7月20日 最大の犯罪者、東電と国が事故を小さく見せようとしている 小出裕章(MBS)

2011年7月20日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年7月20日【水】
隠された「内部被曝」の真実
 今夜は原爆認定集団訴訟で「内部被曝」の危険性を訴えてきた琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんと電話をつなぎ、あまり知られていない内部被曝の真実について迫ります。
 矢ケ崎さんは、広島と長崎の原爆投下による内部被曝に被害を調べ上げ、戦後、国策や科学の名のもとに隠されてきたその悲惨な実態を訴え続けてきました。そして、そのことは、今回の福島の事故にも当てはまる可能性があると警告します。今夜は内部被曝で今後、福島周辺でどんなことが起こるのか、詳しく伺います。
 京大の原子炉実験所の小出先生のコーナーもあります。

録画

20110720 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容、書き起こし

(水野:小出さんこんばんわ。)

小出:こんばんわ。

(水野:よろしくお願いします)

小出:こちらこそ。

(水野:そして東京には近藤さんです)
(近藤:こんばんわーよろしくー。どうもー)

小出:はい、よろしくお願いします。

(水野:よろしくお願いします。まずは福島第一原発の収束に向けての作業の工程表が改定されたというところから伺いたいと思います。えー、これ現状はですねステップ1で目指していたのが安定的に冷却をするということでしたよね。)

小出:はい。

(水野:これができたという話のようでございます。そこでリスナーのかたから質問がまいりました。ラジオネーム、変な国だよ日本さんというかたからなんですけれども)

小出:(笑)

(水野:こんなふうにおっしゃっております。政府は原子炉の安定的な冷却を達成したと言ってますけれども、メルトスルーしてしまった核燃料をどうやって安定的に冷却しているのでしょうか。教えてください。小出先生いかがでしょうか)

小出:私もわかりません。

(水野:小出先生もわからない! これあのメルトスルーしてしまった核燃料というのは格納容器の中にもう核燃料はメルトして、スルー、つまり穴から下に落ちてしまったっていう意味ですよね)

小出:そうです。

(水野:つまりもう格納容器の中にないっていう意味ですよね)

小出:はい。ええっと。ない可能性が高いと私は思います。

(水野:と思われるその核燃料を安定的に冷却したことに、達成したということはどういう事でしょうか、教えてください)

小出:はい。ありえないですね。

(水野:そ、そうですよね)
(近藤:先生、安定的っていうのはどういう意味で使っているんですかねえ)

小出:ええっと。もともと工程表が出たときには冷温停止をさせると言ったんですね。で、原子炉圧力容器が健全でその中に炉心という部分が残っていて、そこに水を入れながら100度以下にすると、いうのが冷温停止という概念で、循環式の冷却回路を作ってなんとかそれを達成するというのがロードマップができた時の考え方でした。もちろんそれを私もして欲しいと思いましたけれども、なかなか難しいだろうと思っておりましたが。ええ、5月になって東京電力はもう炉心は全部溶けてしまっていると。圧力容器も穴があいてしまっているというふうに認めたわけですから、もともと冷温停止などということは、もう全くできなくなっている、のです。つまりもうロードマップ自身が始めから意味をなさないという状態になっているわけで、そのことをまず、政府、東京電力が認めて全面的なやり方の変更ということを言わなければいけなかったと思います。

(近藤:このー、今、先生。時々廃炉って今度は聞きますよね。この廃炉になれば、その、収束っちゅうことは言えるわけですか)

小出:えー廃炉というのは、核燃料を原子炉の中から取り出して初めて廃炉というのは出来るというのがこれまでの概念だったのですけれども。もう原子炉の中に炉心がないわけですし。どうすれば溶け落ちてしまった核燃料を取り出せるか、ということすらが全くわかりません。

(近藤:これは先生らの技術的な知識を持っても答えは出せないわけですね)

