2011年3月31日 岩上安身氏によるインタビュー 小出裕章

2011年3月31日にジャーナリストの岩上安身氏が行った小出裕章氏へのインタビューの模様です。

http://iwakamiyasumi.com/archives/8030

以下は書き起こしです。(http://www.twitlonger.com/show/9lbd4bから転載。ありがとうございます)

小出裕章助教(京都大学原子炉実験所)インタビュー by 岩上安身
3月31日 http://www.ustream.tv/recorded/13695456

岩上: 率直にお聞きしたい、小出先生は1968年に、ダイレクトにこちら(京都大学)にお入りになった?

小出: 68年に東北大学工学部原子核工学科に入学した。

岩上: 原子力を研究し利用を研究する立場でありながら原子力はやめたほうがいいと発言している理由は?結論として原子力は無理だと確信するに至った経緯は?

小出: 原子力発電をどうしてもやりたいということで東北大学に入って原子力の勉強を始めた。当時、宮城県では女川町という牡鹿半島の付け根にある町に原子力発電所をつくろうとしていた。私は、原子力発電所は素晴らしいものだと思っていたし、宮城県で一番電気を使うのは仙台市なのだから仙台市に原子力発電所を作ればいいと思っていた。なのに女川町とはどうしてかと疑問を持ち、その答えを捜し歩いた。安全であれば仙台につくればいいのに、80キロも離れた女川に作ったのは、今となっては当たり前のことだが、原子力発電所は都会には引き受けられない危険をかかえているから。だから都会には決して原子力発電所は建てないで、いわゆる過疎地というところを選んで建てて、長い送電線を引いて電気を都会に送るものだということに気がついた。ということがあきらかになって、そうであれば、私の結論としては認められないということになった。都会で必要な電気をその危険も含めて都会が引き受けるというのならいいと思う。しかし、都会は危険を引き受けるのは嫌だから、電気だけもらって、危険は過疎地に押し付けるというようなことは私の生きる原則からして到底認められない、というようなことがあって、原子力発電を廃絶させようと思うようになった。

岩上: 何年頃のこと?

小出: 1970年。秋のこと。

岩上: 70年というと、日本に原子力発電所が……

小出: 3機しかなかった。私が大学に入ったときには1機しかなかった。1966年に東海の1号炉が動き始めて、さあこれから原子力だという時代だった。私もてっきりそう思って原子核工学科に行った。その後70年に敦賀、美浜ができた。そのころ私は原子力の夢に燃え、そしてそれが間違いだと気がついて180度自分の生き方を転換した。

岩上: その後も研究を続けてこられた。

小出: その後大学院まで東北大学にいて、74年からここ(京都大学)にきて37年になる。今はここで仕事をしている。

岩上: ということは、ここ(京大)で安全な原子力をつくろうとされたのか、むしろ原子力がいかに危険かという研究を中心になさったのか。

小出: 後者の方。原子力がどのような危険を内包しているかということを明らかにする研究を続けてきた。

岩上: それはこの世界ではめずらしいということになるのかと。

小出: それには原子炉実験所という(私の)職場について話したほうがいいと思う。原子炉実験所というと、原子力発電を推進するための研究所と思うかも知れないがまったく違う。大学は基礎学問をやるところで、物理学、化学、医学、生物学など、それぞれの学問分野に中性子という素粒子を使いたい学問分野がある。そういう学問分野にいる研究者が集まってどうすれば中性子が使えるかと考えた。それで原子炉を作ってしまえば中性子が出てくるので、原子炉のまわりで仕事をしようということで原子炉実験所を作った。つまり、ここの原子炉は目的ではなく、道具として作られた。この実験所には200人いてそのうち80人が教員。その人達は物理学、化学、医学や生物学が専門で原子力のことは殆ど何も知らない人もいるが、私のように原子力に興味を持っている者もいる。私は廃絶したいが、いまだに原子力の旗をふっている教員もいる。もともと原子力を推進するのが目的の場所ではないなので、私のような廃絶論者が咎められるということはない。学問的にウソを言わなければ、ここにいることに問題はない。

岩上: 圧力がかかるということはないのか。

小出: 京都大学なので、かつての文部省、いまの文部科学省の傘下で、金もそこからもらっている。実験所という組織としては国に楯突くのはよくないと思っている人もいるだろうし、私をじゃまだと思っている人はいるだろうが、直接的な圧力はない。

