7月26日 食品安全委員会発表「生涯上限100ミリシーベルト」のゆるさについて 小出裕章(MBS)

2011年7月27日

2011年7月26日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年7月26日【火】
主婦が測る食品の放射能
東京都小金井市ではチェルノブイリ事故後、市民から食品の放射能測定を求める声が高まり、1990年に市が本格的な測定器を購入しました。実際に測るのは主婦らで構成される「小金井市放射能測定器運営連絡協議会」のメンバーら。市の委託を受ける形で、この20年放射能の測定を続けています。協議会会長の香田頼子さんに、福島原発事故後の数値や、測定を続ける意義などをお聞きします。
京都大学原子炉実験所・小出裕章さんの原発事故解説も。

録画
20110726 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容、書き起こし

(水野「小出さんこんばんわ」)

小出「こんばんわ」

(平野「こんばんわ。よろしくお願いします」)
(水野「よろしくお願いします」)

(水野「今日はまずですね。放射能の新たな被ばく線量の基準というものが、話が出てきまして。これについて伺いたいと思います。食品安全委員会というところがあります。ここは食品を通じた放射性物質の健康への影響を評価している所なんですが。そこがですねこういう話を出してきました。私たち人間が生きるこの一生、生涯ですね、生涯にわたって、どれだけ被曝するんか。累積、積み重ねて言った線量の数字、これの限度を定めようという話です。この食品安全委員会の考えはですね、一生涯で、上限、リミットが、100ミリシーベルトとする、という評価報告書をまとめました。そこで伺いたいんですこれ一人の人間が一生涯にわたって100ミリシーベルトまでは被爆しても、逆に言うと安全なんだという意味だと思うんですが。そう読み取ってよろしいんですよね? 小出先生」)

小出「えー、安全なんだと言ってるのとは違うと思います。」

(水野「違うんですか」)

小出「要するにそこまでは我慢をしなさいということだと思いますけれども。そんなことをそんなひとつの委員会が言う権限があるのでしょうか。日本人、というか日本に住んでる人というのは1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけないというのが法律の定めなんでね。えー、それは外部被ばくも、食品も含めての内部被曝も含めて、1年間に1ミリシーベルトと決めているわけです。まさか100歳まで生きるっていう人はあんまり多くないわけですから。まあどんなに生きても100ミリ、全部の被曝を合わせても100ミリになってはいけないというのが法律の定めであるにも関わらず、食品だけを通じて100ミリシーベルトまでいいと言ってるのですよね、この委員会が」

(水野「そういう意味なんですか」)

小出:はい。

(水野「これ内部被曝と外部被ばくを合わせて、生涯にわたる線量の限度を、って言ってるんですね?」)

小出「えー食品委員会がそういうふうに言ってるんですか? 食品の外部被ばくって言うのはどういう事を行っているのでしょうか。

(水野「えー、ですから私は食品も空気も、全部足しての話しかと思ったんです」)

小出「えー、食品委員会というのは多分食べ物を通じての事だと思いますし、外部被ばくの計算なんか出来ないと思います。」

(水野「はあー」)
(平野「そもそも、あの先生。自然界にあの年間1.5ミリシーベルト、あのー被爆してると。」)

小出「そうです」

(平野「言われてますよね。それプラス食品ということになると、もう2.5なりますね、この基準でもね。そうすると、もう全く、あのー、先生のいう1ミリシーベルトというのははるかに超えてますよね」)

小出「はい。ただもともと、その、1年間に1ミリシートベルトという被爆量の限度というのは、自然の被曝は除外してます」

(平野「ああ、除外してるんですか。ああ、なるほど、ということはあの」)

小出「人工的な、えー、上乗せの部分が1年間に1ミリシーベルトと言ってるわけで、それを人工的に上乗せされる外部被ばくも内部被曝も全て込みで1ミリシーベルト以下に抑えなければいけないと決まっています」

(平野「ああー、それを食品に限るのがおかしいということですねー」)

小出「そうです。全くあの、おかしいと私は思います」

(水野「今回はですね、やはり食品だけでは多分、駄目だということで、食品も他のものも全部ひっくるめて、この食品安全委員会が数値を出しているようです」)

小出「でもそんなことは食品安全委員会の権限を超えてるじゃないですか。」

(水野「多分、わたくし素人考えですが、多分ですね食品安全委員会はこれから様々な食品に対して、いろいろな規制をする値を決めていきたいと思ってるんでしょうね。今のところ暫定の規制値ってだしていますよね」)

小出「はい。それならば、あの」

(水野「それは暫定なので、ちゃんとした規制値を出すためには、その前の段階としまして一人の人間のライフスタイルを全体で見て一生涯でこれだけと決めて、そこから逆に言いますとこの食品についてはなんぼまで、この食品についてはなんぼまで、と言う考え方をしているのではないだろうかと、思われます)

小出「それは結構です。ただそのかわり、100ミリシーベルトまでですか、一生涯のうち。でも100歳まで生きる人はいないわけですから。」)

(水野「あんまりいらっしゃらないですね」)

小出「はい。えー、70歳まであるいは80歳までというふうにするならば、もっと低い、そうですね、どれだけなんだろう……あ、そうか」

(水野「まあ、例えば、80歳まで生きる方を」)

小出「そしたら80ミリシーベルトですね、最大で」

(水野「本当は80ミルシーベルトでなければいけな鋳物を上限100ミリシーベルトまで許されてしまうというふうに計算上なりますよね。ということは年間、これ、例えば、人生80年の方であれば、1年に1.25ミリシーベルト。」)

小出「なってしまいますよね」

(水野「ということは今までの1ミリシーベルトが法定の基準であれば、え? 25%アップってことですか」)

小出「そうですね。ですからそんなものを食品安全委員会とかいう委員会が許すなんていう権限はもともとないはずだと思います」

(平野「こんなしかし、意図は何なんでしょうかね?」)

小出「わかりません。被曝はもう我慢しろよと言って、少しずつ」

(平野「ゆるめてると。別の形の基準を設けて」)

小出「かなあと私は思いますが」

(水野「ではわたくしはこれがあの、基準をゆるめようとしてるのか、きつくしようとしているのかさえ、よくわからなかったんですけれども」)
(平野「メディアの記事、夕刊見ても全部ばらばらでわからなかったですね」)

小出「少なくともきつくはなってないですね」

(水野「そうか。だから私みたいに120歳まで生きるぞと思ってるような人で、」)

小出「(笑)。」

(水野「本当に120まで生きれば、もしかしては年間の限度としては1ミリシーベルトより低くなりますけれども。まあ多くの方はそうは行きませんねえ」)

小出「ゆるめられてしまいますね」

(水野「ゆるめられてしまう。で、例えばこの生涯の上限が100ミリシーベルトというものをまず基軸においていろいろな食品の暫定規制値を見なおしてちゃんとした規制値にしましょう、なんてことになると全体が緩むおそれがあるわけですか」)

小出「そうですね。多分そのための布石を売っているのだろうと思いますが」

(平野「もともとは暫定値は緩めてたんですよね。」)

小出「そうです」

(平野「あの3月の20日前後にね」)

小出「そうです。もともと1ミリシーベルトなんて基準は、とおく、とうの昔に撤廃されてしまっています。」

(水野「ということは、現在かなり緩んでしまっていたものが、変な言い方ですが、ちょっとはましになるんですか?」)

小出「(笑)。ましになったところで日本の法律を違反してますよね」

(水野「そうですよね。本来は日本の法律をちゃんと順守できるとこまで、」)

小出「そうです」

(水野「強めなければいけないのに。そこまでは強めることがもう現実的ではないという、ふうに読み取っ」)

小出「それはあるかも知れません。

(水野「とれるかもしれませんね」)

小出「はい。私はもうすでに3月11日で世界は変わったというふうに発言してる人間ですし、1年間に1ミリシーベルトという国の法律を守れないような世界にすでに変わってしまっている、のですね。そのことを国自身がはっきりと言わなければいけないし、国自身が法律を破らざるをえないと言わなければいけないと思います」

(水野「ただですね、今回のこの根拠を、がね、こんなふうに言われてるんです。日本人は自然界から年におよそ1.5ミリシーベルト浴びていると。だから同じ程度の被曝なら健康の影響は生じないだろうと」)

小出「(笑)」

(平野「(笑)」

小出「それはインチキですよね。ですから私たちは1.5ミリシーベルトの被曝をしてるわけで、そのことによって子どもの奇形を含めた異常とかですね、あるいは私たちの日本人が死んでいく癌のリスクをもうすでに負っているのです。それと同じだけの被曝を加えたら、くわえても安全だなんて言うことにはならないで、同じだけの危険が上乗せされるということです。」

(水野「ふーん。やっぱり上乗せされるという事ですよね」)

小出「そうです。被曝というのは必ずそういうものです」

(水野「リスクは。はあー。そこがまず、ね、意味がわからなかった一つでした。でもう一つ私がわからないのは、今の小出先生のお話を聞いておりますとね。食品安全委員会の産業部会の座長さんの言ってらっしゃることとなんか違ってるなあと思うんです。座長さんはこうおっしゃってるんです。『年間100ミリシーベルトは1年換算で1ミリシーベルト程度になり、かなり厳しい値である。より安全の側にたって判断した』」)

小出「とんでもない話ですね。」

(水野「つまりこれは、みんなが100年生きるという、計算上の話……」)

小出「なってますよね。そんなことはありえないのに。」

(水野「それとですね、『100ミリシーベルト以下だったら確実に安全だという根拠は見いだせなかった』ともあります。」)

小出「もちろんです。」

(水野「…そうなんだ……。」)

小出「はい。」

(水野「ほんまのとこ、またこんなこと言ったらそれは違うと言われるかも知れませんが。一生涯でどんだけやったら安全夜と思いますか? って聞いたらどう答えられますか?」)

小出「安全というのはありません。どこまで我慢するかということでしかありません」

(水野「ふうーん。それと今回その、セシウムのいろんな食品の話が出てますけれども。セシウムはどんだけ取り込んでも、いいと、しましょうというような放射性物質ごとに値を決めるということも出来なかったようなんです」)

小出「本当は決めなければいけません」

(水野「あ、そうですか」)

小出「はい」

(水野「それはどういう意味ですか?」)

小出「要するに、まあ、法律というものが今あるのですよね、日本という国に。で、その法律で日本に住んでる人は1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をさせないと定めているわけです。で日本が法治国家であったというのであれば、それを守るように日本の国が規定をしなければならないのです。で、そのためにはセシウムであれば1年間にどれだけ以上を体の中に取り込んではいけないということは計算でもちろん評価できますし、ヨウ素についてはどれだけかということは評価できますので、えーそれぞれの寄与を全部足しあわせた上で、1年間に1ミリシーベルトでおさまる、というような規制の仕方を本当はしなければいけない。」

(水野「ただ、まあ、食品を通じてこうしたセシウムやストロンチウムを体に取り込んだ場合の影響は評価するデータがないと」)

小出「(笑)。あの、正確にはありません。正確にはないけれども、日本の法律でセシウムはどれだけ危険である、ストロンチウムはどれだけ危険であるということを仮定しながら、法体系を作っているのですから。法体系にのっとってやればいいのです。それがどこまで正しいかと問われると私も、えー、確実だとは言い切る自身がありませんけれども。でも日本の国にはそれに則ってやる責任があると思います」

(水野「はい。ありがとうございました。)
(平野「ありがとうございます」)
(水野「京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました」)


7月25日 瓦礫で発電するバイオマス発電について 小出裕章(MBS)

2011年7月26日

2011年7月25日(月)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年7月25日【月】
「内部被ばく」引き続き
放射性物質が体の中に入ってしまうと、体の中で放射線が発射され続け被ばくしてしまう内部被ばく。広島と長崎の原爆投下でも、内部被ばくで多くの人が犠牲になったにも関わらず、戦後、国策や科学の名のもとに隠されてきたといいます。先週の水曜日、琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんに、そこまでお話しをお聞きしましたが、時間が足りずに終ってしまいました。きょうは、その続きです。東京電力・福島第一原発の事故の影響で内部被ばくは、どこまで影響するのか?矢ケ崎さんに聞きます。
京大の原子炉実験所の小出先生には気になる原発事故関連について聞きます。

