数百人に1人が1ミリシーベルトの被爆でガンを運命づけられるということだと思います。/小出裕章助教 第4回インタビュー Powered by ホワイトフード文字起こし

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放射能測定を行って食品を販売している通販サイト「ホワイトフード」による小出さんへの4回目のインタビューが、YouTubeで公開されていましたので、このブログでも共有させていただきます。また、文字起こしも行いました。
(同店のWebサイトにも文字起こしページが公開されています)

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◆ホワイトフード

京都大学原子炉実験所、小出裕章助教に、こどもみらい測定所とホワイトフードのお客様から頂きましたご質問にお応えいただきます。
先生、よろしくお願い致します。

◆小出

はい、よろしくお願いします。

◆ホワイトフード

Q.1《吉田元所長の死について》
震災当時福島原子力発電所の所長であった吉田さんが亡くなりました。
死因は「食道がん」によるもので、震災後に浴びた放射線量総計は「70ミリシーベルト」であると報道されました。
東電によると、吉田元所長が食道がんで亡くなったことと、被ばくの関係については「あるとは言えない」、と発表されました。
小出先生はこの東電の発表につき、どのように感じられましたでしょうか?

◆小出

はい、厳密に科学的に言うなら、因果関係は分からないとお答えするしかありません。
ガンというのは、皆さんご承知だと思いますけれども、被曝によっても起こりますし、被爆をしなくても様々な要因でガンになるのです。

例えば私が京都大学原子炉実験所で働いていますけれども、私がガンになったところで、それが京都大学原子炉実験所で放射能を相手に仕事をしたためだということが実は証明できない。
私自身は、家系がガンの家系でして、私の親父もおふくろもガンで、親父は既にガンで亡くなりましたし、おふくろもガンです。
それから、親族1等もほとんどガンで死ぬという家系ですので、多分私もガンで死ぬと思いますが、私のガンがいわゆる家系的な影響なのか、職場での被曝の影響なのかということは決して証明できない、のです。

吉田さんの被曝量もそれなりに多いなと私は思いますし、公表されてる値ですね。
70ミリシーベルト、それなりに多いなと思うし、実はもっと被爆をしていたかもしれないそういう疑いもあります。
ですから、吉田さんのガンが、被爆によって引き起こされたという疑いを私はかなり持っていますけれども、でも本当にそうだと断定することができません。

でも逆に言うなら、東京電力にしてもそれはできない筈なのです。
東京電力は、何か食道ガンなどは、5年経たないと出てこないというようなことを言っていますけれども、それは元々正しくありません。
そういうデータというのは、広島・長崎原爆被曝者の人たちの疫学調査に多くをよっているのですが、その疫学調査が始まったのが被爆から5年後にしてようやく始まったからなのであって、もっと早くからひょっとしたら出ていたかもしれないということなのです。
チェルノブイリの原子力発電所の事故の場合も時もそうでした。
原子力を推進してきた人たちは、被爆の影響は5年10年経たないと出てこないというようなことを言っていたわけですけれども、チェルノブイリ事故の場合には、もう直後から子供たちの甲状腺ガンなどが現れてきてしまいました。

ですから、これまでの科学的な知見で納得できない、あるいは証明できない言ったとしても、それが事実がないということとは違いますので、東京電力が言っていること自身は、まずは根拠がありません。

◆ホワイトフード

ありがとうございます。
二つ目の質問です。

Q.2《内部被曝による胎児への影響》
内部被曝が、妊娠のとき胎児にどれくらい影響があるのか、知りたいです。

◆小出

内部被曝というのは、とてもその嫌なんですよね。
避けることができないというか、逃げることができないのですね。
外部被爆というのは汚染地帯にいる限りもちろん避けることができませんけども、汚染地帯から逃げてしまえば外部被曝を避けることができるのですが、内部被曝というのは、からだの中に放射性物質を取り込んでしまって起きる被爆ですので、どこに逃げても放射性物質と一緒に逃げるしかなくなって、逃げられないという意味で嫌な被爆です。

