2011年5月3日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの番組「たね蒔きジャーナル」に小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)が出演されました。
2011年5月 3日【火】
海外がどのように見ているのか?小西克哉さん2回目の登場です
原発事故では、その対応に問題ありとの指摘が相次いでいます。一方で、米タイム誌の「世界で影響力のある100人」では南相馬市の桜井市長が選ばれ賞賛されています。海外は、原発事故で混乱している日本をどのように見ているのでしょうか?国際ジャーナリストの小西克哉さんに聞きます。きょうの福島第一原発については京都大学の小出さんです。
今回も、小出氏出演部分を録音・公開してくださっている方がいらっしゃいます。
【福島原発】5/3/火★今?5000枚のシミュレーション結果公開
要約
・(3月12日に1号機のベントが難航した際、格納容器が深夜に破損して著しい公衆被曝が発生するという予測が政府内で示されていた、という報道があったが感想は?)当たり前。もともと事故は起こらないのだから必要ないとされて、1号機が運転開始した1971年時点ではベントは存在せず、西暦2000年を過ぎてからベントが取り付けられた。政府も電力会社も破局的な事故は起こらないとしていたから、そのようになっていた。ステーションブラックアウト(全所停電)が起きてしまえば短時間で格納容器も壊れることを専門家は覚悟していたと思う。ところが政府はそんなことはないとしていた。
・(「著しい公衆被曝」はどのような事態か?)私が恐れていたのは、急性の死者を含む障害が出るということ。実際には水素爆発が起きて建屋は吹き飛んだものの、格納容器はかろうじて機能を保っており、現時点では急性の死者は出ていない。
・(そのような予測が出たとき政府がとるべき行動は?)情報を出して周辺から避難させること。ところが政府は情報を出すとパニックになるからということで出さなかった。
・(細野補佐官がSPEEDIによる拡散シミュレーション結果5000枚を公開すると発表したが、実際にはそれほど沢山出ていないようにも見えるがどういうことか?)パラメータや付随する周辺データを含め膨大なデータがあったのは確かだろう。公開しないといけない。
・(過去のシミュレーションデータを今ごろ見せてどうなるのかとも思うが?)全く意味はない。実に馬鹿げた政府。
・(公表されたデータで気づいたこと、もっと欲しいものは?)まだ見ていないが、SPEEDIのデータは後から出しても意味はない。今から出すと言われても、ふざけないでくださいとしか言えない。
・(細野氏はパニックを恐れたから、と言うが?)私はパニックを防ぐ唯一の道はすべての情報を知らせることだと思う。が、政府はそうしなかった。
・(東電では昨年6月の非常用電源のトラブルを最近認めたが、そのような追認が続いているのは政府の言い訳作りにも見えるが?)ひとたび事故が起きると、過去のトラブルについても開示されるというのは繰り返されてきたこと。その延長だ。
・(付近の住民の一時帰宅の予行演習があったが、帰宅の際に水やトイレは制限されるとしていた。どういうことか?)汚染地には水はなく、持ち込むしかない。井戸があっても使えない。台所の水も飲めないし、制限は必要。トイレに入っている時間も惜しいはず。やりたいことだけをやって出て行くという意味。
・(フランスのアレバに、1トンにつき2億円をかけて放射能を除去する技術があるということだが、値段は妥当か?)そんなことは全然ない。これは水処理技術であり、特別なものではないし、日本でもできる。廃液処理は各原発の施設でできる。ただし今回はあまりに量が多くて間に合わないということ。いまから処理装置を作るのでは間に合わない。私はタンカーに積んで柏崎刈羽に運び、そこで処理をするという提案を一ヶ月前からしているが、残念ながら動いていない。2億円はあまりにもバカげている。7万トンもある。日本の国家が倒産するというようなことかもしれない。
全体書き起こし(転載)
5月3日MBSラジオ小出裕章氏「SPEEDI等情報公開、アレバ汚染水処理1トン2億円等について」
メインキャスター(以下「MC」):水野晶子
コメンテーター:平野幸夫・毎日新聞「ほっと兵庫」編集長
※完全な文字起こしではありません。
また、誤字脱字等、ご了承下さい。
( )は補足等。
MC:小出さん、こんばんは。
小出氏:こんばんは。
MC:よろしくお願いいたします。
平野氏:よろしくお願いします。
小出氏:こちらこそ。
MC:今速報(ニュースコーナー)でお伝えしました情報がございます。
これについて、感想を伺いたいのですが、
地震の翌日、3月12日に1号機の蒸気を外に出すための
ベントという、緊急的な措置が行われたのですが、
これが難航し、その時にこうした予測が出されていたそうです。
格納容器が深夜に破損し、著しい公衆被曝が発生する
との最悪の事態の予測が、政府の中では示されていたという事が今日解りました。
小出先生、ご感想はいかがですが。
小出氏:当たり前です。
MC:当たり前ですか。
小出氏:はい。
