7月6日 ストレステストと菜の花プロジェクトが結局ダメな理由 小出裕章(MBS)

2011年7月7日

2011年7月6日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月 6日【水】
「日本中枢の崩壊」~経済産業省大臣官房付・古賀茂明さん
東大法学部卒、経産省官僚として華やかなキャリアを重ねながら上司への直言ぶりが仇となって1年半以上も「大臣官房付」という閑職暮らしを余儀なくされているのがきょうのゲスト古賀茂明さんです。国会で仙谷官房長官(当時)から恫喝されるわ、事務次官から退職勧奨を受けるわ、大変な日々を過ごされています。そんな古賀さんの著作「日本中枢の崩壊」が話題になっています。「東電は総理よりエライ!?」「天下り天国が生んだ原発事故」・・・とても刺激的な内容で読みながら何度も「なるほど、だからこの国はこうなってしまうのか」と膝打つことしきりでした。古賀さんに「原発事故迷走の理由」を語っていただきます!
京都大学原子炉実験所・小出裕章さんの原発事故解説も。

録画

20110706 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

※()内はパーソナリティーの発言です。

(全ての原発に対してストレステストをするという話が急遽出てきた。これについて。海江田経済産業大臣が全国の原発に新たな安全検査を実施すると表明。第一印象はどんなふうに聞かれますか?)

小出:ほんとに困った人たちだなと思います。(どういう意味でしょうか)何としても原発を進めたいというのですね。あの手この手を使って安全性を証明したい、あるいは説明したい。あるいは言葉が悪いけれども、騙したいというそういう事をやろうとしてるのですね彼等は。

(海江田大臣が仰っているのは地元の方々の理解を得るためのストレステストと考えていると。個々の部分ですかね)

小出:そうですね。もともと彼等は原発は絶対に安全だと、地元の連中は安全なものをなかなか安心だと思ってくれないと、言う不満を言いながらですね、来たわけですけれども、そんなことを言いながら彼等がやってきた原子力発電所は事故を起こしてしまったわけで、まずはそのことを反省しなくてはいけないし謝らなければいけないと思うのですけれども、そんなこともしないなまま住民が馬鹿だからもっと安心を与えてやろうというそういう態度のように私には見えます。

(このストレステストの項目や期間、どういう内容でテストをしていくかについては、内容を決めるのが誰かといいますと、経済産業省原子力安全・保安院、と原子力安全委員会が共同で詰めるんだそうです。これはつまり今までの原子力行政の責任者ですよね)

小出:そうですね。彼等が安全だと言い続けた福島第一原子力発電所が壊れているときに、また彼等が責任を持つとか言うようなことは常識から言ったら私は考えられないと思うのですけれどどうなのでしょうか。

(近藤さん、テストの内容を今までの責任者がまたつくるってそれをテストと呼ぶというのどうですかね?)

(近藤;小出さん、私はこれ唐突という気がしてるんですよ、この唐突さの中にある種の思惑があるというのは、これ総理がねやれといったんです。この機に及んで総理がやれといった思惑を私はつい考えてしまうんですよね。おそらくこれ2ヶ月3ヶ月かかるとおもうんですけれどね、その間延命ということを考えてはる方なので、海江田さんにしてみればまえ向いてGOをしたかったところへ持ってきて総理はおそらく私は何らかの形のひめたることがあるとおもうんですがね。政治的にはそういう動きにみえて仕方が無いんですが、先生はそういう事をあまりお感じにならないんですか?)

小出:はいわかりません。私政治のことにあまり知識もないし判断もできないですけど、まあ管さんという人の動きを見てるとまた随分わかんない方だなと私にはみえますので。

(近藤:随分わかんないんですよね。でこの再稼働については首相みずから海江田さんの方針にサインを示してたはずなんでね、それが今日の国会の論戦を聞いているとどうも海江田さんが一人で決めたみたいな形になっちゃってね)

小出:そうですよね。自分が任命した経済産業大臣じゃないですか。

(そうですよね。そういう事もあるしなんかちょっと動きかたがちぐはぐなんですよね彼等も)

小出:不思議だと私も思いました。

(では小出さんもよく知っていらっしゃる原子力安全委員会の斑目委員長の発言をご紹介したいと思います。今日の記者会見でこうおっしゃっております。斑目さんは原子力安全委員会のトップとして今回のストレステストを行う。そして内容を決める側の方ですね。で、「ストレステストで原発に大きな弱点が見つかった場合、対策を実施するまでは運転するべきではない」とおっしゃったそうです。これはどうお感じですか?)

小出:ストレステストというのをやると言ってるのですね。でもそれは多分、私は初めてそのストレステストという言葉を聞いたのですが、多分出来ることはコンピューターのシミュレーションです。ただコンピューターのシミュレーションなんてことは要するに想定してインプットしないことはもちろんなにもしないわけですし、要するにもともと想定外のことは想定外になってしまうのですから、まあ私から見ればやる価値もないようなものだと思います。で結局まあ安全委員会、安全保安院のですね、まあやりたいようにやって結局は安全でしたという結論を出すんだろうなと、今までの流れを見てると私にはそう思います。

(近藤:あのー先生。僕もそう思うんです。やる価値がどれだけあるのかという疑問なんです。ようするに国会の70日開催っちゅう数字がでてるわけですがその間ですね、こう言うことをやってますということで覆うようになるような形になるんじゃないかとおもうんですよね)

小出:まあ菅さんの延命のためかもしれません。

(なるほど。菅さんも玄海原発再稼働について地元の知事から来て下さいと言われてはりますから、行くのは嫌なのかもしれませんね。しかしストレステストはやっていますと言うことはできるかもしれませんが。このストレステスト、わたくしびっくりしましたことにテストが終了しなくても原発を再稼働する可能性があると説明されているんですけど、なんのためのテストなんですかね)

小出:もうとにかく原子力発電所をやるということだけは決まっているのですね。

(小出先生がもしもですよ、じゃあこうした原発の安全性を確かめるテストの内容を考えてくださいともし請われたら、先生はどういうふうに内容を考えられます)

小出:お断りします。

(断りますか。)

小出:どんなに考えても考え落としがありますし、考え落としたような事故が起きたときに原子力というのはもうとてつもないことになってしまいますので、もともとそういうのはやるべきではないというのが私の立場です。

(100%テストできると思うことが人間としてある種傲慢といいますか、無理なことであるというお考えなわけですね)

小出:そうです。人間というのはそういうものだと私は思います。

(はい。もう一つ。これはリスナーの方からのご質問で答えていただこうと思います。ラジオネームぴーちゃんという方は高校で理科を教えていらっしゃる先生のようでございます。第一原発の近辺で放射性物質を土壌から減らすためにひまわりを植えようと言う話が出ているようですが、植物に吸収された放射性物質は何処へ行くのでしょうか。)

小出;はい。植物の体に蓄積します。

(ひまわりのなかにつく席するのですか)

小出:そうです。

(じゃあ例えばヒマワリの種って、食べたりしますでしょ? ひまわりの種を食べたらその人は内部被ばくするんですか?)

