2011年4月19日、FM797京都三条ラジオカフェに小出裕章氏が出演し、以下のような話をされました。(担当:NPO環境市民下村委津子さん)
【FM797原発災害特別番組】 2011-4-19 ON AIR
~東京電力発表 事故収束への工程表をどう見るか 京都大学原子炉実験所 助教 小出裕章先生にきく~
http://www.ustream.tv/recorded/14134090
2011/4/19 【福島原発】東電工程表~国際評価レベルの妥当性 /小出裕章氏 1/2
2011/4/19 【福島原発】東電工程表~国際評価レベルの妥当性 /小出裕章氏 2/2
※ 東電が4月17日に配布した工程表(ロードマップ)そのものは、日経新聞ウェブサイトにて入手できます。(こちら)
以下、要約です。(全体文字おこしはその下です)
・(東電の工程表だと6〜9ヶ月で原子炉を安定させるとなっているが実現可能性は?)東電が示した工程表通りに作業が進むことを願うが、出来ないと思う。今回の事故を招いた東電の甘さや、事故の後の楽観的な姿勢という流れを見ていると、東電がみるように進むとは思えない。進まないと思う理由は二つ。
一つは現場がとてつもない被曝環境にあること。気が遠くなるほどの作業の積み重ねが必要で、そのために必要な、特殊な能力を持っていて被曝が覚悟をしている生身の人たちが6〜9ヶ月に渡って仕事をするわけだが、それが続けられるだけの人数を集めることは難しいだろうと思われる。
二つ目はロードマップにある方策そのものに疑義があること。今回、格納容器に水を入れて水没させる(水棺方式)ことが示されているが、それはできないと思う。最も難しそうな2号機では、一番低いところにあるサプレッションチャンバーが爆発で既に壊れていている。2号機は1や3号機よりも三ヶ月余分に時間がかかるとしているが、破損状況を調査した上で修理しなければいけないのに現状では近づくこともできない。修理できなければ水棺はそもそも不可能。1号機や3号機も、損傷している場所から汚染水が漏れてくることになるだろう。しかも格納容器は大量の水をいれるということを前提にした設計になっておらず、水をいれると未知の負荷のために新たな損傷が生じる恐れもある。従い、水棺はできないと思う。
・(ステップ1で三ヶ月を目標として1〜4号機の放射線量を抑えるとしていることについて)それは非常に楽観的だ。
・(放射能が出ないようにするのは無理なのか?)東電はコンクリートで埋めると言っているが、その作業自体ができないと思う。人が近づけないくらい放射線量が多い環境になっているから。
・(現場の厳しい環境で働いている人たちに更に過酷な作業を強いることになる?)放射線をはかりながら分単位で次々に交替するような作業になる。
・(小出先生が工程表を考えるとしたら、どのくらいかかると思うか?)別のトラブルが起きて、1年とか2年という単位になるのではないかと心配している。
・(工程自体を変えるほうがいい?)私は別の方法を提案してきた。水没は無理だからやらなくていい。ただし循環は必要。圧力容器と格納容器を一体化して考ればいい。圧力容器は壊れていて格納容器の底に水が漏れてくるが、その水を循環させその途中に熱交換器をつくって熱を海に排出しながら循環させるという考え。その作業も大変と思うが、東電案と比べれば早くできると思う。ただし、一定期間、環境に放射能を漏らし続けるということは変わらない。
・(既設の電源を利用できる案?)いまある電源は使える。ポンプも福島にすでにある余熱除去ポンプを使えると思っている。ただし配管を改修し、熱交換器も準備する工事の必要はある。
・(その工事でも被曝などの負荷は免れない?)被曝は避けられないので、すこしでも少なくすることを考える必要がある。
・(汚染水の移送については?)いまある6万トンある汚染水を移している先のタンクは容量が十分でない。現在も新しい水を冷却のために加えていて、いくらやってもイタチごっこになることを心配している。そうなると汚染水がたまるばかりになり、循環式のラインを作ることができない状況が続くかもしれない。
・(柏崎刈羽のような汚染水処理装置を福島に作ることは?)東電は考えていると思う。ただし仮設タンクにしても時間がかかるため、ロードマップ通りにはいかないかもしれない。
