4月25日 情報一本化のリスク 小出裕章

2011年4月25日

2011年4月25日(月)、MBS(毎日放送)ラジオのたね蒔きジャーナルに小出裕章氏が出演されました。

2011年4月25日【月】
JR福知山線脱線事故から6年
107人が死亡したJR福知山線の脱線事故は、きょうで発生から6年を迎えました。今夜の特集では、事故で娘を亡くした、ある遺族の思いをお伝えします。
また、きょうも京大原子炉実験所の小出裕章さんに、原発事故について解説してもらいます。

今日も小出先生出演部分を録音、公開してくださっています。

【福島原発】4/25/月★1情報公開について 2水棺はどうか? 1/2

【福島原発】4/25/月★1情報公開について 2水棺はどうか? 2/2

以下、要約です。(全文文字おこし転載はその下にあります)

・(情報公開のあり方に関して細野補佐官が記者会見の一本化を発表したが評価は?)分からない。もともと一本化は私は大嫌い。それぞれの意見を言う方が好ましい。一本化した情報が間違えていたらどうなるのか。

・(東電と、チェックする立場の国が一本化することについてはどうか?)国はチェックするどころか推進してきた張本人。それなのに偉そうにしている。まず自分たちが悪かったということを反省するところから始めるべき。

・(東電が原発敷地の中の汚染地図を公開したが、作られてから一ヶ月以上公開されなかったのは?)私には分からない。他のこともすべて公開が遅れている。

・(敷地の汚染地図で気になる点は?)1と3号機の周辺にスポット状に高い汚染がみられる。建屋で水素爆発が起きたが、それにより汚染物質が飛び散った影響だろう。

・(一ヶ月経っても毎時70ミリシーベルトの地点があることについて)がれきそのものに近づけばその一桁多い数値になってもおかしくない。

・(毎時900ミリシーベルトのコンクリ破片も見つかったが)普通の人の被曝限度は年間1ミリであり、900分の1時間(※4秒)で1年間の被曝をしてしまう放射線量。

・(そういうがれきを撤去したとしてどう処分するのか?)放射能の墓場をどこかに作ることになる。チェルノブイリの場合はヘリや装甲車などを20kmくらい離れたところに作った墓場に廃棄した。福島のポンプ車などの場合もそれをすることになる。現在福島原発から半径3kmは一時帰宅も不可能になっており、そういう地域につくるのだろう。

・(一時帰宅については食品や家畜の持ち出しは禁止されているが?)科学的には家畜持ち出しはできない。が、科学では測れないものがある。

・(ペットを持ち出すことについては検討されているが?)人もペットも汚染されている。スクリーニングをしながら人は逃がしたが、避難地域で亡くなった人については遺体の持ち出しもできず、難しい状態。

・(馬淵補佐官が1〜4号機に連続地中壁の構想について語ったが可能か?)私の専門ではないが、大量の汚染水が現在海に出ており、それをしても水はなくならないため、他のところから出てくるのでは。一箇所を止めたから止まるとは思えない。

・(格納容器を水でいっぱいにすること=水棺化について)格納容器を水で満たすのは意図的にやっているのではなく、圧力容器の穴から漏れてきて、結果的にたまっている。今の状態は意味がない。もっと水が増えて燃料が水没するのであれば意味があるかもしれないが、いまは格納容器の下のほうに水がたまっているだけでメリットは何もない。

・(圧力容器から漏れているのであれば水棺方式は無理?)もともと無理があると思う。格納容器は巨大で、水で満たそうとすると何千トンもの水をいれることになる。が、格納容器は水をいれるような設計をしていないし、現在損傷があると思われる状況で、損傷がひどくなる可能性もある。

・(一時帰宅する人はマイカーを持ち出せるか?洗車すればOKか?)クルマは比較的汚染を落としやすい。が、放射性物質の除去は汚染地帯でする必要があるため、被曝が発生する。それにやっても全部は取り除けない。チェルノブイリの時は多くの車両が放棄された。

ブログSleepingCatsにてこの放送の小出先生出演部分を書き起こしていらっしゃいます。転載させていただきます。

4月25日MBSラジオ小出裕章氏「会見一本化、汚染物質の墓場、水棺等について」

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メインキャスター(以下「MC」):水野晶子
コメンテーター:平野幸夫・毎日新聞「ほっと兵庫」編集長

※完全なテキスト化ではありません。
 毎度の言い訳、誤字脱字等ご了承下さい。
 今回は時間なく、全く見直しをしていません(汗)

MC:それではここで、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生に伺います。
  小出さん、こんばんは。

小出氏:こんばんは。

MC:今週もよろしくお願いします。

小出氏:こちらこそ。

MC:まず、この原発事故の様々な情報の公開の在り方について、
  総理補佐官の細野さんが今日発表致しました。
  これまで原発を巡っては、様々な形の記者会見が行われましたよね、小出先生。
  事故の当事者である東京電力、それから経済産業省の原子力安全保安院、
  また内閣府の原子力安全委員会、別々に記者会見を行っていた、
  これを1本化していくという話なのですけれども、
  この1本化については評価なさいますか。

小出氏:(溜息)解りません。
  もともとは、私は1本化というのは大嫌いなのです。
  それぞれの人がそれぞれの意見を言うのが良いと思いますが、
  今は、政府の言う事とか、東電が言う事とかが、
  てんでんばらばらで、何を信じていいのか解らない状況になっていましたので、
  そういう意味では、これまで原子力を進めて来た人達が、
  意思を統一して、ひとつにして頂く事は、良いような気もしますけれども、
  それが間違っていたら、それこそ困った事になるだろうな、と。

MC:そうなんです。
  正しい情報が迅速に公開されるのであれば、小出先生がおっしゃるように、
  良い面もあるかと思うんですが、
  これまでそれぞれの組織の言っている事が、バラバラで食い違っていたので、
  そこで、これはおかしいのではないのか、という、
  正しく疑う事も出来た訳ですよね。

小出氏:そうです。

MC:そこが1本化されてしまうと、間違っていた時に、
  追及しにくくなるのではないか、と。

小出氏:そうです。
  ですから、それは私が初め申し上げたように、
  もともとはバラバラの方が、私は好きなのですね。
  どこかで1本化して、というのは、私の好みではありません。
  (また大きな溜息)

MC:あまりにここまでバラバラだと、混乱するのではないかという
  ご意見ですか。

小出氏:そうですね、それもあったと思いますし。

MC:ただ、これは第1義の当事者である東京電力を、
  国はチェックする立場ですよね。

小出氏:ただ、国がチェックする立場って、
  これまで原子力を進めて来た一番の張本人は国の訳で、
  それが何か今、東京電力が悪いというふうに一切責任を東京電力の方に付けて、
  自分達は何か偉そうな顔をしている訳ですよね。
  まず、自分達が悪かったという事を、
  国が認める事から始めて欲しい、と私は思います。

MC:それから、更にこの情報公開のひとつの話として出てきましたのは、
  昨日になって東京電力がある地図を公開しました。
  これは原発の敷地の中の放射線で、どれ位空気が汚染されているか、
  というのを示しています。
  これを見ると、何号機の辺りにどれだけの、何Svの汚染があるかというのが、
  解る地図になっているのですが、
  これはもともと3月22日に作られて、どんどん情報が更新されていたらしいのですが、
  やっと昨日という事は、1カ月以上公開されなかったのですね。
  何故今頃公開するのですか。

小出氏:私には解りませんが・・・

MC:そうですよね(苦笑)。
  すみません、小出先生に聞いて・・・
  
小出氏:はい、この期間も全部そうでしたよね。
  いつまで経っても情報が出ないで、
  一月位経ってから初めて情報が出てくるという、
  この国は何なのかな、と私は思いました。

MC:この汚染地図をご覧になって、専門家の小出先生から、
  ここの所が特に気になる、と思われる点はどういう所でしょう。

小出氏:よく解りますけれども、
  1号機と3号機の周辺ですね。
  スポット状に物凄い汚染があるのですね。

MC:スポット状に高い汚染地域がある!
  何でですか?