小出:そうです。種のまま食べてはいけません。

(どうしたらいいんですか?)

小出:例えばそのウクライナというところでチェルノブイリの原子力発電所の事故のあと、菜の花プロジェクトというのをやってきました。それはどうするかというと菜の花を汚染した土地に植えるのですよね。そうすると菜の花に汚染したセシウム等が吸い上げられて菜の花として大きくなっていくのですが、それを集めてですね菜種油を絞ります。絞るとセシウムは油の方には来ないのです。そしてその油を使って、ディーゼルエンジンを動かしてようするにバイオディーゼルにするというそういう試みをしているのです。もちろんセシウム自身はもちろんなくなるわけではありませんので、あぶらのほうにはこないけれども、いわゆる菜の花の殆どの部分に残っているというそういう状態なのですね。

(その残っている菜の花はどうするんですか?)

小出:放射能をもったごみになってしまいます。

(放射性廃棄物に菜の花はならざるを得ない。じゃあそのまま土に帰すということは出来ないということですか?)

小出:もちろん帰してはいけなくて、また別の場所に処分をしなくてはいけなくなります。ただし土壌の中から菜の花が吸い上げられるという、まあ割合ですね。それはほんとに微々たるものであって、土壌の改良にも殆ど役に立たないと私は思います。

(私は菜の花やひまわりで土壌改良がドンドン進むんだとばかり思ってました)

小出:はい。皆さんそう思ってられると思いますけれども結局菜の花プロジェクトも私はダメだと思うし、ひまわりを飢えたところでダメですし、ひまわりを植えて種を食べるなんてことはもちろんしてはいけません。

(その種をも一回植えたらまたその土壌は汚染される?)

小出:放射能自身はどんなことやってもなくなりませんのでどっかに移動するということはありますけれども、決してなくなりませんし、菜の花を植えたらば結局菜の花が放射能のごみになります。

(近藤;先生なくならないということ事態がね原子力発電というものの矛盾を生んでるわけですよね。)

小出:そうです仰るとおりです。

(近藤:廃棄物をどう処理したらいいんかということが結論としてでてないものをよう認めましたね?)

小出:昔から原子力発電所というものはトイレのないマンションだと言われてきたわけですけれども、それを承知の上でここまで着てしまったわけですよね。

(近藤:そうかトイレのないマンションですか)

小出:はい。


7月5日 「子供の45%が甲状腺被曝」調査結果の実情 小出裕章(MBS)

2011年7月6日

2011年7月5日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月 5日【火】
までいの村
「までい」とは、手間ひま惜しまず、丁寧に心をこめて、つつましく、という東北地方の方言です。“ないものをねだるのではなく、あるものを探し生かす。”そうした「までい」の暮らしを選んだのが福島県の飯館村でした。番組では何度も放送している、福島第一原発の放射能により、故郷を去らなければならなくなった村です。「までい」の飯館村は、隣のおばあちゃんを放っておかないつながり、大地を耕し、資源の山を活かす生活を旨としています。学校給食の食材は100%村内のものを目指し、育児休暇に力を入れ、太陽や森の自然エネルギーを利用するなど、「までい」を実践していました。そんな村を襲ったのが原発。飯館村を取材し「までいの力」を出版した佐賀規子さんに飯館村の魅力と、そうした村が今取り組んでいることなどを聞きます。
京都大学の小出先生の原発事故分析もあります。

録画

20110705 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし

(原子力安全委員会が調査をしていまして、福島県内の第一原発周辺の市町村に住む子供さん達およそ1000人を対象に放射線被爆、どれくらい被爆したかという調査を3月下旬にしていたということ。それが今回明らかになった。その調査によると子供たちのなかの45%の子供たちが甲状腺に被曝していたということを明らかにしました。45%というとほぼ半分の子供さん達なのですが、この数字を聞いてどう感じられますか?)

小出:当然というか、もっと多かったかもしれないと思います。

(これ、調べられている子供さんたちがいた場所は、いわき市川俣町、飯舘村なのですね。)

小出・かなり離れたところの子供たちですね。

(そうなんです。例えば浪江町のような非常に原発に近い町の子供達ではありませんし、)

小出:どうしてそういう近いところは調べなかったのでしょうか。

(そうですよね、普通考えたら。それで3月下旬の調査ということはですね3月11日以降もうすでにどのあたりが非常に危険性が高いかということは十分わかっているはずですよね)

小出:もちろん3月11日にはわかっていました。いわゆるSPEEDIというプログラムを動かしていたはずですからどこの子供たちが被曝をするということは分かっていたはずだし、ほんとは対策も取らなければいけなかったのですが、何の対策も取らない、SPEEDIの結果も公表しないまま被曝をさせてしまったのですね。

(調査そのものも3月下旬ということですからだいぶ日にちがあいてからの調査をしたと言うことでしかありません)

小出:そうですね。

(でこの結果についてなのですが、もう少し数字を詳しく申し上げたいと思います。この1000人ほどの子供さんたちの中で一番高い被曝の数値を示した子供さんは1歳のお子さんです。甲状腺被ばく量これがですね、0.1マイクロシーベルト毎時です。1時間あたり0.1マイクロシーベルトで、これはですね、甲状腺被ばく量に管さんすると、年50ミリシーベルトに相当する数字だというふうに伝えられております。この数字をどうご覧になりますか?)

小出:えー、多分小さすぎるし、もっと調査したところが遠く離れたところこともあるかもしれませんが、福島原子力発電所に近い子供たちは、遥かに高い被曝をしていたと私は思います。それはもうすでにあの、国の公表資料であって、500ミリシーベルト、年に換算するとですね、それを超えてる子供たちがたくさんいるというような計算結果が公表されています。

(500ミリシーベルトを越える子供たちがいる。年間500ミリシーベルトというのはどういう値だと思えばいいんですか?)

小出:甲状腺だけですけれども、ようするにまあ、甲状腺の機能が障害を受けるということに相当するような被曝です。

(先生あの、委員会の審議官がですね、精密測定の必要ないというふうに聞いているんですけれども、これは非常に問題だと思うんですけれども、追跡なり子供たちのこうー、ケアがずっと必要になってきますよね)

小出:当然必要です。

(これぜんぜんやってない気配ですね。それと不審に思うのは今、第一号のデータがはいってないということですけども、IAEAにほぼ1ヶ月前に報告をしているにもかかわらず、ニュースに鳴るのは1ヶ月遅れと。もう様々な都合の悪いデータがIAEAの報告の中にもあるはずなのが、断片的に出てきてまして、もう全部をですね、IAEAに報告したのを全部、我々に提示させるというのが大事だと思うんですけれども、先生方の方にはそういうデータというものは入手出来てるんですか?)

小出:私のところには少なくとも全くきません。はいあの、原子力の旗をふってきた学者の方にはいっていたのかもしれませんが、残念ながら私の方には政府の方からあるいは東京電力の方から五歳のデータが来ません。

(未だにそうなんですよね。小出先生のところにきたらだいぶ国の姿勢はかわったと、ひとつの指標として私は思うかもしれませんが、今のお話のようにIAEA国際原子力機関に提出した報告書の中に、この子供たちの甲状腺被ばくの調査をしたことを記しているようなんですが。その結果何割の子供さんたちが実際に被爆していたかは報告書に書かれていないという。意味ないですよね?)

