2011年5月12日(木)、MBSラジオの番組「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。
番組案内
2011年5月12日【木】
千葉アナの被災地報告~キャスターはクリスタル
今夜も千葉猛アナが宮城県からリポート。仙台市内のハローワークを取材しています。ということでキャスターは水野クリスタルアナが代打で。京大・小出先生の原発事故解説も。
録音 (公開ありがとうございます)
【福島原発】5/12/木★メルトダウン(meltdown) しています・1号機 1/2
【福島原発】5/12/木★メルトダウン(meltdown) しています・1号機 2/2
要約
・(東電は1号機で水棺で冷却を目指してきたが、小出先生は当初から否定的だった。その水棺が難しくなっていることを東電が認める事態になった。燃料を完全に冠水するだけの水を入れていたはずが、水がほとんどないことが判明した。どうか?)圧力容器は壊れていて、水がたまらないのは当たり前。長さ4メートルの燃料棒の上から1.7メートルは水から出ているというのが従来の東電の話だった。私はそうであれば圧力容器に穴があいているとしても、底ではなく胴体から水が抜けているのだろうと推定していた。それが今日の東電の発表で覆された。
・(燃料は完全に干上がっている?)そう。東電は今日そう言った。
・(燃料棒の下部2メートルは水がつかっているのと、完全に干上がっているのとでは意味が違う?)まったく違う。完全に干上がっているのであれば、炉心は完全に溶けて下に落ちている。水がたまらないということは、底に穴が空いているということ。そうなると燃料も穴から溶け出している。格納容器の底に流れ落ちているのだと思う。
・(圧力容器の底から溶け出た燃料が格納容器の底にたまっているとして、そこで止まっていれば大丈夫なのでは?)格納容器はとても薄く、構造的に弱い。圧力容器は厚さ16センチだが、格納容器は3センチ。底が溶ける可能性がある。
・(格納容器は最後の砦だが、それが溶けることはありえる?)もちろん。鋼鉄は1400度くらいで溶ける。燃料は2800度になる。
・(東電は圧力容器の底に高さ1割程度の水があり、それが燃料を冷やしているとしているが?)私は科学に携わっている。そういう人間にとって必要なのは正確なデータ。温度、圧力、水の量などのデータが大切。それが誤っていれば推測に意味はない。これまで東電のデータに基づいて自分の推測を伝えてきた。ある時は塩素38を検出したと言うので再臨界の可能性を言ったが、後に取り消された。元のデータが正しくなければどんな推定も意味はない。今回のこともそうだ。
・(今回水位が分かったのは建屋の中に作業員が入ったことで水位が測れるようになったからだが、その測定装置が壊れているかも?)それはありえる。何を信頼したらいいか分からなくなった。
・(本件の新聞報道で、毎日と産経は「燃料が大半溶融」としているが、日経と読売は「崩落」、朝日は「形とどめず」としている。どうか?)燃料棒が完全に露出しているのであれば、溶けたと思う。溶けて流れ落ちた。
・(となると、メルトダウンか?)メルトダウンしている。それは確実。ただし、東電の今日の水位に関する発表が正しければという条件付きで。
・(メルトダウンになるとどうなる?)私の最悪シナリオは、燃料が一気に落ちて下の水と反応して爆発すること。ところが、今回は既に全部落ちているが下に水がなく、爆発は避けられている。
・(格納容器から落ちないように防がないといけない?)そう。格納容器にも損傷があるが、その底には水があると思う。落ちた燃料はそこで冷やされている状態だと思う。格納容器の底が抜けない限りは爆発はないだろう。
・(底が抜ける可能性は?)ある。発熱と除熱のバランスで決まる。水を入れ続けていれば大丈夫。水が滞って燃料が露出すれば危ない。
・(もっと水をいれることには賛成?)既に水は漏れている。格納容器から水はあちこちから漏れている状態。水量を多くしても貯まらないかもしれない。そうなると増量しても意味はない。
全体文字おこし(転載)
5月12日MBSラジオ小出裕章氏「1号機原子炉圧力容器水位ゼロ、メルトダウンについて」
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メインキャスター(以下「MC」):水野晶子さん
コメンテーター:落合博 毎日新聞論説委員
※完全な文字起こしではありません。
また、誤字脱字等、ご了承下さい。
( )は補足。