小出氏:1号機と3号機は原子炉建屋の中で水素爆発が起きました。
  それは原子炉建屋の最上階という使用済み燃料プールがある場所で
  起きた訳ですけれども、
  そこは、核分裂性物質というような汚染の高いものが剥き出しである場所で、
  プールの底に燃料が沈んでいる限りはもちろん良いのですが、
  その燃料を取り扱うための交換機であるとか、
  いろいろな汚染をしたものがある場所なのです。
  それが、たぶん水素爆発で粉々に飛び散って、
  そこらじゅうに落っこちているという状況だと思います。

MC:爆発して一ヵ月以上経っても、最大で毎時間70mSvの所がある、
  という話ですけれども、この数値はどういう事を意味しますか。

小出氏:それはある場所の測定値ですし、
  もっと瓦礫そのものに近付いたら、一桁位多い数値もあった、と思いますし・・・

MC:確かに3号機の周辺で、1時間あたり900mSvのコンクリートの破片が
  見つかったという事ですね。

小出氏:そうです。

MC:これは、どれ位の数字なんでしょうか。

小出氏:普通の皆さんは1年間に1mSvしか浴びていけない訳ですから。

MC:1年で1mSvなのですね、限界が。

小出氏:はい。
  それが1時間あたり900mSvな訳ですから、
  900分の1時間というのは何秒になるのですかね、
  たぶん1秒とか2秒だと思いますが、
  そこにいたら、1年分の被曝をしてしまうという、
  物凄い場所がある訳ですね。

MC:「あ」と言ったら終わりますよね。
  そんな瞬時しか、側に居られないような状況が作り出されている。

小出氏:そうですね。

MC:こうした瓦礫は、いろいろ他にももっとあるのでしょうが、
  瓦礫を取り除かない事には、作業員の方達の作業が、
  進まないのですよね。

小出氏:そういう事です。

MC:瓦礫の撤去とよく言っていますが、
  撤去した瓦礫はどこへやるのですか。

小出氏:放射能の墓場というものを、どこかに作る事になるでしょうね。

MC:どこか。
  それはどこなのですか?

小出氏:解りません。
  例えばチェルノブイリの原子力発電所の事故の場合には、
  沢山のヘリコプターとか軍の車両とか、装甲車のようなものも含めて、
  動員された訳ですけれども、
  それはチェルノブイリの原子力発電所から
  確か20km位の所だったと思いますが、
  そこに広大な墓場を作りまして、そこに集めて、廃棄されました。
  そういう事を、たぶん福島でもやらなければいけないと思います。

MC:汚染された瓦礫の墓場を見つけるという作業も
  これから必要になって来るのですね。

小出氏:もちろん瓦礫もそうですし、
  今消防のポンプ車で水を入れて来た訳ですけれども、
  そういうポンプ車なども、2度と使えませんので、
  そういうものをどこか墓場にしなければならないと思います。

MC:でも、その墓場を決めたら、またその墓場の半径何kmかは、
  人が近寄れなくなるのではないのですか。

小出氏:そうです。
  ですから、今福島の第一原発から3kmの所は、
  とにかくもう一時帰宅すら許さないという汚染地帯になっている訳ですね。
  その外側の20kmあるいは風下に当たった所の人達を
  避難指示とか警戒区域に指定して、人を入れないようにしている訳ですから、
  そういう地域の一部に、そういう墓場を作る事になると思います。

MC:そういう作業も必要なんだ(と独語)。
  一時帰宅の事について伺いますけど、
  食品や家畜の持ち出しは認めないというルールなのだそうです。
  ですけど、本当に家畜を家族のように大切にしていらした
  酪農家の方々にとっては、それはいたたまれない事だと思うのですが、
  やはり家畜を連れ出す事はムリだと科学的に思われますか。

小出氏:科学的にはそうです。
  でも、科学では計れない問題だと思います。

MC:例えば、ペットの持ち出しについては、今政府が検討中なのだそうです。
  家畜もペットも生き物であるという事では共通だと思うのですが、
  ペットを持ちだすという事の危うさ、検討課題というのはどこなのでしょう。

小出氏:ペットも人も汚れている訳ですよね。

MC:汚染はされている訳ですね。

小出氏:ですから、人だってむしろ汚染されていた訳で、
  皆さんスクリーニングをしながら、
  髪の毛が汚れているから洗いなさい、
  服が汚れているから、それは袋に入れて縛って捨てなさい、
  とか言って、それでも人は逃がした訳ですね。
  でも例えば、汚染地帯で死んでしまった方に関しては、
  もう遺体が汚れているから持ち出してはいけない、
  というような事でやっている訳ですよね。
  ですから、とても難しいと思うのですよ、これは。

平野氏:すみません、海洋汚染の方もちょっと気になるのですけれども、
  今日馬渕首相補佐官が、1号機から4号機まで連続地中壁のようなものを
  構造物を作って、環境への排出を止める事を検討する、
  というような事を言っているのですけれども、
  これはじわじわと海ににじみ出るように、
  にじみ出るというかもっと大量なのでしょうけれども、
  こういう事は可能なのでしょうか。
  止める事は。

小出氏:それは私の専門と違いますので正確にお答え出来ませんけれども、
  既に大量の汚染水が、いわゆるトレンチ・ピットのコンクリートの割れ目から
  地下に沁み込んで、それが海に流れ出ている、と私は思います。
  それを防ぐために、矢板を打つなりして、海に流れ出るのを防止しようと
  そういう話だと思いますけれども、
  でもそれをやった所で水が無くなる訳ではありませんから、
  水はたぶん別のルートを取って海に出て来るのではないかな、
  と私は想像します。

MC:堰き止めるというのは、非常に難しいですか。

小出氏:要するに、地下の事な訳ですし、
  地下水はあっちこっちに流れ出ている訳で、
  もともと一カ所を止めたからと言って、それが止まるというふうには、
  私には思えません。

MC:この水で言いますと、水の棺と書いて水棺(すいかん)という、
  原子炉格納容器ごと水で満たそうという話ですよね。
  これは圧力容器の中の水を意図的に外に溢れ出させて、
  その外側を守っている格納容器の中を水で一杯にする
  という策だと聞いていますが、
  意図的にやっている訳ではないのに、水深た高まっている、水が増えている、と。
  これはどう見たらいいのですか。

小出氏:今水野さんがおっしゃった通り、
  意図的にやっているのではありません。
  圧力容器に既に穴が開いてしまっているから、
  圧力容器に水を入れる限りはどんどん漏れて来て、
  格納容器に溜まるという事、それだけの事です。

MC:意図的に溢れ出させるつもりが、
  圧力容器に穴が開いているので、勝手に下から漏れて、
  それで意図していないのに、水が溜まって水棺のようになって来ているのですか。

小出氏:そうです。

MC:そうしたら、それはそれで外から冷やせて良い、
  という事にはならないのですか。

小出氏:今の状態は全く意味がないです。
  どんどんもっと水が増えて、燃料が水没する位まで水が増えてくれる、
  というのであれば、その時点では某かの意味があるかもしれませんが、
  今はただ格納容器の中に水がどんどん溜まって来ているというだけで、
  何のメリットもありません。

MC:という事は、もともと圧力容器に穴が開いているとしたら、
  この計画そのものにムリがあるというお考えになりますか。

小出氏:私はムリがあると思います。
  格納容器というのは、巨大な容器ですので、
  それに水を満たそうとすると、
  何千トンもの水を格納容器の中に入れなければいけませんが、
  格納容器はもともと水を入れるような想定はしていませんし、
  そんな設計もしていませんし、
  今格納容器のどこかに損傷がある事だけは確かな事なので、
  水などを入れて行ったなら、きっとその損傷が拡がって行ってしまうでしょうし、
  水棺というのはむしろやらない方が良い、と私は思います。

