2011年5月11日(水)、MBS(毎日放送)ラジオ「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。
番組案内
2011年5月11日【水】
今夜も千葉アナの被災地リポート
今夜も、千葉猛アナウンサーが宮城県南部の被災地からリポートします。
今回のテーマは漁業。津波で被害にあった漁師たちも、船を失い仕事ができずに、収入の糧が途絶えています。再開するのはどうすればよいか・・・、官民一体となって、現在、知恵を出し合っています。 そんな漁業に就く人たちの現状を千葉アナが伝えてくれます。
原発のコーナーでは、今夜も京大の小出裕章さんが、最新のニュースについて詳しく解説してくれます。
録音
【福島原発】5/11/水★被爆の恐さを知ってる者としては避難して欲しい
要約
・(農産物の話。神奈川県南足柄市の足柄茶の生葉から暫定基準値を超えるセシウムが検出されたが?)おこるべくして起こった。
・(福島原発から290キロメートルも離れているが?)なんてこともない。チェルノブイリの時は8000キロ以上離れている日本でも国中のお茶が汚染された。
・(290キロの距離は意味はない?)風が吹いてくればどこでも汚染される。
・(黄砂が飛んでくるんだから放射能が飛んでくるという言い方は正しいか?)もちろん正しい。
・(距離で考えないほうがいい?)私もチェルノブイリのときは8000キロ離れているから飛んでこないだろうと油断していた。が、すぐに飛んできて、また世界を一周して再度飛んできた。一度出たらどうにもならない。
・(葉物野菜で早く検出されていることに意味はあるか?)葉を広げていればそこに放射性物質が飛んでくるから汚れる。いずれは汚染されている土から他の野菜にも汚染が広がる。
・(文科省と米エネルギー省が調べた結果、セシウム137が福島原発の北西の方向の土壌で高い蓄積を示していることが分かった。1平方メートルあたり300万から1470万ベクレルというが?)とてつもない汚染だ。チェルノブイリのときは1平方メートルあたり55万ベクレル以上の地域は強制移住。
・(蓄積量がチェルノブイリの強制移住地域以上になっていても、現在避難対象地域になっていないところもある。どう考えるか?)私は避難について考えるとき、そのあまりの悲惨さに立ちすくんでしまう。被曝はもちろんさせたくないが、避難すると生活は崩壊してしまう。どうしたらいいのか分からない。が、避難させたいと思う。放射能の被曝を知っている人間としては避難してほしいと願う。
・(文科省は土壌の放射性物質がすぐ体内に入るわけでないと言うが?)なんとも言葉がない。外部からの被曝は避けられない。居住に不適当。法律に照らしても不適当。そういうことを言うなら、その文科省の人に住んでほしい。
・(測定場所によって濃度が異なるとも言っているが?)文科省自身が地図をかいて示している。言い訳にはならない。
・(細やかな地域設定で避難をしたほうがいい?)そうだが、大まかな意味でとてつもない汚染が生じている。いずれにしてもどのように立ち向かうか考えないといけない。
・(3号機の使用済み燃料プールの水の汚染の話。セシウムとヨウ素の量を比較すると、ヨウ素が多すぎるということだったが?)今朝新聞で数字を見た。若干ヨウ素131の量がセシウム137の量より多いように思われるが、運転履歴によっても変わってくる。現在の数値だけで核分裂反応が起こったと断定することは今の段階では控えたい。もっと詳しいデータがあれば答えられる。
・(こういうデータは詳しいものは先生には届かないのか?)届かない。新聞、ネットでの東電と保安院の発表数値しかない。もともと政府と無関係なので公開データしか入手できない。
・(福島で高濃度に汚染された土壌に関して、チェルノブイリの時の強制移住の対象のレベルに達している場所の面積が800平方キロ=琵琶湖の1.2倍の面積になっているというが、そんなに広い?)その程度で収まっているのを喜ばないといけない。チェルノブイリの場合は1万平方キロだった。
・(では楽観視してもよい?)でも、その800平方キロの地域に住んでいる人が今後どういう選択を迫られるのかを考えると、私は言葉を失う。