小出:はい。あのー……、1979年にスリーマイル島というところで炉心が溶けたという事故があったのですが。その時は圧力容器そのものは壊れなかったのです。幸いにして。ですから原子炉の上の方から圧力容器の蓋を開けてみれば、溶けてはいたけれども、炉心はそこにあったのです。

(水野:はい)

小出:ですから、取り出すこともできたんですけれども)

(近藤:1基だけやったんですかね)

小出:1基だけです。

(近藤:ですよね)

小出:でももうすでに、今回の場合は溶けてた炉心が圧力容器から下に落ちてしまってるわけですから、もうそれを見ることも出来ないし取り出すこともできません。

(近藤:溶けるってのは先生、どんな状況になってるんですか。そのち、なんかバターみたいに濡れた状態になってるんですか)

小出:えー……、もともとウランというものは瀬戸物の形で焼き固めてあります。近藤さんちょっと想像してみていただけますか。

(近藤:うん)

小出:自分の家のお茶碗でもお皿でもいいです。瀬戸物がどろどろに溶けるという状態ですね。

(近藤;ああ、そういう感じか……。)

小出:はい。要するに溶岩のようにですね。

(近藤:なるほどああいう感じですね)

小出:はい。高温になって光を発しながら溶け落ちていくというそういう状態です。

(水野:すいません。それだったらですね。いうたらその、炉の下のところを掘ってですよ。で、溶けてるものをスコップで掘り起こすような感じで、出して、で、ま土なども、セメントなども一緒くたにしてプールに入れたらどうですか?)

小出:ええ……。炉の下を掘るということ自身がものすごい危険だろうと思います。ですからむしろ私がもし、えー……、炉心が地面の中にめり込んでいるんだとすれば、そのめり込んでいる場所で封印するのが一番いいと私は思います。

(水野:めり込んでいる場所に、もう動かさずそのものをセメントなどで封印するということですか?)

小出:はい。そうです。あのチェルノブイリの原子力発電所を封印した時もそうですけれども。溶けた炉心はチェルノブイリの場合も地下に流れ落ちていました。そこを含めて全部を石棺という形で封じ込めるということをやりました。

(近藤:それ40年経って、そのコンクリートもぼろもぼろなんでしょ)

小出:はい。25年経ってボロボロです。

(近藤:ああ、ああ、25年か。)

小出:今またその、作った石棺を、またもうひとつのもっと大きな石管で覆って、放射能が出ないようにしようという工事が始まっています。

(近藤:そうすると今の日本の状態っていうのは世界的に考えても、我々人類初のケースですよね)

小出:そうです。まさに初めて直面している大変な、まあ大惨事です。

(近藤:それをね、ステップ1だの2だの、軽々しく言うなっちゅう気がするんですけれども)

小出:はい。近藤さんのおっしゃるとおりです。私もそう思います。

(水野:でもですね。私なんかはステップ1の目的が達成できたと言われますとね、細かいところがわからないので達成できたという文字だけが文字だけが自分の心に残るんですね。そういうかたは多いのではないかと思うんですよ。)

小出;そうですね。

(水野:達成という文字に、ものすごくこだわっているのではないだろうかと)

小出;はい。

(水野:そこへ安定なんちゅう言葉がつくと、ほんとうに皆、故郷に帰って来れるんだという印象すらありますよね)

小出:そうですよね。でもみなさんもちゃんと考えていただきたいと思うけれども、東京電力と今の日本の政府というのは、今回の事故を起こした最大の責任者だし、最大の犯罪者なんですね。その2人がなんとか事故を小さく見せたいとして、今安定化であるとかロードマップを達成したとか言ってるわけですけれども。私から見ればちゃんちゃらおかしいし、そんなものを信用してはいけないと思います。

(近藤:先生、さはさりとて、見通しなんですがね。どうなんでしょう。その石棺にしろなんにしろ、廃炉ということの実現性っちゅうのはもう日本では無理ですか?)