MC:そうですか。
  この水棺で、世界のどこかで何か成功した例というのは・・・

小出氏:もちろん、ありません。

MC:ないのですね。
  世界で初めての試みな訳ですものね。

小出氏:そうです。

MC:もうひとつ、伺って良いですか。

小出氏:はい。

MC:話がちょっと前後してしまいますけれども、
  一時帰宅をこれからなさる方々にとって、大きな課題のひとつだと思うのは、
  車、マイカーを持ちだせるかどうかというのは、
  皆さんの生活にとっては大きいのではないかと思うのですよ。
  マイカーについても政府は検討中だと言うのですが、
  車は汚染していても洗車したら大丈夫じゃないですか。

小出氏:比較的容易だと思います。
  車の塗装は、どっちにしても付着はしますが、
  比較的汚染を落とし易いと思いますので、
  可能性はあると思いますけれども、
  でもその汚染を除去するために、また被曝をしなければいけませんし、
  だから・・・

MC:すみません、除染をするために被曝をするとはどういう意味ですか。

小出氏:要するに、汚染地帯でその作業をしなけれはいけない・・・

MC:汚染地帯で、その被曝をしたものを全部落として行かなくてはいけない。

小出氏:そうです。

MC:だから、作業は汚染地帯でしなければいけないのですか。

小出氏:もちろん、そうです。

MC:という事は、被爆地帯に長く(滞在し)、被曝する時間が長くなってしまう・・・

小出氏:そうですね、その汚染を除去するための作業も
  人々がそこで作業をしなければいけなくなります。
  それで全部は、どっちにしても取れません。
  ですから、そんな事をする位なら、もう諦めた方が良い、
  という事になるかもしれませんし、
  チェルノブイリの原子力発電所の事故の時にも、
  沢山の車両が全て放棄されました。

MC:そうだったのですか。
  今日も具体的にいろいろと教えて頂きました。
  明日はちょっとでも何か前進したニュースを届けられたら、
  というふうに思いますが、明日もどうぞ解説をよろしくお願い致します。

小出氏:こちらこそ。

MC:京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生に伺いました。
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小出裕章氏と推進派との直接対話 (平成17年)

2011年4月25日

ここで紹介するものは、福島原発事故に直接関係するものではありませんし、5年以上前の古いものです。

ですが、「想定不適当事故」という言葉に象徴される推進派の議論の方法が典型的に現れており、今日でも深い意義のある記録であると感じます。特に大橋弘忠氏との対話には強い印象を受ける人が多いはずです。

このページにて、録画、アンケート結果、議事録、各パネラーの資料などが提供されています。
プルサーマル公開討論会 (佐賀県の原子力安全行政)

プルサーマル公開討論会日付:平成17年12月25日

概要:県では、玄海原子力発電所3号機プルサーマル計画について、プルサーマルを推進する立場、慎重な立場双方が一堂に会し、その安全性を議論していただくため、県主催の公開討論会を開催しました。 討論会のテーマは「玄海3号機プルサーマル計画の安全性」。推進、慎重、双方の立場の方々によるパネルディスカッションの他、会場の方々との質疑応答を行いました。

1/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(1)

2/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(2)

3/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(3)

4/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(4)

5/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(5)

6/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(6)

7/7【原発問題】(推進派vs反対派)小出裕章氏(7)

1/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(1)

2/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(2)

3/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(3)

4/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(4)

5/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(5)

6/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(6)

7/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(7)

8/8【原発】推進派vs反対派 質疑応答編(8)


4月23日 東電は生データ開示を 小出裕章

2011年4月25日

先日東京電力が塩素38(クロル38)の測定値を訂正したことに関して、Peace Philosophy Centreが、モントレー国際問題研究所不拡散研究センターの研究員ダルノキ-ベレス博士の見解を翻訳して掲載されています。

東電の塩素38測定値撤回に対するダルノキ-ベレス博士の所見と情報開示の要請

この見解について小出裕章氏のコメントが紹介されていますので、以下の通り小出先生部分を転載させていただきます。

東電、保安院、安全委員会が4月25日から会見を一体化し、出席記者は保安院による事前審査により選別されるとの報道がありましたが、小出先生の言われるような生データの公表ということから逆に遠ざかることにならないよう願いたいところです。

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(小出裕章さんから4月23日メールで届いたコメント)
ご指摘の点はそのとおりです。

 私の推測では、Ge半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリのデータを、測定器メーカーの解析ソフトを使って自動的に解析してしまっているためだと思います。
 その結果を本当ならチェックしなおすのですが、それを怠ったためでしょう。
 そして、半減期37分のCl-38の場合、測定時点から、試料採取時点までの減衰補正をすると大きな値になってしまいます。
 たとえば、370分(約6時間)経っていたとすれば、測定時点の1000倍の値として評価しますし、採取から測定まで740分(約半日)経ってしまっていたとすれば、採取時点に減衰補正すると6桁分大きくなります。

 ダルノキ-ベレスさんのコメントどおり、生データが公表されれば、一気に解決します。                                  2011/4/23  小出 裕章
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4月13日 FMわぃわぃインタビュー 小出裕章

2011年4月24日

2011年4月23日、FMわぃわぃで小出裕章氏のインタビューが放送されたようです。

実際の放送内容は分かりませんが、インタビューは2011年4月13日に行われたということです。神戸市長田区のNPO法人たかとりコミュニティーセンター(TCC)が動画を以下のように公開しています。

小出裕章助教_FMわぃわぃインタビュー1

小出裕章助教_FMわぃわぃインタビュー2

小出裕章助教_FMわぃわぃインタビュー3

小出裕章助教_FMわぃわぃインタビュー4

以下、要約です。

・政府はレベル7と認めたが、私は当初からそう思っていた。3月12日の水素爆発時点でレベル6は確実で、その後レベル7も明らかだった。レベル7は原発事故のうち最悪のもの。現時点の福島では、チェルノブイリと比較すると放出されている放射能の量は少ないが、福島は進行中であり、今後の状態次第で超えることもありえる。

・福島では原子炉の中にたまった大量の放射性物質が熱を出している。その熱によって原子炉が溶けている。そのために発生した水素で水素爆発が起こった。今後の展開次第では水蒸気爆発の可能性もある。それが起こると大量の放射能が出てくる。それが最悪のシナリオ。

・(水蒸気爆発はどういう時に起きるか?)原子炉の炉心には直径1センチで長さ4メートルという細長いパイプが立っている。その中にウランを焼き固めた瀬戸物(ペレット)が入っている。パイプはジルコニウムで出来ているて、850度以上で水と反応し水素を出す。1号機は燃料棒が70%が損傷しているとしている。被覆管が水と反応し壊れているということ。そうなるとペレットがぼろぼろこぼれてくる。放出されている物質から考えるとペレットが溶けているのは明らかだが、炉心全体が溶けているわけではないと私は思っている。全体が溶けると燃料が落下する。炉心が下にある水に落ちると水蒸気爆発となる。そうなると圧力容器と格納容器も壊れるかもしれない。

・(水蒸気爆発には前兆があるか?)前兆はなかなか見えない。核分裂生成物が出す熱(崩壊熱)が止められたとしても、たまっている燃料の熱は止められない。1号機は6号機までの中で最も小さいが、それでも現在3000キロワット程度の熱が出ていて、それを冷やさないと壊れる。こうした現象が前兆として分かるかというと、分からない。それは、原子炉に近づくことができない状況だから。計器も壊れていて状態が分からない。確実に分かるのは、爆発そのもの。映像ですぐに分かる。爆発が起きたら逃げるべき。

・(退避勧告が出ている地域には戻れるか?)チェルノブイリで強制避難があったが、100〜200人くらいは汚染地帯に戻った。ガンになる可能性を抱えて生きている。今回の汚染地域の住民のなかには帰りたいと思う人がいるかもしれないが、相当の被曝を覚悟しないといけないだろう。