・(国際評価尺度がレベル7と発表されたが、いま起こっている現状を見てどうか?)この尺度は原子力を推進する人たちが作った。レベル7は彼らがとてもひどい事故を示すものとして作った。レベル7と認めたのはあまりにも遅かった。私は3月15日か17日くらいには彼らは7と思っていたらしいし、私もそう思っていた。事故を小さく見せたい、危険が大きいことを認めたくないという姿勢の表れ。世界から笑われたし、本当に恥ずかしい対応。7でもチェルノブイリよりは小さいと今言っているが、本当に破局的な事故になっているということを言わなければいけない。チェルノブイリは収束したが、福島は進行中。私の心配する最悪のシナリオになれば、現在までの10倍の放射能が排出されてチェルノブイリを超えることもありえる。そうしたことをはっきり言うべき。
・(保安院と安全委員会があり、安全委員会の方は当初からひどい事故と分かっていたと言っているが、迅速な情報開示がされなかったのは?)保安院がどうなっているのかは私は知らない。今回は安全委員会はまったくと言っていいほど機能しなかった。残念なこと。
・(私たちが声を上げるとしたら何ができるか?たとえば工程表見直しを求めるのはどうか?)そうした声を無視してきたのが東電なので、どうすればいいかは分からない。
・(ロボットで現状把握をすることによる効果は期待できるか?)過度の期待は無理。単純な測定はできるが修理はできないし、水や障害物があると動けない。放射線量を測定するということであれば役にたつはず。
小出先生部分の書き起こしをブログSleepingCatsにてされているので、転載させていただきます。
4/19:FM797原発災害特別番組「東京電力発表 事故収束への工程表をどう見るか」小出裕章(1)
4/19:FM797原発災害特別番組「東京電力発表 事故収束への工程表をどう見るか」小出裕章(2)
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ゲスト:京都大学原子炉実験所 助教 小出裕章先生
パーソナリティ(MC):下村委津子(NPO法人環境市民)
MC:FM797 原発災害特別番組、
毎週金曜日の夜8:30から通常お送りしておりますが、
今夜は緊急特別番組としてお届け致します。
この番組は主に福島原発に関する情報を
NPO法人環境市民とNPO京都コミュニティ放送が共同で企画し
放送致します。
担当はNPO法人環境市民の下村委津子です。
さて、今夜は緊急特別番組としてお届け致します。
東京電力がどのようにして福島原発を収束に向けて行くのか
という工程表を発表致しました。
そして、その工程表の発表に伴って記者発表されまして、
内容を私達も見る事が出来たのですが、
果たしてその内容が十分なものであったのか、
あるいは現実味を帯びたものなのかどうなのかという所までは、
なかなか解釈しにくい所であるという事で、
今夜もお電話で、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生に
お話を伺って行きたいと思います。
小出先生、こんばんは。
小出氏:こんばんは。
MC:今夜もよろしくお願い致します。
小出氏:こちらこそお願いします。
MC:まず、今お伝えしていたのですけれども、
東京電力から事故を収束していくための工程表が出されました。
その事によりますと、6カ月から9カ月位で原子炉を安定させて行こう、
というような内容だったのですが、
ちょっと私達には、その工程自体がどのようなものなのか、
ムリがあるものなのか、それとも現実味をかなり帯びているものなのか、
という所が解りませんので、先生にお伺いしたいと思うのですが、
工程表について、先生はどのように受け止められましたでしょうか。
小出氏:東京電力が示した工程表通りに、作業が進む事を願います。
ただ、出来ないだろうと思います。
MC:そうですか。
というのは、先生がお考えになる所でどの辺りになるのでしょうか。
小出氏:まず、これまでの事故を招いてしまったという
東京電力の基本的な甘さがあった訳ですし、