小出:本当に私はそう思います。

(でもそれIAEAはそんなのでOKしているってことですか?)

小出:IAEAというのは前にも聞いていただいたと思いますけれども、原子力を進めるための国際的な機関でもあるので、なるべく原子力を進めることに支障のあるようなことはIAEA自身も知りたくないし公表もしたくない、そういう組織です。

(知らされても困るんですね。)

小出:むしろそうですね。

(でもこれは半分45%の子供たちが甲状腺に被爆していたという事実を、本来国際的に知らせたらですね、もっと国際的に批判が日本政府に来るんじゃないんですか?)

小出:もちろんそうですし、私は先ほどから聴いていただいていますけれども、その遥か離れた子供たちが45%なのであって、近いところの子供たちは、もっとたくさん被曝をさせられてしまったということなんですね。ですからそういう子供たちの追跡調査ということはホントはしなくてはいけないのですけれども、それすらやる気がないと、日本の国は言っているのですね。

(今、回調査した子供たちの中でもですね、0.1マイクロシーベルト毎時というお子さんが一番高いという、数字だけ見せられますとね、それほどでもないのかというふうに受け取りがちでしょうね。)

小出:そうですね。

(この値であれば、年50ミリに相当するという値であれば、ほんとうに精密検査の必要がないレベルなんですか?)

小出:それはわかりません。というのは放射線の感受性というのはもちろん年齢でも違ってきますし、個人差というものがものすごく大きくてですね、(そうなんですか?)はい。ですから同じ被曝をしてもなんでもない人もいるわけだし、障害が現れてくるということもありますので、ほんとであれば1年間50ミリシーベルトであればそういう子供たちをきちっと調査するということは科学的な態度であると私は思います。

(はあー、個人差が大きいんですか)

小出:はい。

(それから今回の原子力安全委員会の審議官がですね、換算するには調査の精度が荒いと。なんでそんな制度の洗い調査をするんですか?)

小出:えーっともっとホントは早くやらなければいけないのですね。ヨウ素というのは、私たちが気にしているのはヨウ素131という放射性物質ですけれども、8日たつと半分になってしまう。そして体に取り込んだヨウ素というのは排泄でドンドンなくなっていってしまいますので、被爆をしたその時に調査をするということが一番大切なことであって、3月の中旬に大量の放射能が出たわけですから、その時にほんとなら調査をしなくてはいけなかった。3月下旬になってしまうということになるとヨウ素131自身が物理的に無くなってしまっているし、排泄でなくなってしまっているので、なかなか調査が難しくなっていたときに、初めてやったということですね。

(でも調査する人はそんなことわかってますわね?すぐやらへんかったら値が低くなるのを分かっている人が3月下旬に何故かやってるんですね?)

小出:まああの原子力安全委員会という組織自身が全く機能してなかったんですね当時。

(全く機能してないからこんなに遅くなったのか? ある意味考えてこの時期に、下旬にしたのか私にはわからないのですが。どうなんですかね)

小出:そうかもしれません。わかりません私にも。

(ということはまずはすぐにやるべきだったということと、もっと原発に近い地域の子供さんたちをちゃんと調査するべきであったお言う事…)

小出:調査というか、事故当時に対策を取らなければいけなかったのですね。

(あの時小出先生がおっしゃったのは1メートルでもいいから遠くへ非難してくださいとおっしゃった)

小出:11日にそういいました。

(それが直ちには健康に被害はありません。という言葉に国としてはなっていたと。ここの開きが今になって色々工やって見えてくるわけですね。ありがとうございました。また明日もよろしくお願いします)

小出:こちらこそ。ありがとうございました。


7月4日 玄海原発の圧力容器の脆さについて 小出裕章(MBS)

2011年7月5日

2011年7月4日(月)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年7月 4日【月】
B型肝炎被害者の切実な声
先週、B型肝炎訴訟が正式に和解しました。感染の恐れがわかっていたのに注射針が使い回され、B型肝炎ウイルスに感染した人たちがたくさんいます。幼い頃にB型肝炎に感染すると、慢性化する可能性が高く、過酷な治療が必要になります。肝硬変や肝癌に進行し、命を失うこともあります。そうした理不尽な被害を受けた小池真紀子さんにスタジオに来てもらいお話を伺います。和解をした今、そのお気持ちを聞きます。
京都大学の小出先生には、きょうの原発の動きについて見解を伺います。

録音

20110704 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容書き起こし
※()内はラジオパーソナリティーの発言です。

(玄海原発の再稼働について。再稼働に向けて話が進んでいるようです。小出さんの感想をいただけますか?)

小出:玄海原発が国のほうが安全だというわけですね。(海江田さんは安全性について国が責任を持ちますと)それで玄海町の佐賀県もOKを出すのだと思いますけれども。それなら福島原発に関しては国は安全性を保証していなかったんでしょうか。(福島原発に関しては、地震の確率がゼロなのでということだったのでは)いずれにしても福島原発に関してはどんなことがあっても安全だと国は言ってきた、のですよね。で福島県もそれを信じてきたわけだし、地元の住民の人たちも国が言っているのだから大丈夫だろうとおもってきた。けれどもやはり事故というものが起きた。事故というのはそういうもんだし、原子力発電所というのは事故が起きたときに途方も無い被害が起きてしまうと。だから私はやめるべきだと思っているわけですけれども。国が安全だといったからもういいです、と一体どうしてそういうことが自治体の長として言えるのか私にはさっぱりわかりません。

(この玄海原発は4号機まであるんですが1号機が特に古くて36年、2号機は30年たっていて、老朽化でだんだん原子炉が問題が生じてくる問いわれている。老朽化の問題の象徴的な問題である)

小出:そうですね。ただまああの敦賀の1号機、あるいは美浜の1号機はもう既に41年建っているわけで、もっともっと老朽化している原発はあるわけですから、老朽化という問題だけで言うならば玄海が特別悪いということはないと思います。

(ただ老朽化しますとこれは金属材料学が専門の東大の名誉教授のうのさんという先生が仰っていることですけれども、この玄海原発は1号機が圧力容器本体が壊れる可能性が高いと指摘している)

小出:私もそう思います。圧力容器というのは金属なんですね。鉄でできている。鉄というのは叩いたところでへっこむし、曲げようと思えばある程度曲がるのですね。そういう意味ではガラスとは全然違いますよね。ガラスは叩けば割れるし曲げようとすれば割れてしまう。わけですけれども。鉄というものも中性子という放射線で浴びていくと、どんどんどんどんもろくなっていく性質があるのです。それで1番始めの鉄自身はいわゆる私たちが生活している常温というのですけれども、20度30度というところであれば脆くない、のですよね。叩いても割れないし引っ張ったって簡単には切れないし、ねれば伸びるというそういうものなのですけれども、中性子という放射線を浴びていくと、どんどんどんどん脆くなっていきまして、ガラスに近づいていきます。

(ガラスのような特性に近づいていく)

