷やすだけ。それ以外の選択は一切無い。それをやり続けてきたが、二ヶ月が経過し、その間に原子炉の崩壊が進んでいる。被覆管が何十%も損傷している。そうなるとペレットがこぼれ落ち、冷却が困難になり、溶けている。どのくらい溶けているかは誰にも分からない。ひたすら水をいれている。
・(どの程度炉心が損傷しているか不明ということだったが、溶けたことによってどんなシナリオが考えられるか。いまどの段階か?)ウラン燃料は炉心にあるが、燃料棒が何十%も壊れているのは本当と思う。燃料棒は4メートルの細長いものだが、いま上部半分が水面から出ている状態。上部が露出して壊れていると私は思う。壊れた上部の燃料棒から燃料ペレットが落ちてくる。燃料棒もチャンネルボックスも下部は残っていて、原子炉を支える構造の板も残っていると思う。ペレットが落ちてきても炉心から下には落ちていないというのが私の推測。炉心部に残っているだろう。原子力学会の人たちは、溶けたものが炉心部から圧力容器の底に流れ落ちていると推測している。圧力容器の底を貫通し、その下のパイプなどを溶かしているということ。でも、私は溶けた燃料はまだ炉心部にあると思っている。炉心の下半分が水につかっているから、今は破局は避けられている。もし冷却のための水が止まると、水位が下がり、燃料棒の下部も損傷して溶けていくだろう。炉心全体が溶けると、支えるものがなく、一度に落下する。その場合は圧力容器の底に残っている水に、溶けた炉心全体が一気に落下し、水蒸気爆発が起こり得る。一番恐れているのは、圧力容器の中の水と炉心が反応して起こる水蒸気爆発。それにより、圧力容器が吹き飛び、最後の防壁である格納容器も吹き飛び、どうにもならなくなる。既に溶けて下に落ちているのであればまだいいし、私の推測のほうが悲観的。再臨界は起きないと思っているし、起きたとしても大したことはないと思っている。
・(3号機の温度が毎日上昇している。これは何か?東電は原因不明としている。先日夜中に煙が上がって一時騒ぎになった。東電は湯気がそのように見えたのでは、と言っている。)【途中聞き取れず】333度ということだが、通常運転中も二百何十度にしかならない。300度以上は異常。温度は発熱と除熱のバランスで決まる。これまで何とか維持してきた温度が上がっているのは、異常なことが起きているということ。水が入っていない可能性もある。東電はそう推測していて新たな配管をつくると言っている。が、333度は尋常でない。たとえば原子力学会が推測するように、溶けたウランが圧力容器の底に下ってきているとしたら、その部分の温度が上がるというのは考えられる。
・(劇的なシナリオは、水位が下がることによって起こるということだった。3号機で発熱の原因が増えているということかもしれない。または、水漏れがひどくなったという可能性もある。何らかの事情で水漏れ箇所の破損が拡大したなど、考えられるか?)その可能性もあるが、炉心の水位は変わっておらず、一定の水はある。データが本当とすればだが、水漏れがひどくなったとは考えられない。
・(熱が上がり水位が下がったとしたら相当危険だということか?)そうだ。
・(3号機は3月14日に爆発したが、これが水素爆発ではなく核爆発だったという説が出ている。ベルリンで観測されたデータからして、水素爆発でないという見解もある。バズビー氏、グンダーソン氏などの発言が取り上げられている。小出さんもコメントしていたが、この3号機の爆発について教えてほしい)塩素38は東電が1号機のタービン建屋で検出したと言った。この核種は、天然の塩素が中性子と反応してできる。中性子はウランの核分裂反応により大量にできる。だから、1号機で再臨界が起きたと推測した。が、東電がデータを訂正した。今は再臨界はなかったと思う。再臨界、あるいは予期しないでウランが燃えるということはまず起こらないとも思っている。加圧水型は炉心が健全なときに臨界するような設計になっており、壊れてしまった炉心が臨界状態になる可能性は限りなく少ない。だから可能性は少ないと思っていた。が、塩素38が本当に検出されたとしたら、それしか考えられないと言った。いま3号機の爆発についていろいろな推測が飛び交っている。私は水素爆発と思ってきた。使用済み燃料もジルコニウムの被覆管が温度上昇により水と反応して水素を出す。それが酸素と反応して爆発を起こすのは当たり前。よって、水素爆発と思ってきた。が、1号機の爆発の様子との違い(サイズ、方向、炎)を見ると、不思議なことが起きたというのは本当と思う。即発臨界だったというバズビー説もあるが、使用済み燃料が即発臨界を起こすというのはなかなかないと思う。ただし、包括核実験禁止条約が機能しているかどうか確認するための監視機関が高崎にあるが、そこで3月15日から16日にかけてヨウ素135が大量に観測された。半減期が6.7時間の核種。3月14日の爆発が核分裂反応と関係する可能性を示す。高崎の研究機関は公開していたデータを4月以降非公開にした。後に訂正されるのかもしれないが、引っ込めるのなら説明してほしい。
・(ベルリンで観測されたキセノンについて、それが核分裂反応の証拠という説もあるが?)キセノンは3月11日以前にもその後にも出ている。3月14日の3号機の爆発でできたという証拠はない。
・(東電に塩素38について生データを公開すべきと迫ったが、東電は出す必要ないと言った。なぜか?)出してくれたら一瞬で解決する。なぜ出さないか分からない。測定は特殊な機器を使うが、測定結果は数字の羅列で、それを見ればすぐに分かる。これからのこともあるから生データを出してほしい。