・(食物については?)放射能はあらゆる意味で危険。国は基準値を設けて出荷の可否を決めているが、基準以下だから安心ということではない。そうしたやり方は正しくない。汚染度をひとつひとつについて示すべき。それに応じて食べるか食べないか個々が決めるべき。

・(汚染されていても地域に残る人がいそうだが?)被曝は避けられるなら避けないといけない。枝野さんは「ただちに〜」と言うが、それは急性の被曝障害がないという意味であって、ガンや白血病になる危険はある。低い被曝も危険であることは調査で分かっている。基準値より上か下かの問題ではない。

・(福島以外にも原発は沢山あるが?)これほどの事故が福島で起こった今、すべての原発をすぐに止めるべき。神戸にも大阪湾にも東京湾にも原発はない。危険と分かっているからつくらなかった。

・(原発は未来のこどものために必要と政府は言うが?)でたらめ。負の遺産を残すだけ。原発を止めても、電力は必ず足りる。

・(原発が危険とどこで気づいたか?)元は安全で必要なものと思っていたが、原子力発電所を消費地に作らないことを見て、これはだめだと思った。それからは廃絶させることを目指している。

・(電気の需要が2000年以降急激に上がったといわれているが?)電力消費量があがっている。駅のエスカレーターも増えているが、私は足があるんだから階段を登る。不自由な人でない若い人もエスカレーターに乗るのが現状。階段がどこにあるか分からない建物も多い。何でも楽や便利が追求されている。不必要なものはどんどんやめて、生活を見直すべき。

・(日本に原発は54あるがそれを全部止めても支障は出ないか?)出ない。火力は半分は止めている状態。原発は電気事業法という仕組みの中でこれまでは儲かっていた。これを再考しないといけない。

・(日本のどこが安全か?)いま世界どこに行っても安全はない。程度の問題で比較的危険が大きいところと小さいところがあるというだけ。風次第の面もある。

・(どのように生活すべきか?)汚染が少ないところに行ったほうがいいとは思うが、人間は土地を簡単には離れられない。生活には歴史がある。別の場所に行くと別な危険もある。被曝を少なくしてほしいとは思うが、それだけでは判断できない。

・福島を中心として食べ物は汚染されるが、国の基準で出荷停止をしたりすると地域の農業が崩壊する。従い、大人は汚染された食物を食べるべき。年をとるほど放射能の影響は少ない(60を超えると平均より100分の1の感受性)し、原発の存在を許してきた責任もある。ただし、乳児やこどもには汚染した食物を与えるべきでない。

・(こどもを守るために行動を起こすべき?)ひとりひとりで考えて行動するべき。

・(日本に暮らす外国人にメッセージを)日本が外国人に優しい国かどうか分からない。私が原子力に反対するのは専門的なことからということもあるが、根本の理由は、自分だけよくて危険だけ他人に押し付けるやり方が許せないから。都会には原発を作らないし、原発の労働者は社会の底辺の存在が多い。外国人で日本に暮らすのは大変だと思う。閉鎖的で冷たい面もあると思う。その国を変えるには外国人の力も必要。

・(原子力推進派との対話は可能か?)推進派は我々との対話を望まなかった。私は知っていることを伝えたいと思ってそうしてきた。論争できる場があればどこにでも出かけてきたし、今後もそうするが、推進派はそうした場に出てこない。私の相手をすることにメリットがないから。

・(いま推進派は必死?)そうだと思うが難しい状況であり、推進派の人間は表には出てこなくなっている。ただし、状況をおさめるために必死になっている。

・私が原子力に取り組み始めたときは日本の原子炉は3つで、今は54。私にとっては敗北の歴史といえる。それは私のような特殊な人間だけ反対してもどうにもならないということ。普通の人が原子力はどういうものか技術的な危険性に気がつくことが必要で、さらに原子力問題の本質が差別の問題だということに気がつけば止まると思う。だが、停電になると困るから原発は必要というのが日本の大多数であり、情けない。

・どんな時代どんな場所でも、絶対にいいという場所などなかった。いつでも困難はあり、そこでもこどもが育ってきた。どんな状況でもおとなの責任はある。今の日本でも大人が責任が果たすべき。


4月23日 楽観視できる状況ではない 小出裕章

2011年4月23日

ビデオニュース・ドットコムにて以下のような内容を無料で公開しています。小出裕章氏が解説をされています。

こちらで公開中

ニュース・コメンタリー (2011年04月23日)
今週の福島原発
基本情報の公開なき楽観論には注意が必要
解説:小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)
 東京電力は20日、福島第一原発1号機タービン建屋の地下にある汚染水から先月25日に発見された放射性塩素38(クロル38)について、再分析の結果検出できなかったとして、当初の発表が間違いであったとする結論を発表した。
 これに対して、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は、ガンマ線を出す核物質であるクロル38を専門家が間違えて計測するはずがないと反論し、周波数スペクトルなどの基本データを開示せずに結論だけを発表する東電の姿勢に疑問を呈した。
 小出氏はまた、先週日曜に東電から工程表が提示されるなど、福島原発の先行きについて楽観論が広がる中、原子炉の状態はまだ冷却が不十分であり、とても楽観視できるような状態には至っていないと警鐘を鳴らした。
 今週のニュース・コメンタリーは、神保哲生と萱野稔人津田塾大学准教授が今週の福島原発をめぐる動きを小出氏に聞いた。

以下、小出氏部分の要約です。

・(実はクロル38は検出されていなかったと東電が4月20日に発表したことについて)私はもともと日本の軽水炉型の原子炉では再臨界が起こる可能性はないと思ってきた。が、クロル38検出という発表が本当であれば、原子炉の温度の高さも傍証として考えると、再臨界の疑いもあると考えた。今回の東電による訂正が本当であれば、再臨界はおこっていないと考える。

・(クロル38を間違って検出することはあるのか?)ゲルマニウム放射線検出器というもので測定するが、専門家から見れば間違えることはありえない。測定結果のスペクトラムを見れば、一目瞭然。それなのに、訂正まで一ヶ月近くかかったことについては不審に思う。

・(再臨界が起こっていたとしても、小さな臨界であり、いまはその状態が既に解消されているという可能性は?)その可能性もあるが、東電は元々クロル38は出ていなかったと今回言っており、一度出たものが今は消えたという話ではないから分からない。

・(生データを検証する仕組みは?)東電は生データを開示していない。生データを見せてもらえれば一発で分かる話。

・(保安院が初めて炉心溶融を認めたが、三段階ある中の炉心溶融=燃料が下におちている状態だとしていることについて)燃料ペレットが溶融していたことは事故の初期に分かっていたこと。私は燃料は溶けても下には落ちておらず途中で残っていると思っている。その残っている炉心が冷却に失敗したことで下に落ちてしまう可能性があると思うが、そのときは水蒸気爆発が起こる。既に落ちてしまっていて爆発も起きていないというのであればまだいい。

・私は炉心(被覆管等)はまだ下のほうは壊れずに残っていると思っているが、上から落ちてくる燃料ペレットがそこに溜まっていると推測する。それが落ちて圧力容器の下にたまっている水と反応することになれば爆発する。最後の防壁の格納容器が破壊されると放射性物質が大量に放出される。

・(状況は改善していると言えるのか?予断を許さないのか?)水蒸気爆発が起きないでほしいと願っているが、自信をもってそうならないと断言できない状態。それは改善されていない。苦闘を続けないといけないということ。

・(峠を超えていないからこそ被曝をしながら現在の冷却を続けている?)そうだ。

・(東電の工程表の見通しについては?)東電はこれまでも楽観的な見通しを重ねてきたが、このロードマップもその延長上にあり、この通りにはいかないだろう。その理由のひとつは作業員の方々の膨大な被曝。平常時の基準の年間20ミリシーベルトが250ミリシーベルトに引き上げられているが、それでも次々に上限を超えてしまっている状態。また基準を上げるのではないかと不安に思う。(※二つ目言及なし)