岩上: 基礎的な研究が本来の目的。

小出: 物理的な目的、化学的な研究をする人もいる。

岩上: 湯川さんや友永さんのような…

小出: 湯川さん、友永さんは理論物理学の人なので我々のような実験物理に近い分野とは違うが、基礎学問をやるという意味では通底している。

岩上: どうして原子力発電というシステムはだめなのか。ダメな理由は効率性の問題、事故が起こったら取り返しが付かないなど、いろいろな角度があるだろうが、ひとつづず噛み砕いてお願いしたい。

小出: 一番の基礎は、原子力発電はウランを燃やすということ。ウランを燃やしたら核分裂生成物ができる。放射性物質、いわゆる死の灰を産まずには発電することは出来ないという機械が原子力発電所。ウランを核分裂させればかならず核分裂生成物ができる。それは避けようがない。

岩上: ヨウ素、セシウム、プルトニウムというようなものも含まれる?

小出: プルトニウムは核分裂生成物ではないが、放射化生成物と呼んでいる一連の放射性核種のうちの一つだが、原子力発電をやっている限り、何百種類の放射性核種を生み出さざるをえないというそういう技術。そのうえで問題は、生み出す放射能がとてつもなく膨大だということ。広島の原爆が炸裂したときに燃えたウランは800グラム。この手に乗るくらいの重さのウランで広島の町が無くなってしまった。100万キロワットの原子力発電所が一日動くと、これを3キロ燃やす。つまり広島原爆の3倍から4倍のウランを毎日燃やしている。つまり3キログラムの死の灰を毎日生み出しながら動くという装置が原子力発電所。1年も動けば広島原爆の1000倍の死の灰を自分の身体の中に溜め込むという機械。死の灰を原子炉の中にどんどんためこんでいく。これが万一にでも環境に出てくるようなことになればとてつもないことになるということは、もうみんな知っていた。だからこそ原子力発電所は都会に建てないということにしてきた。

岩上: 今原子力発電所は全国で54機ある。54機あって、それがみんな同じサイズで100万キロワット……

小出: 大きいのも小さいのもあるが、基本的に言えば100万キロワットに近い。

岩上: それが1000発分かける54、5万4千発……。

小出: 正確に言うと4万8千発分程度だが、一言で言えば5万発と思えばいい。毎年毎年広島が生み出した核生成物のの5万発分を生み出すのが原子力発電所。

岩上: それが10年、20年たてば、50万、100万……

小出: すでに1966年に東海1号炉が動き始めて45年、それがどの程度の核生成物を産んできたかと言えば、広島原爆の120万発分。

岩上: 原子力発電所を続ける限り……

小出: 毎年5万発分ぐらい増えていくわけ。

岩上: 今回の福島原子力発電所では使用済み核核燃料棒がある。使用済みなのになぜ熱を帯び、冷却し続けなければならないのか。これが福島第一原子力発電所に4500本以上ある、ガラス固化体という方法があってどこかにしまっておくこともできると聞いている。安全に処理することもできると聞いている。ほんとうに安全な技術があるのか。死の灰と使用済み核燃料棒の解説をお願いしたい。

小出: 100万キロワットとは何かというと、電気になっているのが100万キロワットという意味。炉心では300万キロワット分の熱が出ている。のこりの3分の2はどうするかというと、海に捨てている。そんなばかばかしい非効率な装置。しかも200年前にジェームスワットが発明した蒸気機関の原理をいまだに使っている。効率はあがっているが熱効率はいまだに33%しかない。残りの66%は捨てるしかないという馬鹿な装置。ここでは、一秒間に70トンの海水を引きこんで、その温度を7度上げるということをやっている。荒川や多摩川で一秒間に30トン、40トンぐらい。淀川で、1秒に150トン。日本全国でも一秒間に70トン以上流れる川は30もない。日本屈指の大河が原子力発電所ひとつつくると現れて、その温度が7度も上がっている。7度というと、お湯の温度をそれだけ上げて風呂に入れるかというと、そんなことができないくらいの温度。海には生き物もいる。そこの生態系が破壊されてしまう。日本近海は世界平均の海洋温度上昇の何倍も高いスピードで温度が上昇している。