・(広い範囲に広がっていると思っておいたほうがいい?)他の地域の人は他人ごとと思っているかもしれないが、高濃度汚染地域に住んでいる人がこれからどう生きていくかを考えると、いまとてつもないことが起こっているのだと考えてほしい。
・(汚染水流出についてフェンスを立てて仕切りをしているが、すでに手遅れで、放射性物質はほぼ全部外洋に拡散した可能性が高いと保安院関係者は言っているが?)私が当初から言っていた通り。
全体書き起こし(転載)
5月11日MBSラジオ小出裕章氏「農産物の汚染、原発周辺土壌汚染蓄積量等について」
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メインキャスター(以下「MC」):水野晶子さん
コメンテーター:近藤勝重・毎日新聞専門編集委員
※完全な文字起こしではありません。
また、誤字脱字等、ご了承下さい。
( )は補足等。
MC:小出先生、こんばんは。
小出氏:こんばんは。
MC:よろしくお願いします。
小出氏:こちらこそ。
MC:東京には近藤さんです。
近藤氏:よろしくお願いします。
小出氏:こんばんは、よろしくお願いします。
MC:まず農産物の話から教えて頂こうと思います。
神奈川県に南足柄市という所がございまして、
南足柄市産のお茶「足柄茶」の生の葉っぱから
暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された、
という発表がありました。
これについてはどんな感想をお持ちでしょうか。
小出氏:ある得べくしてあったというか、起きたと思います。
MC:ただ、神奈川というのは、東京よりも西ですよね。
小出氏:そうですね。
MC:南足柄市の距離を計りました。
そうしましたら、第一原発から南足柄市まで290km程なのです。
300km近く離れた所で、こうしたお茶の葉っぱから出て来るというのは、
私などは、予想も出来ない事だと思うのですが。
いかかでしょう。
小出氏:何て事もありません。
チェルノブイリの時には日本は約8000km以上離れていましたけれども、
日本中のお茶が汚染されました。
MC:え、そうですか?
小出氏:はい。
それを一体どうすれば良いかという事を、当時悩みました。
MC:そうなのですか。
この290kmという南足柄市の原発からの距離というものは、
あまり意味がないと言いますか。
小出氏:そうなのです。
MC:やはり風向きなのですか。
小出氏:はい、風が吹いて来てしまえば、どこでも汚れてしまう訳ですし、
チェルノブイリの場合も初めはヨーロッパに向かって風が吹いていました。
で、しばらくして、東向きの風に乗って日本までにも飛んで来た訳ですが、
8000km離れた日本でもそれだけの汚染を受けている訳です。
290km位、何という事もありません。
近藤氏:あの先生ね、中国から黄砂が飛んで来るでしょう。
黄砂だって飛んで来るのだから、放射能だって飛んで来るという言い方を、
僕は聞いた事があるのだけど、それは正しいのですか。
小出氏:もちろん、正しいです。
近藤氏:要するに飛んで来る訳ですね。
小出氏:当然そうです。
近藤氏:距離で考えたら、それは大変な距離だなどと思わない方が良いですね。
小出氏:そうですね。
私は実はチェルノブイリの時は油断をしていまして、
8000kmも離れているからチェルノブイリの原子炉から出て来た物質、
放射性物質というのは物質、要するに物ですけれども、
それが飛んで来る事なんかないと、私は初め油断をしていたのですが、
ものともせずに飛んで来た訳ですし、それがまた太平洋を越え、
アメリカ大陸を横断し、大西洋を越え、ヨーロッパを越え、
もう一度日本まで戻って来た事が測定出来ました。
MC:地球を一周して、また来るのですか。
小出氏:そうです。
一度出してしまったらもうどうにもならないという物なのです。
MC:葉物野菜が比較的早くこうした測定で引っかかって来たような
気がするのですけれども、それは意味があるのですか。
小出氏:もちろんです。
要するに、空気の中に放射性物質が混じって飛んで来る訳で、