事故が起きた後の対応というのも楽観的楽観的な見通しを
発表しながら今日まで来ているのですね。
それが東京電力だけでなく、政府もそうですけれども、
そうした流れを見ていると、東京電力が言う通りに楽観的な見通しが進むとは
私には思えないという事が基本にあります。
そして、この工程表通りに行かないと私が思わない理由は、
大きく分けて2つあります。
ひとつは、現場がとてつもなく厳しい放射線の被曝環境の中にあるという事です。
これから、6カ月あるいは9カ月で収束させるというふうに東京電力が
言っているのですけれども、
その収束のためには気が遠くなるような作業の積み重ねが必要です。
そのためには、被曝を覚悟する人達、生身の人達が、
その現場で作業をしなければいけない訳ですけれども、
極めて特殊な能力を持った人達が、その能力を発揮しながらやらなければ、
作業が進まないと思いますし、
そういう人達が本当にこれから6カ月あるいは9カ月もの間にわたって、
キチンと仕事が出来るだけの人数を集められるのか、
そして、被曝をしながら、その作業が出来るのかという事を思うと、
私としてはなかなか難しいだとうと思うのが一点です。
それから、ロードマップに示された方策それ自身に、
私はいくつか疑義がある、という事があります。
MC:手段として書かれている事についてという事ですか。
小出氏:はい、そうです。
MC:どのような事でしょうか。
小出氏:例えば、今回のロードマップによりますと、
格納容器と呼ばれている巨大な容器の中に水を入れて行って、
それを水没させる、全体に水を入れると言っているのですね。
どうもそれは、「水棺(すいかん)」という字で表現したようですけれども、
水の棺にしてしまうという意味ですね、
でも、それはたぶん出来ないと私は思います。
例えば、一番難しそうなのが2号機という原子炉ですけれども、
格納容器と普通呼ばれている容器の一番低い位置には、
私がサプレッションチェンバーと呼ぶ、
普通の方々は圧力抑制室と呼んでいるような場所があるのですが、
そこは、東京電力によっても既に爆発によって壊れてしまっている
と言われています。
水を入れると言っても、一番低い所で壊れている訳ですから、
水が入れられません。
そのために東京電力は、この2号機に関しては、
1号機と3号機は6カ月で復旧すると言っているのに対して、
9カ月かかるというふうに言っているのです。
つまり3カ月分余分に時間がかかると言っているのですが、
本当に水を入れられるようにするためには、
まずサプレッションチェンバーのどこが破れているのかという事を
突き止めなければいけません。
そして、どれだけの大きさで破れているのか、
どのような形で破れているのかを、きちっと調べなければいけません。
その上で、水が漏れないように修理をしなければいけません。
ただし、その現場に立ち入る事すら実は出来ないという、
そういうとてつもない放射線が飛び交っている場なのです。
ですから、実際上3カ月をかけると言ったとしても、
それが出来ないだろうと私は思いますし、
出来なければ水を入れるというそもそもの計画自身が成り立ちません。
それから、1号機と3号機というものも、既に格納容器に損傷があるという事は
はっきりと解っています。
ですから、仮に水を入れて行ってしまうと、
損傷している場所から水が漏れて来てしまう、という事になりますので、
たぶんこれも水を入れる事は出来なくなるだろうと想像しています。
そして、もともとこの格納容器という容器は、水を入れるなんていう事は
想定もしないまま作られた容器で、そのうような設計になっていないのです。
初めから。
巨大な容器で、何十mも高さがある容器ですけれども、
その中に何千トンもの水を入れるという事になると、
たぶんあちこちにムリがかかって来ると思いますし、
そのためにまた新たな損傷が生じてしまう可能性もあると思います。
そのような事を考えると、ロードマップで単に水を入れると
東京電力は言っている訳ですけれども、
それ自体がたぶん私は出来ないと思っています。
MC:そうですね。
その格納容器からいろいろなパイプが出ていたりとかする訳ですよね。
小出氏:そうです。
MC:ですから、そうやって水を入れると今度はどこにどんな負荷がかかるか