岩上: 原子力発電所の設置、それによる温排水と日本近海海洋温度上昇の実証的な関係の研究はあるのか。

小出: 厳密には立証されていない。ただし、日本にある54機の原子力発電所が1年間にどれだけの温排水を出…(音飛び)

岩上: ……こういういいかたがある。とてもじゃないけど頷けない説明だろうとおもうが先生の立場からコメントしてほしい。

小出: プルトニウムも含めて放射性物質はあらゆる意味で人体、だけでなく生命体に危険。だから環境に影響ないとか、危険がないとかいうことは一切誤り。プルトニウムが環境に検出されたということは危険があるということ。先日検出されたプルトニウムの量は、非常に少ない。そのほかの放射性物質の量があまりにも膨大なので、比較の問題としてプルトニウムが出たとしてもその危険度は大したものではない。だからプルトニウムが出たからと言って特に危ないということはない。しかし、プルトニウムが出たということは、原子炉内のウランのペレットが解けたということなのでその意味ではものすごく重要。

岩上: それはどういう意味か。

小出: 心配なのは、原子炉が溶け落ちるということ。炉心の燃料ペレットが溶けたと言ったが、それはまだ一部。大量に溶けると、塊になって落下していく。つまり我々はそれをメルトダウンと呼ぶ。それが起きると最悪の場合水蒸気爆発が起こる。もし水蒸気爆発が起きれば圧力釜が破壊される。すると比較的ぺらぺらの格納容器も壊れる。そうすると、放射能を閉じ込めるすべての防壁がそのときに失われる。今だって大変な放射能が出ているが、それにくらべてもケタ違いの放射能が出る。それを私は破局的な状態と呼ぶ。そういう破局的な事態になんとしても行かせたくないし、なってほしくないと思う。

岩上: 東電あるいは保安院は小出先生のような理解をしているだろうか。

小出: もちろんしている。これを理解をできなければ専門家とは呼ばない。政府関係者はともかく、東電の中の技術者は当然理解をしている。

岩上: それを積極的に説明するかどうかは別として……

小出: それはそうだ。でも東電も溶けているということは認めている。ただしこれを大変なことだとは言わない。

岩上: 損傷ということがすなわち溶けているということか。

小出: 損傷と溶けるのとは違う。私も最初は燃料棒の被覆管が損傷していると言っていた。それを超えてウランの燃料ペレットが溶けていると。炉心が損傷しているときにはペレットのことを呼ぶこともあるが、溶けているということが大変重要なこと。

(マスコミ関係者から電話で中断)

岩上: 2800度を超えるものをどうやって冷やせるのか。水をかけることで冷やせるのか。私がずっと質問し続けているのは、ポンプというものが通電したら動くという確証はないということ。あれほど複雑なシステムを修理するのに人を近づけることもできない。外部からモーターを持ってくるしかないのではないかと聞くと、内部モーターを調達しているというあいまいな答えが返ってくる。先生はこの冷やすということに関してどうお考えか。

小出: どういうことをやってきたかというと、地震と津波によって全ての電源が断たれてしまったた。でも原子炉は冷やさなければこわれることが分かっているので、東京電力は電源車を持ってきてポンプ車から原子炉に水をいれることにした。しかし電源車を接続する施設が水没していて使えなかった。そこで消防のポンプ車を持ってきた。水がないので海水を使った。海水を一度入れたらこの原子炉は二度と使えないということを意味するが原子炉を冷やさなけれなならないのでとにかく使った。しかしそれがいつまでも続けられる訳ではないので、電源を復帰するしか無いと思った。電源さえあればポンプは動くだろうと思った。ところが電源が復帰してもポンプは動かなかった。ポンプが水没していたからだ。作業員が行ってみたら、ポンプ周辺の水は膨大な放射能で汚染されていて近づくことさえ出来ないことが分かった。この汚染水をなんとか外に出さないことにはポンプの回復すら出来ないという状態。しかし、私はそれはもうダメだと思う。新しいポンプを持ってきても何をしても、どんなことをやってもダメだと私は思っている。なぜかというと原子炉圧力容器と呼んでいる高圧の圧力釜がすでに破損している。さっきまでは炉心のことを言っていたが今は鋼鉄のの圧力釜、つまり圧力容器が破損してしまっている。

岩上: 圧力容器が破損しているという根拠は?