葉っぱを広げていれば、その葉っぱにベタベタとくっ付いて行ってしまいますので、
葉物の野菜から汚れます。
でも、いずれは土自身が汚れていますので、根菜類というのでしょうか、
根っこの野菜もいずれは汚れて来ます。
MC:その土の話で伺いますが、原発に近い場所の土壌の放射性物質の蓄積量を
文部科学省が調べました。
何故かしら、アメリカのエネルギー省と共同で航空機を使って調べたそうなのですが、
そうしますと、セシウム137の蓄積されて行っている量が
原発の北西の方向で高いのですね。
1㎡当たり300万から1470万Bqと、非常に幅のある数字なのですが、
この数字をお聞きになっていかがでしょう。
小出氏:とてつもない汚染です。
例えば、チェルノブイリの原子力発電所の事故の場合には、
1㎡当たり55万Bq以上の汚染を受けていた地域は、強制移住させられました。
MC:55万Bqで強制移住ですか。
小出氏:そうです。
MC:今私が申し上げた数字は、300万から1470万と申し上げました。
小出氏:もう、とてつもない汚染です。
MC:そうなのですか。
小出氏:はい。
MC:しかしながらですね、この蓄積量が、
チェルノブイリの強制移住の値よりも高い地域でも、
現在では避難対象になっていない地域もあるのですよ。
小出氏:そうです。
MC:これはどうお考えになります?
小出氏:私は何度もこのお電話で答えたと思うけれども、
避難という事を私は考えると、そのあまりの悲惨さに立ち竦んでしまうのです。
被曝はもちろんさせてはいけないのですけれども、
被曝をさせたくないからと言って避難をさせるという事になると、
その人達の生活が崩壊してしまうという事になりますので、
私は一体どうしたら良いのか解らなくなって、未だにその場で立ち竦むという、
そういう状態なのです。
でも避難させたいと思います。
MC:科学者としては避難をするべきであるというお考えですか。
小出氏:はい。
放射能の被曝というものの恐ろしさを知っている人間としては、
避難をして欲しいと願います。
MC:しかしながら、そうですね、同じ日本に住む人間としては、
また違う思いももちろんおありになる訳で、
ただ文部科学省はこういうふうにも言っているのです。
土壌の放射性物質がすぐ体内に入る訳ではない。
(小出氏、爆失笑)
これはどう受け取ったらいいのでしょうか。
小出氏:何とも言葉がありませんけれども、
体内に入らなくても、外部から被曝をする事自身は全く避けられませんので、
そういう場所は居住するのに不適当です。
それは、もう日本の法律に照らして不適当ですし、
もしそんな事を文部科学省の方が言うなら、
その方に是非そこで住んで欲しいと思います。
MC:そうですね。
測定場所によって濃度が異なるという事も、文部科学省は言っているのです。
小出氏:もちろんです。
ただそれは既に文部科学省自身が地図を描いて、
どの場所であればどれだけの被曝になるという事を示していますので、
言い訳になりません。
MC:という事は、もっと細やかな地域設定で少なくとも避難に向ける方が
良いのでしょうか。
小出氏:もちろん細やかな配慮は必要ですけれども。
もう大まかな意味で、先ほど水野さんがおっしゃったように、
とてつもない汚染が生じているのです。
その地域の中にも、もちろん細やかな差はありますけれども、
いずれにしても、そういう物凄い汚染にどうやって立ち向かうのか、
とういうふうに私達が判断すべきなのか、
という事を考えなければいけません。
MC:それから3号機について伺いたいのです。
昨日に続いてのお話なのですが、3号機の使用済み核燃料を
一時貯蔵するプールの水の分析の話が昨日・・・
小出氏:はい、失礼しました、昨日伺いました。
MC:私、本当に小出先生に最新の数字をぶつけるようにして申し上げました。
その場で、小出先生もいろいろ悩みながらお話下さったのですが、
その時は、セシウムの量とヨウ素の量を申し上げたら、
ヨウ素が以外に多いのではないか、というふうに注目なさいましたよね。
その後もし分析なさっていたら、何か解った事はおありでしょうか。