・圧力容器の底が抜けて、格納容器にまで燃料が落ちればそこで爆発の可能性もあり、それを抜ければその下での爆発の可能性もあるが、最も恐れているのは圧力容器の中の水蒸気爆発。

・(一連の楽観的なムードについて)こんな事故を招いたのは、そもそも国と東電の楽観的な姿勢。この状況の中で楽観的な見方を続けているというのは信じられない話。


4月23日 今何をすることが必要か 小出裕章

2011年4月23日

2011年4月23日(土)の朝日ニュースターの『愛川欽也パックインジャーナル』に、小出裕章氏が電話出演されました。

4/23(土) 原発事故工程表は大丈夫か

【今週の出演者】(敬称略)
山田厚史(AERAシニアライター)
今井 一(ジャーナリスト)
二木啓孝(ジャーナリスト)
池田香代子(ドイツ文学者)
横尾和博(社会評論家)

【電話出演】
小出裕章(京都大学助教・京大原子炉実験所)

放送を録画して公開されている方がいらっしゃいます。

愛川欽也パックインジャーナル4/23(土)「原発事故工程表は大丈夫か」1/2

愛川欽也パックインジャーナル4/23(土)「原発事故工程表は大丈夫か」2/2

以下、小出先生部分の要約です。

・(東電が工程表を発表したが内容はどうか?)工程表通りに収束するなら嬉しいが、出来ないと思う。問題は二つ。一つは作業現場の過酷な被曝環境のせいで作業がスムーズには続けられないこと。ロボットは線量測定ならできるが、冷却システムを構築するといった専門的なことは人間でないと無理。汚染水の処理が進まずいたちごっこの現状では難しい。(※二つ目の言及は無し)

・(世間では収まっているという印象もあるように思うが、実際の原子炉の状況はどうか?)とても改善に向かっているとは思えない。

・(最悪のシナリオは?)私が描く最悪のシナリオは原子炉がメルトダウンして水蒸気爆発するというもの。その可能性は否定したいが、自信をもってそうならないと言える状態ではない。

・(地上波等では最悪のシナリオに言及する人はいないが?)そのようだ。

・(事態改善のため何をしたらいいか?)やらなければいけないのは冷やすこと。今できるのは外から水を入れることだが、あふれてきてしまう。そこから抜けようとすると循環式の仕組みを作るしかない。東電の工程表の一部にもなっている。が、作業環境が現状では悪すぎるため、それを何とかする必要がある。

・(今の微妙なだましだましの状況が何年も続くようになるのか?)その可能性はある。

・(外部から水をかけ続けて安定冷却につながるか?)水があふれている以上、安定とは言えない。汚染水を垂れ流すような状況が続くのはとても悪く、望ましいこととは言えない。

・(JCOの事故処理のように、決死隊のような作業員が必要となる状況になる?)そういうところに追い込まれる可能性はある。

・(最悪の防護服のあったら?)ガンマ線をさえぎれる重い鉛のスーツを使っても被曝を防ぐことはできない。付着する放射性物質を付着することを防げるが、放射線は通す。

・(福島の20km圏封鎖で十分か?砂場で遊ぶな程度の話なのか?)コンパスで円を書くような形で汚染するわけではなく、風下が汚染される。実際の汚染に基づいて対策をする必要がある。こどもは放射線に対する感受性が高いため、砂場の砂を入れ替えるなど、被曝を減らすことが必要。最善はこどもを逃がすということだが、親から引き離すのは家庭崩壊につながる。


兵站不足とアレバ請け負いの意味

2011年4月22日

福島第一原発で過酷な労働環境での作業が続いていて、兵站の不足も明らかになっていること等について、ジャーナリスト木下黄太氏が取材した記事があります。

福島第一原発のコアな作業員が、二百人程度になってしまっているという情報。
(2011-04-22 00:43:15)

この中で、小出裕章氏の見解が紹介されているので、転載させていただきます。小出先生以外の専門家や関係者の方たちにも複数取材されて、今後の見通しを考える上で豊富な情報が得られますので、全体もぜひお読みください。

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作業する人員の状態についても、京大の小出先生とも話しました。

 小出先生は「木下さん、予想の範囲内と僕は思いますよ。廃液処理の装置をアレバが請け負ったと言っていることはご存知ですよね。あれも、日本で技術的に処理ができないと言うことでは無いんですよ。それよりも、物理的に日本では現場労働者確保できない状態になりつつあるんですよ。恐らくフランスやアメリカから、作業員をもってきてなんとかしようとしているのですね。同じことですが、間に合うのかどうかという事だけではないんですかね。僕は間に合うことを希望しますが」と。「この事態は予想通りですが、できることが、どこまでで、間に合うかどうかです。」
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4月21日 クロル38検出は間違いと言うが 小出裕章

2011年4月22日

2011年4月21日(木)、MBS(毎日放送)ラジオたね蒔きジャーナルに小出裕章氏が出演されました。

2011年4月21日【木】
きょうも原発解説&被災地レポート
深刻な状況が続いている福島第一原発の現状や今後の見通しについて、きょうも京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに解説してもらいます。番組の後半では、津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市で取材を続けている上田崇順アナウンサーに、被災地の現状について中継で伝えてもらいます。

今回も、小出先生出演部分を録音、公開してくださっています。ありがとうございます。

【福島原発】4/21/木★1.東電「クロル38検出は間違えでした」2.海洋汚染 1/2

【福島原発】4/21/木★1.東電「クロル38検出は間違えでした」2.海洋汚染 2/2

小出先生部分を要約してくださっている方がいらっしゃいますので、以下転載させていただきます。(全体文字おこしはその下にあります)

京大原子炉、小出『東電クロル38検出間違い、汚染水、警戒区域指定」4月21日たねまきジャーナル毎日放送ラジオ

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そして、小出先生のお話、1号機の再臨界のこと、クロル38を根拠にしていたのですが、毎日新聞に、東電はクロル38の検出を間違いと発表し、再臨界の可能性が低くなったということです。ちょっと、ほっしたということです。放射性物質の放出は、しかし、これで少なくなるのではない、今までと同じで、事態は好転していない、困難山積みなのです。手詰まりで、原子炉を冷やすのに水を入れる、入れたら溢れて汚染水がたまり、水を漏らすトレンチに入り海に漏れる、タンクに移すのに20何日もかかり、大変な作業が待っているのです。再臨界なしでも、安心できないのです。

 クロル38のこと、半減期の短い物質の過大評価と東電は言っていますが、ばかげた説明である、ゲルマニウム半導体でガンマー線を計っている、どの核種がどれだけあるか分かり、クロル38のことは分かるのに、生のデータを見たらすぐ分かるのに、今間違いというのか不思議と言うことなのです。専門家には簡単なことなのです。スペクトルを見せてもらったらすぐに分かるのに、20日以上スペクトルを出してない、本当かうそが分からないのです。

 分析・再評価は本当のデータを専門家が検討しないと、本当かどうかは分からない、東電が勝手に解釈して間違いを発表するのを止めて欲しいのです。みんなにデータ開示をして、再臨界で世界中が驚いたのです。東電は正確なデータを出して欲しいのです。

 東電が、2号機から出た放射能が4700テラベクレルと発表した…については、ものすごい量で、しかしこんなものでは済まない、もっと出ている、4700テラベクレルはピットという滝のように流れ出た量だけであり、ピットに割れができて出たもので、コンクリートの構造物は水が漏れてしまう、漏れるのは当たり前、地震で損傷しており、見えたピットだけが出たので、どんどん地下に漏れているのです。