MC:小出さん、こんばんは。
小出氏:こんばんは。
MC:よろしくお願いします。
小出氏:お願いします。
MC:そして、今日から番組に参加して頂きます毎日新聞の落合博さんも
ご一緒です。
落合氏:落合です。
よろしくお願いします。
小出氏:こちらこそ、こんばんは。
落合氏:こんばんは。
MC:まず今日は福島第一原発の1号機からお話を聞かせて頂こうと思います。
1号機というのは、意図的に水をどんどん入れて、
水棺という方法で冷却して行こうというのを目指しているのですよね、東電は。
この案に、小出先生は当初から否定的でいらっしゃっいました。
これはリスナーの方もずっと皆さん聞いて下さっていたと思いのですが、
この案がどうやら非常に難しくなって来ているのではないかという話が、
東電が認める方向で出て参りました。
この1号機にどんどん水を入れていましたよね。
6トンから8トンにという事で増やしていたのです。
もう既に完全に浸かっているはずの水の量を入れているにも関わらず、
今度水位が、たぶんこれ位ではないかという事を計る事が出来るようになりまして、
そうしますと、実際に殆ど圧力容器の中に水が溜まっていないようだ、
という事が解って来ました。
小出先生、どんなご感想でしょう。
小出氏:圧力容器が壊れているというのは、
ずっと前から東京電力も言っていましたので、
水が溜まらないというのは当たり前なのですね。
でもこれまでは、燃料棒の頭からマイナス1700mmとずっと東京電力が
言って来たのです。
MC:1700mmというとmにしたら・・・
小出氏:1.7mですね。
MC:燃料棒というのは、前教えて頂きました物干し竿のような格好をしたものが、
もう一杯集まっているのですよね。
小出氏:そうですね。
MC:それが縦に入っているのですか。
小出氏:そうです。
直径1cm長さ4mという細長い物干し竿ですけれども、
それが縦にずっと林のように並んでいるのですね。
それが上の方から1m70cm分は水が無いと言っていたのが、
これまでの東京電力の言い分でした。
でも、下の方2m分位はまだ水があるというのが、東京電力だったのですね。
私は、その東京電力のデータというのを信用して、
それならば、圧力容器に確かに穴は開いているけれども、
原子炉の底ではない、と。
底で水が抜けているのではなくて、胴体部分で穴が開いている、
つまり再循環系の配管が破れているというのが、私の推定だった。
MC:つまり、燃料棒が入っている容器で、一番内側のものが圧力容器であって、
この圧力容器の底にもし穴が開いていたらどんどん水が漏れて行くけれども、
入れ物も横の方ですね、高さのある所が痛んでいるのであれば、
ある程度の所までは水が入って行く、そういう事を想定出来ていた訳ですね。
小出氏:これまでの東京電力のデータを信用しながら、
私はそういう推定をしていたのですね。
所が今日の東京電力の発表は、もうそんなんじゃない、と。
原子炉圧力容器の中には何の水も無いと、そういう発表になってしまった。
MC:今日の発表では、燃料棒の頭から5m以上低い所にしか水が無い、
と言っていますね。
としますと、この燃料棒の長さが先ほど4mとおっしゃいました?
小出氏:1号炉は3m70cmかもしれませんが、まあ4m程度です。
MC:という事は、完全に干上がっている訳ですか、燃料棒は。
小出氏:と、東京電力が、今日言った訳ですね。
MC:これは小出さん、今まで下の部分2m程は水に浸かっているだろう、
と言っていた東京電力が、いや、完全に干上がっているだろう、
というふうに変えた訳ですけれども、見方を。
意味合いは全然違うのですか。
小出氏:全く違います。
MC:どういうふうに違うのでしょう。
小出氏:完全に干上がってしまっていると言うのであれば、
炉心を冷やす事が出来ませんので、もう炉心は完全に崩壊して溶けて、
圧力容器の底に落ちていると思います。
圧力容器の中に水が全く溜まらないという事は、
要するに底に穴が開いているという事です。
底に穴が開いているなら、溶けた燃料はもちろんその穴から溶けだしてしまいます。
MC:水だけではなく、燃料も穴から溶けだしてしまうであろう。
小出氏:そうです。
その燃料は、格納容器の底に流れ落ちてしまっているのだと、私は思います。
MC:つまり、圧力容器と格納容器がどっちがどっちかという事を
私も良く解らなくなるのですが、魔法瓶で言いますと、
一番内側の容器が、銀色の所が圧力容器みたいなものですよね。
小出氏:(少し間が開き)そうですね。
MC:違いました?
