1月20日 小出さんも参加「討論会:現場からリアル報告:原発事故・放射能汚染と農業・農村の復興の道」福島県有機農業ネットワーク

公開討論会【現場からリアル報告中です】原発事故・放射能汚染と農業・農村の復興の道

2013年1月20日、立教大学池袋キャンパスで開催された公開討論会「現場からリアル報告:原発事故・放射能汚染と農業・農村の復興の道」の記事が、福島県有機農業ネットワークのBlogに掲載されていましたので、転載致します。

▼Blog記事
公開討論会【現場からリアル報告中です】原発事故・放射能汚染と農業・農村の復興の道

=====(引用ここから)=====

公開討論会【現場からリアル報告】
原発事故・放射能汚染と農業・農村の復興の道

【日時】
2013年1月20日(日)13:30~17:00
【場所】
立教大学池袋キャンパス
マキムホーム(15号館)M202教室

【討論者】
小出裕章:京都大学原子炉実験所助教
明峯哲夫:有機農業技術会議代表理事
中島紀一:茨城大学名誉教授
菅野正寿:福島県有機農業ネットワーク
コーディネーター:大江正章 コモンズ代表

◆小出
福島原発で放出された放射性物質は、広島・長崎の数百発分。
二本松市における汚染は、1平方メートルあたり6万ベクレル。
放射線管理区域の基準は1平方メートルあたり4万ベクレル。
大地そのものが汚染されている。
本当ならその地から人を引き離さなければならない状態。
被ばくをしながら福島の農民は生きている。
それにどう立ち向かうかが今日の課題。
このような場所には住むべきでない。
すぐに移住すべき。

◆菅野
阿武隈はアイヌ語で牛の背中という意味。
桑畑も荒れ放題という中で、地域づくりを進めてきた。
首都圏の皆様との産直提携を進めてきた。

県外に16万人も避難している。異常な状況である。
低線量被ばく、内部被ばく(野菜を食べる)が福島県の住民を不安にさせている。
年間の被ばく量を5ミリシーベルトにするのか1ミリシーベルにするのかで国も迷っている状況。
二本松市は、毎時0.8ミリシーベルとのところもある。
娘は、ホールボディカウンターでNDとなったが、カウンターにも検出限界というものがある。
基準が体に与える影響が分からないのが問題。

学校給食で地元産の米を使うようになったが、野菜は復活していない。
住宅除染も始まり、1戸あたり80~100万円。
大手ゼネコンが行っている。線量も元に戻ってしまっている。
杉林とか松林とかの場所が線量も高い。
いくら住宅除染をしても元に戻ってしまう。
周辺の森林除染をすべき。
大手ゼネコンが行っている除染を住民で行う必要がある。

復興のプロセスに住民をもっと参加させるべき。
今回の問題を食べる食べないとか、逃げる逃げないという狭い議論にして欲しくない。
地方に何もかも押し付けてきた、日本の歴史の問題。
歴史の縦軸で考えていきたい。

◆大江
低線量被ばくの危険性を菅野さんも気にしていた。
この点小出さん。

◆小出
議論するまでもない問題。
放射線はどんな低くても危険!
これぐらいなら安全だ、という基準はない。

被ばくは特に子供たちが危険。

◆中島
震災直後の3月には、農業はアウトだと思った。
しかし、避難区域以外の農民は畑を耕した。
菅野は自前の測定機で測ったが放射能は出なかった。
全袋検査では、99.8%が25ベクレル/kg(米)以下。
特別に出るものはあるが、その他は出ていない。
これはまぎれもない事実。
ただし、果物や山野草、タケノコ、きのこは出やすい。

◆小出
数字は数字の危険性がある。
問題はそれにどう向き合うか。
25ベクレル以下だから安全というものではない。
きのこ産業は大変だと、私も思う。
私は500ベクレルだって大人だったら食べれば良いと思う。
問題は子供をどう守るかだ。

◆中島
米の今の全袋検査の測定レベルが25ベクレルということであって、ゲルマで測定すると数ベクレル程度。
25と言ったから、では20は? とかそういうことを言っているのではない。
言いたいのは、もっと高いレベルを予想していたのに、現実はそうでなかったということ。
移行率が相当低かったということは認識すべき。

◆小出
移行率そのものは植物によっても、土壌の性質によっても異なる。
ベラルーシでカリ欠乏の土壌では、移行率が高かった。
日本はカリ欠乏土壌ではないので、移行率は低かった。
それは喜ばしいことと思う。