録画

内容書き起こし
=====
(水野「京都大学現思慮実験所助教、小出裕章さんに伺います。小出さんこんばんわー」)

小出「こんばんわ」

(平野「こんばんわ、よろしくお願いします。」)
(水野「よろしくお願いしますー」)

小出「よろしくお願いします」

(水野「えー、今、ホームセンターで売られていた腐葉土、これ土地に栃木県産の腐葉土だそうですけども、その土からセシウムが出てきたというニュースをお伝えしました。腐葉土っていうのは、まあ木の葉っぱが落ちて、で、朽ちて、で栄養になってこう、土と一体化していくってものですよね。こうしたものの放射性物質というのは、まあ、出て当然なんですかね……?」)

小出「当然です」

(水野「はあー……。これはだけど、どんどんこうしたものがあの、見つかる場所が広がってくてるんですよね。」)

小出「はい。」

(水野「どこまで広がっちゃうんだろうという不安は抱かずにはいられないんですけれども……。」)

小出「えーっと、その栃木県産の腐葉土のセシウムの濃度というのが、今、私まだ知りませんけれども。濃度が高い低いを問わなければ、もちろん日本中汚れているわけですね。」

(水野「はい。そうですか。」)

小出「はい。関西地区だってもう土が、福島からの放射性物質で汚れてるわけですし。日本だけじゃなくて世界中が汚れてるわけですから。むしろ、当たり前と言わなければいけないとおもいます。」

(水野「そういうことなんですねえ。あの、そうした意味で、木の葉っぱ、あるいは木ということでね、一つうかがいますと。第二次補正予算案にですね、林野庁が1つの予算を計上しました。これバイオマスで発電する可能性を調査する費用なんですが。これからバイオマスの発電所をつくっていくという計画もあるようです。でそれを被災地につくっていくというような計画もあるようなんです。で、その時にバイオマスで発電する燃料としまして、被災地で発生した大量の瓦礫がありますが、この瓦礫の中の木の瓦礫、木のものを燃料にする、燃やして発電できないだろうかという話が出てきているようです。まあ、瓦礫を処理しつつエコの発電ができるという、ある意味一石二鳥というところを狙っているのかと思いますが。あのこれ今のところどこの瓦礫とかっちゅう情報までわかんないんですけれどもね。その木、の瓦礫の中にはやはり放射能汚染されたものもあるのではないかと、思うんです」)

小出「はい。当然あります。」

(水野「これを燃やすということ、どう捉えたほうがよろしいですかねえ?」)

小出「えー……、大変難しい問題ですね。要するにその福島県を中心として、いわゆる震災、あるいは津波で、瓦礫になったところがあるわけですけれども。それは放射能でも汚れている、のですね。要するに放射能っていうのはなんども聴いていただいたように、煮ても焼いてもなくならない、というものなわけで。瓦礫のままとっておいてももちろんなくならないし、焼いたところなくならない、のですね。でもし、瓦礫を処理するために焼くとするならば、えー、放射能が外に飛び散らないように、それなりの、排ガスの処理をしなければいけませんし、燃やしたあとに出てくる灰の中には猛烈な濃度の放射能が、えー、出てきてしまいますので、それをどうやって処分するのかっていうことも考えてからやるべきだと思います。」

(水野「やはり、相当そこは神経を使ってやらないと、また次の被害になってしまうわけですね」)

小出「そうです。でももう、あの、瓦礫自身が膨大にあるわけですから、いずれにしてもなにがしかの形で私たちが被曝をするということは避けられないということなのです」

(水野「うーん。ええ……、そうして平野さん、ずっと小出先生のおっしゃっていたこの福島第一原発の汚染水を地下水に混ざらせないための方策というのはやっとすすむんですか?」)
(平野「遮水壁ですね。これは地下ダムに近いものかもわかりませんけれども。先生あの、」)

小出「はい」

(平野「政府がですね。その前倒しでですね、今年の秋から、あのー、第二工程表でやるというようなことを言い出したんですけれども。)

小出「はい」

(平野「あのー、まあ1000億かかると、いうようなことで。先生あの、ずっと指摘されてましたけれども、このままいい方向に向かっていると見たらいいんでしょうか)

小出「もちろんそうだと思いますけれども。秋からじゃなくて今やらなければいけないと私は思っています」

(平野「まあ1000億というお金がですね。僕らにとっては非常にすごいお金だなあと思うんですけれども。それでももう当然、その先生はそんなにおおかかりにやらなくてもいいというようなお考えだったようにちょっと聞いたんですけども」)

小出「いえいえ、そんなことはありません」

(平野「ああ、例えば30メートル掘らなくても」)

小出「あ、はい。」

(平野「10メートルでも、やれる段階でやったらいいんじゃないかと。」)

小出「はい、えーとようするに、私自身もよくわからない、のです。」

(平野「ええ」)

小出「えー融けた炉心が地面にめり込んでいくはずだと私は推定してるのですが。そのめり込んでいく深さがいったい何メートルまでなのかということが私にはよくわかりません。で、そのめり込んでいった塊が地下水と接触しないようにしなければいけないのですが。えー、めり込む深さまでは最低やらなければいけないと。思いまして私は5メートルか10メートルというふうに言っているのですけれども。えー、確実な根拠があるわけでもありません。ですから本当に安心を求めていくならば、岩盤に達するほどの深さにまで行かなければいけないわけですし。そうするとずっとお金がかかるだろうと思います。」

(平野「はあ。そもそもこれ工程表、新しい工程表作るときにあの、ようするに格納容器の内部が状況わからないままこういうことを言い出しているんですよね」)

小出「そうですね。

(平野「これはあのやっぱり、見ない限りはいろんなものが、細部にあって、立てられないですよね」)

小出「もちろんです。でもそれが原子力発電所の事故というものの本質をむしろ表しているのですね。中身がみえないままやらなければいけない。」

(水野「中身を見られるようになるのはいつですか」)

小出「わかりませんけど、2号機と3号機に関しては、まだ原子炉建屋の中に入ることすらが出来ないのですね。でまあ、入ってみて、水位計ほかの計器を調整しながら作業をすすめる問事になるわけですけれども。ええ、まだまだ時間がかかるだろうと私は思います……。」

(水野「そうか、中身が確かめられないというのが、原発事故の本質ですか」)

小出「はい」

(水野「どうもありがとうございました」)
=====


7月21日 海に流れでたトリチウムは雨になって戻ってくる 小出裕章(MBS)

2011年7月22日

2011年7月21日(木)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年7月21日【木】
「原発事故が故郷を奪った!」~音楽家ナターシャ・グジーさん
今日のゲスト、ナターシャ・グジーさん(31)は6歳の時にチェルノブイリ原発から3・5キロの自宅で被曝し、厳しい避難生活を余儀なくされました。ウクライナの民族楽器バンドゥーラ奏者として活躍、チェルノブイリ子ども基金の招きで来日したことなどから、この10年間は日本を中心に演奏活動を行っています。今月には福島県など東日本大震災の被災地でもチャリティーコンサートを開く予定です。「ウクライナの歌姫」ともいわれるナターシャさんに「原発事故で奪われた故郷への思い」「悲劇の経験者として福島原発事故被災者に何を伝えたいのか」、お話を聴きます。スタジオでの生演奏もあります。京大・小出先生の原発事故解説コーナーはリスナーからの質問に小出先生が答えます。

録画

20110721 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

千葉「では小出さん、今日もよろしくお願い致します」

小出「はい、こちらこそ、お願いします」

(千葉「今日は毎日新聞論説委員の近藤伸二さんと一緒にお伺いしてまいります」)
(近藤「小出先生、よろしくお願い致します」)

小出「こちらこそよろしくお願い致します。」

(千葉「えー、さて今日もですね、スタジオにリスナーのかたからの質問が沢山来ておりますので、それを順番にお聞きしていきたいと思っています。まず1番たくさん来ている質問なんですけれども。これですね、大阪市のラジオネーム、ばいあすさん、という方からなんですけれども。半減期が8日のヨウ素131などは、とっくに不検出になっているはずなんですが、東京都下水道局が発表している下水の脱水汚泥中の放射性物質はセシウムだけではなく、いまだにヨウ素131が検出されています。最新の検査では息子夫妻が住んでいます府中市、足立区などはヨウ素131の検出量が増加しています。これはいったいなぜなのでしょうか。教えてください。という質問です」)

小出「えー。問題はヨウ素だけの濃度を見るのではなくてセシウムとの比を見たほうがいいと思います。」

(千葉「セシウムとの比……」)

小出「比です。」

(千葉「比べてみるということですね」)

小出「そうです。もともとのは事故が起きた当初は、ヨウ素はセシウムの10倍くらいありました。それで今、そうですね…130日くらい経っているでしょうか。そうすると半減期の10倍から15倍くらい経っていると思いますが。そうすると1000分の1にはもちろんなってるし、3万分の1位にはなってると思います。ヨウ素がですね。ですからもともと10倍、セシウムの10倍あったわけですが、それが3万分の1になったとすると、セシウムの3000分の1くらいのヨウ素が存在していることは、もちろんありうるのです。」

(千葉「はーはーはー。半減に半減を繰り返して」)

小出:そうです。なくなっているわけではないので。それで下水の汚泥にはものすごい濃度の放射性物質、ヨウ素もそうです、セシウムも含まれてきますので。ヨウ素ががまだ残っていたとしてもそれは不思議ではありません。だからセシウムとの比をとって考えてみたほうがいいと思います。

(千葉「必ずしも、今こうやってヨウ素が検出されてるからっていって、継続してたくさんのヨウ素が原発事故を受けて放出されているわけではないわけですね」)

小出:あのー、だと思います。データを私、今聞かせていただいたデータを見ていませんので正確にお答えできませんけれども。ヨウ素だけを見ているのでは駄目だと思います。

(千葉「はいわかりました。それからあ、次の質問になりますけど、これはイタリアのミラノにお住まいの方からいただいております。ラジオネーム、うりっせさん、というかたからです。)

小出「はい」

(千葉「今月中旬から肉牛の汚染が話題になっていますが、肉牛が汚染されていれば乳牛も汚染されていると考えるのが普通だと思います。そして牛が汚染されているなら、豚や鶏だって汚染された、えー、餌を与えられている可能性も否定できませんから、是非小出先生の意見も聞きたいと思っております。よろしくお願いします、という質問なんですが……」)

小出「もちろんですね。豚も汚れてると思いますし鶏も汚れてると思います。」

(千葉「まあ……それがどれくらいのレベルに達してるか……」)

小出「そうですね。それは測定してみないとわかりませんし、まあ、牛、今問題になっている牛はいわゆるその、稲藁(わら)を食べていたと言うのですね。豚とか鶏にどういう食べ物を与えてるのか私は正確には知りませんが。要するにその、事故の当時、屋外にあったものであれば、食べさせてるものがですね、同じ現象が必ず起きると思います。

(千葉「ああー、やはり同じように放射性物質を含んだようになっているということですよね」)

小出「そうです」

(近藤「先生、あの肉牛の対策なんですけれども、やはりこの全頭検査というのが必要なんでしょうか。あるいは、するとすればかなり手間がかかる作業なんでしょうか」)

小出「あの、結構手間がかかる作業です。ただし、肉牛って何百頭とか、せいぜい1000頭の単位で済むんじゃないんでしょうか。」

(近藤「そうですね。何百頭単位だったともうんですけども」)

小出「そうですね。そうであれば、あの、できると思いますのでやった方がいいと私は思います。」

(千葉「……わかりました。次はですね、えー、千葉県にお住まいのラジオネーム、やんやんやんさまというかたからですが。いよいよ夏となりました。海の水温もどんどん上がり、入道雲の発生から雨という夏の自然サイクルが始まります。福島から海へ投棄された汚染水に含まれている放射性物質が雨となって再び陸に戻ってくる可能性というのはあるんでしょうか、という質問なんですが」)

小出「もちろん、原理的に言えばありますね」

(千葉「うーん……」)

小出「ですから海へ流れていってるわけで。海から蒸発したものがまた陸に雨となって降ったりするわけで。例えばその流されている放射能の中には、トリチウムという名前の放射能もあります。それは、いわゆる水素なんです。放射能をもった水素なんですが。それも海へ流れ出てるはずで。環境に出ると水の形になります。H2Oという形ですね。そういう形になりますので、海水が蒸発して雲になればそれがまた雨になって落ちてくるという事ですので、もちろん循環して陸にもまた戻って来ます」