小出:それが近づいていく温度というのがですね、もともとはマイナス何十度まで冷やさなければガラスのようなものにはならないのですけれども、鉄は。それが中性子を浴びると共にガラスのようになってしまう温度がどんどんどんどん上がっていく。それで普通の温度でも鉄自身がガラスのようになってしまうと。いうことで、玄海の3号炉だったでしょうか2号炉だったでしょうか、それか1号炉だったかすいません私は(※聞き取れず)そこはもう90何度という温度でもうガラスのようになってしまう。もちろんそれよりも低い温度ならガラスのようになるということで、普通原子炉が動いているときは200何十度という温度ですからいいのですけれども、もし何かトラブルがあって原子炉を冷やそうとして冷たい水を入れようとするわけですね。冷やそうとするとね外から冷たい水を入れる。今も福島でやっている。そういう事をすると圧力容器と言ってる鋼鉄製の容器自身がガラスのような状態になっているところに、水を入れてしまうということで、壊れてしまうということになる。(壊れるという壊れ方がパーンとわれてしまう?)そうです。(パリッ問われてしまうガラスのイメージですか)そうです。

(原子炉がパーン問われるということはつまり何を示すのですか)

小出:もう手のうちようが無くなるということですね。

(中にある放射性物質、核燃料が全部大気中にいっぺんに出るということですか)

小出:割れてしまうと水が抜けてしまうわけで、原子炉を冷やせなくなるわけでして、原子炉がもうメルトダウンすることが避けられなくなるということですね。それ以降どういう挙動を取るということはまだよくわかりません。格納容器が壊れてしまえば大気中に出てきますし、格納容器の底に穴が開けば地下にめりこんでいくという。まあいずれにしても、どういう経路かをとって環境に放射能が漏れてくるということになってしまいます。

(先生、加圧水型という原子炉ですね、福島は今回は沸騰水型ですが、関西は加圧水型ですよね。そういう意味では万一の時には怖いタイプの原子炉と言えるんですかね)

小出:そうです。沸騰水型に比べて温度も圧力も高いですので、事故があるときには進展も早いですし圧力容器の健全性というのはもっと重要だと思います。

小出:(こうした、どのタイプか、とか何年たったらどうなるかということは、電力会社も国も分かっているんですよね?)

小出:えーっと、分かっていないと思います。(分かっていないんですか)というか、原子力というのはまだまだ新しい領域の技術なのですね。1954年に一番初めに商業用の原子力発電所がソ連で動き始めて、57年に米国のシッピングポートというところで動くはじめて、それから初めて原子力という発電をやり始めたのですね。いったい何年持つのだろうかと、始めから考えたんですけれども。まあ40年だろうなと思いながら来たんですね。その40年本当に持つかということを原子炉の中に試験片というものを入れて、(試験片ってどんな字を書くのですか)試験、テストのかけらですね。それを原子炉の中に入れて、鉄がどれだけガラスに近づいていくのかということをずっと調べながらきているのです。当初は40年だと思いながら来たわけですけれども、まだ大丈夫じゃないかということで今寿命を延長しようとして米国でもドンドン延長されてますし、日本でもすでに40年を経て敦賀でも美浜でもまだ動いている状態なんですね。でもそれは安全性をすこしずつ食いつぶしながらきているということですから、私としてはやめてほしいと思いますし、ガラスにドンドン近づいてきたような圧力容器を持っている原子炉から止めるべきだと私は思います。

(ドイツやアメリカなどでは廃炉、やめていくという動きがあるのですよね)

小出:もちろんあります。

(40年でもまだ大丈夫ではないかと試験片からおもってドンドン伸びていこうとしている。だがそれはまだわからない領域のところに我々ははいろうとしている)

小出:危険性がだんだんあがってきているということは確かなのですけれども、どこまで頑張るかということでやろうとしてるわけですね。(これコストの関係とかいろいろあるんでしょうね)もちろんです。

(またそうした面からも語っていただける機械をつくろうと思います。どうもありがとうございました)

小出:ありがとうございました。


6月30日 放射性セシウム含む汚泥の焼却灰の肥料利用について 小出裕章(MBS)

2011年7月1日

2011年6月30日(木)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年6月30日【木】
子どもたちを放射能から守る!
 今夜の特集のゲストは、市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の代表、中手聖一さんです。3月11日以降、福島第一原発の事故による放射能汚染で、周辺の地域は被害を受け続けていますが、福島県内の子どもたちを、放射能から守ろうと、父母たちが立ち上がりました。 中手さんも、小学生2人の親で、いま2人を岡山に疎開させているそうです。
 番組では、放射能汚染に怯える福島の子どもたちが今、どのうような生活をしているのか、また、その親たちは何を考え、どう行動しようとしているのか、伺います。
 原発の最新情報を伝える京大・原子炉実験所の小出先生のコーナーも、あります!

録音

20110630 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容

・ニュースについて

Q:(福島市内の市民団体が6歳から16歳の子供たち10人の尿検査をした結果全員から微量の放射性物質を検出。セシウム134の最大値が8歳の女の子で尿1リットルあたり1.13ベクレル。セシウム137の最大値が7歳の男の子で1.30ベクレル。どうご覧になりますか?)

小出:確実に福島原子力発電所の事故からきたものです。(内部被ばくしている可能性が高いということ?)可能性というか、確実です。(本来人の体からは検出されない?)セシウム134は全く検出されないはずです。セシウム137の方は多分基本的には1桁低いと思います、通常の状態であれば。
 (とすると高い値が出ているとみてまちがいありませんか?)高いというか、セシウム134は半減期が2年なんですね。基本的には福島の原子力発電所に事故が起きなければ環境にはありませんので、それが検出されたということであれば確実に福島原子力発電所から出たものを吸い込んで内部被ばくをしているということになります。セシウム137の方は半減期が30年で1950年代から60年代の大気圏内の核実験で、地球上くまなく汚染されています。私は尿は計ったことがないのですが、環境資料、例えば植物、松葉とかヨモギとかですね、そういうものであれば1キログラムあたりで0.1ベクレルあるいは0.2とかその程度のものです。それが1.3とおっしゃったと思うのですけれども、10倍程度高いように思えます。
 (そうすると、体に影響が出てくる可能性は考えられますよね)影響はかならず出るのですね。ただ人間の体、尿の中にはカリウム40という放射性物質もあってですね、通常のこれまでの状態で言えば、セシウム137の約1000倍程度ありました。現在セシウム137が10倍になってるわけで、それでもカリウムのほうが全然多いと思います。(将来の発癌のリスクを親御さん心配していますよね)必ず増えます。必ず増えますけれども、今聴いていただいたけれども、天然にはカリウム40という放射性物質があって人間の体にくまなくあるんですね。それから被ばくしながら人間の普通の発ガン率になっているわけで、それと全く同じだけの被曝をしてしまうということになれば、人間の発がんのうち放射線で出ているものの同じものが上乗せされるという事になりますね。そこまではいっていないように私は直感的に思いました。(尿から検出されたということは体の中から出ていく可能性もあるんですよね)もちろんです。人間というのは代謝活動をしていますので食べ物で取り込んで老廃物を捨てているわけで、セシウムでもカリウムでもどんどんどんどん排泄しています。
 (そうすると今このような値が出ているが途中から出されるぶんがあると考えてもよろしいですね。)はい。ですから今回の市民グループの方々の測定した尿というのが何月何日の時点なのかということもかなり大切な事なのだと思います。大変取り込んでいるときには排泄も多くなっているのですけれども、取り込んじゃってからずーっとたったあとの尿であれば、排泄されてくるものも少なくなってると思います。
 (こちらに入っている資料では5月下旬に採取した物ということですね。)多分セシウムで言えば3月中頃あるいは下旬の頃の採取が多かったと思いますので、その頃に尿を採取していればもっともっとずっと高い値が算出されていたと私は思います。(5月頃というと低線量の被曝ということですね)はい。大気中の放出がおさまってきた頃の尿ということになりますので、事故の初期に大量に放出されていた頃に子どもさんたちが吸い込んだセシウムに比べればずいぶん少なくなっているはずだと思います。
 (それで長期的に低線量の被曝をしているということですね)そうですね。これからずーっとしていくことになるだろうと思います。(一番有効な対策としてはその土地を離れるということに鳴るんですか?)そうですね。基本的にはこれから食べ物を取らないということが大切ですので、私がぜひやって欲しいことは学校給食を注意をして子供たちに対しては汚染度の少ないものを選んでやって欲しいと思います。