その外側の私達が外から手で掴むような、あれを格納容器と思ったら、
良いですか?
内と外の関係で言いますと。
小出氏:はい。
MC:そうしますと、内側の圧力容器の底から溶け出た燃料が、
もう外側の格納容器の中に出てしまっている。
小出氏:そうだと思います。
MC:出てしまっても格納容器があるから、大丈夫ではないのですか。
小出氏:格納容器というのは、放射能を閉じ込める最後の防壁な訳ですけれども、
圧力容器に比べれば、遥かに薄くて構造的には弱いものです。
MC:圧力容器に比べたら、薄くて弱いのですか。
小出氏:圧力容器というのは、厚さが16cmもある鋼鉄の鍋ですけれども、
格納容器というのは、精々厚さが3cm位しかありません。
MC:3cmしかないのですか!
小出氏:はい。
ですから、そこに溶けた燃料が落下してしまえば、
その格納容器の鋼鉄製の板も溶けてしまう可能性が強い訳です。
MC:先ほど格納容器は、放射性物質を守る最後の砦とおっしゃいましたね。
小出氏:そうです。
MC:それが厚さ3cmであって、これがもし溶けたら・・・
溶けるなんて事があり得るのですか。
小出氏:もちろんあります。
ウランの燃料ペレットというのは、約2800℃にならないと溶けませんので、
そういう温度の物質が流れ落ちて来る訳ですね。
鋼鉄というのは、精々1400℃、1500℃で溶けてしまいますので、
やす事が出来なければ、穴が開いてしまいます。
MC:今東電の発表では、内側にあります圧力容器の中に、
容器の1割程度以下だけれども水がちょっとは溜まっていて、
その水で何とか圧力容器の底に溶け落ちた燃料を
冷やしているのではないか、という発表だと思うのです。
小出氏:私は科学というものに携わっているのですね。
そういう人間にとって何が一番大切かと言うと、正確なデータなのです。
原子炉の中にどれだけの水がある、あるいは圧力がどれだけになっている、
あるいは温度がどれだけになっている、という事が一番大切だし、
それが間違えているという事であれば、
どんな推測をしても意味がないのです。
私はこれまでも東京電力が公表するデータに基づいて、
様々な推測を皆さんにお伝えして来ました。
ある時には、東京電力が塩素38というのを見つけたという発表をしましたので、
それなら再臨界という現象を疑う以外にはない、と私は言ったのですが、
しばらくしたら、東京電力が塩素38を検出したのは間違いだと言い出す訳ですね。
もともとのデータが間違えているなら、どんな推測も意味がない訳で、
今回の事もそうです。
MC:つまり1号機の圧力容器の水位が何mあるのかと、
この数字が違っていたら、全く違う事を意味すると。
小出氏:そうです。
だから、どんな推測をしてももう意味がない、と私は思ってしまいます。
MC:今回水位がこういうふうにして解って来たのは、
建屋の中に作業員の方がやっと入れるようになって、
どうやら水位を計る計測器を調節して、
その事でやっと水位が解って来たようなのですね。
という事は、この水位を計る機械が壊れているというような事だって
あり得るのですかね。
小出氏:あり得ますね。
ですから、今言われているものだって、
本当に信頼出来るデータなのかどうかという事が、
私にはもう解らなくなりました。
MC:落合さんは今日初めて小出先生にこういうふうにお話なさるのですけれども、
お聞きになりたい部分はいかかですか。
落合氏:今日新聞の夕刊で各紙とも今回の1号機に関しては
記事にしているのですけれども、
ちょっと気になるのは、各紙ともちょっと見出しというか、言葉が違っているのですね。
毎日と産経は「溶融」、溶け出すという所を見出しに使っているのですが。
MC:「燃料が大半溶融」
落合氏:それに対して、読売と日経は「崩落」、
崩れ落ちるという言葉を使っています。
朝日は「形とどめず」という言葉を使っていまして、
これは今のお話を聞く限り、溶け出してという表現がよろしいのでしょうか。