・(バズビー氏は既存のICRPに批判的なECRRに関係していると言われている。20ミリシーベルトが大きな問題になっているが、政府はICRPを参照していると言い、他に放射線防護の国際的権威がないかのような言い方。ICRP以外にECRRも米国の科学アカデミーもある。『人間と放射線』という小出さんたちが訳した本があるが、その著者のゴフマン氏の立場はまた違う。被曝をどこまで受け入れられるかの基準について解説を)放射線の被曝の影響の出方には二つある。一つは急性障害。脱毛、やけど、吐き気、下痢など。枝野さんがただちに影響が出るレベルがないというのは急性症状が出ないという意味。もう一つは晩発性の障害で、端的にいうと、癌。広島、長崎の原爆被曝者10万人に米軍研究機関ABCCが聞き取りをして、毎年追跡調査をした。生存率、癌の割合、影響を何十年も調べた。その結果、被爆者では癌の発生率が高いことが分かった。時間が経つと、低い被曝の場合も癌が発生することが分かった。調査すればするだけ、もっと低い被曝の人のなかにも癌が発生していることが判明した。こうした疫学調査のデータは原爆被爆者、原発労働者、核実験、医療従事者などについていろいろあり、被曝の危険性については各機関の評価もさまざま。ICRPはそうした機関のひとつ。BEIRというアメリカの委員会もECRRもその一つ。手法はさまざまで、評価結果にはばらつきがある。人シーベルトという単位を使うと考えやすい。1シーベルトの被曝の人が10人いると10人シーベルト。ICRPは、10人シーベルトで1人が癌になるとする。米国科学アカデミーは2人。ゴフマン氏は4人だとしている。ECRRだと従来と違う考え方で、もっと高い。
・(ECRRはカルトだと指摘する人もいるが?)科学といってもいろいろな仮定を使う。ICRPも山ほどの仮定を使っている。どちらの仮定が正しいかは決着するまでは議論は開かれていないといけない。
・(ICRP一本槍はいかがか?)ICRPは推進側機関であり、それだけではどうか。
・(20ミリシーベルトはどんな値か?)日本の国の法律では1年に1ミリシーベルトとしている。ICRPの勧告に従ったもの。ところが今や年間20ミリまで被曝を許すとした。私のような原子力の仕事で給料を貰っている人の場合は被曝を少しくらい我慢することになっており、それでも年間20ミリシーベルト。普通の人まで20ミリシーベルト、しかも子供も含めて我慢しろと今はなっている。
・(こどもと大人は同じでいいか?)だめ。子供は大人よりも4〜5倍放射線の感受性が高い。異なる基準が必要。しかも子供には事故の責任がない。政府がそういう子供に被曝を押し付けるのは許されない。
・(1ミリに戻したら、子供を疎開させることになり、従い家族を移住させることになり、生活上の負担を負わせることになる。そうした移住のコスト、ストレス、生活の困窮を考えて20ミリシーベルトという基準になっているのではないかと推測する。放射線のリスクと強制避難、疎開、移住のリスクはどうバランスすべきと考えるか?)これには答えられない。チェルノブイリ事故のときに旧ソ連は40万人を避難させた。日本の法律の基準(放射線管理区域)をチェルノブイリに適用すれば、さらに565万人を避難させなければならなかった。彼らも避難させてほしいと当時思ったが、40万人の避難民の行く末を見たら、避難は途方も無く悲惨なことだと学んだ。それにより、放射線管理区域であっても避難すべきといいづらくなった。汚染地域で生きることも、避難して生活が崩壊することも、どっちにしても悲惨だということを学んだ。こういう選択をしなくて済むようにするには原子力を廃絶させるしかないと考えた。従来の1ミリシーベルトという基準を適用すれば福島県内全域が住めなくなる。
・(徹底した除染は?)できない。校庭の表土を削ってこどものための安全地帯は確保することはできても、全域の除染はとてもできないと思う。
・(菅総理が浜岡原発停止を要請したが、これは津波対策完了までの一時停止。推進するための一時停止なのかとも思った。現在の菅政権の姿勢は原子力推進だという考え方もあるが、どうか?)私は日本の全原発を即刻止めろと言っている。首相が浜岡だけ一時的だが止めろといったのは画期的。これが他の原発の停止につながればいいとも思うが、これまでの政治の流れをみると、ほとんどの勢力は原子力にぶらさがってきた。期待はしていない。
・(政府には期待しないとしたら、廃絶に向かうにはどうしたら?)分からない。分かっていたらやっていた。これからも自分のできることやっていく。どうしたら止まるかは私には分からない。でも若い人を中心に従来とは違う運動も出てきている。それが育ってくれたら原子力に頼らない世界を作ることも可能では、と考える。
・(原子力がなくても電力は足りるという説について、根拠は公開データに基づいているのかという疑問も出されているが?)即刻全原発を止めても問題ないということについては、公開データしか使っていない。私は政府統計局のデータ、経産省のエネルギー統計のデータ、電力会社の設備や発電実績のデータなどを使っている。私はあちこちでこの説明をしていて、資料もある。どなたにも差し上げる。ただ、日本全体で私はまとめているが、日本は50と60ヘルツの地域に二分される。それぞれについて立証することは必要だろう。と言っても、そんな細かいことには関係なく原発などやってはいけないというのが私の主張だ。
・(周波数の変換にはお金がかかるというが?)専門家でないので分からない。が、どこでも原子力比率はあまり変わらない。だから原則は同じだろう。関西は多少原発率が高いが、西日本で融通すれば大丈夫なはず。
・(敦賀原発で放射線漏洩があり一時的に止まった。大したことないと言っていたが、どうか?)燃料棒に損傷が起こるということはこれまでも何度もあった。制御棒を部分的に入れながら運転を続けるということもよくあった。今回の敦賀もその程度かもしれない。日本原燃はあまりにも悪いときにこんなことを起こしてしまったと思っているだろう。
ジャーナリストの岩上安身氏(http://iwakamiyasumi.com/)が2011年4月10日午後に小出裕章氏にインタビューした動画が公開されています。
http://www.ustream.tv/recorded/13897618
インタビュー中に映し出されている資料は、こちらで見ることができます。
岩上安身氏ご自身がtwitterでこのインタビューの内容を同日にツイートされています。ここに転載します。
京大原子力実験所の小出裕章助教インタビュー、終了。原子炉の圧力容器に穴の空いている事実、再臨界が始まっている高い可能性について、明晰に論じながら、最悪の破局を回避するシナリオを語る。