小出氏:今朝の新聞で私はその数字を見ました。
それで、確かに昨日電話でお答えしたように、
若干ヨウ素131の量が、セシウム137に比べて多いように今でも思いますけれども、
それは原子炉の運転履歴によってかなり幅のあるものですので、
現在の値だけで何か異常だ、特別新しく核分裂反応が起こった、
と断定する事は今は控えたいと思います。
もう少しデータの蓄積を待ってまたお答えさせて下さい。
MC:こうしたデータというのは、もっと詳しいものは
先生の所には届かないのですか。
小出氏:もちろん、全く届きません。
私は水野さんの教えてくれる数字であるとか、新聞の報道であるとか、
あるいはネット上で東京電力・保安院が発表する以外の数字は、
全く私の所には入りません。
MC:今もってそうなのですね。
小出氏:もともと私は政府とは全く無関係な人間ですし、
公開データ以外は私の所へは一切入らないという状況は、昔からです。
MC:それから、土の汚染の話にまた戻る格好になりますけれども、
この高濃度に汚染された土壌、
チェルノブイリのと時の強制移住の対象のレベルになっている所の面積が、
およそ800㎢だそうで、そんな事を言われてもどれだけ広さだろうと思ったら、
これが琵琶湖の1.2倍の面積だというのを聞いたのですが、
そんなに広いのですか。
小出氏:もちろんです。
も ちろんというか、その程度で収まっている事を
喜ばなければいけないと思います。
MC:もっと拡がる恐れがあるという事ですか。
小出氏:チェルノブイリの場合には、1万㎢に及びました。
MC:という事は、まだチェルノブイリの1割程度。
まだという言い方はおかしいかもしれませんけど、1割程度である。
小出氏:そうです。
MC:チェルノブイリの10分の1ではないかと楽観するというふうに、
私の気持ちは動いたのですが、いかがですか。
小出氏:そういうふうに水野さんが思われるのなら、
それでも構いませんけど、
でも800㎢という所に一体何万人の方、何十万人の方が、
今までお住まいだったのだろうなと思うと、
その方々がこれから一体どういう選択を迫られるのかと、
その重さを考えると私は何とも言葉を失います。
MC:近藤さん、この面積は東京都にすると、東京都の面積の4割だそうです。
近藤氏:そういう事のようですが。
だから、何と言うのだろうな、やはり僕らが思っているという事自体、
そんなに材料がある訳ではないのですけれども、
本当に何か広い範囲で恐ろしい程拡がっていると思っておいた方が
良いみたいな感じですね。
小出氏:はい、その地域に住んでいない方々は、
何か人事のように思われているかもしれませんけれども、
本当はそういう所で住んでいる方々の重さというか、
これからどうやって生きて行くかという事まで考えてると、
とてつもない事が起きて、今現在進行しているというふうに思って頂きたい、
と私は思っています。
MC:汚染水が海へ流出している問題も、
フェンスを立ててと言いますか、カーテン状のものをして仕切りをするのだ、
という事がありまして、実際それをしたのですが、
もう既に手遅れで、汚染水に含まれている放射性物質が
もうほぼ全てが外洋に拡散してしまった可能性が高いと
見ているのですね。
小出氏:私は、当初から申し上げて来た通りです。
MC:これは、経済産業省の原子力安全保安院の関係者が明らかにした、
という情報なのですが、
それは小出先生が当初から、そんな魔法のカーテンがあったらいいのだけれども、
とおっしゃっておりました。
そんな魔法のカーテンがある訳ではなかったのですね。
小出氏:はい。
MC:もう本当にこれ以上の事が拡がらないようにと、
今願うばかりなのですが、
またいろいろな情報について分析を続けて頂こうと思います。
今日はどうもありがとうございました。
近藤氏:ありがとうございました。
小出氏:はい、ありがとうございました。
MC:京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました。
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