小出:ええと。できる、できるというかやらなければいけないわけですし、それを米国に頼んだりフランスに頼んだりしたとしてもやるべき事は同じですので。大した力にならないと私は思います。

(水野:この、誰がじゃあその策を考えていくのかっていうことについていいますと、原子炉の解体は原子力委員会のもとで、専門家が具体的な方法を検討すると、いうんですけれども。原子力委員会というのはあの斑目さんの……まだお辞めにならない、あの原子力委員会のもとで、すすめるということに対して、小出先生……)

小出:今のままの原子力村の体制は全く駄目ですから、抜本的に改革しなければいけないと思います。

(水野:まず原子力村を解体することが必要なんですね。)

小出:はい。そうです。

(近藤:先生、その体制とかその村とかっていうレベルじゃなしに技術として不可能じゃないんですか)

小出:はい。要するに人類初まって以来のことに直面しているわけで、本当にどういうやり方がいいのかよくわからないのですね。もちろん米国とかフランスとかイギリスとかロシアでもいいですけども、そういうところの専門家の知識を借りるということも大切なことだと思います。ただ、どこの国もやったことがないことですので、これだという決定的な方策というのは多分出ないと思います。一つ一つやらなければいけないし。今やるべきことは例えば決まっているのですね。

(水野:はい)

小出:めり込んでいる炉心を地下水と接触することを絶たないといけないわけですから。ええ……、私が前から聞いていただいているように地下にバリアーを張る、地下ダムという言葉を使われるかたもいますけど、それをやらなければいけないし。で一方で環境の汚染を防ぐために溜まっている汚染水をなんとか漏れないところに移さなければいけないという、そういうとにかくあの緊急にやらなければいけないことを一つ一つ積み上げていくという、その先にしか多分方策はみえてこないと思います。

(水野:今おっしゃいました、地下ダムというその地下水に触れないように汚染水を遮断する壁を作るという話はですね、もうすぐにやる話しなのかと私思ってたんです。小出先生が前からおっしゃってましたよね)

小出:はい。

(水野:ところがこれどうやら工程表の中ではステップ3でやるらしいですね)

小出:そうですね。

(水野:今から検討に着手するんですね)

小出:そうですね

(水野:考えるってことですよね)

小出:そうです。あまりにも遅すぎます。

(近藤:その間、地下に汚染水が流れてるんでしょ)

小出:そうです。

(近藤;そのことをなんにも言わんですね)

小出:そうです。

(近藤:ううーん…‥それはやっぱり言わないわなあ……。)

小出:でも私この番組でもタンカーという案を、本当に初期の頃に出したんですけれども。ええ、それもなんか検討しているという話は何度か聞かさせていただいたけれども。結局それすら動かないのですね。さっきのラジオネームのかた、日本の国が何とかという)

(水野:変な国だよ日本さん)

小出:本当に変な国だと私は思います。

(近藤:そうすると今のステップ1が……終わるっていうことは総理大臣も言ってますけどね)

小出:はい。

(近藤:それは要するに窒素を入れていった、あるいは大気中に放射性物質が出にくくなってる、っていうようなことで言ってるわけですか)

小出:のようですね。あんまり本質的じゃないことだけをなんか手柄話のように取り上げて言ってるように私には聞こえます。

(近藤:……なるほど……(小声))
(水野:まずは冷やしても冷やしてもそこに冷やす対象の核燃料がそこにないかもしれないという、ここの大前提を認めないと工程表全部を変えるということにはならないでしょうね)

小出:そうだと思います。

(水野:はい、ありがとうございました。京都大学原子炉実験所小出裕章先生にうかがいました)

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管理人より
タイトルにつけ方が難しかったのですが、先日の「吉田照美 ソコダイジナトコ」でも小出氏と上杉隆氏が言及していた、国と東電が事故を小さく見せようとしていることついて、今回のタイトルとさせていただきました。

また番組内で、原子力委員会が廃炉をすることについて言及しましたが、内容に誤りがありました。原子力委員会の委員長は近藤駿介氏です。ちなみに斑目氏は原子力安全委員会の委員長です。

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