・リスナーからの質問について

Q:(一番多く届いている質問。農林水産省は放射性セシウムの濃度が1kgあたり200ベクレル以下の汚泥や汚泥の焼却灰は肥料として利用出来るとしていて基準以下であれば長期間のうちにまいたとしても土の中の放射性セシウムの濃度は過去40年程度の変動の範囲内で抑えられるということですが、私は食物汚染が毎年拡大していってしまうのではないかと思うのですが、先生はどうお考えですか?)

小出:今私聞いていただきましたけれどもいわゆる地球上はすでにくまなくセシウム137で汚染されてしまっているのですね。大気圏内の核実験によって。ただし、土の汚染はどの程度かというと81kgあたりにすればほぼ0.1ベクレルだと思ってください。それを農林水産省は200ベクレルとおっしゃったんでしょうか。1000倍のケタですね。そこまで許すと行ってるのですから尋常なことではないと私は思います。ただ、試料等でまくものは大地の大量の土の上にまくわけですから、それがどの程度の効果になるのかは私にはにわかにはわかりません。ちょっと想像を絶すると私は思いました。(多いですね)そうですね。どんどん蓄積もしていきますし、植物へ移っていくということになると思います。

Q:(今発売中の週刊誌に関西の放射線量についての調査が一覧表になっています。大阪でもJR大阪駅向のビルの植え込みで地表線量0.34ミリシーベルト。私のいる芦屋でも、植え込みで地表線量0.23ミリシーベルトと兵庫県が地上34メートルのモニタリングポストで計測している値とかけ離れて多いのにびっくりしています。保健所に連絡すると、関西は花崗岩の関係でもともと線量が高い0.21ぐらいでは驚かないしもともとそれぐらいあるのでは、といった回答でしたが。これは小出先生からみるとちっとも驚かれない事実なのでしょうか)

小出:2つの効果があると思います。保健所がいったのは関西というのは花崗岩地域が多いので花崗岩というのはウランとトリウムの含有量が高いという性質を持っていて、もともと放射線量は高いです。ですから六甲山なんかにいくと高いところがたくさんあります。ですから驚くほど高いとは私は思いませんし、その週刊誌に出ていたという数値がいったいどうやって測定したのかなという風に思います。
  皆さん最近簡易型の測定器というものを買われて、それぞれ測定されているようなのですが。簡易型測定器というのは、言葉は悪いけど、相当誤差の大きな物です。あんまり数値自身を信用しないほうがいいと思います。(そうなんですか)はい。ですから簡易型測定器を5個とか6個とか10個買ってきていただいてですね、それをおんなじ所で測ってみたところで、値自身は何倍も違うと思う。ですから測定値自身が高いとか低いとかいうことで、あまり値自身を問題にするということは正しくありません。(じゃあ私たちはその放射線の値というのは何を信じていっていいのでしょうかね?)放射線の測定というのは厳密にいうと大変難しいのです。私のような専門家がやろうとしても正確に空間のγ線量率を測定しろと言われてもなかなか難しいですし、簡易型測定器というのはもう山ほどの過程を入れてもともと精度が良くない測定器で、山ほどの過程を入れて値を出してきていますので、値自身は正しいと思わないほうがいいと思います。その測定器をもって自分の家の1メートルの地点。建物があんまりないところの1メートルの地点。グランドに行って1メートルの地点とか。おんなじような条件で計ったときに、どの場所がどの程度、何倍かとか何分の1とか、相対的なものを見ることだけに使って欲しいと思います。(では一回測ってこの数値が出たからというのではいけないということですね。)はい、そんな事で騒ぐと疲れるだけだと思います。


6月29日 東電の前提に立てば水素爆発と水蒸気爆発の恐れがある 小出裕章(MBS)

2011年6月30日

2011年6月29日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

2011年6月29日【水】
きょうの関電株主総会は原発一色
関西電力の株主総会がきょう大阪市内で開かれ、これまでで最も多い2244人の株主が出席しました。今夜の番組では、株主総会に出席した株主の1人に電話をつなぎ、総会の様子や、出席して感じたことなどを、詳しくうかがいます。
また、きょうも京大原子炉実験所の小出裕章さんに、福島原発事故の問題について解説してもらいます。

録音

20110629 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

内容

※()内はラジオパーソナリティーの質問。地の文は小出裕章氏の返答です。

・(原発問題を担当する大臣に細野氏「避難準備区域を縮小することを検討する」。事故が収束していないのに、そんなことをして大丈夫か。被曝する人が増えるのではないか?)とても難しい。3月11日を境に世界は変わってしまったと発言してきた。被曝を避けようとすると生活が崩壊してしまう地域が広大にできてしまった。日本は法治国家と言われている。この法律では1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をさせない。この法令を守るのは国の義務。この義務に従って国民を守らなくてはいけない。1年間に1ミリシーベルト以上被曝をするところは国がきちっと仕組みを作って人々を避難させなくてはいけない。ところが国は謝罪もなしに1年間に20ミリシーベルトの被曝をさせることを決めた。19.9ミリシーベルトでも許してしまうと言った。法治国家ではないと国が言っている。私は1年間1ミリシーベルトだと思っているが、これをやろうとすると福島県に相当するくらいの広大な面積を無人にしなければいけなくなる。これを国として実行出来るか、その日本を私たちは支えることができるか。そういう選択を迫られる国に変わってしまっているのです。

・(細野大臣はもどってきていただく条件に挙げているのは1つは、工程表のステップ1が達成していること。原子炉の安定的な冷却がなされていること。目処が7月17日。これは現実的に考えられるか)全く出来ません。もう6月も末なわけです。とうていできません。