そして人間のからだというのは、まあ人間だけじゃありませんけれども生物のからだというのは複雑なものですので、仮に1ベクレルという放射性物質を取り込んでも、その放射性物質がどこにどれだけ長い間存在しているということもなかなか分からない。
個性によっても違うということですので、内部被爆の被曝量を評価するということはとても難しいことです。

ただし、もしそれが正確に評価できるとすると、被曝の影響というのは、内部被曝も外部被曝も同じだと私は思います。
そして一言でいうなら、1ミリシーベルという被爆をしてしまうと、ごく平均に言って2500人に1人がやがてガンで死ぬという、そういう危険度です。
0歳の子供の場合には、それの4倍から5倍、たぶん600人に1人ぐらいが1ミリシーベルトの被爆でやがて死ぬことを運命づけられるということです。
ですから、内部被曝の場合も、もし正確に調べることが難しいと今聞いて頂いたわけですが、内部被曝によって1ミリシーベルトの被爆をしたとすれば、大人であれば何千人に一人がやがてガンで死ぬという危険を負うわけですし、0歳の子どもであれば、今聞いて頂いたように600人に1人、もし胎児であればそれよりもう少し大きい、危険が大きいのではないかなと私は思っていますが、いずれにせよ数百人に1人が1ミリシーベルトの被爆でガンを運命づけられるということだと思います。

◆ホワイトフード

ありがとうございます。
3番目の質問です。

Q.3《海産物の汚染状況》
海産物の汚染状況をもっと知りたいです。どんな頻度で検査されていらっしゃいますでしょうかというご質問です。

◆小出

私もそれが心配なのですが、データが少ない、残念ながら少ないです。
それで、海産物というのはとても扱いにくくて、たとえば今は、陸上は事故が起きたときの放射性物質が降ってきて、汚染されているのですね。
ですから、福島県の東半分を中心にして東北地方、関東地方のかなり広大なところが汚染されていて、そこから取れる農作物、酪農製品、畜産製品などが、濃度高く汚れているわけです。

ただし、海というのは常に流れてしまっていて、海流であちこちに運ばれてしまっているのです。
東日本大震災で流された瓦礫なんかも既に米国までに達しているというほどに流れているわけで、福島第一原子力発電所からは今も毎日放射性物質が海に流れているわけですが、それも海流にのってあっちこっち既に流れて行ってしまっているわけです。

そして魚自身もある土地の農作物のように、そこにじっとしているわけではなくて、たいていのものは、海を泳いで移動しているわけで、どこの魚がどれだけ汚れているということを正確に突き止めることがまず難しいということがありますし、漁業の生産物の場合は、水揚げされた港が生産地になってしまう。
ですから、福島沖の魚をとったとしても、たとえば北海道で水揚げすれば北海道産になってしまうのです。そういうようなものをいったいどれだけきっちりと測定できるかということを私は心配しています。

その上、陸上の場合には、私はセシウムという放射性物質だけに注意をしていればいいとずうっと言い続けていて、皆さん、ストロンチウムという放射性物質やプルトニウムという放射性物質はどうなんだとしきりに私に質問をしてくださるわけですけれども、陸上に関する限りはそんなものは放っておけと私は言ってきたんですね。
ひたすらセシウムに注意をしてくださいと皆さんにお願いをしてきたのですが、海産物に関してはそれではダメです。
恐らくセシウムと同程度にストロンチウムで汚れているでしょうし、ストロンチウムという放射性物質はセシウムよりも生物学的な毒性が高いので、本当はストロンチウムに注意をしないといけない。
ただし、ストロンチウムの測定というのは大変面倒です。
1つの試料を測定できるように試料を調整するために、何日も1週間もかかってしまうというほど面倒な放射性物質ですので、中々データ自身が出てこないという状態になっています。
皆さんに私からこんなことをいうのは申し訳ないけど、残念ながらデータは不十分ですし、皆さんとしてもなかなか注意のしようも難しいだろうと思います。

◆ホワイトフード

ありがとうございます。
4つ目のご質問です。

Q.4《除染した放射能の処理》
除染した放射能の処理について、今後どのようになっていくでしょうかというご質問です。

◆小出

はい、処理ということばをご質問の方が使われたけれども、放射性物質というのは人間が煮ても焼いても消すことができない、のです。
ですから、基本的には処理できないのです。
何をやっているかといえば、人々の住んでいる場所からとにかく放射性物質をどこかに移動させているということなのですね。