MC:というのは、ベントが難航すれば格納容器は破損する、
というのが、当然の事態であるという意味ですか。
小出氏:もともとベントというのは、福島第一発電所が出来た時には
無かったのです。
MC:どういう意味ですが。
小出氏:ベントなんか、必要無い、と。
MC:福島第一原発1号機は1971年でしたか。
小出氏:はい、そうです。
福島第一発電所の1号機が運転を開始したのは1971年です。
その時には、悲惨な事故は決して起こらない、と。
だからベントもいらないという設計だった。
MC:ベントするような、外に蒸気を排出するような設計には
なっていないのですね。
小出氏:そうです。
それは日本中の原子力発電所がずっとそうであって、
ベントが取り付けられたのは、2000年を過ぎてからです。
MC:つまり、スリーマイル・・・
小出氏:(それ)を遥かに過ぎてから。
MC:・・・を経験した後に、遥かに過ぎてから、
ベントという仕組みが必要であるというふうに設計が変わった訳ですか。
小出氏:もともと私は、破局的な事故が起きるかもしれない、
と言って来た訳ですけれども、
日本の政府も電力会社も破局的な事故は決して起きないから、
ベントすら必要ないと言って来たのです。
ですから、もともと無かったのです。
MC:それをシステムはないけれども、むりやりやった格好になった訳ですか。
小出氏:後から取り付けたのですね。
MC:後から取りつけたのですか。
小出氏:それが今回は働かさなければいけない事態になった訳ですけれども、
それが難航したという事なのですね。
でもこんな事故が、所謂ステーションブラックアウトという、
全所停電と私達が言っている事故が起きてしまえば、
本当に短時間のうちに格納容器も壊れるというのは、
皆が覚悟していた事故だったのです。
MC:専門家の方は覚悟していらっしゃった事故ですか。
小出氏:私は覚悟していましたし、
原子力を推進していた人の中でも、一部の人は覚悟していたと思います。
でも、政府あるいは東電の公式見解としてはそんな事は決して無い
と言って来た事が実際に起こったのです。
MC:ニュースの中では、「著しい公衆被曝」という言葉を用いさせて頂きました。
これは実際には起こっていない事ですけれども、
もしも、この事態になっていたとしたら、どんな事を指すのですか。
「著しい公衆被曝」というのは。
小出氏:私が恐れたのは、今回はそれが起きなかったから良かったと思いますけれども、
急性の死者を含めた障害が出来る事を恐れていました。
実際には、ベントは出来た訳ですし、そのベントをしたためかもしれませんが、
水素爆発という事が起きて、原子炉建屋が吹き飛んだ訳ですけれども、
格納容器自身はかろうじてまだ機能を保っている、という事で、
「著しい公衆被害」というか、急性に死者を出さないまま、今来ている訳です。
MC:これは、被害の程にもよると思いますけれども、
こうした予測が出た時、政府は本来どういう行動をするべきなのですか。
小出氏:私は、直ちに公衆を逃さなければいけないと思います。
MC:つまり、作業員の方達だけではなく、付近にお住まいの方達に対しても、
この情報を明らかにして、速やかに退避して頂くという事が必要だった、
と小出先生は思われる訳ですね。
小出氏:もちろんです。
ただし、日本の政府が行った事は、情報を示すとパニックが起きるから、
なるべく情報を公開しない、というふうにした訳ですね。
MC:そうですね。
結局はベントが出来たから、そして格納容器が何とか保たれたから良かったですが、
非常にショッキングな情報が今入って来たというふうに感じております。
その情報公開について、更に伺いますけれども、
細野首相補佐官が、今まで明らかにしていなかったのだけれども、
こうしたシミュレーション、どんなふうに放射性物質が
どの地域にどれ位飛んで行くかという予想をした
文部科学省のデータ、これはSPEEDIという所がやっているのですよね、
これは早くから小出先生が指摘して下さっていた、
このSPEEDIというシステムがあるのですが、
ここがシミュレーションをした結果を、これから公開する方針だという事で、
5000枚シミュレーションがあって、これを公開する、と。
5000枚も今まであったのに出していなかったのですか。
小出氏:そうですね(苦笑)。
MC:私もさっき、平野さんと一緒にPCでいろいろ見てみたんですよね。
平野氏:そうですね。
でも5000枚もありませんでしたね。
MC:これ、どういう事ですか。
3月11日の夕方4時から1時間ごとに、
どのような地域にどれ位拡がるかという地図が出ていました、確かに。
だけど、これを5000枚のデータと言うのですか。
小出氏:たぶん違うと思います。
SPEEDI自身は、時々刻々の風速風向あるいは雨量のデータというものを
入力する訳ですけれども、
たぶん1時間位のタイムインターバルで入れていると思いますので、
一日14個として、30日とすれば精々1000個ですかね、
その位しかないはずですから、
SPEEDIの計算結果を含めて、計算を入力したパラメーターであるとか、
そういう情報(を含めて)かもしれませんし、
またそれに付随する周辺のデータかもしれませんが、
膨大なデータがあったという事は本当なのだと思いますし、