という事が全く解らないままにする事になるのですか。
小出氏:少なくとも人類が一度もやった事のない事をやろうとする訳ですし、
全く想定もしていない作業をやろうとしている訳ですから、
きっと様々なトラブルが出るであろうと思います。
MC:そうすると、今先生がお話し下さったみたいに、
ステップ1が3カ月を目標に、1号機から4号機の放射線量が
着実に減少するように、そういう状況に持って行くのは、
その時点でかなりムリがあると。
小出氏:はい、非常に楽観的な見通しだと思います。
MC:おっしゃったように、今2号機のサプレッションチェンバー、
いわゆる圧力抑制室が破損しているという事はもう確かで、
そこから放射能が出ているがために近寄れないという状況でもあるのですよね。
小出氏:そうです。
MC:それを何とか放射能を出ないようにするというのは、
破損しているからムリという事なのですか。
小出氏:その破損している所を、東京電力はグラウトと言っている
コンクリートの仲間で埋めると言っている訳ですけれども、
まずその作業自身が、私は出来ないと思います。
要するに、人が近づけない位の物凄い放射線環境なのです。
ですから、東京電力がどのような計画を立てて、
そのようなプランを示したのか、今私は詳細を知りませんけれども、
たぶんムリだと、私は思います。
MC:それを本当にしようと思ったら、先生が一番最初におっしゃったみたいに、
現場の本当に厳しい環境の中で働いておられる方に、
更にもっと過酷な事を求めなければならないという事になる訳ですよね。
小出氏:そうです。
アラームメーターという放射線を計る機械を持って、
そこまで走って行ってその現場で1分なら1分という、
そんな作業をしながら次から次へと人が変わって行くという、
そういう作業をしなければいけなくなると思います。
MC:という事は、全くもう楽観的な工程表の発表であったと、
先生はご覧になっているという事ですね。
小出氏:そうです。
MC:先生が、もし別の案で工程表を考えられるとしたら、
細かな事はお伺い出来ないとは思いますけれども、
全体でどれ位、このような事故の場合、
収束に向かうのにかかるのだろうと思われますか。
小出氏:今の東京電力のプラン通りに行くなら、
6カ月9カ月という事では、たぶん済まないと思いますし、
また別なトラブルが出てきて1年とか2年とかいう事になるのではないかと
私は心配しています。
MC:そうすると、工程自体を変える方がいいですよね。
やり方というか、手段自体を。
小出氏:私自身が、ずっと前から、
確かこのラジオカフェでも提案させて頂いたと思うけれども、
別な方法を提案しています。
水没させるなどという事はムリなので、それはやらなくていい。
ただし、循環させるという事はどうしても必要なので、
圧力容器と格納容器を一体として考えて、
圧力容器に中に水を入れる、
圧力容器はもう壊れているので格納容器に漏れて来る、
それをポンプで吸い上げて、また圧力容器の中に戻すという、
そういう循環ラインを作る、
そしてその途中に熱交換器を入れて、
熱だけは海へ捨てるような仕組みを作るというのが、
私の提案なのです。
ただし、それだけでも物凄い大変な作業だと思っています。
それをやるためにまた、申し訳ないけれども、やはり作業員の人達に
酷い被曝を強いなければいけませんけれども、
今でも、東京電力の示しているプランに比べれば、
まだ収束が早いのではないか、と私は思います。
ただし、完璧ではありません。
格納容器の破損というのは既に起こっている訳ですし、
それ(放射能の放出)を止めるというのはたぶん出来ないと思いますので、
環境にやはり放射能を漏らし続けながら行くしかないという、
その事を暫くは続けなければいけなくなります。
MC:この、先生が前から言って下さっているプランだと、
ポンプを動かすための電源が必要になって来るのですが、
この電気というのは、今中央制御室まで行っているという、
その電源で可能なものなのですか。
小出氏:もちろん、可能です。
MC:そうすると、それをしようと思うと、
ポンプといのは外付けで付けられるというものなのでしょうか。
小出氏:私はそうではなくて、