 ピットから漏れただけで4700テラであり、全体量はもっと多いのです。東電の数字より多いのです。今まで、海にこんな放射能が出た事故は過去ない、その他で、イギリスのウィンズケールの再処理工場で、計画的に流した放射能はもっと多い(アイリッシュ海、内海が世界一の汚染になり、アイルランドもウィンズケール停止を訴えているが、ここは日本の再処理で儲けているので止められない)のです。ウィンズケールは、海域で魚の中に70~80年代に、日本の基準で許されない汚染であったのです。

 一度環境に出た放射能は回収は不可能であり、海に出たら終わりです。汚染を防ぐには、出すのを止めないといけないのです。高濃度のものを閉じ込める、高濃度のものを処理する、のが少しでもましなやり方です。しかし、原子炉冷却のため汚染水で薄めている、本当はやってはいけないが、それをしないとメルトダウンなのです。つまり、冷やすために、汚染は止められないのです。

 止めるには、水をリサイクルして冷やさないといけない、しかし、汚染水をどうにかしないと、作業すら出来ないのです。

 午前零時に、20km警戒区域に指定ですが、これはとても答えにくい、地域に住んでいた人に、すんでいたところに入れないのは大変だが、汚染区域には入って欲しくない、どう図れるかは不明、チェルノブイリでも同じであり、ふるさとを追われた人が40万人あり、強制避難の重みは大変なのです。それゆえ、原発を建てたらいつかこうなるので、建ててはいけなかったのです。

 毎日新聞の朝刊に、作業員の被曝、250ミリシーベルトが手帳に書かれていない、250ミリと書かれたらもう作業できないので、別途管理なのですが、過酷なことである、本来なら1ミリ/年、小出先生でも20ミリ/年、しかし、今回の事故のために100ミリ、これも守れず250ミリになったが、これを適用すると作業が出来ない、今後何年間の作業を考えたら、闇に葬るしかない、放射線作業は大変なのです。現場では、下請け労働者の被曝環境は改善されていないのです。

 今回、再臨界は否定されたものの、まだ困難が続くのです。また、現場の作業員の被曝も懸念されます。明日もお知らせいたします。  
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以下、ブログSleepingCatsにて文字おこしをされているので、転載させていただきます。

4月21日MBSラジオ小出裕章氏「クロル38、海洋汚染、被曝労働について」

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メインキャスター(以下「MC」):千葉猛
コメンテーター:近藤伸二 毎日新聞論説委員

※完全な文字起こしではありません。
 また、誤字脱字等、ご了承下さい。

MC:小出さん、どうぞよろしくお願い申し上げます。

小出氏:こちらこそ、よろしくお願いします。

MC:今日は毎日新聞論説委員の近藤伸二さんと一緒に
お伺いして参ります。

近藤氏:よろしくお願いします。

小出氏:はい、近藤さん、よろしくお願いします。

MC:では、小出さん、まず今日はこれをお伺いしたいのですが、
  以前1号機の中で再臨界が起きているのではないか、と。
  その理由がクロル38という物質が検出されているからで、
  その検出が間違いであって欲しいとおっしゃられていましたけれども、
  今日の毎日新聞の朝刊によりますと、
  東京電力は1号機タービン建屋の地下の水からクロル38、塩素38が
  検出されたなどとする分析が、再評価の結果、誤りだったと判明した
  という記事がありました。
  という事は、再臨界が起きている可能性は低くなったという事なのでしょうか。

小出氏:と、思います。

MC:再臨界が起きていないという事は、ひとまず少し安心出来るポイントが
  増えたという事ですね。

小出氏:おっしゃる通りです。
  ちょっとほっとしました。

MC:となると、外に出てくる放射性物質が少し少なくなる可能性があるのでしょうか。

小出氏:それは、ないと思います。
  要するに、今まで通りの状態が、これからも続くという事になると思います。

MC:事態が大きく好転しているという訳ではない訳ですか。

小出氏:もちろん、全く好転していないですね。
  むしろ困難が益々山積みになって来ているという事だと思います。

MC:それは、どうしてですか。

小出氏:要するに、もう手詰まりの状態になっている訳ですよね。
  原子炉を冷やすという方法は、
  相変わらず水を外から入れるという事しかない訳ですし、
  入れれば水は溢れて来る、という事になる。
  そうすると、汚染水が益々溜まるという事になる訳ですね。
  それで、トレンチという部分はもともと水を漏らさないという構造には
  なっていませんので、どんどん今現在も海へ漏れて行っている訳ですが、
  それを早く何とか集中廃棄物処理建屋のタンクの方へ移さなければいけません。
  でも、そのためにも20何日もかかってしまうという、
  大変な作業を、これから続けなければいけないという事になっている訳です。

MC:私達どうしても再臨界が起きていないという事で、
  ちょっとほっとしてしまう感じがあったのですけれども・・・

小出氏:それは私もほっとしました。

MC:それが必ずしも事態が好転しているという状況に繋がっているものではない、
  という事ですね。

小出氏:そうです。

MC:もうひとつ、クロル38の事について、
  東京電力は、半減期が短い物質を過大に評価していたから、
  検出したと勘違いした、というふうに話しているそうなのですけれども、
  これはどういう事なのでしょう。

小出氏:バカげた説明だと思います。
  今東京電力がやっている測定方法というのは、
  ゲルマニウム半導体検出器という検出器を使って、
  ガンマー線を計っているはずなのですが、
  その検出器で計る限り、どの放射性核種がどれだけあるかという事は、
  厳密に解ります。
  クロル38という、その放射性核種も、他の核種と間違うはずがないというような、
  放射性核種です。
  私もゲルマニウム半導体検出器を使っている人間ですけれども、
  そういう人間から見れば、生のデータを見ればすぐにそれがあるのかないのかが
  解るという、そういう放射性核種です。
  ですから、何で、こんな今になって間違いだったと言い出すのかな、と
  それが私にとってはむしろ不思議です。

MC:それ位、専門家にとっては簡単に検出が確認できる物質という訳ですか。

小出氏:そうです。
  私達はスペクトルと呼んでいますけれども、
  そのスペクトルさえ見せて頂ければ、ただちに解ってしまうという、
  そういうものなのですけれども、
  今の今まで、20日以上ですかね、そのスペクトルすら出てこなかった、
  未だに出ていない訳ですけれども、
  本当なのか嘘なのか解らないままずっと来てしまって、
  今になって間違えました、と東京電力が言っているのですね。

近藤氏:小出先生、ちょっとよろしいですか。
  今のその先生のお話を伺っていますと、
  今回の分析再評価というのも、本当のデータが出て、専門家が検討しないと、
  本当に信用していいのか、という疑問が湧いて来るのですけれども、
  この辺りはいかがなのでしょうか。

小出氏:そう思います。
  ですから、生のデータというのは、一番私達のような人間にとっては重要な訳で、
  東京電力が勝手にその生のデータを解釈して間違った結果を発表する、
  というような今までのやり方は、何とか改めて頂けないものかな、と思います。

MC:もう少し、皆が解るように正確にデータを開示する事が必要だという事ですね。

小出氏:はい、そう思います。
  この件で、世界中が踊らされた訳ですね。
  私自身も誤りであって欲しいと願いながら、今日まで20何日も
  ひょっとしたら再臨界かもしれないと、思い込まされて来た訳ですし、
  もっともっと正確なデータをじっかりと公表する必要があると思います。

MC:もうひとつ、今日大きなニュースで伝えられているものとして、
  東京電力が、2号機に取水口付近から一時期海に流れ出した
  高濃度の放射能汚染水の放射能の量が、
  およそ4700テラBqと発表をしております。
  この量を聞いて、小出さんはどう思われますか。

小出氏:物凄い量ですけれども、実はそんな量では済まないと私は思います。

MC:もっと出ている、と。

小出氏:もう遥かに出ている。

MC:それは何故ですか。

小出氏:この4700テラBqというのは、ピットという部分から滝のように流れ落ちていた
  その量だけを計算したものです。
  ピットというのはコンクリートの構造物ですので、割れがあった訳ですね。
  その割れ目から、たまたま目に見える形で滝のように落ちていた、
  だから大変だという事で、それだけが問題にされた訳ですが、
  コンクリートの構造物というなら、ピットだけではありません。
  トレンチも皆コンクリートの構造物ですし、縦坑もそうです。
  もともと水を漏れないようにするという構造になっていませんし、
  水が漏れるのが当たり前です。