(千葉「ふーーん。あのまあ、どこかだけに固まってというわけではないと思うんですけれども。」)

小出「はい」

(千葉「広く薄くという形で、雨という形で陸に戻ってくるということですね」)

小出「そうですね。いろいろな形で一度福島からでたものは、汚染は低きに広げながら、ぐるぐるぐるぐるまわるということになり、なると思います。」

(千葉「放射性物質は基本的にはなくならないものですね」)

小出「ええ、ええ、そうですね。半減期でなくなってはくれますけれども。自然にも、放射能を放射能でなくする力はありませんので、結局どこかにあり続けるということになってしまいます」

(千葉「形を変えてつねにどこかにあると言うことですね。はい、わかりました。続いてこちらの質問です。こちらはラジオネーム、みずちのむえんさん(※上手く聞き取れず)という方からですね。人工放射線核種と天然放射線核種の違いということで、ある方の話を聞きました。そしたら放射線としては同じであるが、人工は蓄積し天然は蓄積しない問お話をされていました。今から、今、福島から漏れている放射線は自然放射線と同じだというような話をされるんですが、やはり人工のと天然では動き方が違うんでしょうか。教えてくださいということです。」)

小出「はい、要するに、私たちは放射能と読んでるものは、放射性物質なんですね。ものですから、体に取り込んだ時の人間の体の代謝というものが、そのもの、その物質ごとに違っているわけ、ですね。例えばヨウ素というもの、皆さんすっとこの間聞かれてきたと思いますが、ヨウ素というのは人間にとっては必ず必要な元素なのです。それでそれを甲状腺というところに集めまして、ホルモンをつくりだすと、そういう役割を持っています。そして天然にあるヨウ素というのは一切放射能をもっていない、そういうヨウ素だけが天然に、あります。そういうヨウ素を人間という生き物は甲状腺に貯めてホルモンを作るという、そういう生き物として今、私達はある、のですね。でも、原子力発電所の事故が起こりますと放射能をもったヨウ素が飛び出してくる、わけです。それで私たちの、人間のほうの側からみると、放射能をもったヨウ素なのか放射能をもっていないヨウ素なのかということが、まったく区別がつきません。ですから、放射能をもったヨウ素が環境に漏れてきてしまうと、それをまあ、せっせせっせと人間は体に蓄積してしまう、わけですね。でそれが甲状腺に集まると甲状腺の癌になるということになりますし、甲状腺の機能をまあ、損なうということにもなるわけで。え、天然という状態で放射能を持ったヨウ素はないところに、放射能をもったヨウ素を出してしまうわけですから、それは人間にとっては、まあ、ある意味まあ危険を抱えてしまうということになります。

(千葉「本来取り込むべきでないものを体の中に取り込んでいってしまっているということに成りますからね」)

小出「そうです。」

(千葉「はい、わかりました。小出先生ありがとうございました」)

小出「はい」


7月20日 最大の犯罪者、東電と国が事故を小さく見せようとしている 小出裕章(MBS)

2011年7月21日

2011年7月20日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年7月20日【水】
隠された「内部被曝」の真実
 今夜は原爆認定集団訴訟で「内部被曝」の危険性を訴えてきた琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんと電話をつなぎ、あまり知られていない内部被曝の真実について迫ります。
 矢ケ崎さんは、広島と長崎の原爆投下による内部被曝に被害を調べ上げ、戦後、国策や科学の名のもとに隠されてきたその悲惨な実態を訴え続けてきました。そして、そのことは、今回の福島の事故にも当てはまる可能性があると警告します。今夜は内部被曝で今後、福島周辺でどんなことが起こるのか、詳しく伺います。
 京大の原子炉実験所の小出先生のコーナーもあります。

録画

20110720 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容、書き起こし

(水野:小出さんこんばんわ。)

小出:こんばんわ。

(水野:よろしくお願いします)

小出:こちらこそ。

(水野:そして東京には近藤さんです)
(近藤:こんばんわーよろしくー。どうもー)

小出:はい、よろしくお願いします。

(水野:よろしくお願いします。まずは福島第一原発の収束に向けての作業の工程表が改定されたというところから伺いたいと思います。えー、これ現状はですねステップ1で目指していたのが安定的に冷却をするということでしたよね。)

小出:はい。

(水野:これができたという話のようでございます。そこでリスナーのかたから質問がまいりました。ラジオネーム、変な国だよ日本さんというかたからなんですけれども)

小出:(笑)

(水野:こんなふうにおっしゃっております。政府は原子炉の安定的な冷却を達成したと言ってますけれども、メルトスルーしてしまった核燃料をどうやって安定的に冷却しているのでしょうか。教えてください。小出先生いかがでしょうか)

小出:私もわかりません。

(水野:小出先生もわからない! これあのメルトスルーしてしまった核燃料というのは格納容器の中にもう核燃料はメルトして、スルー、つまり穴から下に落ちてしまったっていう意味ですよね)

小出:そうです。

(水野:つまりもう格納容器の中にないっていう意味ですよね)

小出:はい。ええっと。ない可能性が高いと私は思います。

(水野:と思われるその核燃料を安定的に冷却したことに、達成したということはどういう事でしょうか、教えてください)

小出:はい。ありえないですね。

(水野:そ、そうですよね)
(近藤:先生、安定的っていうのはどういう意味で使っているんですかねえ)

小出:ええっと。もともと工程表が出たときには冷温停止をさせると言ったんですね。で、原子炉圧力容器が健全でその中に炉心という部分が残っていて、そこに水を入れながら100度以下にすると、いうのが冷温停止という概念で、循環式の冷却回路を作ってなんとかそれを達成するというのがロードマップができた時の考え方でした。もちろんそれを私もして欲しいと思いましたけれども、なかなか難しいだろうと思っておりましたが。ええ、5月になって東京電力はもう炉心は全部溶けてしまっていると。圧力容器も穴があいてしまっているというふうに認めたわけですから、もともと冷温停止などということは、もう全くできなくなっている、のです。つまりもうロードマップ自身が始めから意味をなさないという状態になっているわけで、そのことをまず、政府、東京電力が認めて全面的なやり方の変更ということを言わなければいけなかったと思います。

(近藤:このー、今、先生。時々廃炉って今度は聞きますよね。この廃炉になれば、その、収束っちゅうことは言えるわけですか)

小出:えー廃炉というのは、核燃料を原子炉の中から取り出して初めて廃炉というのは出来るというのがこれまでの概念だったのですけれども。もう原子炉の中に炉心がないわけですし。どうすれば溶け落ちてしまった核燃料を取り出せるか、ということすらが全くわかりません。

(近藤:これは先生らの技術的な知識を持っても答えは出せないわけですね)

小出:はい。あのー……、1979年にスリーマイル島というところで炉心が溶けたという事故があったのですが。その時は圧力容器そのものは壊れなかったのです。幸いにして。ですから原子炉の上の方から圧力容器の蓋を開けてみれば、溶けてはいたけれども、炉心はそこにあったのです。

(水野:はい)

小出:ですから、取り出すこともできたんですけれども)

(近藤:1基だけやったんですかね)

小出:1基だけです。

(近藤:ですよね)

小出:でももうすでに、今回の場合は溶けてた炉心が圧力容器から下に落ちてしまってるわけですから、もうそれを見ることも出来ないし取り出すこともできません。

(近藤:溶けるってのは先生、どんな状況になってるんですか。そのち、なんかバターみたいに濡れた状態になってるんですか)

小出:えー……、もともとウランというものは瀬戸物の形で焼き固めてあります。近藤さんちょっと想像してみていただけますか。

(近藤:うん)

小出:自分の家のお茶碗でもお皿でもいいです。瀬戸物がどろどろに溶けるという状態ですね。

(近藤;ああ、そういう感じか……。)

小出:はい。要するに溶岩のようにですね。

(近藤:なるほどああいう感じですね)

小出:はい。高温になって光を発しながら溶け落ちていくというそういう状態です。

(水野:すいません。それだったらですね。いうたらその、炉の下のところを掘ってですよ。で、溶けてるものをスコップで掘り起こすような感じで、出して、で、ま土なども、セメントなども一緒くたにしてプールに入れたらどうですか?)

小出:ええ……。炉の下を掘るということ自身がものすごい危険だろうと思います。ですからむしろ私がもし、えー……、炉心が地面の中にめり込んでいるんだとすれば、そのめり込んでいる場所で封印するのが一番いいと私は思います。

(水野:めり込んでいる場所に、もう動かさずそのものをセメントなどで封印するということですか?)

小出:はい。そうです。あのチェルノブイリの原子力発電所を封印した時もそうですけれども。溶けた炉心はチェルノブイリの場合も地下に流れ落ちていました。そこを含めて全部を石棺という形で封じ込めるということをやりました。

(近藤:それ40年経って、そのコンクリートもぼろもぼろなんでしょ)

小出:はい。25年経ってボロボロです。

(近藤:ああ、ああ、25年か。)

小出:今またその、作った石棺を、またもうひとつのもっと大きな石管で覆って、放射能が出ないようにしようという工事が始まっています。

(近藤:そうすると今の日本の状態っていうのは世界的に考えても、我々人類初のケースですよね)

小出:そうです。まさに初めて直面している大変な、まあ大惨事です。

(近藤:それをね、ステップ1だの2だの、軽々しく言うなっちゅう気がするんですけれども)

小出:はい。近藤さんのおっしゃるとおりです。私もそう思います。

(水野:でもですね。私なんかはステップ1の目的が達成できたと言われますとね、細かいところがわからないので達成できたという文字だけが文字だけが自分の心に残るんですね。そういうかたは多いのではないかと思うんですよ。)

小出;そうですね。

(水野:達成という文字に、ものすごくこだわっているのではないだろうかと)

小出;はい。

(水野:そこへ安定なんちゅう言葉がつくと、ほんとうに皆、故郷に帰って来れるんだという印象すらありますよね)

小出:そうですよね。でもみなさんもちゃんと考えていただきたいと思うけれども、東京電力と今の日本の政府というのは、今回の事故を起こした最大の責任者だし、最大の犯罪者なんですね。その2人がなんとか事故を小さく見せたいとして、今安定化であるとかロードマップを達成したとか言ってるわけですけれども。私から見ればちゃんちゃらおかしいし、そんなものを信用してはいけないと思います。

(近藤:先生、さはさりとて、見通しなんですがね。どうなんでしょう。その石棺にしろなんにしろ、廃炉ということの実現性っちゅうのはもう日本では無理ですか?)