除染なんて言うけれども、汚れを除いているわけではなくて、汚れをただただ移動させているという、それだけに過ぎません。今日本の政府は、移動させる先として、それぞれの県でどこか一箇所に汚染物を集めると、それが処理であるかのように言っているわけですけれども、集めたところで無くなるわけではありませんし、それをこれからずっとお守りをしないといけなるのです。

今、中間貯蔵というような言葉が使われていますが、中間で済む道理がないのです。
もし、今、押し付けられてしまうと、それは永久にその場所に留まるということになると思いますし、それを永い年月に渡って、これから漏れ出ないようにお守りをするということだけ、私たちにできる唯一のことなのです。

私自身は、それぞれの県で汚染物を引き受けるというようなことはやってはいけないと思っています。
元々汚染した物というのは、東京電力の福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった物、放射性物質ですので、所有者に返す。元々東京電力の列記とした所有物なわけですから、集めた物は東京電力に返すというやりかたが正しいと思います。

本来であれば、それらの放射性物質が出てきた東京電力福島第一原子力発電所に返すのが一番いいと思いますが、今それはできません。
なぜなら福島第一原子力発電所の敷地の中では、膨大な放射性物質を相手に作業員が毎日被爆をしながら苦闘しているわけで、そこに新たに放射性物質を返すということはたぶんできないと思います。

私としては、福島第一原子力発電所南10kmのところに福島第二原子力発電所という広大な敷地をもった発電所があります。
東京電力はその発電所をまた再稼働させるというようなことを言っているわけですけれども、とんでもないことだと私は思います。
これだけ福島周辺の人々に苦難をしいておきながら自分の発電所だけは無傷で生き延びさせるなんてことなどは許すことができませんし、私は福島第二原子力発電所を汚染物のゴミ捨て場にするということがいいだろうと思います。
かなりの分はそこで抑えこむことができると思いますし、もし福島第二原子力発電所の敷地で足りないというのであれば、東京電力はもう一箇所柏崎刈羽原子力発電所という更に広大な敷地を持っていますので、そこを放射能のゴミのゴミ捨て場にする、そこで集中的に管理をする、処理はできませんけれども管理をするというのがいいと思います。

◆ホワイトフード

ありがとうございます。
5つ目の質問です。

Q.5《全国の自治体の放射能汚染対応》
全国都道府県において、放射能汚染についての、それぞれの対応について知りたいですというようなご質問を頂きました。

◆小出

細かいことを言えば、それぞれの自治体で注意深く測定をしているところもあるし、もう何もしなくてもいいと言っている自治体もあるわけです。

でも、基本的にいうと、放射能の問題というのはともてやっかいな問題なので、それぞれの自治体は国がこう言っているから、もういいだろうというのが基本的な姿勢なのですね。
例えば、食べ物にしても1キログラム当たり100ベクレルという基準を国が決めているわけです。
私はそんなものは到底安全ではないし、安心でもないし大丈夫でもないと私は言い続けていますし、もっともっときちっと測定をしなければいけないと言っています。

元々福島事故が起きる前の日本のお米は0.1ベクレル、1キログラム当たりしか汚れていなかったわけですから、1キログラム当たり100ベクレルの汚染というのは、事故前の1000倍という汚染なのですね。
そんなものが安心だなんてことは到底言えないし、せめて子供たちには汚染の少ないものを回したいと私は思っていますので、きっちと測定をして、例えば学校給食であれば汚染の少ないものをまわさないといけないということをやらないといけないと主張し続けていますけれども、中々それに応えてくれるような自治体はありません。
国が1キログラムあたり100ベクレルという基準を決めたから、それでいいんだといいうのが殆どの自治体だと思います。

◆ホワイトフード
ありがとうございます。今回のご質問は以上になります。
インタビューにお答えいただきましてありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

◆小出

こちらこそよろしく。

※同店の文字起こし文章をベースに、YouTube音声に合わせて若干の修正を加えました。

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