・(循環冷却がうまく稼働するかと関わってますか?)それも関わっていますが東京電力自身がすでに炉心がメルトダウンをしてしまっていると認めている。循環冷却が仮にできたとしても安定的な冷却はもう既に出来ません。東京電力が言っているように炉心が既にメルトダウンしてしまっていてメルトスルーもしてしまっているとすれば安定的な冷却は出来ません。

・(スルーしているという前提で考えたときに地中にコンクリートで壁を作るのは、お金がかかるから東京電力が嫌と言っているんですかね?)というように報道で聞きましたけれども、お金がかかるって1千億円といったのですね。そんなちゃちなことをなんで躊躇するのかと私は思います。事故で生じた被害を本当に保障しようと思えば何十兆円払ったって保証できないという事故。それを1千億円をけちるということでは、おかしいと思います。

・(小出氏の意見は、汚染水が地下水にドンドンいってしまわないように。コンクリートで地中に壁を作るというもの。それに対して1千億円のお金がいるのではないかと言われているが東電は先に進めていないわけですね?)みたいですね。

・(そうなりますと1千億円で壁を作るかどうかということについても、安定的な冷却ができるんだという大前提では壁を作ることが早急な策だということに思い至りませんよね?)そうです。私が言う壁というのは汚染を広げないというだけのものです。(防御の策であって攻めの策は取れないという意味ですよね)そうです。(いまだに安定的な冷却を目指すという大前提を国がとり続ける限り、防御ができないままドンドン汚染水が地下に流れているということに?)そうですね。汚染水の汚染を除去する装置だとか言っていますけれども、これは単に溜まっているものをぐるぐる回すということで、溜まっている状態が解消されるわけではない。溜まっている間にドンドン漏れているわけです。私はその前にやるべきことは溜まっている水をどかすということ。だがそれすらやらない。

・(避難準備区域の縮小について、細野大臣が挙げているもう1つの条件は、水素爆発が起こらない状況が確実にわかれば、ということ。水素爆発はもう怒らないんですか?)東京電力が言っているように炉心がメルトダウンしているとすれば水素爆発はもう起きないと思います。(それはいい意味として捉えればいいのですか?)どちらにも取れますけれども水素というのは燃料棒の被覆管が水と反応してできる。燃料棒の被覆管が全部水と反応して跡形がないというのであれば、水素爆発は起きないのですが、炉心がもう溶けてしまって手のうちようがないということになります。

・(3号機に窒素を入れるとか入れないとか言っていますけど、あれは水素爆発を懸念しているのではないですか?)そうですね。そういう事でしょうけれども、それならばまだ炉心の全部が崩壊しているわけではないという前提にたっている。もしそうならば水素爆発の可能性もあるし、私が一番おそれている水蒸気爆発のおそれもある。

・(水蒸気爆発のほうが恐ろしいですか)私はそうだと思います。

・(事実がどうであるかによって、何を先にすべきかが違ってきますね)はい。でも今、どういう状況にあるかということすらわからないのですね。

・(水蒸気爆発が起こらないようにという防御はいましているのですか?)水をいれるということです。水を入れ続けてこれ以上炉心が崩壊しないようにするということ以外ありません。

・(収束はあるんですか?)ことがここまできてしまうととても難しいと思いますが東京電力が言っているようにまだ炉心の半分までは水があると、原子炉の推計がそれを示しているんですけれども、もしその状態でとどまっているのであれば、原子炉の中に水を入れてこれ以上溶かさない。そして循環系の冷却ができるのであれば、それなりの安定的な状態に持っていけると思います。

・(それなりの安定的な状態。ではそこからは放射性物質は出ないんのですか?)もう既に圧力容器にも格納容器にも損傷があるということが分かっていますので、汚染水がいずれにしても漏れてきてしまう。その漏れてきた汚染水を炉心の中に戻すという循環式の回路ができれば全然出ないわけではありませんけれども、外から水を入れてドンドン汚染水を溢れさせるというこれまでのやり方からは逃れることが出来ますし、外部に広げる汚染はそれなりに少なく出来ると思います。

・(大前提をどこのレベルに捉えて今できる限りのことをやるか。大前提を国は間違えているかもしれない、とこいで先生は思われるわけですね?)そうです。

・(ここのところ国は変わりませんね?)国会議員の人と話をさせていただきましたけれども、タンカーを検討していて今にもできるようなことをたしかおっしゃった。と思いますけれども、アレから半月くらいたったのでしょうか。何も動いていません。いったいどうなっているのかなあと私は思います。


6月28日 全国の原発で使用済み燃料を密に詰めなおし余裕を切り落としている 小出裕章(MBS)

2011年6月29日

2011年6月28日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

9000人以上の株主が詰めかけた東電の株主総会。怒号が飛び交う中、混乱の幕開けでした。原発被災者の株主は、福島に帰ることができない無念を訴えるとともに、原発撤退を求めました。この株主から提案された原発撤退は否決され、総会に出席した多くの株主の怒りは収まらないままの閉会。それでは、原発は投資に値するものなのか?株主はどのように判断するべきなのか?投資家の助言機関大手の「日本プロクシーガバナンス研究所」の吉岡洋二さんに聞きます。
京都大学の小出先生とは、話題のあの映画について話します。

録画

20110628 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

要約

・(昨日の核のゴミの話に引き続き伺いたい。昨日の話は発電するときに核のゴミを生み出し、全国の原発で行き場がない。六ヶ所再処理工場に作った燃料冷却のプールも満杯。置場が無くなっている使用済み核燃料を冷やすプールの容量が足りないので、本来なら間隔を空けて保管しなくてはいけないものを詰め込んでいるという話を聞いたんですが?)私たちはそれをリラッキングと呼んでいる。元々は使用済燃料を安全に保管するためにはこの程度の感覚で詰めたほうが良いとプールに入れてきたが、スペースがなくなってきたので密に詰め始めている。ビールやワインを箱に詰めるときには間に緩衝材を置いて、触れないように割れないようにする。その緩衝材を(使用済燃料プールでは)とっぱらって詰めるようにしている。冷却ということをもっと考えなくてはいけない。核分裂の連鎖反応がまた始まってしまうかもしれない。ギリギリという限度という余裕を切り落とそうとしている。

・(リラッキングは極めて稀なのか)全国の原発でやろうとしている。(外に出す保存が行なわれているというふうに聞いているが)本来は使用済燃料を取り出した直後は水で冷やすほかありません。プールに沈めて冷やすのが有効。4年から5年冷やしておけば線量が減る。ある程度冷えたあとは水にに頼らないで保管したいと思うようになるものです。既に実績があり、大部分は金属製のキャスクというものの中に入れて、空気中に放熱する工夫を山のように凝らして、水で冷やさないですむようにするもの。実績もそれなりにあります。

・(それならまだまだ核のゴミが出てきても保管できるのか?)すでにもう核のゴミが出続けてきてもうどうしようもない状態になって、再処理工場を作りそこに移したわけですが、再処理工場自身動かないし、原子力発電所が動いている限り核のゴミが出てしまう。仕方が無いので乾式貯蔵をしなければいけない事になった。そして今は青森県のむつ市に東京電力が5000トン分の乾式貯蔵施設をつくろうとしている。六ヶ所村の再処理工場のプールは3000トンです。