再臨界を止めるには、中性子を吸収するホウ素の投入すべきだが、東電は、一時投入を控えていた可能性がある。ホウ素の投入は、結晶の付着などの問題があるが、再臨界を起こさせてはならない。
最悪の破局のシナリオは、どれか一つの炉がメルトダウンの果てに、水蒸気爆発を起こし、他の炉の冷却作業もできになくなって、連鎖的に爆発を起こすシナリオ。
その最悪の破局のシナリオが現実化すると、チェルノブイリが放出した放射性物質の6〜10倍の量の放射性物質が飛散すると思われる。
再臨界が始まっても、即、その最悪の破局になるのではない。再臨界の熱によって膨張すると、ウランは臨界がとまる。が、また再開する、その繰り返しで、ブスブスとくすぶる。
最悪の破局を避けるためには、とにかく冷やし続けること。圧力容器と格納容器を一体として扱い、サプレッションチェンバーというプールに溜めた水を、再び圧力容器に戻すループの確立が必要。
同時に外部冷却装置を設置するなどして、熱交換のループも確立しなくてはならない。その現場作業、高い放射線量の中でできるか。できないと破局に近づく。
先日の宮城県中心の地震で、六ヶ所村の再処理施設、女川原発、東通り原発も、一時外部電源が絶たれた。福島第一原発と同じ危険な事故はどこでも起きうる。原発はすべてやめるべき。
非常用電源を高台に設置すればいいとか、小手先の議論がまたなされているが、無意味。機械は必ず壊れ、人は必ずミスを犯す。事故は必ず起きる。そして原発事故の場合は、取り返しがつかない。
実は、そもそも、リスクを冒してでも原発を必要とする理由はない。原発をすべて停めても、現在の火力発電所の稼働率を7割に上げれば、カバーできる。政府と電気事業者の公開データだ明らか。
原発がないと電力が不足するというのは、真っ赤な嘘。政府、マスコミは本当の事実を伝えない。また、原発が安く電力を供給している、というのも嘘。
原発のコストは最も割高。そのために、日本人は世界一高い電気代を払わされ、家計だけでなく、産業界にもダメージを与えている。アルミ精錬は、高い電気代に耐えられず、海外に出ていった。
今、日本に残っているのは日本軽金属の一工場のみ。そこは水力の自家発電機をもっているからこそ、操業が可能に。原発は生産性を下げ、経済にもマイナスの影響を与えている。
ことほど左様に、原発存続の理由は、何もない。一刻も早く停止、廃絶すべき。
転載は以上です。また、UstreamサイトにてLinus_and_Lucyさんという方が要約を書かれているので、転載させていただきます。以下、転載です(改行は当ブログによる)。
科学的に検証して、原発はすぐにやめた方が良いという小出裕章先生。エモーショナルでない分だけ、説得力がある。すでに福島第一原発から放射性物質が漏れ出している現実を冷静に分析。
電源喪失したので原子炉を水で冷却をしている。圧力容器は壊れ、水素爆発も起きている。それでも原子炉は冷やし続けなくてはいけない。
外部から入れた水は汚染されて海に流れていく。熱交換機を作り、循環回路で冷やすべき。しかし炉心の容器に穴があいているので、できない。サブレッションプールから水をくみ上げて冷やすくらいしかないが、そのためには大変な被曝環境での作業が要求される。時間もかかる。圧力容器と格納容器を一体のものとしてループが作れるかどうか。鉛のスーツで作業は非効率的。
特に、2号機はサブレッションチェンバーが壊れているので、放射性物質は長期流出が想定される。先日とても低レベルとは言えない汚染水を放出した。超高濃度の汚染水がたまりつつある。外界に出さないように考えなくてはいけない。柏崎刈羽で処理することも考えに入れるべき。炉内の放射性物質の揮発性の高いもの数%は流出している。
最悪シナリオは水蒸気爆発で圧力容器、格納容器が壊れること。そうすると、何十%の多種の放射性物質が出てくる。それを押さえるために冷却を続けている。今後揮発性放射性物質は何十%も出る可能性があり、不揮発性のものはあまり出ないで済むかもしれない。
出る放射性物質を減らす方法を東電は既に考えているはず。小出先生は政治家よりも現場のひとと話をしたい。再臨界の可能性が塩素38の検出と、半減期の短いヨウ素131が減っていない事から考えられる。
炉心停止後、制御棒が入ったが、またウランの核分裂(再臨界)が始まらないようにしないといけない。崩壊熱を冷やせば良いと思っていた。
3月末でまだ塩素38が出ている(東電の発表)と、その中性子はどこから来ているか?核分裂以外に、超ウラン元素242か244は自発核分裂する。だから今でも原子炉の中の中性子は0ではない。東電公表の塩素38の量は多すぎる。
1号機の燃料棒は70%が損傷している。燃料棒は細長いパイプで、被服管のジルコニウムは850度を超すと壊れる。ウランのペレットが原子炉にたまってしまうと、再臨界が起きる怖れがある。熱が出れば、膨脹してウランの臨界がなくなる。また熱が出なくなるとあつまって再臨界を繰り返す。そういった事が起きているのではないか。爆発とは違う。
プルトニウム検出は炉心の燃料ペレットが溶けている(2800度前後で溶ける)証拠なので、そんなに高温になっている事を東電は認めたくないのではないか。1基の炉心に燃料は100㌧単位で、全体が溶けないように冷却を続けている。
かなりの分が炉心から溶け落ちて(メルトダウン)圧力容器の底に水があると、水蒸気爆発を起こし、格納容器も壊れるだろう。だから水を入れている。再臨界になるとまた熱を出す。綱渡り状態が続いている。
ウランでできたペレット(瀬戸物)の中にプルトニウムが入っている。溶けると蒸気の流れで外部に出てくる。再臨界が起きるとぶすぶす燃えている状態。再臨界は熱と放射性物質を出す。
冷却が失敗すればメルトダウン→最悪水蒸気爆発の連鎖を起こす。外界にでる放射性物質も増加する。再臨界を起こして格納容器に吹き出したのではないか。
政府はそこまで考えていないが、水蒸気爆発を起こすと作業ができなくなる。チェルノブイリ4号炉(100万キロワット)の3倍の出力+使用済燃料棒も壊れるので何倍にもなるという可能性もありうる。発電所の敷地700キロまで風下になる所は放射線管理区域にあたる程度の放射性物質が出ていた。日本に当てはめれば関西まで達するか?