小出:ええと。できる、できるというかやらなければいけないわけですし、それを米国に頼んだりフランスに頼んだりしたとしてもやるべき事は同じですので。大した力にならないと私は思います。

(水野:この、誰がじゃあその策を考えていくのかっていうことについていいますと、原子炉の解体は原子力委員会のもとで、専門家が具体的な方法を検討すると、いうんですけれども。原子力委員会というのはあの斑目さんの……まだお辞めにならない、あの原子力委員会のもとで、すすめるということに対して、小出先生……)

小出:今のままの原子力村の体制は全く駄目ですから、抜本的に改革しなければいけないと思います。

(水野:まず原子力村を解体することが必要なんですね。)

小出:はい。そうです。

(近藤:先生、その体制とかその村とかっていうレベルじゃなしに技術として不可能じゃないんですか)

小出:はい。要するに人類初まって以来のことに直面しているわけで、本当にどういうやり方がいいのかよくわからないのですね。もちろん米国とかフランスとかイギリスとかロシアでもいいですけども、そういうところの専門家の知識を借りるということも大切なことだと思います。ただ、どこの国もやったことがないことですので、これだという決定的な方策というのは多分出ないと思います。一つ一つやらなければいけないし。今やるべきことは例えば決まっているのですね。

(水野:はい)

小出:めり込んでいる炉心を地下水と接触することを絶たないといけないわけですから。ええ……、私が前から聞いていただいているように地下にバリアーを張る、地下ダムという言葉を使われるかたもいますけど、それをやらなければいけないし。で一方で環境の汚染を防ぐために溜まっている汚染水をなんとか漏れないところに移さなければいけないという、そういうとにかくあの緊急にやらなければいけないことを一つ一つ積み上げていくという、その先にしか多分方策はみえてこないと思います。

(水野:今おっしゃいました、地下ダムというその地下水に触れないように汚染水を遮断する壁を作るという話はですね、もうすぐにやる話しなのかと私思ってたんです。小出先生が前からおっしゃってましたよね)

小出:はい。

(水野:ところがこれどうやら工程表の中ではステップ3でやるらしいですね)

小出:そうですね。

(水野:今から検討に着手するんですね)

小出:そうですね

(水野:考えるってことですよね)

小出:そうです。あまりにも遅すぎます。

(近藤:その間、地下に汚染水が流れてるんでしょ)

小出:そうです。

(近藤;そのことをなんにも言わんですね)

小出:そうです。

(近藤:ううーん…‥それはやっぱり言わないわなあ……。)

小出:でも私この番組でもタンカーという案を、本当に初期の頃に出したんですけれども。ええ、それもなんか検討しているという話は何度か聞かさせていただいたけれども。結局それすら動かないのですね。さっきのラジオネームのかた、日本の国が何とかという)

(水野:変な国だよ日本さん)

小出:本当に変な国だと私は思います。

(近藤:そうすると今のステップ1が……終わるっていうことは総理大臣も言ってますけどね)

小出:はい。

(近藤:それは要するに窒素を入れていった、あるいは大気中に放射性物質が出にくくなってる、っていうようなことで言ってるわけですか)

小出:のようですね。あんまり本質的じゃないことだけをなんか手柄話のように取り上げて言ってるように私には聞こえます。

(近藤:……なるほど……(小声))
(水野:まずは冷やしても冷やしてもそこに冷やす対象の核燃料がそこにないかもしれないという、ここの大前提を認めないと工程表全部を変えるということにはならないでしょうね)

小出:そうだと思います。

(水野:はい、ありがとうございました。京都大学原子炉実験所小出裕章先生にうかがいました)

=====

管理人より
タイトルにつけ方が難しかったのですが、先日の「吉田照美 ソコダイジナトコ」でも小出氏と上杉隆氏が言及していた、国と東電が事故を小さく見せようとしていることついて、今回のタイトルとさせていただきました。

また番組内で、原子力委員会が廃炉をすることについて言及しましたが、内容に誤りがありました。原子力委員会の委員長は近藤駿介氏です。ちなみに斑目氏は原子力安全委員会の委員長です。


7月18日 今後解放されることはないセシウム汚染とその対策 小出裕章(MBS)

2011年7月19日

2011年7月18日(月)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月18日【月】
節電の夏、怪談で涼を
「節電、節電」と例年以上に暑さが厳しく感じられる今年の夏。こんな時こそ怪談で涼んでみませんか?怪異蒐集家の中山市朗さんをスタジオに招き、怪談にみる大阪と東京の違い、そしてとっておきの上方怪談を語ってもらいます。一度聴き出したら最後。スイッチ切りたくても切れませんよ~!
京都大学原子炉実験所・小出裕章さんの原発事故解説も。

録画

20110718 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容、書き起こし

(水野:小出さんこんばんわ)

小出:小出さんこんばんわ。

(水野:こんばんわよろしくお願いします)

小出:よろしくお願いします。

(えーまずは、牛肉の問題でうかがいたいと思います。放射性セシウムを含む藁が与えられた福島県の食肉用の牛が全国各地に流通していたと、いうニュースがございます。でこの流通していた牛肉のうち多くがですね、兵庫県に肉牛が出荷されていたと、いう話が出てきました。でこれは東京についで多いということでおそらくこの種まきジャーナルを聞いてくださっている多くの方もですね、えー、我が家はどうだろうかという思いで心配をしていらっしゃるのではないかと思うんです)

小出:はい。

(水野:でこの自体に及んで、小出先生は私たちどういうふうに対処するべきだと思われますか?)

小出:えー、私は流通すること自身は反対していないのです。えー、福島県で生産される農産物、あるいは酪農製品も私は流通させろとずっと言ってきた人間ですので流通させることはいいことだと思いますけれども。ただ知らないまま流通されてしまって、子どもも含めてそれを食べてしまうという状況を、私は一番嫌います。えー、どれだけの汚染された牛肉がどこに流れているということをきちっと知らせながらこれからやって欲しいというのが私の願いです)

(水野:うん……、でもですね、これ、うちの店でだしている牛肉はどうやらセシウムい汚染されていると店が開示したときにそれを消費者は買いますか?)

小出:買わないでしょうね。

(水野:ね。買わないんじゃないかと。思うんですよ。例えば大人だけの家庭であってもなかなか手を出す気にならないんじゃないかと。)

小出:はい。多分そうだろうと私は思いますけれども。私はみなさんに知ってほしいのです。3月11日を境に世界は変わったのです。私たちがこの日本という国をどのようにつくっていきたいかということを考えたときに私はやはり一次産業を支えたいと思いますし、子どもには汚染の食品を食べさせたくないと思いますので、原子力をここまで許してきてしまった大人、放射能の汚染を許した大人がどうすべきなのかということを、やはり皆さんに考えて欲しいと思うし、考えるためのまず条件、ここまでどれがどれだけ汚れてるということを日本の国と東京電力にきちっと表示させるようにさせたいというのが私の願い、です。

(水野:ただ大人はですね、これから先ずっとこうした形で汚染された形で食品を食べ続けて、大丈夫なんですか? いっときのことではないのではないですか?)

小出:大丈夫じゃないです。被曝というのは必ず危険ですから、被曝に関して大丈夫とか安全とかいう言葉を使ってはいけません。ですから大人が、わたくしは大人に食べてくださいと言ってるわけなんですけれども。大人の人にとっても大丈夫なんていう被曝はありませんし安全な被曝はありません。ただ世界が変わっていってしまった以上それを引き受けるしかないと私は思っています。

(水野:例えばそれを消費者としましてはこれぐらいの放射能、物質であればまあ健康に大きな被害は出ないだろうと長期的な見通しを科学的に示されたらある程度の安心が得られてそうした食品にも手をだそうと思うかも知れないと思うんですよ。そうした長期的な実証といいますか、データというものはあるんですか?)

小出:はい。私が信用しているその、長期的なデータというものはもちろんあるわけで。1ミリシーベルトという被曝をしたときに、全年齢の平均で言えば1万人に4人が癌で死ぬと。ただしもう50歳を過ぎたような大人であれば、それの100分の1くらいになっていますと。ですから100万人に4人というぐらいしか死ななくなるのですから、そのぐらいの危険はせいぜいひきうけるべきだしそれが10ミリシーベルトになったところで、10万人に4人ですから、せめてそのくらいのことを引き受けながらこれからの日本という国を少しでもましな国にすると、いうぐらいの責任はもって欲しいと私は思います。

(水野:でも今やですね、逆に言いますと子どもに安全な牛肉を食べさせたいと思っても、どれが安全なのかがわからないというような段階に近づいているんじゃないかと思うんですよ)

小出:そうです。そうです。それが一番悪いことなのであって、どの肉がどれだけ汚れている、どれの野菜がどれだけ汚れているということをきっちりと知らせてくれない限りは選択はできないという状態に私たちは追い込ま出ているのです。それをきっちりと知らせるという責任こそが国と東京電力にあると思います。

(水野:また福島県の牛が出荷停止になるようなんですが。これは福島県だけの問題ですか?)

小出:違います。

(水野:はあー……。)

小出:ようするに汚染というのは、連続的にあるわけですね。ですから国が決めた1キログラムあたり500ベクレルという基準を超えてるもちろん牛もあるわけだし、ちょっと下まわっている牛もいるわけですけれども。みんな要するに連続的に汚染があるし、連続的に危険が存在しているのです。そのどっかの基準を超えたら危険で、その基準を下回っていれば安全なんてものはもちろんないのです、もともと。ですから福島県であろうと宮城県であろうと茨城県であろうと、あるいはちょっと離れたところでもホットスポットというところに位置してしまえば、みんな汚れているわけだし、程度の高い汚染程度の低い汚染として連続的につながっています。

(平野:先生あの、今たまたま牛肉の話になっているですけれども。たとえばまあ3月の事故以降ですね、戸外で放置していた食品って結構あると思うんです。例えば大根なんかを干してる農家の軒下なんかですね、様々考えられるんですけれども。このへんなんかも当然こう、計測が必要でしょうし、その出荷時のまあ情報っていいますかね、それも大事になってくると思うんですけれども。)

小出:そうです。

(平野:あまり政府とか自治体もやってませんよね)

小出:もちろんみんな、そんなこと見たくもないわけですし、政府の方はなるべく安全だということを宣伝したいのですから積極的にやらないということをこんにちまで来ているわけなのですね。でも、もちろんその乾燥させたような大根にしてもそうですし、お茶なんてものはものすごい高濃度にもうどこでも汚れてしまっているわけなのですね。それをちゃんと、あの、消費者、国民一人ひとりにわかるように表示させるというシステムを作るということが、私は一番大切なことだと思います。

(平野:また牛に戻りますけどね、あのー、まあいわゆるこう、餌でですね、除染をすることがなんか有効だということがチェルノブイリの事故でまあ研究されたということですけれども、実際にやってるらしいですけれども。先生その辺お聞きになったことありますか?)

小出:はい、もちろんあります。

(平野:顔料とか、そういうの使う……)

小出:プルシアンブルーとかありますけれども。

(水野:プルシアンブルー)

小出:はい。えー、でも、それで防げるというのは多分わずかだろうと思います。

(平野:はあー……。)

小出:だからまあ、汚染しているところの藁とかをですね、食べさせないということが出来るのであれば、もちろんそれはそれなりの効果があります。けれども、でも、いわゆる自然のサイクルの中で酪農なら酪農という、営みをしてきたわけですから、いきなり全部の藁を捨ててしまえと言われてもですね、なかなか出来ないだろうし。捨てたところで放射能がなくなるわけじゃありませんから、またどこかで汚染が広がるということに繋がってしまいます。

(水野:うーん……。あの、今回、爆発したときに大量の放射性物質が空中に出てそれで汚染された藁を餌として食べたという牛が問題になってるんですが。これからはこうしたセシウムを検出されるような牛肉はこれからはでないってことですか?)

小出:えー当時3月の中頃から末にかけて大量の放射能が出てそこらじゅう汚れたわけですね。でもちろん藁も汚れたわけで。藁を食べた牛が今よごれていると。で、藁だけが汚れたのかといえばそういう事じゃなくて……)

(水野:そこですよね)

小出:大地そのものが汚れてしまったわけですから、これからはその、大地で育つ野菜が汚れてくるということになるわけですし。えーそれを食べる家畜もまた汚れてくるということになります。

(水野:ということはセシウムから完全に開放されることは……)

小出:ないのです。

(水野:相当な時期ないんですか?)

小出:そうです。これから100年という単位でないわけです。

(水野:その濃度の多少はあれ。)

小出:そうです。

(水野:ずーっとセシウムに汚染されたものを私たちは摂取する以外、もうないんですか)

小出:そうです。だから日本という国は基準を決めて、基準を超えない限り安全だというふうに日本という国は思わせようとしてるわけですけれども。そんな事はもちろんないのであって、基準を下回ったところで危険はずーっとつきまとってくるのです。ただそれは、私は子どもには負わせたくないので、とにかく汚染の仕分けをして大人が引き受けて、子どもにはなるべく汚染の少ないものを与えるというそういうシステムづくりを私はしたいのです。

(水野:んー……、例えば子どものための食品の基準値を新たに設けるというようなアイディアはいかがですか?)

小出:えー基準値というのは多分決められないと思います。基準値を決めてしまうとこれより上は危険だけど、これより下は安全ということになってしまいますので。なんども私これも聴いていただいたと思いますけれども。映画で18禁というものがあるように、食べ物に関して60禁、50禁、40禁、まあ20禁、10禁、というふうにですね、もうしかたがないのでなるべく汚染の少ないものは子どもにまわるように、そういうシステムを作るという以外にはないと思います。

(水野:はい。ありがとうございました。)
(平野:ありがとうございました)

小出:はい、ありがとうございました。

(水野:京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました。)


7月14日 上関原発の討論会での“やらせ”について等 小出裕章(MBS)

2011年7月15日

2011年7月14日(木)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

12日に福島第1原発を視察した「福島原発行動隊」の山田恭暉さんがゲストです。熱中症が続発している現地の過酷な作業環境の実態、そして元技術者に出来ることは何なのか・・・直撃します。
京大・小出先生コーナーも!