福島の原子力発電所に既にあるポンプ、
余熱除去ポンプというのですけれども、
残留熱除去系という、そういうふうにも呼ばれますが、
そのポンプを使えるだろう、と私は思っています。
ただし、配管の一部をやはり改修しなければいけないし、
熱交換器を何がしか準備をしなければいけないと思っています。
そのための工事を、いずれにしてもやらなければいけないと思います。
MC:そうすると、工事の時に働く人達には、やはりある程度の被曝であるとか、
そういった負荷がかかって来るという状況は免れないという事なのですね。
小出氏:大変申し訳ないけれども、今の状況で言えば、
被曝自身は避けられませんので、
少しでも少なくなる道は何かという事を選択しなければいけません。
MC:先生が考えていらっしゃるプランの方にするという方向に行けば、
私も良いなというふうに願うばかりです。
それにしても、ロボットが入って行って、
中の状況が解って来るに従って更に見えてくる事があったのかもしれないな、
と思うのですが、汚染水の移送も同時進行でやっていますよね。
物凄い量が建屋の中にあると解ったのですよね、
高濃度の汚染水が。
小出氏:東京電力の発表だと6万トンあると言うのですね。
MC:それを外に出しならが、同時進行でやらなくてはならない作業という事に
なるのでしょうか。
小出氏:そうですけれども、今6万トンある一部の水を
集中廃棄物処理建屋という所に移しているのですが、
その建屋にあるタンクは確か2万トンか3万トンしか入れられません。
つまり半分以上はどっちにしても今のまま残ってしまう訳です。
そして、一方では原子炉の中に水を入れ続けるしか原子炉を冷やせませんので、
今どんどんまだ入れている訳ですね。
そうすると、入れた分がまた溢れて来るという事が避けられませんので、
せっかく何万トンか移しても、またどんどん増えてきてしまって、
いくらやってもイタチごっこになるのではないか、と私は心配しています。
そうすると、現場は汚染水がずっと溜まり続けているという状態が
これからも続いてしまう訳ですから、
循環式のラインを作るという作業自身が出来ないという状況が続くと思います。
MC:先生にも何度がお伺いした高濃度の汚染水なのですけれども、
もしも(水を)掛け続け、冷やし続けなけれならない、
それをどこかに移し続けなければならない、という事になってくると、
前に先生がおっしゃったような柏崎刈羽にあるような
何らかの処理が出来るようなものを近くに作るというような事は
できないのですか。
小出氏:出来ると思います。
たぶん東京電力はそれも考えていると思いますし、
集中廃棄物処理建屋のタンクでは足りないという事は
もちろん東京電力は解っている訳で、
今仮設タンクを作るというような案も出している訳で、
そういう作業を進めなければいけないと思います。
ただし時間がかかりますので、
東京電力のロードマップ通りには行かないと私が思う理由のひとつでもあります。
MC:急がなければならないのだけれども、なかなか急ぐにも急げないような
状況になっている、という事ですね。
小出氏:そうです。
MC:解りました。
MC:先生のお話を伺うと、本当に現状が明確によく解って来るのですけれども、
もうひとつ、お伺いしたいのが、
少し前の話になりますけれども、
国際評価尺度がレベル7であるという発表がなされました。
これは余りにも遅い発表だったのではないかという声も聞こえたりしていたのですが、
今起こっている現状を見なければならないという事を、
先生に教えて頂いたのですが、
7以上に酷い状況というのは国際評価尺度の中には無いと聞いていますけれども、
今起こっている現状をご覧になってのレベル7というのは、
どういうふうに感じられますか。
小出氏:この国際事故評価尺度というのは、
原子力を進めて来た人達が作ったものです。
小さい事故から大きい事故まである、と。
小さい事故はレベル1、あるいはレベル0というのも作っているのですけれども、
そういうものから中位の事故、そして大きな事故、
そして破局的な事故まであるだろうと、
彼らが考えてレベル分けをした訳です。
レベル7というのは、とにかくもう本当に酷い事故だという事で、