ホウ素は中性子を吸収するので臨界反応は止まるが、ホウ素が再臨界の場所に届いていない可能性もある。東電は途中からホウ素を入れているのはやめたのではないか。もし再臨界が起きているならホウ素を入れなくてはいけない。が、再臨界のなった場所に水やホウ素が届くかどうかわからない。
余震で、六ヶ所村や小野川で大変なトラブルが起きている。機械はこわれる。人間は必ず間違いを起こす。すべての電源を失うということはあり得ると関係者はみんな考えてきた。発電所の全所停電が一番恐い。それを日本の電力会社は決して起こらないと考えていた。ディーゼル発電機を高所においてもそれは対処療法にすぎない。どこでも原発事故が絶対におきないとは言えない。覚悟が必要。
もんじゅは特殊な高速増殖炉なので、水をかけて冷却できない。もんじゅは冷却にナトリウムを水の代わりに使うが水に触れると爆発する。外に出ると火事になる危険な物質。
六ヶ所村は使用済み燃料再処理工場。3000㌧の使用済み燃料=原子炉100年分に相当。冷却できなければ同じ事が起きる。
メディアは伝えていないが、原発が3割の電気を賄っているので、原発がないと困るというのはウソ。発電能力は原発が3割だが、火力発電を70%稼働すれば、電気は足りる計算。自家発電も増えている。足りないとしても、真夏にエアコンをちょこっと控えれば良い程度。原発はロスが多い(熱効率33%)非常にコストが高くつく。火力発電(熱効率50%超)のほうが効率的。
それでも日本は原発をやりたかった。全部原発をやめても今の生活は基本可能。原子力はやめないといけない。日本の電気代は高い。それが企業の競争力をなくしている。
2011年3月31日にジャーナリストの岩上安身氏が行った小出裕章氏へのインタビューの模様です。
http://iwakamiyasumi.com/archives/8030
以下は書き起こしです。(http://www.twitlonger.com/show/9lbd4bから転載。ありがとうございます)
小出裕章助教(京都大学原子炉実験所)インタビュー by 岩上安身 3月31日 http://www.ustream.tv/recorded/13695456
岩上: 率直にお聞きしたい、小出先生は1968年に、ダイレクトにこちら(京都大学)にお入りになった?
小出: 68年に東北大学工学部原子核工学科に入学した。
岩上: 原子力を研究し利用を研究する立場でありながら原子力はやめたほうがいいと発言している理由は?結論として原子力は無理だと確信するに至った経緯は?
小出: 原子力発電をどうしてもやりたいということで東北大学に入って原子力の勉強を始めた。当時、宮城県では女川町という牡鹿半島の付け根にある町に原子力発電所をつくろうとしていた。私は、原子力発電所は素晴らしいものだと思っていたし、宮城県で一番電気を使うのは仙台市なのだから仙台市に原子力発電所を作ればいいと思っていた。なのに女川町とはどうしてかと疑問を持ち、その答えを捜し歩いた。安全であれば仙台につくればいいのに、80キロも離れた女川に作ったのは、今となっては当たり前のことだが、原子力発電所は都会には引き受けられない危険をかかえているから。だから都会には決して原子力発電所は建てないで、いわゆる過疎地というところを選んで建てて、長い送電線を引いて電気を都会に送るものだということに気がついた。ということがあきらかになって、そうであれば、私の結論としては認められないということになった。都会で必要な電気をその危険も含めて都会が引き受けるというのならいいと思う。しかし、都会は危険を引き受けるのは嫌だから、電気だけもらって、危険は過疎地に押し付けるというようなことは私の生きる原則からして到底認められない、というようなことがあって、原子力発電を廃絶させようと思うようになった。
岩上: 何年頃のこと?