・(本当はプールで冷やさなくてはいけないものをしょうがなくやってる状況なわけですね?)はいそうです。

・(私ある映画を見まして、「100000年後の安全」というものです。この映画の中でフィンランドでは地下500メートルのところに大量に眠らせようとやっている。とりあえず10万年眠らそうということができるのかという映画。核のゴミに撮って10万年という値はどういう時間を意味するものですか?)皆さん10万年後を想像できるでしょうか。日本では高松塚の古墳が出たと言ってるわけですが、1000年2000年の前のこともわからないと言ってる中で興味があって調べている。それが10万年、私は100万年と思っているのですが、人間としては想像を絶する時間の長さのことを話しています。

・(少なくとも10万年この建物がもつはずだとフィンランドの技術者達は作っているらしが、まず1万年もった建物は誰も見たことがなく6万年後には氷河期が来ると考えられており、10万年後に「あけないでください」と書いておいても、人類がいるかもわからないと思うのだが?)居るはずがないですね(笑)。5000年前の石に書かれた言語を私たちはわからない。

・(フィンランドの人は少なくとも最終的なことに決着をつけようと向き合っていると思ってたのだが?)私たちの世代が原子力に手をつけてしまって、どうしようも無いゴミを生み出している。なんとか決着を付ける責任は私たちにある。しょうがないから地下に埋めようとしている。私はその方法すら正しいとは思いません。せめてゴミは生み出さないようにしたい。原子力はやめたほうがいいというのが私の意見です。

・(東電の株主総会で原発推進の方向は変わりませんでしたが?)不思議ですね。東電は何十回倒産してもまだ足りないぐらいの被害を今起こしているわけで、株主の方は1銭の配当も得られない。投資したものが全部なくなるという事態に至っている。それなのになぜ原子力を推進するのか私にはわからない。どういう社会システムで今の社会が成り立ってるんですかね。


6月23日 もんじゅは事故が起きれば福島の比ではない 小出裕章(MBS)

2011年6月24日

2011年6月23日(木)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

今国会で議論されている「税と社会保障の一体改革」。「消費税を2015年度までに10%に引き上げる」という内容ですが、新聞各紙を見ても何となく「まぁ高齢化社会来るんだし社会保障目的税にするのなら仕方ないのかな・・」という論調が多いように思います。でも「それは財務官僚の創り出した神話に過ぎないのだ」と激しく批判している元財務官僚がいます。きょうのゲスト、嘉悦大学教授の高橋洋一さんです。東大理学部数学科出身という変わり種の財務官僚だった高橋さんに「頭の良い高級官僚がどうやって政治家を、そして国民を欺すのか」、裏側をじっくり話してもらいます。京大・小出先生の原発解説も。

録音

20110623 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

リスナーとのQ&Aの要約(後半になるに従い、文字おこしになっていますが)

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Q:(リスナーの質問「実家は郡山市の中で最も放射線量の高い場所にある。近所の大きな公園は立ち入り禁止。家族がガイガーカウンターで測定。4.7マイクロシーベルト。家の庭の芝生から5.4マイクロシーベルト。家の門からのスロープから2.7マイクロシーベルトという結果が。芝生の値が高いため刈ることが出来ず雑草が伸びています。どのように対処したらいいのか教えてください」)

A:難しい。普通の日本は、空間のガンマ線量は、0.05マイクロシーベルト毎時ですから100倍くらいになっている。福島原発から飛んできた放射能が降り積もっている。もしそこで子供さんが遊ぶ場所なら芝生は刈らなければならないし剥ぎ取ったほうがいい。そうでないなら、お年寄りだけなら諦めてそのまま過ごすという選択もある。子供さんがいるなら必ず剥ぎとって欲しいと私は思う。

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Q:(福島の土壌汚染を5センチひっペがせと(小出氏が)おっしゃっていたが、とても重要なことだと思う。本当なら福島の人全員を避難させたいともおっしゃっていた。土の除染でどれだけ大丈夫なんでしょうか。)

A:質問の中に「大丈夫」という言葉があったが被曝に関しては「大丈夫」という言葉を使ってはいけない。安全だとか安心だとか大丈夫だとか、そういう言葉は絶対に使わないように注意をして欲しいと思う。どんな被曝でもかならず危険がある。どこまで受入れざるをえないか、という判断です。私は今、子どもが遊ぶ場所は表土を剥ぎとってほしいと言っている。それをやれば被曝の量は10分の1になると思う。子どもが泥んこまみれになって遊ぶ場所は、多分5センチ剥ぎ取れば10分の1になるとおもう。今汚れているのは、3月の中頃に福島の原発から大量に飛んできた放射能が降り積もった結果。これからまた大量の放射性物質が大気中に放出される自体になるかどうかは、私にはよくわからない。なればまた表土が汚染されるので、また剥ぎ取らなくてはいけないかも、しれません。今のところは3月の中頃に比べると、空気中からたくさん降り積もるということはなくなっているので、まずは剥ぎとって欲しいと私は願っている。

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Q:(元原子力企業上級副社長のアーノルドガンダーセンという人がこんなことをいっている「今も福島原発の露出した原子炉と炉心からは何ミクロンものセシウム、ストロンチウム、プルトニウム同位体などのホットパーティクル、放射性物質の微粒子が放出され続けているのだ。科学者たちは日本のいろんなところでそして東京でさえもこのほっとパーティクルを検出している。ホットパーティクルは車のエンジンエアフィルターにくっついている。福島や東京などでは放射能汚染されたエアフィルターなんてのはごく当たり前のことで遠いところではアメリカのシアトルでもみつかっている」このことをどう理解したらよろしいのでしょうか?)

A:福島の原子力発電所は壊れてしまって、大変高温になった状態で、たくさんのいろいろな種類の放射性核種が空気中に出てきた。それはほとんどはものすごい細かな微粒子になって空気中に飛び出して、風に乗ってあちこちに汚染を広げている。その細かい微粒子を私たちはホットパーティクルと呼んでいて、もしそれを呼吸で取り込むと、例えば肺なら肺の吸い込んだ粒子がくっついたところに局所的な大量の被曝を与えるということで昔からこのことを危惧されている。特にプルトニウムはアルファー線という放射線を出すのですが、くっついた組織、近傍だけを大量に被曝をさせますので影響が大きいという推定がある。だから注意はしなくてはいけないし、特にアルファー線を出すものについては、どれだけあるかをしっかりと調べる必要がある。だが今現在のところで言えば、プルトニウムの被曝よりは、事故が起きた直後はヨウ素、現在はセシウム、そしてこれからセシウムとプルトニウム(※おそらくストロンチウムの誤り)という核種の被曝が中心に鳴るだろうと思っている。近傍はまたプルトニウムが問題になる箇所があるかもしれない。遠く離れた場所はセシウムとストロンチウムに注意をするのが一番良いと思う。

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Q:(奈良に住んでいるが、まわりには原発に無関心なひとが多い気がする。特に私の母は70を超えているが日本におきている大変なことを他人事のように暮らしている。先日私が関西にも放射性物質が降り注いでいるといったら、母は「家の中ではいいけど外では言うな」という始末。私の頭が変になったと思っている。そこで質問ですが、ここ関西でも微量の放射性物質が飛んできているという認識は、間違っているのでしょうか?)