録画

内容書き起こし

=====
(千葉:京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんのお話を聞きました。では小出さん今日もよろしくお願い致します。)

小出:はい、よろしくお願い致します。

(千葉:今日は毎日新聞論説委員の藤田悟さんと一緒にお伺いしてまいります)
(藤田:よろしくお願い致します)

小出:はいーよろしくおねがいします。

(千葉:まず、新聞などで伝えられる情報ですと、九州電力のやらせメール問題なんですけど、ヤラセの賛成意見が寄せられたために、本来の賛否のメール数が逆転して運転再開賛成の人が多いということになっていたようですけど、小出さんはこのことについて改めてどうおもわれますか?)

小出:はい。前にも私お答えしたと思うんですけど、昔からやってきたことですので、私としては特別驚きもしませんでした。相変わらずなんだなと思っただけです。

(千葉:それが続けられているということを再確認したということですか?)

小出:そうですね。

(千葉:あのー、こういう組織的な世論工作といえることをやったという事になると思うんですが、それでありながら九州電力の社長は辞任しない、続投ということを表明してるということなんですが、これについてはどう受け止めますか?)

小出:原子力の世界で誰かが責任をとったということはいまだかつて1度もありませんでしたから、今回も同じようなことをやってるんだろうと思います。)

(千葉:それも今までと続けているということですか)

小出:はい。

(千葉:後いった会社の体質を変えるためにはいったいどんなことが必要なんですかね?)

小出:えーっと、まずマスコミがちゃんと書いてくれることだと思いますね。

(千葉;それで世論がしっかりそっちの方向を向くということが大切だということですね。)

小出:そうですね。

(千葉:それからもう一つ、あの福島第一原発の事故は、すべての電源が失われたことが大きな原因だったんですけれども。こんなニュースが伝わってまして、1993年に国の原子力安全委員会が全電源喪失対策というのを検討しながらも重大な事態に至る可能性は低いと結論づけていたことが報道で伝えられております。しかもその結論の明確な根拠は示されていなかったということなんですが。小出さんどう思われますか?)

小出:えーっと、これも何度かお聞きいただいたかと思いますけれども、原子力発電所というのは機械ですから、いろいろな事故の遭遇する可能性があるわけです。まあちいちゃな事故から大きな事故まであるわけですが、大きな事故を考えてしまうと、どうしようもなくなるということはみんな分かっていたわけで、大きな事故は必ずないと言わなければいけなかったと。ですからすべての電源がなくなるということは元から考えないということにしなければ、原子力発電というものは出来なかったということですから、彼等はそのとおりにした、ということです。

(千葉:でも国の原子力安全委員会ということは言わば専門家の組織のわけですから、言いにくいところをあえてここは言わなければいけないというポジションだったんですよね。

小出:本当はそうですけれども、原子力安全委員会っていうのは、ある時には原子力安全宣伝委員会と呼ばれたこともありましたように、形だけ安全だということをいいながら実質的には安全を守ってこなかったという歴史がありました。それが今回の結果になってます。

(千葉:それが今回の原発のストレステストを実施するということにおいてもこの原子力安全委員会が重要な役割を果たし続けていくということが伝わっているのですが、今の感じですと専門家集団としての役割は果たせていないと感じますので、改革が必要なんじゃないかと思うのですが?)

小出:はい、でも、国が原子力をやると決めてる以上はその中でどんな安全を守ろうとしても無理なんですね。

(千葉:どんなに改革をしていったとしても、しっかり安全を守るということにはつながっていかないということですか?)

小出:要するに必ず危険があるということを、まず皆さんが認識してくれなければいけないし、その危険があるということを認めてまでなおかつ電力が欲しいというなら都会につくるしかないと私は思います。

(千葉:やっぱり根本的な改革が必要だということですね)

小出:はいそうですね。

(千葉:はい、わかりました。えー小出さん、さて今日もですね、スタジオにリスナーの方から質問がたくさん来ておりましてそれをお伺いしていこうと思っております。よろしくお願い致します)

小出:はい、よろしく。

(千葉:えーまず最初はですね、えー大阪府堺市にお住まいのラジオネーム、ラジオ大好きさんという方からです。昨日の種まきジャーナルで紹介した24000年の方舟という25年前に作られた映画なんですが、大阪府泉南市熊取町に熊取燃料加工工場があるようなことがこの映画で描かれているようですが、今でもあるんですかということです)

小出:あります。

(千葉:あるんですか?)

小出:はい。

(千葉:え? じゃあ熊取町で、えー核燃料の加工がされてるわけなんですか?)

小出:はい。特に西日本の原子力発電所の燃料を成形加工しております。

(千葉:え? それが熊取町で?)

小出:はい。あの原子炉実験所の敷地の隣にあります。

(千葉:あー、それを知ってるという人は結構少ないと思うんですけれども・・・)

小出:と思います。

(千葉:はい。今でも熊取町で加工工場があって加工作業が続けられていると)

小出:そうです。

(千葉:ということですか。あとあの我々があんまり知らないところに原子炉施設だとかあるという例は他にはあるんですかね?)

小出:えー・・・。

(千葉:あの東大阪の市内に近畿大学の原子炉実験炉があると聞いたことがあるんですけれども。)

小出:ただあそこは豆電球しかつかないというような、本当のおもちゃの原子炉ですから。

(千葉:そうなんですか)

小出:はい。

(千葉:あ、そういう小さなものがあるということなんですね)

小出:危険という、まあ危険は危険ですけれども、それほどのものではないと私は思います。

(千葉;あーなるほどなるほど。工場が今でも動いているということはびっくりしました。それからもう一つですね、こちらの質問ですが、千葉県柏市にすむ64歳の男性でラジオネーム、ゆめちゃんからです。小出先生の原発の現状解説は最も正しいご意見とありがたく聞かせていただいております。えー、私の住む柏市は福島第一原発からおよそ200キロの距離なんですが、なぜかホットスポットでして近くの東大柏キャンパスでは毎日1時間おきに空間線量をモニタリングしていてそのデータを公表していて最近の平均で、0.27マイクロシーベルト・パーアワーです。えー、さてここで質問ですが、この環境下での外出時のマスクの着用は必要でしょうか、という質問です。)

小出:えーっとですね。空気中に放射性物質が漂っているときにはマスクはもちろんしていただいたほうがいいのですが。福島原子力発電所の事故で大量の放射能がえー吹き出してきて空気中を流れてきて、柏市で空気中で漂っていたというのは3月の中頃が一番ひどかったのです。その空気中に漂っていた放射性物質じゃすでにもう地表に落ちているのですね。ですから地面を汚しているという状態で、東大の柏の研究所で空間ガンマー線量が高いというのも、地面が汚されてしまっているからということが、えー、主要なきよう(紀要?)だと私は思います。で、地面に降り積もったものが風などでまた舞い上がってくるということはもちろんないわけではないですけれども、でも被曝という意味では今現在マスクということはあまり大切なことではないと思います。もちろんした方がいいです。ただマスクというのは大変鬱陶しいし、特に子どもにマスクをしろなんて言っても、無理だろうと私は思います。そういう事で言えば今現在でいえば、マスクということにあまり注意をする・・・よりは、むしろもっと地面の点に注意を向けたほうがいいと思います。

(千葉:藤田さんどうですか?)
(藤田:うーん、そうですね・・・あのちょっと九電の問題でですね、もうちょっとお伺いしたいのですがあの、非常にその一般常識からいうと、かけ離れたひどい出来事ですが、あの小出さんあの原子力業界のですね、体質をよくご存知でいらっしゃると思いますが、これはその九電で明らかになった問題ではありますが、あのー、まあ九電だけではなくてですね原子力業界、まあ全般にこういう体質があるというふうに見てよろしいんでしょうか。)

小出;はい、私はそう思います。

(藤田:ということは同じようなことはですね、他の電力会社でも実際行なわれていると)

小出:はい、度々経験しました。

(藤田:そうですか。実際そういう例をこう見られたことがございますか?)

小出:例えばわたくし山口県の主催で上関原子力発電所にえー、賛否を表明する専門家の討論会があって、それに呼び出されていったことがありますけれども。もちろん私は原子力発電に反対の意見を述べました。で賛成の人ももちろんいてですね、後から会場からの質問とかも受け付けてるのですけれども、その会場からの質問たるや、今までの私や推進派の人が檀の上でどんな議論をしてきたの、かなんにも聞いてなかったと思うように原子力発電はいいもので安全だというようなことを述べる人がたくさん出てくるというそういう集まりでした。

(藤田:なるほど。でもそういうですね、ごまかしのようなことをしているとですね、長い目で見ると原子力のその、信頼性がなくなるわけでしょ?)

小出:そうですね。

(藤田:そういう事がどうして彼等はわからないのでしょうかね?)

小出:えー・・・どうなんでしょう。長い間、そういう事で原子力の立地ということを乗り切ってきたという例があったわけですから、その歴史をずっと続けてきてしまったということなんではないでしょうか。

(藤田:まあそういう体質がこう染み付いてしまっているということですか)

小出:はい。

(千葉:はい。あのそれから、リスナーの方からの質問もう1問お願いします。こちらは茨城県北相馬郡にお住まいのラジオネーム、ことりださんという方からですね。福島第一原発作業員に対する放射線限度に関する質問なんですが。現在作業員の方は年間250ミリシーベルトを限界値としていますが、えーどうもアルファー線を主として放出する放射性物質はホールボディーカウンターによる検出はできないとの話なんですが。検出されない放射性物質もあるとしたら限度以上にすでになっているという人もいるんじゃないかなあと思うのですが、作業員の方の内部被曝というのが気になるんですが、どうなんでしょうか、ということです)

小出:もちろんアルファー線は全く検出できません。ホールボディーカウンターでは。ベータ線もほとんど検出できません。ようするにホールボディーカウンターでやる限りは、内部被曝に関してもガンマー線しか検出できないのです。もしアルファー線やベータ線の寄与をちゃんと計ろうと思うならいわゆるバイオアッセイとか私たちが読んでますけれども、おしっこであるとかうんこであるとかそういうものを測定して、推定していくというそのような作業しか出来ません。それは大変な作業でなかなか全ての労働者に対してやるということも今までは出来なかったでしょうし、これからも大変難しいだろうと。

(千葉:いまほんとにホールボディーカウンターの検査ですら受けられていない人もいるんですけれども)

小出:そうです。

(千葉:本当に正確にやろうと思ったら更に手のかかるそういう検査もしっかりしなければいけないということですね)

小出:そうです。

(千葉:うーん。わかりました。小出さんどうもありがとうございました)

小出:ありがとうございました。


7月13日 菅総理の「脱原発依存」会見について 小出裕章(MBS)

2011年7月14日

2011年7月13日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月13日【水】
25年前の原発映画
 今夜は25年前に日本で作られたドキュメンタリー映画「24000年の方舟」のプロデューサー、鵜久森典妙(うくもり・のりたえ)さんをゲストに招き、話を聞きます。
 この映画は25年前に、日本の原子力政策の問題点や、プルトニウムの怖さなど伝えるために作られたものですが、今回の福島原発の事故を受けて、再上映を求める声が高まり、リバイバル上映となりました。
 番組では、映画製作の当初の思いや、製作者として、今回の福島の事故をどうとらえているのか、鵜久森さんに伺います。
 京大の小出裕章先生の「解説コーナー」もあります。

録画

20110713 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

(水野;京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました。小出さんこんばんわー)

小出:こんばんわ。

(水野:よろしくお願いします。)

小出:よろしくお願いします。

(水野:そして東京の近藤さんです。)
(近藤:どうもよろしくー。)

小出:はい、よろしくお願いします。

(水野:まず今日は夕方行なわれました菅総理の会見の中身の発言について。わたくしずーっとみていて聴いておりまして、いろいろとえっ本当にそうなのと思うことがありましたので、是非鯉で先生に伺いたいと思います。)

小出:はい。

(水野:まずですね。菅さんは今の福島第一原発事故の状況について説明をしているときにこんなふうにおっしゃったんです。ステップワンはほぼ予定通りの日程で進んできている。)

小出:(笑)

(水野:これは本当なんですか?)

