7月21日 海に流れでたトリチウムは雨になって戻ってくる 小出裕章(MBS)

2011年7月21日(木)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組内容

2011年7月21日【木】
「原発事故が故郷を奪った!」~音楽家ナターシャ・グジーさん
今日のゲスト、ナターシャ・グジーさん(31)は6歳の時にチェルノブイリ原発から3・5キロの自宅で被曝し、厳しい避難生活を余儀なくされました。ウクライナの民族楽器バンドゥーラ奏者として活躍、チェルノブイリ子ども基金の招きで来日したことなどから、この10年間は日本を中心に演奏活動を行っています。今月には福島県など東日本大震災の被災地でもチャリティーコンサートを開く予定です。「ウクライナの歌姫」ともいわれるナターシャさんに「原発事故で奪われた故郷への思い」「悲劇の経験者として福島原発事故被災者に何を伝えたいのか」、お話を聴きます。スタジオでの生演奏もあります。京大・小出先生の原発事故解説コーナーはリスナーからの質問に小出先生が答えます。

録画

20110721 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

千葉「では小出さん、今日もよろしくお願い致します」

小出「はい、こちらこそ、お願いします」

(千葉「今日は毎日新聞論説委員の近藤伸二さんと一緒にお伺いしてまいります」)
(近藤「小出先生、よろしくお願い致します」)

小出「こちらこそよろしくお願い致します。」

(千葉「えー、さて今日もですね、スタジオにリスナーのかたからの質問が沢山来ておりますので、それを順番にお聞きしていきたいと思っています。まず1番たくさん来ている質問なんですけれども。これですね、大阪市のラジオネーム、ばいあすさん、という方からなんですけれども。半減期が8日のヨウ素131などは、とっくに不検出になっているはずなんですが、東京都下水道局が発表している下水の脱水汚泥中の放射性物質はセシウムだけではなく、いまだにヨウ素131が検出されています。最新の検査では息子夫妻が住んでいます府中市、足立区などはヨウ素131の検出量が増加しています。これはいったいなぜなのでしょうか。教えてください。という質問です」)

小出「えー。問題はヨウ素だけの濃度を見るのではなくてセシウムとの比を見たほうがいいと思います。」

(千葉「セシウムとの比……」)

小出「比です。」

(千葉「比べてみるということですね」)

小出「そうです。もともとのは事故が起きた当初は、ヨウ素はセシウムの10倍くらいありました。それで今、そうですね…130日くらい経っているでしょうか。そうすると半減期の10倍から15倍くらい経っていると思いますが。そうすると1000分の1にはもちろんなってるし、3万分の1位にはなってると思います。ヨウ素がですね。ですからもともと10倍、セシウムの10倍あったわけですが、それが3万分の1になったとすると、セシウムの3000分の1くらいのヨウ素が存在していることは、もちろんありうるのです。」

(千葉「はーはーはー。半減に半減を繰り返して」)

小出:そうです。なくなっているわけではないので。それで下水の汚泥にはものすごい濃度の放射性物質、ヨウ素もそうです、セシウムも含まれてきますので。ヨウ素ががまだ残っていたとしてもそれは不思議ではありません。だからセシウムとの比をとって考えてみたほうがいいと思います。

(千葉「必ずしも、今こうやってヨウ素が検出されてるからっていって、継続してたくさんのヨウ素が原発事故を受けて放出されているわけではないわけですね」)

小出:あのー、だと思います。データを私、今聞かせていただいたデータを見ていませんので正確にお答えできませんけれども。ヨウ素だけを見ているのでは駄目だと思います。

(千葉「はいわかりました。それからあ、次の質問になりますけど、これはイタリアのミラノにお住まいの方からいただいております。ラジオネーム、うりっせさん、というかたからです。)

小出「はい」

(千葉「今月中旬から肉牛の汚染が話題になっていますが、肉牛が汚染されていれば乳牛も汚染されていると考えるのが普通だと思います。そして牛が汚染されているなら、豚や鶏だって汚染された、えー、餌を与えられている可能性も否定できませんから、是非小出先生の意見も聞きたいと思っております。よろしくお願いします、という質問なんですが……」)

小出「もちろんですね。豚も汚れてると思いますし鶏も汚れてると思います。」

(千葉「まあ……それがどれくらいのレベルに達してるか……」)

小出「そうですね。それは測定してみないとわかりませんし、まあ、牛、今問題になっている牛はいわゆるその、稲藁(わら)を食べていたと言うのですね。豚とか鶏にどういう食べ物を与えてるのか私は正確には知りませんが。要するにその、事故の当時、屋外にあったものであれば、食べさせてるものがですね、同じ現象が必ず起きると思います。