彼ら自身が作ったのです。
それで、今現在彼ら自身がレベル7になってしまったと言って認めている訳で、
私は余りにも遅かったと思います。
当初彼らはレベル4だと言っていた訳ですが、
私はもうその頃から、レベル4などという事はあり得ない、
レベル6だとうと思っていました。
それも3月の15日あるいは17日位になった時には、
彼ら自身がもうレベル7だという事を知っていたと言うのです。
私もその頃そう思っていました。
それなのに彼らは18日になってレベル5だと言っのですね。
それ以降口を噤んでしまって、極最近になってレベル7だと言いました。
事故を、小さく見せたい小さく見せたい、
何とかその危険が大きいというのを認めたくないという姿勢の表れだと思います。
そのため、世界からは物笑いの種にされた訳で、
日本政府の危機管理がなっていない、情報の開示がなっていないと言って、
喧々囂々の非難を浴びたために、
ようやくにしてレベル7というのを認める事になってきた訳です。
もう本当に恥ずかしい対応だと、私は思います。
ただし、今になってもレベル7だけれども、
チェルノブイリの事故に比べたら、まだ小さいのだという事を彼らは言っているのです。
何とも困った人達だな(溜息混じりに)というのが、
私の正直な感想です。
自分達の基準でレベル7だと決めてしまったのであれば、
本当に破局的な事故になっているという事を、
それをまず一番に言わなければいけないと思いますし、
何よりも問題な事は、チェルノブイリの原子力発電所の事故は、
一応収束したのです、既に、
所が福島の原子力発電所の事故は今現在進行中です。
これからもっともっと放射能が漏れて来る訳ですし、
私の描いている最悪のシナリオのような事がもし起きるのであれば、
現在漏れて来ている放射性物質の10倍以上の放射性物質が
漏れて来るであろうと、私は思っています。
MC:10倍以上ですか・・・。
小出氏:はい。
そうなれば、もうチェルノブイリを超えてしまうという事もある訳ですし、
そんな危険もはらみながら今事故が進行しているのだと、
ハッキリとものを言わなければいけないと思います。
MC:そうですよね。
素人の質問になるかもしれませんが、解らなかったのが、
原子力安全保安院という所があるのと、
(原子力)安全委員会があるので、
安全委員会の方は当初からかなり酷いレベルではないかというふうに
思っていたと言っていたと記憶しているのです、記者発表で。
たぶん縦割になっているのだろうと想像しますけれども、
同じ中でお互いやり取りして、もっと迅速に情報開示なりをしつつ、
注意を促すような事が出来なかったのかな、
と凄くそれが国民としては不思議でならないのです。
命が一番大事なのに、何故そんな縦割で話が終わっているのだろう、
というのが物凄く不思議でならなかったのですけれども。
(涙声)
小出氏:私もそう思いますし、
ただ私自身は、保安院の組織がどうなっているか、
原子力安全委員会が組織がどうなっているか、
という事を詳しく知りません。
安全委員会の中に私の知っている人もいますけれども、
いかんせん今回は、安全委員会は殆ど全くと言って良い程
機能していませんでした。
もう少しちゃんとやるべき組織だったのになぁ、
と私自身も残念に思います。
MC:先生の前半のお話でいかに東電の工程表が甘いものかという事がよく解りました。
これから私達、もしも声を上げて行くとしたら、
どういうふうな声を上げて行ったらいいのでしょう。
その工程表自体もっとキチンと見直すべきなのではないか、
と強く求めて行くという事は必要なのでしょうか。
小出氏:一般の方がそういう声を上げても、
きっと東電としては何も聞く耳を持たないというのが、
どうもこれまでの歴史だったようですから、
私自身もどうしたら良いのかよく解りません。
MC:解りました。
それと、いろいろな新たな手段として、
さっき少し話が出ました、私の方から出たのですけれども、
ロボットによる現状把握をしようという事で出ているのですが、
これは、より現状が解りやすくなる、
もっと何か収束に向けて進めるために効果は期待できると
考えていいのでしょうか。
小出氏:過度の期待を持つ事は無意味だと思います。