小出:とんでもない話ですね。

(水野:やはりとんでもない話ですか)

小出:はい。

(水野:ステップワンというのは何を目指していたんでしたっけ?)

小出:安定的な冷却だったんじゃなかったでしょうか。

(水野:そうですよね。安定的に冷却ができている状態を作るということ。ほぼ予定通りの日程で進んできてるなんてことはとんでもないと。)

小出:はい。

(水野:菅さんはこうもおっしゃったんです。冷却についてもですね、小さいトラブルはあるが大筋動き出していて原子炉に対する安定的な汚染水を出さない冷却が可能になるなど、ステップワンが進んできている。これいくつかポイントがあるかと思いますが、まず小さいトラブルがあるけど、大筋動き出している冷却システム、これは本当ですか?)

小出:えー、私はまずその根本的に間違えてると思うのですね。その東京電力がロードマップをはじめ作ったときには、原子炉の炉心という部分には半分まで水があるというそういう前提でロードマップが作られました。つまり炉心はまだその圧力容器の中にちゃんと残っていると。だから水さえ循環すれば安定的な冷却ができると。そのために冷温停止という言葉まで使ったわけですね。ところが5月の12日になって実はもう炉心は全部溶けちゃってましたと、言い出したわけで。もうロードマップの前提自身が全く崩れてしまっているわけだし、冷温停止なんていうテクニカルタームはもう使えない状態にすでになってしまっているのです。つまり安定的冷却もへったくれももうないというそういう状態に陥ってます。

(水野:冷却したかった、するべきものがもうそこにはないと!)

小出:そうです。

(水野:この大前提を居間も認めない状態の話だ、ってことですね?)

小出:うんまあ私にはそう聞こえます。

(水野:はあー。汚染水を出さない冷却が可能になるっていうふうに今日の会見であったんですけど、これどういう意味ですか?)

小出:私から見ればあきれた話で、すでに12万トンもの汚染水がコンクリートの構造物の中にたまっていて、それがもう毎日もれてしまっているという、そういう状況なんですね。それをなんか浄化設備が動いた動かないやで大騒ぎをしてるわけなんですけど、そんなことほとんど本質的に関係がないことです。

(水野:なるほど。大前提がもうちがっているということです。)

小出:はい。

(水野:そして更にこういう発言もありまして。ステップツーを前倒しにすることでこれまで住んでいらっしゃった地域の皆さんに元の場所に帰ってもらえるんかどうなのか。どこの地域の方は帰ってもらえるのか、どうなのかと、いったことを次第に具体化できる、とおっしゃったんです。)

小出:はい。

(水野:つまり福島の皆さんにできるだけ帰ってもらえるような策を取るという意味だと思うんですが、これは現実的なんですか?)

小出:私はもちろん帰ってもらいたいと思いますけれども、えー、すでに生じてしまっている汚染に関しては何の手のうちようもありませんので、ロードマップができようができません、出来なかろうが、そんなことは何の関係もないのです。

(水野:はあー。例えば土壌汚染を表面5センチほど削ることによって帰ってもらえるというような策というのは無いんですか?)

小出:例えばその学校の校庭の土というのは、私は表面5センチ削って欲しいと言ってきましたけれども、いわゆるその、生活している場所。例えばその、田畑ですとかですね、さんげん(山間?)だってあるわけですし、家の庭、家の裏山等々そんなもの全部を剥ぎ取るなんてことは実質的には出来ません。

(水野:はい)

小出:剥ぎとってじゃあ土をどこにやるのかといえば、やり場もないということになりますので、えー、ごくごく特殊な場所、学校の校庭とか幼稚園の園庭とかそういうところを剥ぎ取るというのはもちろんやるべきだと思いますけも、すべてを剥ぎとってそこに人々を戻れるようにするというのは基本的に出来ないと思ったほうがいいです。

(水野:近藤さん?)
(近藤:はい。あの先生ね、で、結局まあ保安院だけじゃなくてその原子力安全委員会のダブルチェックの方針も菅さんはいうてるわけですがね。僕はその、ダブルチェックって言ったってですね、危険なものは何やったって危険なんじゃないかと思うんですがね。)

小出:私は近藤さんに全く同意します。そのとおりです。

(近藤;それとましてをや政府が責任を持つって言ったって何の責任をもってくれるのかって思ったりするんですがね。)

小出:そうですね。事実として何の責任も取らなかったわけですね。今回の事故に関しても。

(近藤:だからあのー、いろんなことをまあ、それ以前から言い始めてるんですが、そのー我々がそれによってこの、どう信頼・・・なんかこう意味のあること今あるんですかね? 菅さんの言ってることで)

小出:(笑)。わかりませんけどなにか菅さんは原発のない社会を目指してっていうようなそんなことを言ったらしいんで。でも私は元から政治が嫌いだし、菅さんが何を言ってもどうぞお好きに、とぐらいにしか期待ができないんですね。どうせ菅さん、あと何ヶ月かしたらどっちにしてもいられないでしょうし、また政治が変わってしまうというふうに思いますので、なんかパフォーマンス的になんか言ったところで結局はダメなんだろうなという私はまあ個人的な政治への絶望というのがあるからかも知れませんけれども。特別期待もできないと思います。

(水野:今日菅さんの発言の中にはですね、これからの見通しについて中長期的な工程表のこともおっしゃってたんですね。具体的な廃炉、まあ炉を全部解体してしまうということですよね。)

小出:はい。

(水野:廃炉にたどり着くまでには5年10年、更に長い期間を要するが、という話がありました。あの、これだとそんなに長い期間必要ないようなイメージがするんですけれどね。)

小出:そうですね。5年10年なんて。5年なんて数字を言葉にすることだけでも失格だといったほうがいいですね。

(水野:先日明らかにされた中長期の工程表でも、廃炉に数十年というような数字が出ておりました。この数字についてはどうですか?)

小出:もちろんです。ですからチェルノブイリだってまあようやく今25年経ったわけですけれども。1度作った石棺がもうボロボロになって第2石棺を作らなければいけないというそういう事態になってるんですね。えー、福島の場合にはもっと難しい、3基4基と壊れてしまってるわけですし、もう炉心が崩れ落ちて、メルトダウンしたと言って国も東京電力も認めているわけで。それは多分地下に沈み込んでいってるだろうと私は皆さんに聞いて頂いているし。それを本当にどうやって閉じ込めることができるのか。落ちてしまった炉心をどうやって回収できるのか。考えただけでも機が遠くなるような作業が、これからやらなければいけないのです。

(近藤:先生あのー、地下に沈み込んでるものについての問題点の指摘っちゅうのはまるで聞こえてこないんですよね。)

小出:そうですよね。

(近藤:これは地下に沈み込んでるからいいと思ってるんですかね?)

小出:わかりません。私はですから地下水に接触する前に、えー、覆い、囲いを作って、汚染の広がりを防いで欲しいといったわけですけれども、結局それも何の手立ても取られないまま今日まで来ているわけですし、なんか毎日新聞の方がそれをあちこちに取材をしてくれたら1千億円のお金がかかるので東電の株主総会の前には言えないとか、そんな話だったとか、いうことが新聞に出ていたと思います。政治の世界というのは困ったものだなとその時も私は思いました。

(水野:どうもありがとうございました。)

小出:はい。

(水野:京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました。)


7月12日 食品安全委員会が決めた基準値の科学的な客観性について小出裕章(MBS)

2011年7月13日

2011年7月12日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月12日【火】
新エネルギー
きのうに続き上田崇順アナウンサーの報告です。巨大な風車が51機も並ぶ現場を取材しました。風力発電はいくつかの課題が指摘されていますが、上田アナウンサーは風力発電の現場で、この新エネルギーの可能性をいかに感じたのでしょうか。
京都大学の小出先生の原発事故解説もあります。

録画

20110712 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

(水野:小出さんこんばんわー)

小出:こんばんわ。

(水野、平野:よろしくお願いいたします。)

小出:こちらこそ、よろしく。

(水野:今日はまず、食品の放射性物質の基準値というものから伺いたいと思います。)

小出:はい。

(水野:今回、牛肉から基準値の7倍近いセシウムが検出されたということ、非常に大きなショックを受けている方も覆いと思います。わたくしもそうです。あるいはこの牛のエサにしていた藁から、基準値のおよそ60倍ほどの放射性セシウムが検出されたというふうに、この基準値という言葉がよく出てきますよね。)

小出:はい。

(水野:この基準値という物そのものがどれだけの、科学的な客観性があるものなのかどうか、教えていただきたいのですけど、いかがでしょう。)

小出:全く意味がありません。

(水野:全く意味が・・・ありません)
(平野:意味が無い)
(水野:でも私たちはその基準値の何倍だっていうことによって大変ショックを受けているわけなんですが)

小出:もともと間違いです。

(水野:はあー、それはどういう意味での間違いでしょうか)

小出:放射線に被曝をするということは、どんな意味でも危険です。たくさん浴びれば危険です。どんなに微量でも危険です。ですから・・・どこまでで・・・安全なのかどこまでで危険なのかということで線を引くのはサイエンスの側から言えば出来ません。ですからそれは社会的に、そこまでなら我慢ができるか、あるいは我慢をさせるしかないかというそれだけの線引きです。

(水野:まあ実際はそれをもって市場に出回らせるかどうかを決めていくことになっているわけですけれども)

小出:そうですね。

(水野:この基準値というのは平野さん、3月17日に決められたものなんですね)
(平野:これあの内閣府の食品安全委員会に17日に決めた、なにかこう作為的なことがあるような気がするんですけれども。というのはあの、まあいろんなデータでてるんですけど例えばウクライナのチェルノブイリの近くのデータあの基準値より飲料水が100倍程ゆるいと。)

小出:はい。

(水野:あのすいません。日本とウクライナと比べたときに飲料水、これ以上の水準で放射性セシウムがだめですよという数字が、日本のほうがゆるいんですか?)
(平野:ゆるいという。しかも3月17日に全て例えば野菜とか、野菜は7倍とか、肉類は2.5倍ゆるいと。)
(水野:ウクライナに比べて、基準値がゆるい? それを決めたのが3月の17日ということは、もうすでにメルトダウンしていた時期ですよね)
(平野:だからもうすべてわかった上で、これはもう原子力安全委員会の指標に基づいて内閣府の食品安全委員会がこの日に決めたということですから、もうだいたい状況ワ語っているはずなんですね、政府は。)
(水野:これは小出先生はどう見られますか?)

小出:おっしゃったとおりだと思います。要するに全てわかったままでこういう基準で行くしかないということを多分彼等は認識したんだと思います。

(水野:じゃあウクライナに比べて日本のこの基準値が随分ゆるい。例えば飲料水で行きますと100倍もゆるい、というのはよくわかった上で決めてると)

小出:100倍がゆるいかどうか私には、私自身もその数字を知りませんけれども・・・多分どうしようもない状況におちいりつつあるということを知りながら、その基準を決めたと思います。

(水野:飲料水でいいますとね、ウクライナの値は1kgあたり、2ベクレルというのが

小出:そうでしたね。

(水野:基準ですね)

小出:はいはい。それが本当かどうか私は知らないのですけれども、そういう事だと言われているのは聞いています。

(水野:日本の場合はですね、セシウム134と137の合わせた値において、200ベクレル。)

小出:そうです。

(水野:つまり100倍という開きがあります)

小出:そうです。

(水野:この数字自体は小出先生にはどう見えますか?)

小出:ええまあ、私はずうっと前から3月11日で世界が変わってしまったと聴いていただいてきましたし、もうどうしようもないことなんです。その日本という国で生きる限りはそういう基準を受入れなければ福島県が失われてしまうというそういう状態におちいっているということです。

(水野:つまりウクライナと同じ基準に例えばするとしますね。市場に出すかどうかという基準を設けるときに。そうすると、今のような状況ではなく、本当に原発に近いところのいろんな産業がもっともっとしんどいことになる意味を恐れていらっしゃるのですか?)

小出:はい。要するに日本の国がそれを恐れているのですね。私も本当にそういう事に日本という国が耐えられるのだろうかというふうに考えると、出来ないかも知れないと思ってしまう。そんなことを起きる前にやめさせたいと思ったわけですけれどもやめさせられなかったわけです。

(水野:ただ現在こうなってしまった以上ですね、基準値を決めざるをえないかと思いますが、その基準値の値がこんなにウクライナに比べてゆるいというこの状況でいいと思われますか?)