(千葉「ああー、やはり同じように放射性物質を含んだようになっているということですよね」)

小出「そうです」

(近藤「先生、あの肉牛の対策なんですけれども、やはりこの全頭検査というのが必要なんでしょうか。あるいは、するとすればかなり手間がかかる作業なんでしょうか」)

小出「あの、結構手間がかかる作業です。ただし、肉牛って何百頭とか、せいぜい1000頭の単位で済むんじゃないんでしょうか。」

(近藤「そうですね。何百頭単位だったともうんですけども」)

小出「そうですね。そうであれば、あの、できると思いますのでやった方がいいと私は思います。」

(千葉「……わかりました。次はですね、えー、千葉県にお住まいのラジオネーム、やんやんやんさまというかたからですが。いよいよ夏となりました。海の水温もどんどん上がり、入道雲の発生から雨という夏の自然サイクルが始まります。福島から海へ投棄された汚染水に含まれている放射性物質が雨となって再び陸に戻ってくる可能性というのはあるんでしょうか、という質問なんですが」)

小出「もちろん、原理的に言えばありますね」

(千葉「うーん……」)

小出「ですから海へ流れていってるわけで。海から蒸発したものがまた陸に雨となって降ったりするわけで。例えばその流されている放射能の中には、トリチウムという名前の放射能もあります。それは、いわゆる水素なんです。放射能をもった水素なんですが。それも海へ流れ出てるはずで。環境に出ると水の形になります。H2Oという形ですね。そういう形になりますので、海水が蒸発して雲になればそれがまた雨になって落ちてくるという事ですので、もちろん循環して陸にもまた戻って来ます」

(千葉「ふーーん。あのまあ、どこかだけに固まってというわけではないと思うんですけれども。」)

小出「はい」

(千葉「広く薄くという形で、雨という形で陸に戻ってくるということですね」)

小出「そうですね。いろいろな形で一度福島からでたものは、汚染は低きに広げながら、ぐるぐるぐるぐるまわるということになり、なると思います。」

(千葉「放射性物質は基本的にはなくならないものですね」)

小出「ええ、ええ、そうですね。半減期でなくなってはくれますけれども。自然にも、放射能を放射能でなくする力はありませんので、結局どこかにあり続けるということになってしまいます」

(千葉「形を変えてつねにどこかにあると言うことですね。はい、わかりました。続いてこちらの質問です。こちらはラジオネーム、みずちのむえんさん(※上手く聞き取れず)という方からですね。人工放射線核種と天然放射線核種の違いということで、ある方の話を聞きました。そしたら放射線としては同じであるが、人工は蓄積し天然は蓄積しない問お話をされていました。今から、今、福島から漏れている放射線は自然放射線と同じだというような話をされるんですが、やはり人工のと天然では動き方が違うんでしょうか。教えてくださいということです。」)

小出「はい、要するに、私たちは放射能と読んでるものは、放射性物質なんですね。ものですから、体に取り込んだ時の人間の体の代謝というものが、そのもの、その物質ごとに違っているわけ、ですね。例えばヨウ素というもの、皆さんすっとこの間聞かれてきたと思いますが、ヨウ素というのは人間にとっては必ず必要な元素なのです。それでそれを甲状腺というところに集めまして、ホルモンをつくりだすと、そういう役割を持っています。そして天然にあるヨウ素というのは一切放射能をもっていない、そういうヨウ素だけが天然に、あります。そういうヨウ素を人間という生き物は甲状腺に貯めてホルモンを作るという、そういう生き物として今、私達はある、のですね。でも、原子力発電所の事故が起こりますと放射能をもったヨウ素が飛び出してくる、わけです。それで私たちの、人間のほうの側からみると、放射能をもったヨウ素なのか放射能をもっていないヨウ素なのかということが、まったく区別がつきません。ですから、放射能をもったヨウ素が環境に漏れてきてしまうと、それをまあ、せっせせっせと人間は体に蓄積してしまう、わけですね。でそれが甲状腺に集まると甲状腺の癌になるということになりますし、甲状腺の機能をまあ、損なうということにもなるわけで。え、天然という状態で放射能を持ったヨウ素はないところに、放射能をもったヨウ素を出してしまうわけですから、それは人間にとっては、まあ、ある意味まあ危険を抱えてしまうということになります。

(千葉「本来取り込むべきでないものを体の中に取り込んでいってしまっているということに成りますからね」)

小出「そうです。」

(千葉「はい、わかりました。小出先生ありがとうございました」)

小出「はい」

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