A:いや、あっています。もちろん関西だけではない。九州だって沖縄だって、もっと言うなら米国だってヨーロッパだって、全部の地球に福島からの放射能が広がっていってしまっています。ただし、降り注いでいる量は福島の原子力発電所の周囲はものすごい濃密であるし、関西に飛んできている量はそれに比べれば薄まってるということ。もちろんちゃんと注意をしなくてはいけないが、その時に自分の身が心配なのか、あるいは奈良の子供たちが心配なのか、あるいは福島の子供たちが心配なのか。きちんと何が一番大切なことなのかを考えて欲しいと思う。

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Q:(もんじゅの落下装置23日にも引き抜きという報道があった。引き抜き作業はうまくいくのか。もし作業が失敗した場合爆発する危険はあるのか)

A:私も心配です。もんじゅという原子炉は大変特殊な原子炉で、福島の原子力発電所を含めて、ほとんどすべての原子炉は炉心という部分を水で冷やすことができるのですが、もんじゅという高速増殖炉という名前の原子炉ですけれども、それは原子炉を冷やすために水が使えないという宿命を持っていまして、水を冷やすためにナトリウムという物質を使っています。この物質は大変化学的な活性が高くて、空気に触れると火事になりますし、水に触れると爆発するというそういう物質なのです。それで原子炉を冷やして、冷やそうとしたわけですけれども、その、ま、冷やすためのナトリウムを有る場所に燃料を交換するための中継装置というのが、もともと使うのですが、それを落としてしまったのですね。それを引き出そうというのですけれども、空中に引き出せばナトリウムが火事を起こしますので、引き出す場所全体を覆うような特別な部屋を作らなくてはいけないし、中継装置全体を引き出そうと思うと重量が多分10トン近くになると思いますので、かなりの力のあるクレーンでないとそれを引き出す事もできないと、いうことで、ほんとにそういう作業を全く空気に触れないまま出来るのだろうかということは、とっても難しいし、もちろん配慮をしながらやるのでしょうけれども、万一空気に触れてしまえば、それで火事になると。火事になったときに、福島の場合には燃料が溶けそうだということで水をジャージャーとかけることができたわけですけれども。もんじゅの場合には水を掛けることすら出来ない、のですね。ほとんど手をこまねいてみるしか無いということになりますので、大規模の火災に発展するという可能性はあると思います。なんとかそんなことにならないように願っています。

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Q:(福島よりさらに難しいような状況になる可能性も?)

A:そうです。もし事故が起きれば福島の比ではありません。(かつて95年ナトリウム漏れ事故があり潜在的な危険性は他の原子炉とは比較にならないと?)はい。とてつもなく扱いにくい原子炉です。

(※は聞き取りづらかった箇所。)


6月21日 海の汚染を調べれば漁師の生活を壊す。私は躊躇する。小出裕章(MBS)

2011年6月22日

2011年6月21日(火)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。

番組案内

『日米両政府は日本時間の21日夜、外務と防衛の閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を、ワシントンで開きます。迷走する普天間移設問題については、当初の計画通り名護市辺野古に移設することで合意する見込みで、新たな移設の期限は設けずに「可能な限り早期の実現」をめざすことを確認する方針です。これについて、沖縄県民はどう受け止めているのか、基地問題を精力的に取材している沖縄タイムスの渡辺豪記者に電話をつなぎ、詳しく聞きます。』(種まきジャーナルHPより引用)

録音

20110621 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

要約

・おととい札幌で講演。もともと私の講演会にはどなたも来ない。当初500人のところ800人を超えた人が来てくれた。ありがたいと思った。でもなんでかなあと思う。福島の原発事故が起きてしまったからなのだが、ほんとうに無念に思った。

・(昨日話し合った政治家の考える安全な原発というものについて)ここに至ってなおかつそんなことをいう人の神経が私にはわからない。

・(原発事故が津波で起きたことか地震で起きたことかで、他の原発の安全性を見るときに違いが出る?)そうですが、原子力発電所の事故というのは、津波や地震だけではなく他の要因もある。要因を全て潰せることなんて、ない。だからこそ原発はやめなければいけないと言ってきた。全ての要因がつぶせて安全な原発が成り立つといまだに思っている方がいる。

・政治の場はやっぱり難しい。私は関わりたくない。と思いました。

・(小出先生の言い続けてきたことが影響を与えている。これからも発言して欲しい)もちろん私は発言を控えるなんて思っていない。必ず発言を続ける。私に政治の場で発言しろと期待する人もいるが…。(これまで以上に声がかかると思うが)ありがとうございます。出来る限りのことはしたい。

・(福島市内で学校帰りの子どもがいた。マスクなし。短パン。素足。足の大部分が露出。女の子も。こんな子供たちの日常に対してどう思うか)被曝を防ぐという意味では好ましくない。特にマスクはして欲しい。子供たちは、暑くなれば長ズボンではなく半ズボンを履くのは当たり前。それを禁じなくてはいけないのは相当な覚悟がなければ出来ない。放射能は目に見えない。大したことないと思いたい、と福島の方は皆思ってると思う。今まで通り、子どもには特別な重荷を負わせないで、普通に生活させたいと誰もが願うと思う。私がもし福島の市民であれば、子どもを半ズボンで生活させたいし、泥まみれにして遊ばせたいと思う。それが好ましくない世界に実はなっている。なかなか認めることは出来ない人間の性(さが)なのかな、と思う。

・(被災地の漁港。海の大量の瓦礫を引き上げていた。再開のためには船が必要。億単位のお金の投資をしなくてはいけない。これまでどおりの商品価値の魚は採れるのか。放射能の汚染について伝えにくかった。どう思うか。)私も言えないと思う。現在の海の状態を調べる一番有効な手段は海藻を調べること。ずっと伝えてきたが。原子力発電所から距離ごとに100メートル、200メートル、あるいは500メートル、1キロというように海藻を調べていく。どの距離までどれだけの汚染が到達しているかを概算だが把握できる。ただこれを行うと、どこまで漁ができるか、商品価値のある漁業ができるか、が歴然と分かってしまう。そうなると私自身は福島の一次産業を守りたいと思っているので、どんな汚染があっても日本人として買い支えなくてはいけないと思っているし、今まで通り漁をして欲しいと思っている。だが実際汚染がわかると、日本の人たちは買わない方向に走る事は疑い得ない。汚染を調べることがいいことなのかどうなのか。漁師の生活を壊す方向になる。私としても躊躇がある。

・私自身は科学という場に携わっている人間。正しい情報が命です。他の皆さんに比べても、私はどうしても正しい知識を知りたいし、正確に公表したいと思っている。それでも今の段階でそれをすると、福島の農業漁業が崩壊するおそれがある。なんとか買い支えよう食べようと呼びかけているが、そんなことが実現できるかには自信がない。立ちすくんでしまうという現実がある。