小出: 1970年。秋のこと。
岩上: 70年というと、日本に原子力発電所が……
小出: 3機しかなかった。私が大学に入ったときには1機しかなかった。1966年に東海の1号炉が動き始めて、さあこれから原子力だという時代だった。私もてっきりそう思って原子核工学科に行った。その後70年に敦賀、美浜ができた。そのころ私は原子力の夢に燃え、そしてそれが間違いだと気がついて180度自分の生き方を転換した。
岩上: その後も研究を続けてこられた。
小出: その後大学院まで東北大学にいて、74年からここ(京都大学)にきて37年になる。今はここで仕事をしている。
岩上: ということは、ここ(京大)で安全な原子力をつくろうとされたのか、むしろ原子力がいかに危険かという研究を中心になさったのか。
小出: 後者の方。原子力がどのような危険を内包しているかということを明らかにする研究を続けてきた。
岩上: それはこの世界ではめずらしいということになるのかと。
小出: それには原子炉実験所という(私の)職場について話したほうがいいと思う。原子炉実験所というと、原子力発電を推進するための研究所と思うかも知れないがまったく違う。大学は基礎学問をやるところで、物理学、化学、医学、生物学など、それぞれの学問分野に中性子という素粒子を使いたい学問分野がある。そういう学問分野にいる研究者が集まってどうすれば中性子が使えるかと考えた。それで原子炉を作ってしまえば中性子が出てくるので、原子炉のまわりで仕事をしようということで原子炉実験所を作った。つまり、ここの原子炉は目的ではなく、道具として作られた。この実験所には200人いてそのうち80人が教員。その人達は物理学、化学、医学や生物学が専門で原子力のことは殆ど何も知らない人もいるが、私のように原子力に興味を持っている者もいる。私は廃絶したいが、いまだに原子力の旗をふっている教員もいる。もともと原子力を推進するのが目的の場所ではないなので、私のような廃絶論者が咎められるということはない。学問的にウソを言わなければ、ここにいることに問題はない。
岩上: 圧力がかかるということはないのか。
小出: 京都大学なので、かつての文部省、いまの文部科学省の傘下で、金もそこからもらっている。実験所という組織としては国に楯突くのはよくないと思っている人もいるだろうし、私をじゃまだと思っている人はいるだろうが、直接的な圧力はない。
岩上: 基礎的な研究が本来の目的。
小出: 物理的な目的、化学的な研究をする人もいる。
岩上: 湯川さんや友永さんのような…
小出: 湯川さん、友永さんは理論物理学の人なので我々のような実験物理に近い分野とは違うが、基礎学問をやるという意味では通底している。
岩上: どうして原子力発電というシステムはだめなのか。ダメな理由は効率性の問題、事故が起こったら取り返しが付かないなど、いろいろな角度があるだろうが、ひとつづず噛み砕いてお願いしたい。
小出: 一番の基礎は、原子力発電はウランを燃やすということ。ウランを燃やしたら核分裂生成物ができる。放射性物質、いわゆる死の灰を産まずには発電することは出来ないという機械が原子力発電所。ウランを核分裂させればかならず核分裂生成物ができる。それは避けようがない。
岩上: ヨウ素、セシウム、プルトニウムというようなものも含まれる?
小出: プルトニウムは核分裂生成物ではないが、放射化生成物と呼んでいる一連の放射性核種のうちの一つだが、原子力発電をやっている限り、何百種類の放射性核種を生み出さざるをえないというそういう技術。そのうえで問題は、生み出す放射能がとてつもなく膨大だということ。広島の原爆が炸裂したときに燃えたウランは800グラム。この手に乗るくらいの重さのウランで広島の町が無くなってしまった。100万キロワットの原子力発電所が一日動くと、これを3キロ燃やす。つまり広島原爆の3倍から4倍のウランを毎日燃やしている。つまり3キログラムの死の灰を毎日生み出しながら動くという装置が原子力発電所。1年も動けば広島原爆の1000倍の死の灰を自分の身体の中に溜め込むという機械。死の灰を原子炉の中にどんどんためこんでいく。これが万一にでも環境に出てくるようなことになればとてつもないことになるということは、もうみんな知っていた。だからこそ原子力発電所は都会に建てないということにしてきた。
岩上: 今原子力発電所は全国で54機ある。54機あって、それがみんな同じサイズで100万キロワット……
小出: 大きいのも小さいのもあるが、基本的に言えば100万キロワットに近い。
岩上: それが1000発分かける54、5万4千発……。
小出: 正確に言うと4万8千発分程度だが、一言で言えば5万発と思えばいい。毎年毎年広島が生み出した核生成物のの5万発分を生み出すのが原子力発電所。
岩上: それが10年、20年たてば、50万、100万……
小出: すでに1966年に東海1号炉が動き始めて45年、それがどの程度の核生成物を産んできたかと言えば、広島原爆の120万発分。
岩上: 原子力発電所を続ける限り……
小出: 毎年5万発分ぐらい増えていくわけ。
岩上: 今回の福島原子力発電所では使用済み核核燃料棒がある。使用済みなのになぜ熱を帯び、冷却し続けなければならないのか。これが福島第一原子力発電所に4500本以上ある、ガラス固化体という方法があってどこかにしまっておくこともできると聞いている。安全に処理することもできると聞いている。ほんとうに安全な技術があるのか。死の灰と使用済み核燃料棒の解説をお願いしたい。