ロボットが出来る事というのはせいぜい動いて行って、
その現場の写真を撮るであるとか、
放射線量を計るであるとか、温度を計るであるとか、
せいぜいその程度の事しか出来ません。
ですから何か修理をするというような事は全く役に立ちませんし、
動いて行って、と私は言った訳ですけれども、
動くための障害物があればまずそこを動く事が出来ない。
例えば、水浸しになっている所とか、
障害物が何かもう山積みになっているというような所があれば、
もうそれで終わってしまう訳ですから、
過度の期待を持ってはいけないと思います。
ただし、人間がとりあえずは入る事が出来ないような所の
放射線量を測定出来るとか、
そういう何がしかの役に立つと思いますので、
出来る活用はすべきだと思います。
MC:確かに先生のおっしゃる通り、最初入った時に水蒸気で
レンズが曇ってしまったというようなニュースも来ていましたよね。
小出氏:そうです。
MC:人が入り込んで危険を犯さずに何らかの数値を得るなりをするためには
必要なのだけれども、それ以上の事を求められないので、
過度に期待してはいけないと。
小出氏:そうです。
MC:解りました。
この本当に私達は、先生がおっしゃったように、
まだ世界で全然経験した事のないような事態に陥っているという事を
もっと早く政府の口から、あるいは東電の口から発表してもらって、
そのために今これだけの、ひとつじゃなくて、これがダメならこれ、
それもダメならこっちまでを考えてやります、
というふうに言ってもらいたい所なのですが、
なかなかそこに行かないという所に本当にジレンマを感じてしまいます。
先生なんかは専門家でいらっしゃるので、
もっと恐らく本当に歯ぎしりする思いで悔しい思いをされているかと思いますが、
また私達は先生に情報をいろいろ頂いて解説して頂く事で
理解を深めて行きたいと思いますので、
これからもよろしくお願い致します。
(半涙声にこちらも涙が・・・)
小出氏:こちらこそ。
MC:ありがとうございました。
小出氏:ありがとうございました。
MC:という事で、今日は毎週金曜日8:30からお届けしている
FM797 原発災害特別番組を、緊急特別番組として、
お届け致しました。
お話を伺いましたのは、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生でした。
小出先生も今あちこちで原発関連の催しが行われている中で、
情報提供、あるいは、どのように考えたらいいのかという辺りの
解説をして頂いているようです。
本当にありがとうございました。
それでは今日入って来たニュースを確認して、
この番組を終わりたいと思います。
まず今日の動きなのですけれども、
福島第一原子力発電所で、今日19日午前冷却機能復旧への
大きな障害となっている2号機の高濃度汚染水の集中廃棄物処理施設への
移送を開始しています。
およそ1万トンを移送する予定だという事なのですけれども、
出来るだけ早く浄化システムを設置し、
処理した水を注水に使う循環システムの構築を目指している、
という事で、これは先ほどの先生のお話の解説の中にも出てきていました。
2号機の高濃度汚染水を復水器へ移す作業を行った結果、
トレンチの縦坑の水位が一端低下したそうなんですが、
その後再び上昇に転じており、残りの汚染水の移送が急がれていました。
縦坑の水位は、19日午前7時、地表から80cmの所にあり、
前日の同じ時刻の82cmよりも上昇をしているという事です。
経済産業省原子力保安院によりますと、
福島原発には、およそ7万トンの汚染水があるという事で、
2号機タービン建屋などには1000mSv以上という高い放射線量を持った
溜まり水があるという事なんですね。
この水がおよそ2.5万トン滞留しているという事です。
まだまだ予断を許さないような状況が続いています。
今度はまた金曜日に、いろいろと福島原発に関連する情報を、
お届けしてまいりたいと思います。
今日の担当はNPO法人環境市民の下村委津子でした。
それでは、今日はこの辺で、失礼致します。
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