では、その土壌でどのような農業をすべきか?
今は地表面が汚れている。それにたい肥を入れればさらに汚染される。
それに対して近代農業のカリ肥料は岩塩でできているため、作物に入るセシウムの量を減らすことができる。

◆中島
循環型の農業の有機農業は困ったなと、最初は思った。
実態としてその状況は違っていた。
空気中の放射性物質は、地表のごく薄い部分に降った。
地中はそれと比べにならないくらい膨大。
土はガンマ線を遮断する効果も高い。
カリ欠乏の関係は、
植物側から見た場合だけでなく、
植物にすえないように土でコントロールするという考え方もある。
土そのものが持っている機能によるところが大きい。
循環型だからセシウムも循環するということではない。

◆明峯
有機農業だから移行率が低いということは残念ながら言えない。
放射能汚染にしきい値がないということはあたり前の話。
線量の議論をしたいのではなくて、放射線は危険ということを前提にしたい。
その先に福島に止まって農業を行う意味。

そこが重要なのだ。
現地でがんばっている農業者への外部被ばくは無視できない。
このような農業者の犠牲の上にたって、農産物がつくられている。
危険だから逃げたら良い、という単純なものではない。
これは有機農業に限らない問題。

◆菅野
有機質で質の良い農地はベクレル数は低い。
これは2年間の経験で分かってきた。

まさに管理区域と言われている中で農作業を行っている。
なんで君は逃げないんだとヨーロッパの記者に言われた。
3500年の日本の稲作文化は農耕民族。
どうやってこの土地で生きるかの問題。
逃げる訳にはいかない。

◆明峯
「危険かもしれないけど逃げる訳にはいかない」ということ。
これが議論されていない。
この第3の道を選択した人が圧倒的に多い。
このことの意味を問うべき。
不安をもちつつ止まる人は多いということ。

◆小出
被ばくは必ず危険だ、ということをまず認識すること。
本当は逃げたいけど逃げられないという人もたしかにいる。
これは、国がなんの支援もしないので逃げる訳にいかない、というだけではないか。
特に農業者は逃げられない。そのような苦悩の中で生きていることは分かる。

◆明峯
農業、林業と漁業は逃げられない。
その状況を招いたのは東電と国。
それは前提。
あたり前の話。
逃げられない営みはある。
逃げられない人によって社会が支えられている。
福島県産を食べないということは、福島から逃げているということになる。

◆中島
本来その土地に生きるということが人間。
二本松東和でアンケートをとったが、自給自足が進んでいる地域。
いちばん人間らしい生活をしている。
本来のくらし方だから逃げない。
人類が持っている価値の問題。

◆菅野
放射能汚染以外にもリスクはたくさんある。
東京の人こそまさに逃げるべき、ではないのか。

◆小出
私も東京から逃げるべき、ということには共感する。
私達が立ち向かっているのは放射能。
どこかに逃げるという選択視があるべき。
特に子供は。

◆明峯
爆心地で農業をやっている訳ではない。
程度の問題。
たったひとつの数字だけで人生を左右させられてたまるか、という人もいる。
あえて危険な事をするのもまた人間。
人間の持つファクターが重要。

◆小出
国が責任を持つべき。
しかし、現在の福島県の住民の取り残し方は問題。
低線量でも人を元の地に返すべきではない。
農業を守るために、そこに止まるということは、子供も止まらせるということ。
その考え方には躊躇する。

◆大江
この討論会は何が正しいのかを決めるものではない。

◆中島
結果として食べ物からの内部被ばくは少なかった。
外部被ばくも、セシウム134の方がガンマ線が強いので、(その半減期が近づいているので)今後は弱くなるはず。

◆大江
子供には食べさせられないのか?