小出: ポンプ車で水をどんどん入れているが、水を大量に入れれば圧力釜の水位が上がるはずなのに、いくら水をいれても水位が上がらない。東電の発表でも、燃料棒が130cm、270cmと常に露出している。どうして露出しているか、それは圧力容器に穴が開いているからだ。それを東京電力は「圧力容器の下部に穴が開いたイメージ」と表現したが、いずれにしても圧力容器に穴が開いている。そうすると、いくらポンプが動いても正常な回路には戻らない。

岩上: 今はポンプは動いていない。

小出: 動いていない、そして私は動かして欲しいと思っていた。しかし、ポンプが稼動してももはや冷却システムは使えない。

岩上: 新聞ではもう無理だとは書いてない。

小出: 私もなんとかポンプを動かして冷却システムを稼動させなければと思っていた。しかし、もうだめなんだとわかった。

岩上: いつごろわかった?

小出: きのうかおとといのこと。これはもうダメなんだと。どうにもならないと気がついた。

岩上: 絶望的な話。他に解釈のしようがない?

小出: 他に解釈の仕様はない。そうなると正常な冷却ができないのだから外部から海水でも何でもいいから送って冷やすというその手段しか無い。それをやってしまうと、外部から水を入れるわけだから、どこからか出さなければならない。しかし、水が外に出る仕組みはすでにできている。格納容器が破損しているから、どんどん出ている。原子炉を冷やす水が放射能まみれになって格納容器から漏れて放射能まみれになってどんどん表に出ている。それがタービン建家にたまり、トレンチに溜まっている。しかしこれをこれからもずっとやり続けなければならない。

岩上: 高濃度の放射能が海に放出されたということは全世界を汚染している。環境と外がオープンにつながったシステムになってしまっている。……なんと言ったらいいか。

小出: 私もことばを失う。

岩上: これからどうなる

小出: 今の状態が続くのであれば、これまで約3週間続いてきたものを今後何ヶ月という単位で続けるわけだがその期間中放射能が出て行くということになる。

岩上: 原子炉は止まっているが核生成物はある。こういう状態でどのぐらいの放射性物質が産出されて外に出ることになるのか。

小出: まだ全体の数%だが、これから長引けば数十%、最悪100%出ることもある。水蒸気爆発が起きれば数十%という単位で一気に出て行くことになる。

岩上: 水を外からいれて冷やしているということは、結局、原子炉を洗い流しているのと同じこと。原子炉も格納容器も、洗い流し続けたら、流れ出る放射性物質の総量はどのくらいになる。

小出: これまでは原子炉にあったもののうち、セシウム、ヨウ素といった揮発性のものが数%、期間が長くなれば、数十%、百%に近づいていくだろう。プルトニウムのような放射性核種があるわけだが、燃料ペレットの溶融がまだ大規模でないようなので、これから冷やし続けることができるならばそういった放射性核種が表に出てくることはないと思う。まだ出ているのは本当にわずか。

岩上: プルトニウムがどこから出たのか特定できないというのが東電の説明だが、

小出: そのとおり、特定できない。

岩上: プルサーマルをやっている3号機から出たとは言えないか。

小出: 言えない。

岩上: どこかしらに、ペレットが溶けたという可能性があるということ? まだ僅かであると言ってもプルトニウムがどこから出てきたかは……

小出: そんなことはわからない。つきとめることも出来ないだろう。だが、ペレットが溶けたということは確実。もっと溶ければ水蒸気爆発をともなう破局に至る。それを防がなければならないと思っている。水蒸気爆発が起きないとしても、ものすごく長期にわたって原子炉を冷やさなければならない。正常な冷却回路は復帰できないので、外から水を入れて、原子炉を冷やし、それが外に出ていくということを覚悟しながらやらなければならない。しかし、それをやりとげることができれば、揮発性でない、プルトニウムを含む放射性物質を原子炉の中に閉じ込めることはできる。だから水を入れなければならない。

岩上: 何年間ぐらい?