小出: 100万キロワットとは何かというと、電気になっているのが100万キロワットという意味。炉心では300万キロワット分の熱が出ている。のこりの3分の2はどうするかというと、海に捨てている。そんなばかばかしい非効率な装置。しかも200年前にジェームスワットが発明した蒸気機関の原理をいまだに使っている。効率はあがっているが熱効率はいまだに33%しかない。残りの66%は捨てるしかないという馬鹿な装置。ここでは、一秒間に70トンの海水を引きこんで、その温度を7度上げるということをやっている。荒川や多摩川で一秒間に30トン、40トンぐらい。淀川で、1秒に150トン。日本全国でも一秒間に70トン以上流れる川は30もない。日本屈指の大河が原子力発電所ひとつつくると現れて、その温度が7度も上がっている。7度というと、お湯の温度をそれだけ上げて風呂に入れるかというと、そんなことができないくらいの温度。海には生き物もいる。そこの生態系が破壊されてしまう。日本近海は世界平均の海洋温度上昇の何倍も高いスピードで温度が上昇している。
岩上: 原子力発電所の設置、それによる温排水と日本近海海洋温度上昇の実証的な関係の研究はあるのか。
小出: 厳密には立証されていない。ただし、日本にある54機の原子力発電所が1年間にどれだけの温排水を出…(音飛び)
岩上: ……こういういいかたがある。とてもじゃないけど頷けない説明だろうとおもうが先生の立場からコメントしてほしい。
小出: プルトニウムも含めて放射性物質はあらゆる意味で人体、だけでなく生命体に危険。だから環境に影響ないとか、危険がないとかいうことは一切誤り。プルトニウムが環境に検出されたということは危険があるということ。先日検出されたプルトニウムの量は、非常に少ない。そのほかの放射性物質の量があまりにも膨大なので、比較の問題としてプルトニウムが出たとしてもその危険度は大したものではない。だからプルトニウムが出たからと言って特に危ないということはない。しかし、プルトニウムが出たということは、原子炉内のウランのペレットが解けたということなのでその意味ではものすごく重要。
岩上: それはどういう意味か。
小出: 心配なのは、原子炉が溶け落ちるということ。炉心の燃料ペレットが溶けたと言ったが、それはまだ一部。大量に溶けると、塊になって落下していく。つまり我々はそれをメルトダウンと呼ぶ。それが起きると最悪の場合水蒸気爆発が起こる。もし水蒸気爆発が起きれば圧力釜が破壊される。すると比較的ぺらぺらの格納容器も壊れる。そうすると、放射能を閉じ込めるすべての防壁がそのときに失われる。今だって大変な放射能が出ているが、それにくらべてもケタ違いの放射能が出る。それを私は破局的な状態と呼ぶ。そういう破局的な事態になんとしても行かせたくないし、なってほしくないと思う。
岩上: 東電あるいは保安院は小出先生のような理解をしているだろうか。
小出: もちろんしている。これを理解をできなければ専門家とは呼ばない。政府関係者はともかく、東電の中の技術者は当然理解をしている。
岩上: それを積極的に説明するかどうかは別として……
小出: それはそうだ。でも東電も溶けているということは認めている。ただしこれを大変なことだとは言わない。
岩上: 損傷ということがすなわち溶けているということか。
小出: 損傷と溶けるのとは違う。私も最初は燃料棒の被覆管が損傷していると言っていた。それを超えてウランの燃料ペレットが溶けていると。炉心が損傷しているときにはペレットのことを呼ぶこともあるが、溶けているということが大変重要なこと。
(マスコミ関係者から電話で中断)
岩上: 2800度を超えるものをどうやって冷やせるのか。水をかけることで冷やせるのか。私がずっと質問し続けているのは、ポンプというものが通電したら動くという確証はないということ。あれほど複雑なシステムを修理するのに人を近づけることもできない。外部からモーターを持ってくるしかないのではないかと聞くと、内部モーターを調達しているというあいまいな答えが返ってくる。先生はこの冷やすということに関してどうお考えか。
小出: どういうことをやってきたかというと、地震と津波によって全ての電源が断たれてしまったた。でも原子炉は冷やさなければこわれることが分かっているので、東京電力は電源車を持ってきてポンプ車から原子炉に水をいれることにした。しかし電源車を接続する施設が水没していて使えなかった。そこで消防のポンプ車を持ってきた。水がないので海水を使った。海水を一度入れたらこの原子炉は二度と使えないということを意味するが原子炉を冷やさなけれなならないのでとにかく使った。しかしそれがいつまでも続けられる訳ではないので、電源を復帰するしか無いと思った。電源さえあればポンプは動くだろうと思った。ところが電源が復帰してもポンプは動かなかった。ポンプが水没していたからだ。作業員が行ってみたら、ポンプ周辺の水は膨大な放射能で汚染されていて近づくことさえ出来ないことが分かった。この汚染水をなんとか外に出さないことにはポンプの回復すら出来ないという状態。しかし、私はそれはもうダメだと思う。新しいポンプを持ってきても何をしても、どんなことをやってもダメだと私は思っている。なぜかというと原子炉圧力容器と呼んでいる高圧の圧力釜がすでに破損している。さっきまでは炉心のことを言っていたが今は鋼鉄のの圧力釜、つまり圧力容器が破損してしまっている。
岩上: 圧力容器が破損しているという根拠は?
小出: ポンプ車で水をどんどん入れているが、水を大量に入れれば圧力釜の水位が上がるはずなのに、いくら水をいれても水位が上がらない。東電の発表でも、燃料棒が130cm、270cmと常に露出している。どうして露出しているか、それは圧力容器に穴が開いているからだ。それを東京電力は「圧力容器の下部に穴が開いたイメージ」と表現したが、いずれにしても圧力容器に穴が開いている。そうすると、いくらポンプが動いても正常な回路には戻らない。
岩上: 今はポンプは動いていない。
小出: 動いていない、そして私は動かして欲しいと思っていた。しかし、ポンプが稼動してももはや冷却システムは使えない。
岩上: 新聞ではもう無理だとは書いてない。
小出: 私もなんとかポンプを動かして冷却システムを稼動させなければと思っていた。しかし、もうだめなんだとわかった。
岩上: いつごろわかった?
小出: きのうかおとといのこと。これはもうダメなんだと。どうにもならないと気がついた。
岩上: 絶望的な話。他に解釈のしようがない?