小出:全然思いません。ですから私はその基準はもっと厳しくなければいけないし、特に責任のない人たちを守らなければいけないと思いますので、もっと極め細やかに政策を作らなければいけないと私は思います。

(水野:じゃあなにかこういう基準でやればいいという、なにか世界にはベースになるようなものはあるんですか?)

小出:ありません。

(水野:ないんですかー・・・)

小出:はい。要するにその、放射線というのはどんなに微量でも危険なのですからどこまでを受け入れて、どこまでを受入れられないということは、それぞれのところで自分たちで考えるしか無いし、今それが私達に問われているというそういう事です。

(平野:でも残念ながら国民全体の高意識というのが、まあ被災地福島周辺以外はあまりこう危機的なその状況という意識を持ってないですよね。)

小出;そうです。おっしゃるとおりです。大変残念だと思います。

(平野:そうですね。あの、今日たまたま夕刊で厚生労働省が3月から6月のですね、食品の放射線量の増加推計値というのを公表してるんですけれども。食事で被ばくした人はですね、年25%増というこれもあの、と利用によっては多いなあと思うんですけれども、先生から見たら少ないかもわかりませんけれども。今まで食事で被曝するという言葉自身がですね、一般国民にとってはあまり馴染みのない、あのーまあ体験なんですけども。この25%増というのを私なんかは、ああ、すごい数字だなあと思うんですけども、それだけ先生のおっしゃる広がりっていうんですかね、放射能汚染の広がりを示してる数字じゃないかなと思うんですけどね。)

小出:おっしゃるとおりです。ずーっとこれがこれから受け入れるしかなくなってしまうのですね。でもその一律に25%ということを受け入れるのか。子どもはなるべく減らして大人が受け入れるのかということは、私達自身が、あの制度さえ作れば選択できるわけですから、そうしたいと私は願っています。

(水野:あの今日牛肉の話でですね。いろいろな専門家があちこちでしゃべっていらっしゃるのをわたくしも見聞きいたしました。でそういうかたが多くおっしゃいますのは、1日にこの値でのセシウム、検出されたセシウムを含む牛肉を1日あたり何グラム食べるとして、でそれが1年、まあかけ算するわけですね。そうするといくつの値になる、だから心配はないんだという方、多いように見受けられました。ここの計算式、この考え方について小出先生はどう思われますか?)

小出:はい。もしそう思われる方がいたらそのかたが食べてください。で私は東京電力の社員食堂は是非ともそういう食材でやって欲しいと思いますし国会議員の議員食堂もそういう食材でやって欲しいと思います。

(水野:わたくし思いますのは、その牛肉を毎日食べるかどうかは別としまして、他にも野菜もね、魚も、色んなもの、水もそして空気も、いろんなものを複合して私たちは被爆せざるをえないわけですよね。で、このことを受け止めないで牛肉だけのけいさんで大丈夫かどうかを論じることはどうなんだろうと思うんです)

小出:そもそも間違っています。

(水野:はあー。もうこの考え方自体が、間違っているんですね。数字がどうのこうのの前に)

小出:元々だから放射線に被曝することが危険だということが分かっているんですから、放射性物質を含んだ食べ物を食べること自身は、本当はやってはいけない、のです。でそれでも安全だというのであればその方が、やっぱり食べたほうがいいわけだし、責任がある東京電力、国会議員の方々、その方々がまず食べてから、そういう発言をしたほうがいいと思います。

(水野:それから確か小出先生はストロンチウムという放射性物質が人間の体には非常に影響を与えやすいものだとおっしゃったかと思いますが。このストロンチウムを規制する値というのは今はあるんですか?)

小出:今はありません。

(水野:まだないんですよね? はあー。その食品の・・・)

小出:あっ、そのー、えーっと日本の法律で、例えばその、飲み水の中にどれだけストロンチウムがあってはいけないというそういう法律はありますので、それを厳密に適応すればいいと思います。

(水野:はあー)

小出:それをゆるめて、あのセシウムに関してはもちろんあるわけですけれども、そんなことは守れないので、いう事であっという間に1キログラム当たり500ベクレルとかいう基準をセシウムに対しては作ってしまったわけですね。それ自身は私はけしからないと思いますし、ストロンチウムに関してもそんな基準を作ってはいけないと思いますので、少なくとも現在の法令を守れるようにすべきだと思います。

(水野:現在の法令を守るようにしたら食べられるものはたくさんあるんですか?)

小出:多分、えーこれはあまりいいたくないけれども、福島でとれるものは多分無いと思います。

(水野:しかしながら福島の生産者の方々を守らねばならないですからね)

小出:そうです。必ず守らなけれないけない。

(水野:それも私たち一緒にこのエネルギー政策で生きてきた人間の責任だというのが小出先生の考えですよね。)

小出:そうです。

(水野;はい。どうもありがとうございました)

小出:ありがとうございました。

(水野:京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました。)


7月11日 南相馬の牛肉から規制値6倍の放射性セシウム検出について 小出裕章(MBS)

2011年7月12日

2011年7月11日(月)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月11日【月】
原発に替わる新エネルギーの可能性は??
原発の問題が明らかになった今、それに替わる自然エネルギーはあるのか?その可能性は見えているのか?上田崇順アナウンサーが全国の動きを取材しました。あしたと2日にわたって報告します。京都大学の小出先生にはきょうの原発の動きを分析してもらいます。

録画

20110711 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

(水野:小出さんこんばんわ)

小出:こんばんわ。

(水野:今週もよろしくお願いします。)

小出:よろしくお願い致します。

(水野:えー、まずですね。牛肉についてのおはなしで伺いたいと思います。南相馬市の農場から出荷されました牛11頭の肉から暫定基準値の3倍から6倍の放射性セシウムが検出されました。でこの牛たちに与えていたエサのわらにですね、多くのセシウムが検出されたと、いうことなんです。これについてはやはり藁が原因だというふうに小出先生も思われますか?)

小出:そう思います。

(水野:藁というのはこうした放射性セシウムを、なんて言うんですか?)

小出:多分そうではないと思いますが、事故の当時屋外にあったとすれば、それから降ってくるわけですから当然汚染されてしかるべきだと思います。

(水野:この藁がですね基準値の56倍に当たる1kgあたり7万6000ベクレルのセシウムが検出されてるんですね。この値をどうご覧になりますか?)

小出:えー、南相馬市ですから、福島の原子力発電所から多分30キロぐらいでしょうか。

(水野:20キロから30キロのあたりだと思います。)

小出;特に放射能が北の、いや北西に流れたときに南相馬市が風下に入ってその程度の汚染が生じるというのはごく当たり前のことだと思います。

(水野:ただあの土壌汚染の値を日々私が見ておりますと、近隣の所に比べて南相馬市はあの、値が少し低いのではないかと思っていたんです。他にもっと高いところがあると思っていたその南相馬市でこの値が出たものですから。私個人は多くなショックを受けているんですが)

小出:たぶんあのー、いわゆるバラつきといいますかですね、ホットスポットと私達が呼ぶような現象というのがあちこちで起こりますので、そういう現象がたまたま起きたとしても不思議でありません。

(水野;そして同じ農場から出荷された6頭の肉の加工肉がいろいろなところに流通しておりまして、そのうちの一箇所は大阪である模様なんですね。えー、まあ大阪の人たちにとっても、この大阪という地名がこうしたニュースに出てきたわけですけども。これをこいで先生はどういうふうに受け止められますか?)

小出:私は多分この番組でも聴いていただいたと思いますけれども、3月11日を境に世界は変わったのです。もう私たちは放射能まみれになって生きるしかないわけで。大阪が例外だとは思っていただきたくはありません。必ず汚染食料は流通することになる、なりますし、私たちはそれを受け入れるしかないのです。ただし私は子どもにだけは食べさせたくないので、そういうシステムを作らなければならないと、この番組でも聴いていただいたと思います。わからないままその流通させてしまっているという、それを何とか乗り越えなければいけないと思います。

(水野:例えば、この国はですね、厚生労働省、労働副大臣は全頭検査、牛を全部チェックしようという話も出しているんですけれども。検査すればどの牛が子どもに与えてはいけない牛なのか、ハッキリわかるのでしょうか?)

小出:わかると思います。

(水野:わかるんですか)

小出:はい。それは私自身がその国がやるよりは、東京電力が自分でやるべきだと思いますし、えー、私は東京電力に責任を取らせたいと思っています。で、東京電力に責任を取らせたいとおっしゃる人の中には汚染したものを買い取らせろと、東京電力にですね、言う方ももちろんたくさんいらっしゃるのですけれども。私は買い取らせたところで東京電力はそれを捨ててしまうだけですので、そんなことをしたらばやはり1時産業は成り立たないので、買い取らせるよりは、きちっと検査をさせてそれを大人が引き受けるべきというのが私の主張なのです。

(水野:ただ今回、あのすいません)

小出:はい。

(水野:小出さん、検査につきましてもね、最初の11頭については体の表面をスクリーニングしたときに、このスクリーニングをクリアーしてるんですよね? オッケーしてるんですよね?)

小出:はい。

(水野:だからそこではわからなかったということになりませんか?)

小出:はいそういう事です。体の表面を検査するだけではわからない可能性が高いです。

(水野:どうしたらいいんですか? 内部被曝したってことですか?)

小出:もちろんです。体の中に含まれているわけで、外側から計るということは、まあおおよそのことを知るぐらいのことを知ることしか出来ませんので、1頭1頭やはりその、肉にしたときに調べてどのくらいの汚染があるということを調べなければいけませんし。大変な作業なのですこれは。

(水野:内部被曝を1頭1頭調べることは現実的にできるんですか?)

小出:えー、わかりません。とても大変だと思いますけれども東京電力に買い取らせて廃棄させるというよりは、むしろ東京電力にその検査をさせるべきだと私は思います。

(水野:ラジオネーム61歳の主婦の方からのご質問です。このお肉をまあセシウムがたくさん見つかったお肉を、もし自分が食していたならどんなことが考えられるんですか? あるいはセシウムは体から搬出されることはあるんですか?)

小出:はい。セシウムというのはアルカリ金属というそういう元素群に属していまして

(水野:アルカリ金属?)

小出:はい。カリウムという現外ですね、同じ挙動を取ります。それでカリウムというのは人間にとって必須の元素ですし、人間の体中にありますし、セシウムをとればもちろん人間の体中に分布します。しかしカリウムがそうであるように新しくカリウムをとれば古いカリウムは排出されますし、セシウムもまた排出されていきます。ですから摂れば体の中に入るし、だんだんまた排出もされていくそういう性質のものです。

(水野:ということはセシウムを排出しようとすると新しいセシウムを取らなきゃダメだということですか?)

小出:カリウムをとれば同じように排出されます。

(水野:カリウムを摂ることでセシウムは排出されるんですか? 全部排出されるんですか?)

小出:いいえそんなことはありません。もちろんあの、一定の割合で排出されていくというだけであって、セシウムという放射性物質は、物理的には半分に減るまで30年かかりますけれども、人間の代謝活動はもっともっとスピードが早く活動していますので、30年も待たずに半分に減っていくというそういう本です。

(水野:そしたら小出先生もおっしゃるように大人が責任をもって食べて子どもを守るんだということであれば、もう大人はセシウムに汚染されたものをどうやって食べていくかというその知恵をつけていく次代になったということですか?)

小出:そうです。

(水野:例えばカリウムを摂るとかそういう事ですか?)

小出:はい?

(水野:例えばカリウムを今まで以上に摂ってセシウムを排泄する工夫をするというそういう事ですか?)

小出・えーっと多分出来ないと思います。カリウムというのは植物の中にほとんどある一定の割合で入っているわけで、人間が食べ物でとるという食べ物の量というのはですね、もう決まっているわけですから、カリウムだけをたくさん食べるということは出来ませんし。大人は被曝をもう諦めるしか無いという、そういう時代に入っているということです。

(近藤:先生今回福島県からの、まあ牛肉なんですけれども。ずっとホットスポットが話題になってまあ先生今放射能まみれというふうにおっしゃいましたけれども。例えば関東の福島以外のところからですね、こういうそのまあ汚染された内部被ばくの肉がですね、あのー、市場に出るという可能性ももちろんあるということですね?)