小出: わからない。何ヶ月、1年2年の単位でやることになる。

岩上: 1,2年で落ち着くことはできる?

小出: 崩壊熱という話をしたが、そこにある放射性物質そのものが熱をだしている。寿命の長い物短い物、何百種類の放射性核種がある。寿命の長いのも短いのもある。原子炉を泊めても7%分の発熱は止められないと言ったが、それは原子炉を止めたとのときのこと、その中には寿命の短いのもあるので、1日経てば10分の1程度になる。あと1週間も経てばそのまた10分の一、それ以降はほとんど減らないが、1年、2年経てば、またその10分の1というような量に減る。熱が次第に減っていくのである程度減っていくと、燃料ペレット(瀬戸物)がどろどろに溶けるということはないだろう。そこまでは、とにかく冷やし続けなければならない。原子炉の形状にもよるが、もし、かたまってしまっていると冷やすことも出来ない。そうなるともっと長い時間がかかる。私にはいつまでとは言えない。

岩上: われわれは外界に放射能が出て行くこの状態を甘受しなければいけない?

小出: もうしわけないが、それを防ぐ手立てはない。

岩上: たとえば、防護を強化した人員や、ロボットを使って、格納容器の穴をふさぐということはできないか。

小出: 今はできないと思う。被爆の量がものすごいことになっていると思う。格納容器に近づくことは何ヶ月という単位でできない。

岩上: ロボットは?

小出: ロボットは想定外の状況によわい。たぶんロボットは何の役にも立たない。
岩上: 揮発性の放射性物質の影響は?

小出: 1986年のチェルノブイリでは、原子炉が爆発してしまったので、プルトニウムを含む揮発性でない放射性物質がたくさん出てしまった。重いプルトニウムなどは遠くへは飛ばなかったが、揮発性のものが遠くへ飛んで周辺を汚染した。地球全部を汚染した。ソ連政府は周辺30kmを住民13万人を強制避難させた。しかし自己から数ヶ月経ってから事故現場から2百キロ、3百キロはなれたところに濃密な汚染があることが分かった。

岩上: ホットスポット?

小出: ホットスポット。政府は40万人ぐらいのひとを避難させた。チェルノブイリでは発電所から700km先まであるレベルを超えて汚染をしていた。そのレベルは日本の法律に照らすと放射線管理区域にしなければいけないようなレベルの汚染。放射線管理区域とは、私のような特殊な仕事の人間がどうしても仕事の都合で入らなければいけないような場所。水を飲んではいけない、食べてもいけない。そこで寝てもいけない。タバコを吸ってもいけない。子供を連れ込んではいけない。それが放射線管理区域。一般の人が接する放射線管理区域は一般の人がX線撮影を行うような場所。関係者以外無断立ち入りを禁ず、妊娠中の人はちかよれないというような場所。面積は145000km2、本州の6割に当たる面積を「放射線管理区域」にしなければいけないというレベルの汚染。風下で700kmまで届いた。同心円ではなく、東の方700km,西の方500kmの帯状に広がっている面積を全部合わせると14万5千平方メートルということ。

岩上: 汚染された、危ないという地域だけを合わせて?

小出: そう、日本の法律で放射線の管理区域にしなければならないような地域。同心円ではない。

岩上: 避難させた600万人をソ連だから吸収し得た。日本のような狭い地域では吸収し得ない。

小出: もちろん吸収し得ない。

岩上: 国家体制が破綻するとおっしゃった。

小出: そのとおり、何長円何十兆円何百兆円払っても贖いきれないほどの被害がでるとおもう。揮発しないものはふせげるが揮発系のヨウ素、セシウムはだらだら出続ける。チェルノブイリの場合はセシウムは30%出た。福島は今は数%と少ないがこれからだらだら出て行くと、チェルノブイリと同程の汚染地帯が度出るだろうと思っている。

岩上: 日本以外の国では次々とシミュレーションが発表されているのに、日本国内ではではその発表を押しとどめて発表しない。日本では国内でのシミュレーションも全くされていない。

小出: いや、そんなことはない。日本でもシミュレーションはされている。日本は「スピーディ」という計算コードを持っているわけだから、事故が起きた時からずっとやってきたはず。もちろんいまでもずっとやっている。しかしそれを公表してこなかった。本当はちゃんと公表してどっちの方へ汚染が行くということを時々刻々報告しなければいけないと思うが、今の日本ではそれをやるとパニックを煽るからと言って出さない。