小出: 他に解釈の仕様はない。そうなると正常な冷却ができないのだから外部から海水でも何でもいいから送って冷やすというその手段しか無い。それをやってしまうと、外部から水を入れるわけだから、どこからか出さなければならない。しかし、水が外に出る仕組みはすでにできている。格納容器が破損しているから、どんどん出ている。原子炉を冷やす水が放射能まみれになって格納容器から漏れて放射能まみれになってどんどん表に出ている。それがタービン建家にたまり、トレンチに溜まっている。しかしこれをこれからもずっとやり続けなければならない。
岩上: 高濃度の放射能が海に放出されたということは全世界を汚染している。環境と外がオープンにつながったシステムになってしまっている。……なんと言ったらいいか。
小出: 私もことばを失う。
岩上: これからどうなる
小出: 今の状態が続くのであれば、これまで約3週間続いてきたものを今後何ヶ月という単位で続けるわけだがその期間中放射能が出て行くということになる。
岩上: 原子炉は止まっているが核生成物はある。こういう状態でどのぐらいの放射性物質が産出されて外に出ることになるのか。
小出: まだ全体の数%だが、これから長引けば数十%、最悪100%出ることもある。水蒸気爆発が起きれば数十%という単位で一気に出て行くことになる。
岩上: 水を外からいれて冷やしているということは、結局、原子炉を洗い流しているのと同じこと。原子炉も格納容器も、洗い流し続けたら、流れ出る放射性物質の総量はどのくらいになる。
小出: これまでは原子炉にあったもののうち、セシウム、ヨウ素といった揮発性のものが数%、期間が長くなれば、数十%、百%に近づいていくだろう。プルトニウムのような放射性核種があるわけだが、燃料ペレットの溶融がまだ大規模でないようなので、これから冷やし続けることができるならばそういった放射性核種が表に出てくることはないと思う。まだ出ているのは本当にわずか。
岩上: プルトニウムがどこから出たのか特定できないというのが東電の説明だが、
小出: そのとおり、特定できない。
岩上: プルサーマルをやっている3号機から出たとは言えないか。
小出: 言えない。
岩上: どこかしらに、ペレットが溶けたという可能性があるということ? まだ僅かであると言ってもプルトニウムがどこから出てきたかは……
小出: そんなことはわからない。つきとめることも出来ないだろう。だが、ペレットが溶けたということは確実。もっと溶ければ水蒸気爆発をともなう破局に至る。それを防がなければならないと思っている。水蒸気爆発が起きないとしても、ものすごく長期にわたって原子炉を冷やさなければならない。正常な冷却回路は復帰できないので、外から水を入れて、原子炉を冷やし、それが外に出ていくということを覚悟しながらやらなければならない。しかし、それをやりとげることができれば、揮発性でない、プルトニウムを含む放射性物質を原子炉の中に閉じ込めることはできる。だから水を入れなければならない。
岩上: 何年間ぐらい?
小出: わからない。何ヶ月、1年2年の単位でやることになる。
岩上: 1,2年で落ち着くことはできる?
小出: 崩壊熱という話をしたが、そこにある放射性物質そのものが熱をだしている。寿命の長い物短い物、何百種類の放射性核種がある。寿命の長いのも短いのもある。原子炉を泊めても7%分の発熱は止められないと言ったが、それは原子炉を止めたとのときのこと、その中には寿命の短いのもあるので、1日経てば10分の1程度になる。あと1週間も経てばそのまた10分の一、それ以降はほとんど減らないが、1年、2年経てば、またその10分の1というような量に減る。熱が次第に減っていくのである程度減っていくと、燃料ペレット(瀬戸物)がどろどろに溶けるということはないだろう。そこまでは、とにかく冷やし続けなければならない。原子炉の形状にもよるが、もし、かたまってしまっていると冷やすことも出来ない。そうなるともっと長い時間がかかる。私にはいつまでとは言えない。
岩上: われわれは外界に放射能が出て行くこの状態を甘受しなければいけない?
小出: もうしわけないが、それを防ぐ手立てはない。
岩上: たとえば、防護を強化した人員や、ロボットを使って、格納容器の穴をふさぐということはできないか。
小出: 今はできないと思う。被爆の量がものすごいことになっていると思う。格納容器に近づくことは何ヶ月という単位でできない。
岩上: ロボットは?
小出: ロボットは想定外の状況によわい。たぶんロボットは何の役にも立たない。
岩上: 揮発性の放射性物質の影響は?
小出: 1986年のチェルノブイリでは、原子炉が爆発してしまったので、プルトニウムを含む揮発性でない放射性物質がたくさん出てしまった。重いプルトニウムなどは遠くへは飛ばなかったが、揮発性のものが遠くへ飛んで周辺を汚染した。地球全部を汚染した。ソ連政府は周辺30kmを住民13万人を強制避難させた。しかし自己から数ヶ月経ってから事故現場から2百キロ、3百キロはなれたところに濃密な汚染があることが分かった。
岩上: ホットスポット?
小出: ホットスポット。政府は40万人ぐらいのひとを避難させた。チェルノブイリでは発電所から700km先まであるレベルを超えて汚染をしていた。そのレベルは日本の法律に照らすと放射線管理区域にしなければいけないようなレベルの汚染。放射線管理区域とは、私のような特殊な仕事の人間がどうしても仕事の都合で入らなければいけないような場所。水を飲んではいけない、食べてもいけない。そこで寝てもいけない。タバコを吸ってもいけない。子供を連れ込んではいけない。それが放射線管理区域。一般の人が接する放射線管理区域は一般の人がX線撮影を行うような場所。関係者以外無断立ち入りを禁ず、妊娠中の人はちかよれないというような場所。面積は145000km2、本州の6割に当たる面積を「放射線管理区域」にしなければいけないというレベルの汚染。風下で700kmまで届いた。同心円ではなく、東の方700km,西の方500kmの帯状に広がっている面積を全部合わせると14万5千平方メートルということ。
岩上: 汚染された、危ないという地域だけを合わせて?
