2012年6月29日付けの『「黒い物質」の測定に関する覚書』(小出裕章)が、南相馬市市議会議員・大山こういちさんのブログに掲載されていました。
▼小出先生から : 南相馬市 大山こういちのブログ
http://mak55.exblog.jp/16318274/
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2012年6月29日
「黒い物質」の測定に関する覚書
京都大学原子炉実験所 小出 裕章
Ⅰ.はじめに
福島原発事故からすでに1年以上の時が流れた。
原子力発電所から北東に広がる60万ベクレル/m2という猛烈な汚染地域からは、
約10万人の人々が追われた。
しかし、日本の法令を守るのであれば、
放射線管理区域に指定して一般の人々の立ち入りを禁じなければならない、
4万ベクレル/m2の土地は、東北地方、関東地方の広大な地域に広がっている。
日本の国は、その広大な土地を捨てることができないと判断し、
人々をそこに取り残した。被曝を避けたければ、その土地を捨てて逃げるしかないが、
国は何の賠償も支援もしないという。
力のある人の中には自力で逃げた人たちもいるし、
せめて子どもを被曝させたくないとして、子どもと母親を逃がし、
父親は汚染地にとどまっている人もいる。
しかし、農民や、酪農・畜産家などにとっては、土地そのものが命であり、
容易には逃げられない。
今現在、数100万人の人たちが、放射線管理区域の中で生活し、
子どもを産み、子どもを育てている。
国は、除染をすれば、被曝量を減らせるかのように言うが、
人間には放射能を消す力はない。
「除染」とは汚れを除くという意味だが、本当のことを言えば、汚れは除けない。
できることは、汚染を移動させることでしかない。
そのため、私は「移染」という言葉を使っている。
そして、人間が自分で汚染を移動させる他に、自然もまた汚染を移動させている。
山に降った汚染は、里に降りてくるし、川に流れた汚染は海に流れる。
また、被曝にとって最大の問題であるセシウムは土などに固着して濃縮する。
人々が取り残され、子どもたちもそこで日々の生活を送っている場所に
「黒い物質」があるとのことは、ずいぶん前に聞いた。
それについての調査は、神戸大学の山内知也さんが素早く取り組み、
猛烈なセシウム濃度になっていること、
その正体が藍藻類の死骸であることを突き止めている。
すっかり遅くなったが、
私自身もその「黒い物質」を測定する機会を得たので、結果を報告する。 続きを読む »