岩上: 「スピーディ」は政府が持っている……

小出: そう。日本原子力研究機構が持っている。

岩上: これは出すべき。

小出: そのための研究だったわけだから今出さないでいったい何なんだと思う。

岩上: 原子力損害賠償法に基づく賠償のことなどが脳裏にあっての情報公開制限なのだろうか。

小出: 原子力損害賠償法とは直接関係ないと思う。日本政府が恐れているのはパニック。住民の被爆を恐れているのではなく、パニックを恐れている。私は、住民のパニックを押さえるための唯一の方策は情報をきっちり公表することだと思うが、政府はそうではない。日本の伝統文化だと思うが、これまで日本は、「由らしむべし、知らしむべからず」という方針で、知らせないまま政府の言う事を聞かせるという国だった。今でも情報をなるだけ出さないで、安心だ、安心だ、と政府が言うことを納得させるということで来ている。

岩上: 放射能を多少摂取しても大丈夫だというプロパガンダが延々とされている。放射能の危険性を指摘したAERAの編集長は非常に叩かれて、謝罪せざるを得なくなった。彼は「放射能が来る」という特集を組んだだけ。(今の社会には)非常に危険な空気感がある。だからきちんとした根拠に基づいて危険性を警鐘し続けないと本当にあぶない。特に統一地方選挙の後、大連立を組まれる可能性がある。原子力発電所大政翼賛会、震災大政翼賛会、震災ファシズムのようになって、情報統制される可能性がある。先生の視野は政治や歴史に及んでいるが、この状況をどう見る?

小出: 大変危険な状況だと思う。

岩上: 原子力は政治と深く結びついている。

小出: もちろんです。しかしそのことに付いて話しだすとまたここまでとおなじくらいの時間話してしまうことになる。これから放射能の測定の仕事にいかなければならないので、切りの良い形で終わらせてほしい。

岩上: 大変危険な社会的状況を要約してまとめると、

小出 みなさんは「原子力」という言葉をきいているが、もうひとつ「核」ということばもある。日本人は原子力と核はあたかもちがうものかのように思い込まされているが、実は同じものだ。日本の国がどうしても原子力を進めたいという考えの根本には核開発をしたいという思惑がある。

岩上: 「核」兵器ということ?

小出: そう。NHKすらが「核を求めた日本」という番組を放送して、日本は実は核兵器を作りたかったということを暴露した。そういうことがあまりにも日本人の耳に入っていない。みんな鈍感で見過ごしているが、実際にはそれなのだ。原子力の問題は事故も起こるしたいへんなものだが、現在私たちはその恐怖に向き合っているのだが、それを超えてさらに政治的、社会的な問題が根底に横たわっている。それが、今岩上さんがおっしゃったように大連立の方向に向かったときにますます強化の方向にむかうだろうと思うし、危険な方向に滑り落ちていくと思う。

岩上: あと一点だけ確認。冷やし続けるしかないと、そしてチェルノブイリに比肩するような汚染が拡散するとおっしゃったが、それは海に流すということですね。空中への汚染は遮蔽するとかで止められるが、最終的に、海への被害はどのくらい、われわれはどのくらい避難しなければならないような状態か。

小出: わからない。ただ、日本から見れば、幸いなことに日本は島国で海に囲まれている。また偏西風の影響で大抵の空気中の汚染は太平洋の方に流れている。膨大な汚染水が発電所の中に存在している。トレンチは水を漏らさない構造にはなっていない。だから、地下水が汚れていたと行って大騒ぎしているが、それはあたりまえのこと。地下にどんどん汚染水が流れ込んでいるし、それは海に行くしかない。日本の国に言わせれば「海は広いな大きいな」だから、いくらやったって、薄まってしまって安全だというようなことを言うが、私は放射能に安全はない、薄まるということは汚染を広げるというそれだけのことだと私は思っている。海は世界中繋がっているのだから原子力から何の恩恵設けていなかった国々に対しても汚染を広げている。程度がどれだけか陸地の方でどれだけの汚染が広がるかということは、今は予測ができませ……(ビデオ終わり)

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