小出氏:東京電力が言ったように、所謂炉心ですね、
燃料棒がある所が完全に露出しているのであれば、溶けたと思います。
MC:溶けて落ちた・・・
小出氏:溶けて圧力容器の底に落ちたのですね。
MC:これは、「溶ける」がメルトで「落ちる」がダウンなら、
メルトダウンですか。
小出氏:そうです。
落合氏:メルトダウンしている、と。
小出氏:しています。
それはもう確実だと私は思います。
ですからそれは、東京電力が今日言った炉心の中に全く水位が無いという事が
本当であれば、メルトダウンしていると思います。
MC:メルトダウンというのは、何を引き起こすのですか。
小出氏:私は、メルトダウンをした時に、
圧力容器の底にもし水が残っている状態であれば水蒸気爆発をすると思っていまして、
それが私の最悪シナリオだったのです。
でももう既に、今日の東京電力のデータが正しいとすれば、
炉心はメルトダウンをしている訳ですし、
水蒸気爆発は実は起きていない訳ですから、
良かったと思います。
落合氏:というのは、水が全く無い状態で、
今度は格納容器の方に落ちて行く。
小出氏:要するに、圧力容器の中に全く水が無いという事は、
圧力容器の底に穴が開いていると考える以外にないですね。
底に穴が開いていると言うならば、炉心から溶け落ちた燃料は、
その穴を通してまた落ちる、というのが必然だと私は思います。
MC:では、今度は外側の格納容器で何とか防がなければいけないのですね。
小出氏:そうです。
格納容器は、東京電力の方策によれば、水棺をしようとしたのですね。
全部上まで水を入れようとした訳ですけれども、
私はそれは出来ないと言って来たのです。
格納容器に損傷があるので、水を溜めたくても溜まらない、
と私は言って来たのですが、どうもそれも本当らしいのですね。
格納容器の中にも水は溜まっていない、という事なのですが、
ただ格納容器の底の方の部分は、たぶんまだ水は溜まっているいるのだ、
と私は思います。
つまり、圧力容器から溶け落ちて来たウランの燃料は、
格納容器の中でまだ水によって冷やされているという状態だと思います。
MC:これを続けていれば、ずーっと水で冷やし続ければ、
爆発は起こらないのですか。
小出氏:格納容器の底が抜けない限りは、大丈夫だろうと思います。
落合氏:抜ける可能性というのはあるのでしょうか。
小出氏:溶ける可能性はあります。
溶けるというのは、温度で決まる訳ですけれども、
温度というのは、発熱と除熱のバランスで決まります。
ですから、水をキチッと入れていられる限りは大丈夫だろう、
と私は思いますけれども、何か水を入れるのが上手く行かなくなったりして、
格納容器内の水が少なくなる、そして溶けた燃料が露出するという事になれば、
格納容器も穴が開くと思います。
MC:東電は、毎時8トン程入れている注水の量を増加させる検討を始めた、
という情報です。
もっと水を入れようと。
これは賛成なさいますか。
小出氏:水を入れた所で結局漏れてしまっている訳ですね、格納容器から。
格納容器の中には、もう確か1万数千トンの水を入れたはずですが、
格納容器全体は確か4000トンか6000トン位、
精々それ位の水しか入らないはずなのですが、
既に溢れてしまっている訳ですね。
もう既にあちこちから漏れてしまっている状態だと思いますので、
水量を多くした所で、もう溜まらないという状態なのかもしれません。
ただ、それならあまり水量を多くする事に意味はないと思います。
MC:ならば、他の方法を、となるのでしょうが、
またこの辺りは伺えたらと思います。
今日もどうもありがとうございました。
落合氏:ありがとうございました。
小出氏:いいえ、ありがとうございました。
MC:京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました。
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