もちろん、公表しないといけないと思います。
MC:それは、今頃シミュレーションを・・・
シミュレーションってこれからどうなる、っていうのを過去で見させられて、
どれだけの意味があるのか解りませんが。
小出氏:全く意味がありません。
実にバカげた政府だと思います。
MC:ただ今までよりは出て来たデータをご覧になって、
小出先生が気付かれた事、あるいはもっとこのデータが欲しいと思われる事
その辺りはいかがでしょうか。
小出氏:まだ細野さんが、どういうデータを公表してくれたのか
私は見ていませんので、何とも言えませんけれども、
少なくとも、SPEEDIのデータというのは、後から出してもらってら全く意味がないです。
MC:予測ですからね。
小出氏:そうです。
その時に出してもらわなければ全く意味の無いデータですから、
今から出すなんて言われても、ふざけないで下さいと言うしか私にはありません。
MC:天気予報を何カ月もしてから見せられても、
しょうがないのと同じ意味合いでありますよね。
小出氏:おっしゃる通りです。
MC:しかし、細野さんは、パニックが起きるのを恐れたので、
と謝罪をしていらっしゃいます。
小出氏:その通りだと思います。
要するに、政府というのは、パニックを恐れたために情報を隠したという事をしたのです。
でも、私はそうではなくて、パニックを防ぐ唯一の道は
全ての情報をキチッと知らせる事だというふうにずっと言ってきたのですけれども、
残念ながらこの国はそうではなかったのです。
平野氏:先生、昨日も国会で、
東電で去年の6月にも非常用電源を使ったトラブルがあった
という事を民主党の議員が明らかにして、
東電の社長は認めたようなのですけれども、
ここに来て、何か急に今まで出ていなかった話がどんどん出て来て、
それを追認するという状況が続いているのですけれども、
少しいぶかると、政府が、今ここに隠しているものを、
最低限のものだけ出しておいて、
言い訳作りにしているような意図を感じられるのですけれども、
ここに来て急にですよね、いろいろなものが・・・
小出氏:そうですよね。
ひとたび事故が起きると、こんな事もありました、あんな事もありました、
なんていうのは、これまでもずっと繰り返して来た歴史ですから、
たぶんそれの延長だと思います。
MC:それから、先ほどのニュース(コーナー)の中で、
これから付近の住民の方々が一時帰宅をなさる時の予行演習があった、
という話がありまして、そこの問題点のひとつに、
お家に帰られた時に、水やトイレも制限されるという一行がありました。
水やトイレも制限されるというのは、どういう事なのですか。
小出氏:それは、もともとそんな汚染地に水なんかありませんから、
水は持ち込むしかありません。
もしそこに井戸があったとしても、井戸を使ってはいけませんし、
何か台所に水があったとして、その台所の水ももちろん飲む事も許されません。
もちろん制限しなければいけませんし、
トイレなんかにノンビリ入っている時間は惜しい訳ですから、
一刻も時間を惜しんで、どうしてもやりたい事だけをやって、
帰って下さい、という事です。
MC:ラジオネーム(省略)さんというリスナーの方からの質問に
短く答えて頂きたいのですが、
「フランスのアレバという会社が来て、
放射能汚染水を除去する技術があると聞きました。
汚染水1トンにつき2億円かかるという話を聞いたのですが」
そうですか・・・2億円て妥当な値段ですか。
小出氏:全然そんな事はないと思います。
放射能を除去する技術というのは、言ってみれば水処理技術なのであって、
特別な技術ではありません。
フランスでなければ出来ない、米国でなければ出来ないという事ではなくて、
日本でもそれは出来ます。
それぞれの原子力発電所の中に、
そういう廃液の処理をするという装置はあった訳ですし、
今回だって福島の原発にもある訳です。
ただあまりにも膨大なので、それが間に合わないという事だけです。
ですから、アレバが来て、処理装置を作ってくれるという事を
今やろうとしている訳ですけれども、
日本の技術でもそれは出来ます。
ただ問題は、間にあわないという事です。
MC:汚染水があまりに多いと。
小出氏:はい。
汚染水が多すぎますので、今から処理装置を作るというような事では
到底間に合わないので、
私はタンカーに積んで柏崎刈羽原子力発電所に持って行って
そこに既にある廃液処理装置で処理をするしかないという提案を
ずっと、もう一月以上前だと思いますけれども、
しているのですけれども、残念ながらそれが動かないという事なのです。
アレバに1トン当たり2億円と今おっしゃったでしょうかね、
あまりにもバカげた提案だと思います。
7万トンあるのです。
1トン2億円払ったら、7万トンっていくらになるのですかね。
解りませんけど、日本の国家が倒産するかもしれない位のお金ですね、きっと。
MC:本当に現実的な策が着々と進められて、
作業員の方の安全に・・・という事を祈るばかりですが、
明日も、小出先生、どうぞよろしくお願い致します。
小出氏:こちらこそ、よろしく。
MC:京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに伺いました。