  おまけに地震でそこら中がもう損傷しているはずだと思います。
  たまたまピットの所だけが見えたので、
  そこだけを今東京電力が問題にしている訳ですが、
  現実の問題として言うなら、もうトレンチ・縦坑・ピットの目に見えない所で、
  どんどん地下に漏れて行っているのだと思います。
  それが、地下を通って見えない形で海に流れ込んで、
  海の汚染を引き起こしているという事になっているはずだと、
  私は推測します。

MC:この4700テラBqという数字も物凄いのですけれども、
  これはピットという所から漏れていた分だけで、
  全体で漏れている水が汚染された放射能量ではないという事ですね。

小出氏:そうです。

MC:それを計算するともっともっと多くの・・・

小出氏:幾つだというふうに、私は数字を示せませんけれでも、
  必ず今の東京電力の数字よりは多いと思います。

MC:今まで、海にこれだけの量の放射性物質が流れ出た事故の例というのは
  あったのでしょうか。

小出氏:事故ではなかったと思います。
  イギリスのウィンズケール、セラフィールドという所に核燃料の再処理工場が
  あるのですが、そこで、核燃料の再処理をするという名目のもと、
  計画的に流して来た放射能の量というのは、膨大です。

  今東京電力が言ったのよりはもっと多いのではという位、流して来ていまして、
  そこのウィンズケールというのは、アイリッシュ海という対岸にアイルランドがある、
  言ってみれば日本海のような内海に面しているのですが、
  そこで大量の放射能を流して、アイリッシュ海が世界一汚染した海になっています。
  アイルランドの国会も政府も度々イギリス政府に対して、
  ウィンズケールの再処理工場を停止してくれ、という決議を上げていますけれども、
  ウィンズケールの再処理工場は日本からの使用済みの核燃料を処理して、
  お金儲けをしたいという事でずっと今日まで動いて来て、
  海を汚染して来ました。
  それと、かなり近いような汚染を既に福島から出しているという事になっています。

MC:そのウィンズケールでは、それだけの汚染物質を流して海にどんな影響が
  出ているのですかね。

小出氏:ウィンズケールの全面の海域では、もちろん魚がいる訳ですけれども、
  そういう魚の中には、1970年代80年代位には、
  現在の日本の基準では到底許されないような汚染がずっと続いていました。

MC:とすると、漁業だとかにも大変な影響が出ている事態な訳ですね。

小出氏:そうです。
  だからアイルランドの政府が停止を求める、とそういう事になってきた訳です。

MC:今回は、その汚染と同じ位の量だと思われるものが、
  もう既に出てしまっているという事ですね。

小出氏:そうです。

MC:本当に基本的な事をお伺いしますけれども、
  一度こうにやって環境に出てしまった放射性物質は、
  回収というのはどうしても出来ないのですか。

小出氏:海というような所に流してしまった限りは、
  出来ないと思います。

MC:とすると、汚染を防ぐためには、とにかく出すのを防ぐしかない訳ですよね。

小出氏:そうです。
  いわゆる高濃度のものをそのまま閉じ込めるというのが、
  一番良い方法です。

MC:そのまま閉じ込める、というのが?

小出氏:薄めてしまったらダメですので、高濃度のものを閉じ込める、
  あるいは高濃度のものから廃液の処理で放射能を取り除く、
  という事が、ベストとは言い難いけれども、少しでもマシなやり方です。
  薄めるという事が最悪です。

MC:今は原子炉を冷やすために水を入れ続けているので、
  汚染水でいわば薄めている状況になっている訳ですよね。

小出氏:もう、それしかないのですね、今は。
  本当はやってはいけない事なのですけれども、
  やらなければ原子炉が溶けてしまうという事で、
  仕方なくやっている訳です。

MC:それが続く限りは、汚染水は海に流れ続ける危険性は止まらない訳で。

小出氏:危険性が止まらないというか、必ずそうなります。

MC:それを抑えるために、高濃度のままで抑えておくためには、
  小出さんがおっしゃっている循環機能のある、
  冷却水をリサイクルして冷やすというシステムを早く作らないといけない
  という事な訳ですね。

小出氏:そうです。
  でも、そのためには今の汚染水を何とかしなければ、
  作業すらが出来ませんね。
  まずは移さなければいけないのですが、
  それすらが物凄い大変だという状況に今追い込まれているのです。

MC:それから、明日の午前0時に、あと数時間ですけれども、
  福島第一原発から半径20kmの範囲内を
  強制力をもって立ち入りを禁止する警戒区域に指定されるという事なのですが、
  これはやはり、小出先生としては、遅すぎたという感じでしょうか。

小出氏:この問題は、私はとても答え難いのです。
  要するに、その地域に住んでいた人達にすれば、
  自分が住んでいた場所に入れないという事になるのです。
  でも放射能汚染が凄い訳ですから、
  私としてはやはりそういう所に入って欲しくないとは思います。
  でも自分が住んでいた所に入れない人達の、その重さというのを、
  私はどうやって計ったらいいのか解らないのです。
  ですから、私から見ると、自分でもどうしていいか解らない
  という事になってしまいます。

  その事は、実は私は、チェルノブイリの原子力発電所の事故の後に
  同じように思いました。
  故郷を追われた人達が40万人もいた訳ですけれども、
  そういう人達を強制避難させるという事の重さが
  とてつもないものだというふうに思いまして、
  どうしていいのだろうか、とそれ以降ずっと悩み続けています。
  むしろ、その事を思ったが故に、やはり原子力発電所というものを
  建ててしまえば、いつかはこんな事になるので、
  何とか早めに止めさせたいと思って来たのです。
  でも、こうなってしまったのですね、また。

MC:解りました。
  あと、もうひとつ気になる事が、毎日新聞の今日の朝刊に載っていまして、
  原発で作業をしていらっしゃる方々の被曝の線量なのですが、
  今250mSvまで引き上げられた特例措置が運用されているのですが、
  これが作業員の方の放射線管理手帳に書かれていないケースがある、と。
  で、250mSvを浴びた労働者に通常規則を当て嵌めてしまうと、
  相当年数仕事の機会を奪う事になるので、全く別扱いで管理する、
  というふうに放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターの方が、
  記事によりますと語っていたりするのですが、
  この事については、小出さんはどう思いますか。

小出氏:過酷な事ですね。
  もともと日本人という人々は一年間に1mSvしか被曝をしてはいけないというのが、
  法律なのですね。
  私のように放射線と取り扱って給料を貰っている人間というのは、
  少し我慢しろと言われて、私は1年間20mSvです。
  でも今回のような事故を起こしてしまったら、
  もうそんな事は到底言っていられない、と。
  だからたった1回今回の事故に向き合うために100mSvまで我慢しなさい、
  というのが法律だった訳ですけれども、
  それすらがもう守る事が出来ないという事で250mSvまで
  一辺に引き上げられたのですね。

  でも、それをちゃんと適用しようとすると、
  今度はもう作業が出来なくなってしまうから、手帳にも書かないし、
  今後何年間仕事をしたいという事を考えたら、
  もうそれを闇に葬るという事を今言っているという事なのですね。
  本当にその放射線を取り扱う場所の仕事、
  今回のような事故が起きた時の作業というのは、
  過酷だな、と私は思います。

近藤氏:先生、放射線管理手帳で、規則で(放射線量を)管理するという事に
  なってますけれども、やはり現場ではなかなかキチンと管理出来ていない
  という実態があるのでしょうか。