小出:あると思います。

(水野:このへんが、今我々この福島のみにとどまっているというイメージなんですけれども、その辺覚悟してできるだけチェックして摂取を押させるという自衛をしなければならないですよね)

小出:はい、そうなんですけれども、そのためには放射能が目にみえませんし、味もしない匂いもしないというものですから、どの食べ物がどれだけ汚れているということを私達自身が知らなければいけません。そのためにはどこかで検査をしてきちっと明示をするというシステムが出来なければいけませんので。

(近藤:これはあの牛に限らず、その海水汚染の魚介類なんかも同じですよね)

小出:そうです全ての食物です。

(近藤:その辺の情報も全く欠けてますよね。牛は全頭検査とか大臣も副大臣も言ってますけれども。そちらの方はまだ全然、ね? 公開されていない)

小出:それは日本の政府のやり方がそうなっているので、基準を超えたものはまずいから情報を後悔したりあるいは出荷停止にするけれども、基準を下回っていれば全て安全というふうに日本の政府は言っているわけで、そんなことはサイエンスの側からはありえないのです。ですからちゃんと測定をして、すべての食物に関して汚染の度合いを明示するというそういうシステムを作る必要があると私は思います。

(水野:なるほど。小出さんもう一つ。ゴミの焼却について伺います。千葉県柏市の清掃工場でゴミを焼却した灰から国の基準値の9倍近い放射性セシウムが検出されました。で、これまでもですね、灰、ゴミを焼却した灰からなどいろいろなところで出ているというおはなしはしてきたんですけど。これまでは下水処理施設の話だったと思うんです。下水処理場の汚泥のことをこれまで話ししましたが、今回は一般の普通のゴミを燃やしてこれだけのセシウムは検出されました。このままで、いいんでしょうかというかどうしたらいいんでしょうか?)

小出:いけないのです、本当は。私は京都大学原子炉実験所というところで働いていて、そこから出てくる放射性廃棄物をなんとか環境に出ないということでずっと苦労をしてきた人間ですけれども。もうそんなことはぜんぜん違うような汚染をしたものが、すでに環境上に出まわってしまっているということです。

(水野:今回も木の枝や葉っぱが原因ではないか、というはなしです。)

小出:はい。

(水野:そうなりますと、ほんとうに一般的なものまでもですね、燃やせないものが出てくると思うんですが、燃やさなければそれでいいのか。たまってきますよね?)

小出:もちろん放射能自身は増えもしなければ減りもしないのです。なにをやっても汚染はそのままあるということですから、燃やしたことで放射能が増えたわけではないのです。要するに濃度がただ高くなったということだけで、燃やさなくたってそこにあるのです。

(水野:そこにあるということになりますと、例えばですね、人が入ってはいけない管理区域にするなど、という措置もあるのかも知れなせんけど、一般の清掃工場まで止まると現実的ではないでしょうねえ)

小出:そうです。これまでのいわゆる日本の法律体系が全く適用できないほどの汚染になってしまっているのです。

(水野:はい。まだまだ伺いたいことがあります。今週もよろしくお願いします。)

小出:こちらこそ。

(水野:京都大学原子炉実験所の小出孔明先生に伺いました、ありがとうございます。)


7月7日 「ヤラセメールは慣習だったしありふれた出来事だった」小出裕章(MBS)

2011年7月8日

2011年7月7日(木)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月 7日【木】
復興構想会議提言について考える 漁業特区って?
今回のテーマは漁業特区。先月出された復興構想会議の提言では「民間の資金や知恵を活用すること」「地域によっては特区手法を活用」などと水産業特区について言及しています。また宮城県の村井嘉浩知事も「特区で民間企業の関心を集め、投資を呼び込む」と積極的だ。(松本“ドラゴン”前復興相も例の会談で「ちゃんとコンセンサス取れよ」と叱咤?していましたね)一方、地元の漁協は「利潤追求の場にすれば海は荒廃する」と強く抵抗しています。民間の活力か、漁業権の保護か、漁業の将来像を描くことは被災地の復興に欠かせない大きな問題です。京都府舞鶴市の漁師さんで漁業改革をめざす「日本経済調査協議会」のメンバーでもある田中康雄さんに「なぜ復興に漁業特区が必要なのか」そもそも素人には分かりにくい「漁業権」とは何なのかお話をうかがいます。京大・小出先生の原発事故解説も。

録画

20110707 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

(玄海原発再稼働問題。テレビで説明された国の説明番組に対して原発再稼働賛成のメールを送るように九州電力の社員が関連会社などに依頼したという出来事がありました。このヤラセメールに関して小出さんはどう思いますか)

小出:相変わらずだなあと思いました。

(あいかわらずですか)

小出:はい。昔からよくあったことですので。

(むかしからあったんですか。)

小出:はい

(でもにわかには信じがたいんですが。結構こういったことってほんとに行なわれていたんですか)

小出:えーと私は内部からずっとその話を聞いていましたのでもう原子力をする人たちはそういうことをやってきたということは、昔から知っていました。

(じゃあ慣習と言ってもよろしいんでしょうか)

小出:そうですね。慣習だったし、ごくごくありふれた出来事だったと私は思ってましたし、なぜそれが今問題になるのかなあと、むしろそんなことが不思議でした。

(今はですよ、福島第一原発が事故を起こしてる状況でこんなヤラせを要請するっていうのはちょっと間隔がわからないんですけど)

小出:いや今だからこそ、むしろやらなければいけなかったと思います。彼等は。

(そうですか)

小出:はい。

(そういう感覚なんですか)

小出:聞いてみてください彼等に。

(これに関しましてもう一つニュースが入ってまして、鹿児島県議会で先週4日にこの問題について追求されたんですが、その時は九州電力は事実を否定したということでそれが一転して今回事実を認めるということになりましてまあいわば、嘘ついてたということになるんですが、このことについて小出さんはどう感じますか?)

小出:それは国会で追求されて否定することができなくなった。だから認めたということだと思います。

(そうじゃなかったらこのままウソをつきとおしていこうと?)

小出:もちろんです。これまでもずっと嘘をつき通してきたわけですから。

(それと全く同じ形で踏襲して今回の問題に対応してたというわけですか)

小出:はい。

(これを受けて地元の玄海町は原発再開を認めた判断を撤回したんですけれども、法的には定期検査からの原発の再稼働に地元の自治体や議会の了解の手続きの定めはないというふうに)

小出:ありません

(聞いたんですけど、これについては小出先生はどう思われます?)

小出:いえいえ、もちろん法的にはないわけですけれども、自主的には地元がお金が欲しいからと入って誘致したわけですし、その地元が了解できないとなればなかなかそれを突破することは出来ないだろうと思います。何としても地元に「うん」と言わせるということが最低必要状況だったと思いますし、そのために地元を困窮させてお金でのませるということをやってきたわけですから、それでももうできなくなっているというのが今の状態だと思います。

(今回立地自治体の玄海町以外の周辺のですね、市町村が再稼働についてかなり反対というか否定的な・・・とってるひとが多いんですけどこれについてどうお考えですか?)

小出:当然だと・・・要するに地元はものすごい交付金等をもらって潤うわけですけれどもその周辺の自治体等はあまり潤わないままきてしまったわけですし、今回のように事故が起きてしまうと何の補助金ももらえなかった交付金も貰えなかったところまでが全村離村しなければいけないということを目の当たりに観てしまったわけですから、やはり反対をせざるを得なくなっていると思います。

(やっぱりこれからの対応としてはもう法的にも地元自治体の了解はしなければいけないとかそういったことをきちんとしていく必要があるわけですよね?)

小出:んー、まあ、そうですね・・・でも・・・これまでの状態で言えば地元の自治体はとにかく金を掴ませられて、了解をしてきたという歴史があるわけですから、地元の了解を法的に義務つけたとしてももちろんできてきたわけですよね。でも地元だけでこんなことが決められるのかというそのことをまず問わなければいけないと思います。

(まあ地元というところが、もう少し地域が広がって、県とかそれこそ九州とか日本とか)

小出:もちろん県ですし、日本の電気を使っている消費地の人たち、東京の人たち大阪の人たち、玄海で言えば福岡の人たちが本当にこんなことを認められるのかということをきちっと考えるようにならなければいけないと思います。

(なるほど。では福島原発の事故の方に戻りますけれどもですね。福島3号機の原子炉建屋に窒素を入れる配管の現場を確認する作業というのが行なわれていて、これが失敗したというニュースが入ってきておりますが。あの窒素を入れるということはですね、3号機はまだ水素爆発の可能性があるということなのでしょうか?)

小出:はい。東京電力がそう思って、その可能性がまだ捨てきれないと思っているわけですね。

(あの汚染水、冷却水のことが報道の中心になっていますけれども、あの、メルトダウンした燃料だとか、まだ何にも前には進んでないんですよね?)

小出:はい。要するに事故、というか原子炉の中がどういう状態になっているということが東京電力すらが正確に分からないというそれほど困難な状況が今あるのです。東京電力はですね1号炉に関しては既にメルトダウンをしてしまったということを認めたわけですけれども、メルトダウンをしてしまったということを認める限りは、水素爆発の心配はもう不要です。ですから1号炉に関してはそうなのですけれども、2号機と3号機に関しては今原子炉が原子炉がどういう状態になっているのかがわからないと、いう状態で苦闘が続いています。ですからあらゆる可能性を考えながら事故に対処しなければならない。メルトダウンをしてしまっているかもしれないし、まだメルトダウンをしていなくてこれから水素爆発が起きるかも知れないということも考えて置かなければいけないという、大変困難な状態にあるわけです。

(特に3号機にはですね。プルトニウムが入ったMOX燃料が使われてたと思うんですが、これがもしあの水素爆発したとしたら大変なことになりますよね)

小出:はい。まああのプルトニウムというのは、人類が遭遇した物質のうちの最悪の猛毒物質と言われるほどの猛毒物質ですので、それを燃料に使うということはもちろん本当はやってはいけないのですけれども、でも、原子力発電をやる、つまり原子炉を動かす限りは膨大な核分裂生成物をとにかく生むということがあるわけで、その膨大な核分裂生成物の危険から比べると、私はMOX燃料としてつかっているプルトニウムの危険は、まだ小さいと私は思います。MOXをやってるからということはもちろん危険ですけれども、そのことによって付加される危険はそれほど大きいと私は思っていないのです。

(もっと問題が大きいところに直面している状態だということですね)

小出:そうです。

(後もう一つ、これから何十年にもわたって私たちはこの事故の対応をおこなって廃棄物を管理していく必要があるわけですけれども、あのこれからこそ、原子力の専門家が必要というときに学生の原子力離れというのが懸念されていまして、優秀な学生が原子力の研究を避けるのではないかということなんですが。このことについては先生どう思われますか?)

小出:はい。今から60年、70年前まで、この日本という国は大日本帝国と言う国だったんですね。その国には帝国大学という大学が7つありました。北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州、いうふうに7つありまして、その7つの帝国大学には1960年代に全て原子力工学科とか原子核工学科という学科ができて日本の原子力を支えようとしました。でそのころは、原子力は夢のエネルギーだとみんな思っていたわけで、私もそうだったわけですが、みんな原子力をやろうと夢に燃えていた時代でした。ただやってみたらば実際にはそんな夢は実現できそうにないということが次々に分かってきた、わけで、もう20年ほど前から、原子力工学科とか原子核工学科とかいう名前をつけてしまうと学生がもう誰も来てくれないと、いう時代に入ってしまいまして。7つの帝国大学から原子力工学科も原子核工学科もすべて消えてしまったのです。つまりもう原子力ということに夢を持てるような時代はなくなったわけですし、そういう時代の中では優秀な学生は誰もこないということになってしまってます。だからまあ原子力を進めるという人たちにとっても大変な困った状態で、文部科学省とかは何とかして原子力の人材を確保しようとお金をばらまいてきたわけですけれども、なかなか来てくれないし、(※ききとれず)は困っていると思います。でも私自身もこれから原子力発電を止められたとしても、膨大に創りだしてしまった核分裂生成物の始末ということはこれから何万年何十万年、あるいは100万年として残るわけですから、何とかして原子力の専門家というのは残さなければいけないと思います。でもどうしていいかわかりません。

(んー、深い問題ですけれども、はい、小出先生ありがとうございました)

小出:ありがとうございました。