小出: そう、日本の法律で放射線の管理区域にしなければならないような地域。同心円ではない。
岩上: 避難させた600万人をソ連だから吸収し得た。日本のような狭い地域では吸収し得ない。
小出: もちろん吸収し得ない。
岩上: 国家体制が破綻するとおっしゃった。
小出: そのとおり、何長円何十兆円何百兆円払っても贖いきれないほどの被害がでるとおもう。揮発しないものはふせげるが揮発系のヨウ素、セシウムはだらだら出続ける。チェルノブイリの場合はセシウムは30%出た。福島は今は数%と少ないがこれからだらだら出て行くと、チェルノブイリと同程の汚染地帯が度出るだろうと思っている。
岩上: 日本以外の国では次々とシミュレーションが発表されているのに、日本国内ではではその発表を押しとどめて発表しない。日本では国内でのシミュレーションも全くされていない。
小出: いや、そんなことはない。日本でもシミュレーションはされている。日本は「スピーディ」という計算コードを持っているわけだから、事故が起きた時からずっとやってきたはず。もちろんいまでもずっとやっている。しかしそれを公表してこなかった。本当はちゃんと公表してどっちの方へ汚染が行くということを時々刻々報告しなければいけないと思うが、今の日本ではそれをやるとパニックを煽るからと言って出さない。
岩上: 「スピーディ」は政府が持っている……
小出: そう。日本原子力研究機構が持っている。
岩上: これは出すべき。
小出: そのための研究だったわけだから今出さないでいったい何なんだと思う。
岩上: 原子力損害賠償法に基づく賠償のことなどが脳裏にあっての情報公開制限なのだろうか。
小出: 原子力損害賠償法とは直接関係ないと思う。日本政府が恐れているのはパニック。住民の被爆を恐れているのではなく、パニックを恐れている。私は、住民のパニックを押さえるための唯一の方策は情報をきっちり公表することだと思うが、政府はそうではない。日本の伝統文化だと思うが、これまで日本は、「由らしむべし、知らしむべからず」という方針で、知らせないまま政府の言う事を聞かせるという国だった。今でも情報をなるだけ出さないで、安心だ、安心だ、と政府が言うことを納得させるということで来ている。
岩上: 放射能を多少摂取しても大丈夫だというプロパガンダが延々とされている。放射能の危険性を指摘したAERAの編集長は非常に叩かれて、謝罪せざるを得なくなった。彼は「放射能が来る」という特集を組んだだけ。(今の社会には)非常に危険な空気感がある。だからきちんとした根拠に基づいて危険性を警鐘し続けないと本当にあぶない。特に統一地方選挙の後、大連立を組まれる可能性がある。原子力発電所大政翼賛会、震災大政翼賛会、震災ファシズムのようになって、情報統制される可能性がある。先生の視野は政治や歴史に及んでいるが、この状況をどう見る?
小出: 大変危険な状況だと思う。
岩上: 原子力は政治と深く結びついている。
小出: もちろんです。しかしそのことに付いて話しだすとまたここまでとおなじくらいの時間話してしまうことになる。これから放射能の測定の仕事にいかなければならないので、切りの良い形で終わらせてほしい。
岩上: 大変危険な社会的状況を要約してまとめると、
小出 みなさんは「原子力」という言葉をきいているが、もうひとつ「核」ということばもある。日本人は原子力と核はあたかもちがうものかのように思い込まされているが、実は同じものだ。日本の国がどうしても原子力を進めたいという考えの根本には核開発をしたいという思惑がある。
岩上: 「核」兵器ということ?
小出: そう。NHKすらが「核を求めた日本」という番組を放送して、日本は実は核兵器を作りたかったということを暴露した。そういうことがあまりにも日本人の耳に入っていない。みんな鈍感で見過ごしているが、実際にはそれなのだ。原子力の問題は事故も起こるしたいへんなものだが、現在私たちはその恐怖に向き合っているのだが、それを超えてさらに政治的、社会的な問題が根底に横たわっている。それが、今岩上さんがおっしゃったように大連立の方向に向かったときにますます強化の方向にむかうだろうと思うし、危険な方向に滑り落ちていくと思う。
岩上: あと一点だけ確認。冷やし続けるしかないと、そしてチェルノブイリに比肩するような汚染が拡散するとおっしゃったが、それは海に流すということですね。空中への汚染は遮蔽するとかで止められるが、最終的に、海への被害はどのくらい、われわれはどのくらい避難しなければならないような状態か。
小出: わからない。ただ、日本から見れば、幸いなことに日本は島国で海に囲まれている。また偏西風の影響で大抵の空気中の汚染は太平洋の方に流れている。膨大な汚染水が発電所の中に存在している。トレンチは水を漏らさない構造にはなっていない。だから、地下水が汚れていたと行って大騒ぎしているが、それはあたりまえのこと。地下にどんどん汚染水が流れ込んでいるし、それは海に行くしかない。日本の国に言わせれば「海は広いな大きいな」だから、いくらやったって、薄まってしまって安全だというようなことを言うが、私は放射能に安全はない、薄まるということは汚染を広げるというそれだけのことだと私は思っている。海は世界中繋がっているのだから原子力から何の恩恵設けていなかった国々に対しても汚染を広げている。程度がどれだけか陸地の方でどれだけの汚染が広がるかということは、今は予測ができませ……(ビデオ終わり)