小出氏:それは昔から言われていました。

近藤氏:それは今回だけではなく、昔からそういう実態があるという事ですね。

小出氏:下請け労働者と呼ばれるような人達がキチンと放射線の管理を
  されていないという事は、昔から何度も何度も言われて来た事です。

近藤氏:しかし、改竄されずにずっと・・・そしてこういう大きな事故を迎えた
  という事ですよね。

小出氏:そうです。

MC:はい、解りました。
小出さん、どうもありがとうございました。

小出氏:いいえ、ありがとうございました。
ーーーーー

なお、クロル38検出について東電が訂正したという該当報道を転載します。

放射性塩素38「検出せず」、東電が訂正

ーーーーー
 東京電力は20日、先月25日に福島第一原子力発電所の1号機タービン建屋地下の汚染水から見つかったとした放射性塩素38について、再分析したところ検出できなかったと当初の発表を訂正した。

 塩素38については、燃料の再臨界が起こった根拠と指摘する専門家もいたが、再臨界を示す他の放射性物質は見つかっていなかった。東電は、分析のプログラムミスが判明し、再評価を進めていた。

(2011年4月20日21時46分 読売新聞)
ーーーーー


浜岡原発は津波に耐えられるか 小出裕章

2011年4月21日

2011年4月21日、FNNのニュースで浜岡原発のことが取り上げられ、地震や津波に対し十分な備えがされているのかという住民の不安について報道されました。

その中で、小出裕章氏のコメントがVTRで紹介されています。

不安高まる中、浜岡原発の周辺住民 (小出氏は2:59〜)

以下、上記youtube動画の説明欄にある文字おこしを転載させていただきます(小出氏コメントは太字)。

ーーーーー
福島第1原発の事故を受けて、各地で原発への不安が高まっています。
東海地震の想定震源域の上に建つ、静岡・御前崎市の中部電力浜岡原子力発電所。
周辺住民の思いと、中部電力側の対策を取材しました。
静岡県の川勝平太知事は3月30日、「津波対策を万全にしないかぎり、(運転)再開は難しい」と述べた。
御前崎市の石原茂雄市長は4月12日、「国が安全だっていうことを実証できるのであれば、動かせばいい。国が保証できないんだったらすべて止める」と語った。
駿河湾に面するように、中部電力浜岡原子力発電所は建っている。
東海地震の危険性が指摘されて34年。
本当に安全なのか、これまでにない危機感が今、広がっている。
浜岡原発の1・2号機は廃炉が決まっていて、現在運転中なのは、4号機と5号機。
定期点検中の3号機は本来、4月上旬に運転を再開するはずだった。
浜岡原発が運転を始めたのは1976年。
この年の地震予知連絡会で、初めて東海地震説が発表された。
現在、東海、東南海、南海、3つの地震が連動した場合のマグニチュード8.7の地震でも、安全を保てる設計がとられている。
そして中部電力は、高さ8メートルの津波が押し寄せた場合にも、10メートルから15メートルある砂丘で防げるとしていた。
しかし、4月17日の説明会で住民からは、「今回の東北の地震ぐらいのが来ても大丈夫なのか?」といった声が聞かれた。
これに対し、中部電力の担当者は「今、正確にお答えすることはできません。なぜなら、マグニチュード9.0で評価をやっていないから」と答えた。
さらに、住民は「(想定を超えた)現状、事実があるんですよ。それを、見て見ぬふりしてるような気がするんです」と追究した。
これらの声に、中部電力の担当者は、「福島と同じことが浜岡で起きないように、こういう対策をすれば、できると確信しておりますし、また皆さんに説明をさせていただきたい­」と話した。
東日本大震災後の3月15日、中部電力は3つの対策を発表した。
1つは「建物の防水性を高める」、2つ目は「緊急時の送電態勢を整備する」、そして「津波を防ぐため、砂丘と原子炉建屋の間に、少なくとも海抜12メートルの壁を設置する­」。
しかし、福島第1原発には、15メートル近い津波が襲ったと発表されていて、中部電力の見通しに警告を発する専門家もいる。
京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は「東京電力だって、福島第1原発は津波で襲われても大丈夫だと言っていたんです。それでも事実はこうなっているわけです」と語った。
東京大学の笠原順三名誉教授は「1つは、できるだけ早く対策を立てて、実施することが非常に重要。もう1つの点は、地震には非常にバラエティーがあるので、それまで考慮し­た対策を立てること。この2つが非常に重要ではないかというふうに思います」と語った。
原発の近くで送ってきた、これまでの日常生活。
それを今後も続けられるのか。
住民の不安は、まだ当分続く。
住民は、「みんなに伝えてほしい。安全面にしても、何かあったときにしても速やかに」、「原発があるから怖いという思いは、なくなってほしいなっていうのがあります」と語­った。
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関係する記事 4月16日 原発学習会(静岡) 小出裕章


週刊新潮(4/28号) 危惧される最悪のシナリオ 小出裕章

2011年4月21日

2011年4月21日発売の『週刊新潮』2011年4月28日号の原発特集で、福島第一原発の現状と見通しについて専門学者4人の見解が掲載されています。その4人の一人として小出裕章氏が登場しています。

週刊新潮 2011年4月28日号(2011/04/21発売)定価340円(税込)

鎮まらぬ「福島第一原発」専門学者4人に訊く
――このまま「冷温停止」か「再臨界」で「爆発危機」か

暴走「1号機」から「4号機」まで再点検する
▼「再臨界」の1号機で「水蒸気爆発」から地球被曝が起きる
 /小出裕章・京都大学原子炉実験所助教(原子核工学)
▼最速なら1カ月で「冷温停止」に至る道筋がつく
 /奈良林 直・北海道大学大学院教授(原子炉工学)
▼圧力容器内の「水素爆発」の危機は今も去っていない
 /野口邦和・日本大学歯学部専任講師(放射線防護学)
▼「再臨界」なく「爆発」を防ぎながら収束へ
 /宮崎慶次・大阪大学名誉教授(原子力工学)

他の専門家の意見は小出氏見解と対立するものもありますが、それぞれの見解の根拠が明確に示されており(希望的観測から事実に基づかないことを言っているとわけではなさそうです)、とても参考になる特集になっています。

現在発売中の週刊誌の記事ですので全文引用は差し支えがありますので、小出氏部分のみ、以下に要点を紹介します。

・危惧される最悪のシナリオは、水蒸気爆発により放射性物質が大量に飛散すること。その場合はチェルノブイリと同レベルの「地球被曝」となる。

・1号機については、注水続行中の今も圧力容器内の温度が下がっていないこと、及び、クロル38が検出されたという発表から、再臨界が起っている可能性があると考える。クロル38の検出が事実なら、制御棒がうまく機能せず臨界が起こっているということ。

・2号機は汚染水漏洩が続いているが、高濃度汚染水がそれを止める作業を難しくしている。

・3号機はプルトニウムを使用するMOX燃料が使われており、これが漏れると大変。

・4号機は使用済み燃料プールが損傷している可能性があり、そうであると水を入れても漏れてしまう。監視が必要。

・燃料棒についてはペレットの全部ではなく一部が溶融していると考えるが、もし燃料棒が一気に落ちると圧力容器の底の水が急激に熱せられて水蒸気爆発が起こる。そうなると格納容器さえ破壊される可能性も。1号機は前述の通り稼働中の疑いがあり、これが爆発すると放出される放射性物質の量は他よりもとても多くなる。

・放射性物質の飛散範囲は風次第だが地球規模になる。東京でも高濃度汚染が起こる危険がある。

・爆発すれば、プルトニウムやストロンチウムなどの不揮発性の放射性物質もそれなりの距離まで飛ぶ。ストロンチウムは半減期が長く、また骨に蓄積されやすく長期的に有害。

・もし1〜3号機のいずれかでこれが起こると作業員全員退避となり、他の号機の冷却が不可能となり、連鎖的なメルトダウンにつながる恐れがある。その場合は超多量の放射性物質が漏れることになる。