◆明峯
子供の健康に関しては異論の出しようがない。
しかし、子供だけ特別扱いして良いのか。
子供も戦いに参加させるべきではないのか。
子供を守ることが最優先なのか。
子供を育てるということは健康面だけの問題なのか。

暴論だと思うが、あえてそれを前提に発言している。

◆菅野
自分の作った野菜は、当初心配の中で食べた。
しかし、測定したら10ベクレル以下だった。
じいちゃんばあちゃんはこれなら孫に食べさせられる、と喜んだ。
随分野菜を子供に食べさせる家も増えてきたが、まだ、別々という家庭もある。

◆明峯
これも程度の問題。
ファクターは二つ。
健康が唯一の選択ではない。
子供を「どう育てるか」とのファクターもまた存在する。
子供に、「一緒に戦おう」ということも、また親の責任ではないだろうか。

◆小出
子供に危険が迫るものはやるべきではない。
私は、(子供の)お釜は別にする。

(会場拍手)
私は、チェルノブイリの後でも、汚染されたヨーロッパの食品は食べた。
しかし、子供には食べさせなかった。
選択はいろいろあるが、放射能は危険。

◆明峯
食卓を一緒にするということも大切。
逃げることのできない食生活もあるということも知るべき。

(休憩)

◆大江
会場から質問。ストロンチウムとプルトニウムの汚染度合と影響

◆小出
大量に出たのはヨウ素。
ただし、半減期は8日なので消えた。
ストロンチウム90の放出量は、セシウムの1000分の1程度。
プルトニウムも、さらにその1000分の1。なので、影響は少ない。
従って、何より注意すべきはやはりセシウム。
ただし、「海洋」にあたっては、ストロンチウムがセシウムと同じぐらいの量で放出されている。
海産物のストロンチウム汚染は今後注意すべき。

◆大江
農作業中の内部被ばくに関しては。

◆小出
けがをした傷口から放射性物質が入ると危険。
ほこり。目からも。
マスクをすればかなり防げる。

◆菅野
2年目になると、農業者も放射能に関して鈍感になっている。
慣れが怖い。

どろ水から水田にセシウムが入る可能性が高い。
そのような対策は必要。
もっときっちりとした農民の健康検査をする体制が早急に必要。

◆大江
しからば、西日本の野菜は安全なのか?

◆小出
世界中の農作物が福島の事故で汚染されている。
西日本の野菜だから安全だと思ってはいけない。
程度が違うだけ。
どんなものも汚染されている。
安全なものはない。
安全でないということを知りつつ、それとどう向き合うか、ということ。
映画で18禁があるが、食べ物に、たとえばそのような制度を導入する。
60禁とか。そのような仕分けが必要。
それによって、農業も支えられる。
産地だけで判断すべきではない。
世界中の食べ物を測定し、対策を考えるべき。

◆中島
1ベクレル程度であれば、60禁というような話にはならない。
子供たちだけを取り上げることは、リアリティーに欠ける。
北海道や九州からも出たことがあったが、原因は機械の性能。
セシウムとカリウム40の区物ができなかった。

◆大江
居住が禁止されている農民へ支援のあり方。

◆中島
居住禁止がどの程度続くかが心配。
仮設でも、自分の食べるくらいの野菜をつくれるようにすることが大切。
補償の問題もある。
事故前レベルの補償がいつまで続くかが問題。
避難区域が解除されると補償金が減額になるのではと心配する。
仮設で仕事を持ててる方は少ない。
補償金で生活している状況。

◆菅野
主食である米と、たまにしか食べ物は、基準を変えるべき。
福島の現状にあったものに。

◆大江
土地に対する単なる執着?

◆小出
それは、そのような考え方もあるだろう。
一概にこうしろ、とは言えない。

◆中島
危ないという話はたくさんあるが、そこでも、子供も含めて生活すべきという議論が少なすぎる。
これをいうと攻撃される。

◆明峯
子供と一緒に食べるということを、「あえて」言わなければならない。
ここまで来ると、日本の社会の問題。子供の育て方の問題。

◆大江
福島県農産物の流通状況は?

(会場から)
大地を守る会の戎谷さん

福島は一大産地。
しかし、風評被害や拒絶反応は確かにある。
慎重な傾向は今も変わっていない。
測定もやってもらっている。

◆菅野
福島の問題は、20~30kmの線引き。
実際は、その他の地域でも放射能がまだらに存在している状況。
50mメッシュの調査。
その実態調査がないままに、膨大な予算で除染を行っている。

大規模ハウス、野菜工場ができつつある。
それが本当の農業の姿なのか?
これは日本の農業自体の問題。

福島の現状を見ていただいて今後考えていきたい。

◆大江
支援のあり方

◆中島
その地域で抱えている苦悩は複雑。
福島の農業者が何を欲しているのかから出発する必要がある。

(以上、17:00終了)
【以上の記録は、特定非営利活動法人福島県有機農業ネットワーク 齊藤登 ⇒ 現場から速記録し、瞬時にこのブログに上げたものです。】

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